確かに彼らはそこで生きている。呼吸する音が聴こえる

主人公の各務くんは、売れっ子というわけではないけど、副業しなきゃいけないほどでもない、絶妙な売れ具合の声優さん。

表情筋をあまり使用しないタイプの青年で、自分の中には自分の言葉などなく、いつも誰かの言葉をなぞっているだけだという思いに囚われています。
そんな各務くんなので、自分から積極的に誰かに深く関わっていくことは無く、基本は周辺の人間が起こすアクションによって物語は動いていきます。

この物語は、とにもかくにも人物描写が抜群にうまい。
どのキャラクターも立体的で、魅力的な光の部分と、濃い影の部分を併せ持っています。

途中、各務くんの周りの人間関係がこじれてくるのですが、読むうちにあまりに彼に思い入れすぎて、お説教をしてきたキャラクターに本気で腹を立てました。
これは物語なんだと俯瞰できなくなるほど、リアリティがある人物に会えますので、ぜひ。

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