ノスタルジック、ラムネ

 もう秋も顔を出し始めていますね。

 この夏、みなさまはいかがお過ごしでしたでしょうか。

 わがやは特にイベントごともなければ、その代わりに大事件もないという比較的平和な夏となりました。

 これはこれで幸せな過ごし方だったと思います。


 ただ、そういえばと思い返してみれば、今年はスイカもメロンも、かき氷だって食べないで夏の盛りが終わってしまいました。なんならお祭りも花火も無縁です。

 そんな夏、何か夏らしいことがしたいなあと思った時、ふと閃いたのです。

 あ、アレだ! アレがある! と。


 ラムネ。

 ビー玉でフタをされて、ガラス容器に入った、シュワシュワのアレです。

 なんだかもう、気分はすっかりラムネ色です。


 思い立ったが吉日とばかりにラムネを買いに行きました。

 幸いすぐに見つかり、颯爽と買い求めてほくほく顔で帰ってきました。

 自転車で足を伸ばした先のスーパーは大きくて、かなり商品のバリエーションの多いところで、お祭りでもないのにチョコバナナにりんご飴すら売っているくらいでしたので。

 ラムネは運んでくる途中にぬるくなってしまったので、大事に冷蔵庫にしまって冷えるのを待つことにします。焦りは禁物です。


 ラムネという飲み物は、むかしむかしはコルクで栓をされていたのだそうです。

 でもコルクでは炭酸が抜けてしまうので、考えられた末に今の形になって、炭酸もしっかり残るようになったのだそう。

 庶民の間で広く親しまれたラムネは、近代化に伴って次第に衰退して行く流れにあったのですが、レトロブームなどもあって今でも何とか生き残っているようです。


 昔はお祭りに行ったらまずラムネでした。

 ガラスの綺麗なビンに入っているのが魅力だったのです。

 屋台の水槽のような大きな箱の、冷たい水の中でよく冷えていたラムネ。どれも同じだよと言われながらも慎重に選りすぐって、水を拭い、ビー玉を落として飲む。その行為自体が物珍しくてワクワクしました。

 最初は父母に頼んでビー玉を落としてもらっていたのですが、大きくなるにしたがってだんだん自分でやってみたくなります。

 そこでラムネを開けるのに挑戦してみたら、ビー玉を落とす時にすぐに手を離してしまって盛大に溢れさせ、狼狽したのも良い思い出です。


 ラムネの中に入っているビー玉は、昔のものは割らずにはどうやっても取り出せず、涙を飲んで諦めた覚えがあります。

 小学生頃の私は、ビー玉やおはじきなどのガラスの光り物に目がなくて。

 これぞというものを集めて、宝物として大事にコレクションしていたのです。

 ラムネのビー玉はとても綺麗に見えて、すごくほしかったことを覚えています。


 さて、大人になった私が、キンキンに冷やして飲んだラムネのお味は。

 やっぱり懐かしくておいしかったです。

 今の私は、ビー玉を落とすのもなかなか上手になっています。

 ラムネは思ったより炭酸が強い感じがしましたが、それもまたよし。一気に飲もうとして傾けすぎ、ビー玉がつっかえちゃう! ということも、大人なのでありません。

 今でもひと夏に一度くらいは、ラムネを飲みたい気分になります。


 今回買ったラムネは、フタが外せるようになっていて、飲み終わったあとは分別してリサイクルに出せるようです。

 フタを外して容器を洗って。

 そうして残ったのは、ラムネに入っていたビー玉。

 まるくて透明で、なんだかとても良いものに見えてしまいます。

 小学生当時に集めていた私の宝物たちは、今はどこにあるのかも定かではありません。きっと捨ててはいなかったと思うのですが……。


 結局、このビー玉はよく洗ってキーケースにしている小箱にしまうことにしました。

 なんだか捨てられなかったのです。

 透明なビー玉は、この夏に手に入れた新しく小さな宝物。

 今年の夏の思い出のひとつです。


 近況ノートに画像があります。

https://kakuyomu.jp/users/yuyuki3/news/16818093084106584164

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

好きなことをあるく 夕雪えい @yuyuki3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ