野外ライブの思い出

 夏、まっさかりです。

 今年の夏も暑いですね。


 夏といえば、何かとお外がつきものです。

 海、山、プール、バーベキューにお祭りに……。

 昨今は熱中症に注意が必要なくらいの猛烈な暑さと言うこともしばしばですが、それでも人間なにかとお外を目指してしまいますね。


 季節柄、野外フェスやライブなども結構多いように思えます。


 私は日頃音楽系のイベントごとにほとんど縁がありません。

 ただ数は多くないですが、コンサートホールやライブハウスに足を運んだことはあります。

 大きな音がかなり苦手で、あの熱狂的な空気に乗れる方かと言うとそうでもないのですが、それでも結構楽しいです。


 そして今回のお話は、私がまだ若かりし頃……どころかほぼ子供時代のエピソードになります。

 野外ライブにまつわる思い出のお話です。




 夏のある日、家族で遠出することになりました。

 レジャーシートに、おにぎりと大きな水筒、おやつなどを持って。そしてみんなで車に乗り込みます。

 当時の我が家はそこそこ家族で(それも突然)出かける家だったので、こういうことは珍しくありませんでした。


 車の運転もしなければナビもしない子供にとって、ドライブは気楽なものです。

 歌って騒いでおやつを食べ、疲れたら寝る! これに限ります。

 行先も聞いていないので、車に乗ってしまえば後はひたすら運ばれていくのみなのです。



 休憩を挟みながらたどり着いた先は、結構山の中だったと思います。

 当時住んでいた場所がそもそもド田舎の山の中だったので、まあ変わりなく山といえばそうですね……。


 ただそこには出店があったり、すでにたくさん人がいたりして、なかなかの賑わいでした。お祭りみたいです。

 レジャーシートを敷いて、私たちもその賑やかさの一部に混ざっていきます。


 出店で色々買ってもらったりしながら、はてここはなんなのだろうと首を傾げていましたが、答え合わせはすぐでした。


 広場になっているそこの、ちょうど中央の良い場所には大きいステージが。

 そしてやがてライブが始まったのです。

 私史上初めての野外ライブでした。



 秋田県と青森県の県境には白神山地という場所があって、これはその秋田県側、おそらくは藤里町で行われた催しごとだったかと思います。

 あまりに昔のことなので、正確な記憶かと言われると怪しいのですが……。


 とにかくそのライブには、『南こうせつ』さんが来ました。

 あと『伊勢正三』さんもいました。

『神田川』で有名なグループ、元『かぐや姫』の方々ですね。山田パンダさんがおられたかはちょっと記憶にないです。


 父はかぐや姫が好きで、運転中もしばしばCDが流されていたので、我が家ではお馴染みの曲がたくさんありました。


 そんな色んな意味での有名人が目の前に! という初めての事態に、子供ながらにテンションが上がりました。



 それにしてもびっくりしたのは……。

 プロのミュージシャンなので、当然歌が上手いのです!

 ギターをすいすいと弾きながら歌ってしまうのです。

 これには感動しました。



 でも一番驚いたのは、南こうせつさんのお話の上手さだったかもしれません。

 イベントの司会進行はほとんどステージの上のこの方がやっていらっしゃったと思うのですが、お話が面白くてとっても軽妙。

 会場を盛り上げていくのが大変に上手なのです。


 暑い中何曲も披露しながら、アンコールまでしっかり歌い、最後は会場のみんなで一緒になって歌いました。

 最後の曲は誰もが歌いやすく、締めにも相応しい歌詞と雰囲気でとても盛り上がる曲。今にして思えば、ライブですから曲もよく考えられて選ばれていたのでしょうが、お見事なものでした。


 帰りの車内では当然、アンコールのあの曲を家族で熱唱という展開になりました。

 父はちゃっかりライブ会場でCDを買っていたようです。



 この野外ライブでは、かぐや姫のファンの世代のお客さんが子供連れで、つまりうちの家族のような参加の仕方をしていた記憶があります。

 それでも飽きさせないパフォーマンス。プロってすごいなあと今でも感心しています。


 いわゆる野外フェスに比べたら、かなり緩めのイベントではあったと思いますが、楽しかった記憶を持ち帰れたのは幸せでした。



 自分にはかなり珍しい、夏の野外ライブの思い出。

 南こうせつさんを見ると今でも思い出しますし、曲のことも覚えています。


 今後私が野外のライブに参加することはそうそうはなさそうです。

 でも、あの盛り上がりにはまた浸ってみたいような気が少しするのです。

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