人の営み、情景が、淡々と清潔な言葉でつづられた一編

戦争で両親を失った少年は、武蔵野の祖父母ともとに身を寄せる。
その家には祖父母の他に、年長の親戚の女性がいた……

少年はやがて歳を重ねていきますが、おそらく歴史に残るような人物ではない、平凡な人物の数十年の営みが、四千字に満たない物語の中で武蔵野の情景とともに、淡々と、そして清潔な言葉でつづられ、読んだ人は、自分もまた登場人物たちとともに戦後から復興の長いときを旅してきた、そんな気持ちにさせられます。
いやぁ、じんとくるなぁ。

武蔵文学賞応募作品ですが、私が推す、まぎれもなく大賞候補の一編です。