死にたがりの聖女様

彼女から発せられた願いは予想通りで、しかし当たってほしくないと思っていた願いでもあった。会ってまだ少ししか経ってないが分かる、こいつはまじだ。まじでやってほしいと思っていやがる。

 レオンが嫌そうな顔をしているのに気が付いたのか、目の前にいるM女は少しこちらを伺うような表情をとる。


「そ、それが無理なのならば……私に取り憑いて下さい! 抵抗するたびに走る激痛が堪らないんです……!」


ここまで謎の代替案を出されたのはレオンの人生において初だった。首輪をつけて鞭で叩くよりは100倍マシだが、そもそもやり方が分からない。困惑していると、急に頭の中へ見知らぬ記憶が流れ込んできた。


「ああ……やってやるよ。憑依ポゼイション


頭に流れ込んできたのは技の使い方だった。過去にも目の前の女に同じ技をかけて激痛を味合わせていたらしい。それと同時にとある感情も流れてきた。困惑だ、自分の前にこの体にいた奴もこの女には相当困惑していたらしい事を、彼は理解した……否、いやでも理解してしまった。彼は全く知らない身ではあるが少しだけ同情してしまった。


「あっ……これ……これですっ! 堪らない……っ!」


ドMの女が痛みに打ち震える。


「あ、あの……もう少し強くして貰えませんか? まだ足りないです……」


しかし痛みに満足していないのか、もう少し強めにと謎の要求をしてきた。


「もっと強く……こうか?」


流れてきた記憶の通りに力を少し強める。すると、先ほどよりも何かを奪われるような感覚を覚えた。


「んっ……!? くっ……!」


途端に苦しそうな声をあげるM、しかしその表情はやはりと言うべきか、どこか恍惚としていた。


「ふ……ふふ……」


身悶えしながらもなお、M女はレオンを案内することはやめなかった。


(しっかりと指示には忠実なんだな。それにしても……本当にホロとそっくりだ)


指示に忠実なM女は指示に従いしっかりとレオンを案内して、無事彼らが住んでいる村へと到着した。


「おかえり下さいませ! レオン様! ホロさん!」


村について早々、二人まとめて村に入ることを拒否された。


「これシオン! 何度間違える気だ! お帰りくださいませじゃなくてお帰りなさいませだと何回も言っただろう! ホロはともかくレオン様に失礼だぞ!」


早速ドMとしての本性を発揮し、顔を赤くし悦びに染める。


「んっ……!? わ、私はともかくとは失礼だぞ!」


このような些細な罵倒ですら悦べるらしい。レオンはできる限りホロを見ないように努めていた。彼が抱いていたホロへのイメージを崩さないためだ。清楚で可愛らしく、そして顔も美しい。レオンがホロに抱いていたイメージはこれだ。しかし現実リアルはどうだろう。実際の彼女は顔だけだ。清楚ではなく、決して可愛らしくもない性格だ。つまり彼のタイプとは真逆である。

それはそれとして、ホロはその性格ゆえなのか大分舐めれているらしい。


「レオン様、きつく言っておきますのでご無礼に関してはどうかお許しください」


おそらく初めてではないのだろう。目の前の男は謝り慣れている、そんな感じがした。


「ああ、気にしなくていいが……あれはなんだ?」


この村についてからレオンはある事がずっと気になっていた。それは村の真ん中にいる傷だらけの少女のことだ。何故か縛られている。


「あれは保護した人間です。森の中できずだらけのところを保護しようとしたんですが、なぜかそのままでは触れないため、先日レオン様からいただいたロープで縛り変な力を封じていたところです」


「そうか、後は俺がやることにする」


おそらく何かしらの力を持っているのだろうと考えて残りの対応を請け負うことにした。どうやらこの体は相当強いらしい。


「あー……そうだな、まずはその傷、どうしたんだ?」


「殺して」


あ……これめっちゃ面倒なやつだ。


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