料理担当に
「……アイリス、何があったんだ?」
少しアイリスが気になって探し回っていたレオンは、彼女を見つけたところで珍妙な光景目にすることになった。その場佇んでいるアイリス、膝と手をついてうなだれている先ほど紹介されたシエロ。そして恍惚とした表情で地面と接吻していたホロ……いや、この女はいつも通りであった。
「あ……レオンさん……」
「随分と妙な光景になっているな。ホロは……ああ、いつも通りか。シエロは随分とどんよりとした空気をまとっているが……」
「実は……」
アイリスは事の顛末をレオンに話す。
「はあ……シエロ、起きろ」
「レ、レオン様!?」
レオンの姿をその目にとらえたシエロは急いで姿勢を正しレオンと向き直る。
「シエロ、何があったんだ?」
一応アイリスから事の顛末は聞いているがやはり本人から聞いたうえで解決するのがいいだろう。レオンは改めて本人から聞き、そのうえで励ます方向にシフトした。
「レオン様……私の顔は怖いのっでしょうか……?」
不安げな、か細い小動物を思わせる表情でもってレオンに訴えかけるように問いかける。
「いや、正直すげえタイプ。大丈夫だ、シエロはかわいい」
口に出した後でとんでもないことを口走ったと思い訂正しようとしたが思いとどまった。それはシエロの美しい純白の頬が少し朱色に染まっていたからである。恐らく悪いようにはなるまいと判断したのだ。
それに先ほどの言葉はひとかけらの嘘すら含まれていないのだ。無意識化で出てきた言葉であるが故に嘘を混ぜるのは不可能だった。長く美しい銀髪にきれいな碧眼、そしてうっすらと赤らんだ健康的な唇、程よく小さい背丈ーー158cmくらいだろうか。それにとても透き通っているきれいでどこか落ち着く声、どこをとってもレオンのドストライクゾーンを射抜いていた。完全にタイプだったのだ。
(やっべー! 照れてる姿もかわいいんだけど!?)
どこを切り取っても美しい、まるでどこかにいる千年に一人の美少女のようだ。
「そ、そんな……レオン様? そんなに褒めても少しご飯が豪華なものになるくらいしかありませんよ?」
もじもじして恥じらう姿もかわいい。花も恥じらう乙女とはまさにこのことだろう。これが仮にホロであったのならば、花どころか草にマウントを取られていたに違いない。
「いやホントに。大丈夫だ、お前は怖くない。なあアイリス?」
「は、はい……怖く……ないです……」
何故か言葉がたどたどしいアイリスだが、きっとシエロが可愛すぎて見とれていたに違いない。そうでなければ許さない。
「それならここでいいか? 流石に一人だとシエロが不憫でな」
一人、この言葉を聞いた瞬間、アイリスの目つきが変わった。おそらく自分が独りになってしまい辛い経験をしたが故に他の人にはそんな思いをさせたくないとでも思ったのだろう。最も、一人と独りでは全く意味合いは違うのだがそこのところは度外視しているらしい。
「任せてくださいっ! シエロさんはもう一人じゃありません、私がいますから!」
そして必死に怯えを隠しながらシエロの手を握り力強い声で彼女を励まそうとする。なんと健気で可愛らしい子なのだろうか。レオンはそんな彼女を見て必ず邪智暴虐たるアイマス帝国から守らねばと決意した。アイマス帝国が邪智暴虐かは知らないが、そんなことはどうでもいいのだ。
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