塵と硝煙が薫るファンタジー

これだけ濃密な物語を、この少ない文字数で過不足なく語りきれていることに驚きです。

犯罪が跋扈し、ネオンが妖しく輝く眠らない街――ダイバーシティ。
まるでブレードランナーのような硬派な世界観です。

そこには人間の他にドラゴンやハーピー、獣人やヴァンピールなど多種多様な種族がごった煮状態で共存しているわけなのですが、

物語はこの特殊な世界観をスムーズに読者に説明するところから始まり、主人公たちが所属する零細警備会社の個性豊かな面々をしっかりキャラ立ちさせつつ、
主人公二人の絆の深さをバックストーリーを折り込みながら丁寧に描いた上で、

中盤以降は捜査、追跡、逃走劇――と、心躍るアクションの連続。
果ては街全体を巻き込むテロ組織との全面対決という派手な見せ場まで惜しみなく披露して

それで、総文字数たったの三万字(!)
驚きの職人技です。

とにかく語り口が無駄なくスピーディーで、後半は息継ぐ暇なく一気に読んでしまいました。

本作は主人公二人のキャラも抜群に良く出来てます。

か弱い人間のマホロは、本来ならば脆弱で庇護されるべき存在のはずなんですが、とある理由から恐怖心を他者に捧げたおかげで危険に対してノーブレーキで突っ込んでいく作中屈指の「ヤバい奴」。
そんなマホロを後ろで支える相棒が、ウルフ系獣人のガルガ。その身体能力は人間の比でないため、有事の際には彼が戦線の矢面に立つわけですが、荒っぽい見た目や言動とは裏腹に、マホロに欠けている「ブレーキ役」としてバディの理性的な部分を担っているんです。

この二人が魅せる阿吽の呼吸の活躍や、主従の関係を超えた熱い友情にブロマンス好きは夢中になること間違い無しです。

是非、ご一読ください。
おすすめです。

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