Final Act. Beast in the City
河川敷沿いを小気味良い排気音を鳴らしたバイクが駆ける。運転するのは小柄で可愛らしい青年。後ろにはすらりと長い手足のイケメンが乗る。その姿を見た住民たちは皆「逆だろ」と呟く。シティが今日も平和という、何よりの証だ。
街を守るべきシティガードの大手が首謀した衝撃的なテロ事件から一週間。
大企業に利権が集中したことがこの騒動の引き金になったことを鑑み、保安局は企業規模に左右されない平等な正義をシティーガード全社に与える公約を発表した。これが事件解決の立役者であるSCSが保安局に提示した、言い値の成功報酬だ。
事件の鎮圧、そして首謀者であるカノウ会長とその孫の身柄確保に尽力したSCSには、シティの警備顧問という新たなポストが用意された。今日はその叙任式なのである。ついでに連日のごたごたで遅れていたドラゴンバスターへの功労賞も授与される。
未だ長い夜に包まれるシティには、種族間の軋轢や差別が齎す闇がある。だからこそ、街を照らすネオンライト以外の光が必要だ。
カーキ色のシャツとブルゾンにそれぞれつけられた腕章は真新しいものに変わり、優良シティガードの証である三ツ星が追加されていた。
「なぁマホロ」
「なぁに?」
「これでお前の夜は終わったのか?」
ヒフミと誰彼の吶喊のボスは刑務所送りになって事件は一旦幕を下ろしたが、シティは相変わらず眠り知らずで、ネオンの花が咲きっぱなしだ。今日もそこら中で色んな事件が起きている。
そんなガルガの疑問に、マホロはヘルメットの下で笑みを零した。
「終わったよ、ガルガとみんなのおかげでね。でも夜は誰にだって訪れる。だから僕たちが照らしてあげないと」
「そのたびに俺はお前の無茶な要求に振り回されるわけだな」
「ガルガなら絶対に応えてくれるって信じてるもん」
さらっと言って、マホロはアクセルを回す。
無性に嬉しくなったガルガは、一回り小さい相棒の身体を後ろから包み込んだ。隠しきれない喜びに震える尻尾が風にぶんぶんと靡く。
二人を乗せたバイクはネオンの花畑を颯爽と駆け抜け、仲間たちの元へ向かった。
Beast in the City 貴葵 音々子🌸カクヨムコン10短編賞 @ki-ki-ki
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