Final Act. Beast in the City
河川敷沿いを小気味良い排気音を鳴らしたバイクが駆ける。
運転するのは小柄で可愛らしい青年。その後ろにはすらりと長い手足の美丈夫が乗る。
「逆だろ」と
街を守るべき民間警察大手が首謀した衝撃的なテロ事件から三ヶ月。
大企業に利権が集中したことがこの騒動の引き金になったことを考慮し、保安局は企業規模に左右されない平等な正義を民間警察全社に与える公約を発表した。これが事件解決の立役者であるノスタルジアが保安局に提示した、言い値の成功報酬だ。
未だ夜に包まれるダイバーシティには、種族間の
事件の鎮圧、そして首謀者であるカノウ会長とその孫の身柄確保に尽力したノスタルジアには、ダイバーシティの警備顧問という新たなポストが用意された。
今日はその叙任式なのである。ついでに連日のごたごたで遅れていたドラゴンバスターへの功労賞も授与される。
カーキ色のシャツとブルゾンにつけられた三重円に十字マークのワッペンは真新しいものに変わり、優良民間警察の証である三ツ星が追加されていた。
「なぁマホロ」
「なぁに?」
「お前が見たかった夜明けって、これで合ってるか?」
ダイバーシティは相変わらず眠り知らずで、ネオンの花が咲きっぱなしだ。
事件は解決したが、街が大きく変わったわけではない。
そんなガルガの素朴な疑問に、マホロは思わず笑みを零す。
「ミラージュが
「いつもの光景じゃねーか」
「うん。あとはガルガが僕の隣にいてくれたら、それで僕の夜は明けるんだ」
そう言ってアクセルを回す。
無性に嬉しくなったガルガは、一回り小さい相棒の身体を後ろから包み込んだ。隠しきれない尻尾が風にぶんぶんと
二人を乗せたバイクはネオンの花畑を颯爽と駆け抜け、仲間たちの元へ向かった。
ダイバーシティには、強くて優しい獣が住んでいる。
Beast in the City 貴葵 音々子 @ki-ki-ki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます