おっさん、魔法少女のトレーナーになる
「冒険者もチャンネル登録数を気にする時代」
最近の世間はそんな風に言われている。
Sランクパーティ『剣帝ちゃんねる』の一員であるレトル・ナルニーは今年で32歳を迎え、冒険者としての全盛期は終わりを迎えようとしていた。
おまけに冒険者パーティが自分たちのチャンネルを作って動画を配信し、その視聴数ばかりを気にするという冒険者=人気商売という新時代についていくことができず、ため息が続く日々。
そんなある日、レトルはパーティリーダーから追放を勧告される。
「おっさんはもう足手まといなんだよ! 俺たちのチャンネルでも人気ないしさぁ!」
見栄えしない風貌のレトルは『剣帝ちゃんねる』でも不人気で、パーティの邪魔だと言われてしまう。
いい機会かもな……と自らの冒険者人生に潮時を感じ、追放された後で冒険者登録証をギルドに返上しようとするレトル。
だがそんな彼の下に冒険者ギルドマスターであるアイリス・ベルズがやって来て、
「ちょうどよかったレトル、新しくギルドで〝魔法少女冒険者のチャンネル〟を開設することになってな。新人魔法少女を育成しないとだから、そのトレーナーをやってくれ」
――などと言われてしまう。
当然のように断るレトルだったが、実は彼は冒険者ランク制度が刷新される以前の〝旧ランク制度時代〟において世界で唯一SSS(スリーエス)ランクに選ばれたほどの実力者であり、魔術を含めあらゆる冒険者技術をマスターした達人であったのだ。
アイリスはそんなレトルに白羽の矢を立て、ほとんど無理矢理『魔法少女のトレーナー』に抜粋。
結局は断り切れずに、トレーナー業を始めることとなる。
「目指せチャンネル登録数100万人? 無理だろそんなの……」
愚痴りつつも初日を迎えたレトルは、新人冒険者であり魔法少女でもあるコトネ・レイサーと出会う。
「よ……よろしくお願いします! レトルトレーナー!」
――こうして、かつてSSSランク冒険者だったレトルのトレーナー人生が幕を開ける。