第5話 初めての魔法少女①
「やれやれ……まさかこの歳で魔法少女のトレーナーをやるとは……」
アイリスから新たな仕事を任されてから、早一週間。
あれからしばらく動きはなかったのだが、昨日ようやく「オーディションの審査結果が出た」という連絡を受けた。
それはつまり――俺が育成を担当する冒険者の子が決まったということだ。
で、今日がその子と初顔合わせ。
そんなワケで、俺は『
「……しかし俺、決まった子の情報なんも知らんけど大丈夫なのかな……?」
そうなのだ、俺は〝魔法少女が決まった〟とは聞いたが〝どんな子が魔法少女デビューするのか〟を全く知らされていない。
自分の担当する新人がどんな人物なのか知らないとか大問題だと思うのだが、たぶんこれもアイリスがなにか考えてのことだろう……。
ま、新人冒険者が使えそうな魔術くらいならひと通り教えられる。
あんまり心配してもしょうがない、か。
そう考えていると――
「――あ、あの!」
背後から声が聞こえた。
明らかにまだ若い、少女の声。
どうやら魔法少女が到着したらしい。
「わ、私のトレーナーさんって、あなたのことでしょうか……!?」
「おう、俺がレトル・ナルニーだ。よろしくな魔法少女ちゃ――ん――?」
振り向きざまに挨拶をする俺だったが――自分の目に映ったモノを見て茫然とする。
いや、正確に言えば、最初はなにも映らなかった。
というのも彼女は俺よりずっとずっと背丈が低く、視界の隅にすら入らなかったから。
そしてゆっくりと視線を下へと下げていくと――ようやくその人物が瞳に移る。
「あ、あの、初めまして! コトネ・レイサーと言います! 魔術師……じゃなかった、魔法少女志望の新人冒険者です! よろしくお願いします!」
そこにいたのは僅か身長135センチ前後で、頭に大きな猫耳が生えた亜人の少女。
髪の毛は金髪で瞳の色は翡翠、腰の後ろには尻尾があり、ピンク色でヒラヒラなフリルの付いた衣装をまとっている。
もう誰がどう見ても完璧な魔法少女、なのだが――
「は、初めまして……。えっと、コトネ? キミ、年齢は幾つ?」
「はい! コトネは12歳です!」
「――――っ!」
両手両膝を地面に突き、がっくりと頭を垂れる俺。
……俺の、俺の年齢より20歳も年下ァ――――ッ!
一回りどころか、二回りも年下だァ――――ッ!
あらゆる意味で愕然とする。
なんなら死にたくなるまである。
そうなのだ。一目見てわかったのだが、コトネというこの魔法少女は明らかに幼い。
パッと見は完全に子供で、とてもじゃないがダンジョンなどに挑めそうには見えない。
俺ですら冒険者デビューした時は17歳だったってのに……。
なるほど、アイリスがこの瞬間まで黙ってた理由がわかったぞ……。
コトネの姿を見れば、絶対に俺が猛反対&トレーナー辞職するとわかっていたからだな……。
後で会ったら必ず文句言ってやる……。
【検証】パーティから追放されたおっさんが《魔法少女》を育成してみた結果 ~Sランクパーティを追放されて冒険者を辞めたいのに、ギルドが『魔法少女のトレーナー』になってと引退させてくれないんだが~ メソポ・たみあ @mesopo_tamia
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