【検証】パーティから追放されたおっさんが《魔法少女》を育成してみた結果 ~Sランクパーティを追放されて冒険者を辞めたいのに、ギルドが『魔法少女のトレーナー』になってと引退させてくれないんだが~
第4話 元SSSランク冒険者、魔法少女トレーナーになる
第4話 元SSSランク冒険者、魔法少女トレーナーになる
アイリスは机の中から紙の束を取り出し、それを机の上に置く。
どうやらなにかの企画書のようだ。
「実はこの度、『
「それはつまり……新しい冒険者を、特別枠としてデビューさせるってことか?」
「平たく言えばそうなるな。昨今は女性冒険者の配信動画が人気を博したり、より低年齢層のファンが増えてきているという実態も絡んでいる。上手くいけば大勢のファンを一気に獲得できるだろう」
なーるほど、ようやく少し理解できた。
彼女の言うように、今の冒険者世界は完全にエンタメ化している。
これはパーティや個々の冒険者のみならず、ギルド全体としても〝人気獲得は至上命題〟となっていることを意味しているのだ。
これまでは個人やパーティとして活動していた者たちに人気が出たら重用する、というのが常であったが、正直これでは時間がかかり過ぎるし安定しない。
ハッキリ言って効率が悪い。
であれば――才能のある冒険者を選抜し、最初から人気を得られる形でプロデュース&デビューさせてやればいい。
そうすればギルドは有名冒険者を獲得したことになるし、新人冒険者は初めから人気を得られて一石二鳥。
そんな形でプロデュースのための謳い文句が――〝魔法少女〟。
確かに魔法は派手だし、動画映えするのは間違いない。
さらに魔術師とか魔女みたいな野暮ったい格好を脱却させ、可愛らしい衣装を着込んだ魔法少女としてやればさらに画面は華やかになるだろう。
よくもまあ考えたものだ。
「とまあそんなワケで、レトルよ――」
「断る」
「……まだなにも言ってない」
「さっき結論を言ったろうが。俺がトレーナーになって、その魔法少女を戦闘技術・配信技術共に育成・サポートしろっていうんだろ? 悪いが他を当たってくれ」
俺はソファから立ち上がり、執務室から出て行こうとする。
この話はこれで終わりだと思って。
しかし、
「レトル、
「……」
「お前以上に、この役割が適任な者がいるのか? いるなら紹介してほしいが、ギルドマスターである私が断言しよう。いない。いるはずがない。そうだな?」
「アイリス……俺は――」
「何故なら……レトル・ナルニーという男は、〝旧ランク制度時代〟に世界で唯一
――それは、とても懐かしい響きだった。
冒険者ランク制度が現在の〝配信者としての人気〟を前提とする前、まだ冒険者が冒険者としての実力のみでランク分けされていた頃。
あらゆるダンジョンを踏破し――
何百種にもなる武器や魔術を使いこなし――
およそ冒険者に必要な技術全てを、その身に叩き込んだ者のみに与えられた――
俺はそれを、世界で唯一預かる身だったのだ。
もう……かれこれ7年も前の話になるか。
もっともランク制度が変わって、結局はどれだけ実力があっても人気を得られるとは限らない――という現実を突きつけられたのだが。
「……今、その頃の話を出すのは卑怯だろ」
「いいや、なにも卑怯ではない。正当な評価を下すために過去の経歴を持ち出すのは、人事の基本だ」
「あのなぁ……だいたい魔法少女ってことは、育成するのはかなり若い女の子だろ? こんなおっさんじゃ面倒みれないって!」
「うむ、およそ14~16歳ほどの魔術師希望者を採用する予定となっている。……ところで、お前が自分をおっさん呼ばわりすることは、間接的に私をおばさん呼ばわりすることになるのだが?」
「……そうは言ってない。気を悪くしたなら謝る」
「フフ、冗談だ。ともかく私はお前をトレーナーにすると決定した。冒険者を辞めるなどという戯言も聞かん」
アイリスは椅子から立ち上がり、俺の胸に企画書の束をポンと当てる。
「もし断るなら……そうさな、お前の新人時代の恥ずかしい出来事を、ギルド中に言いふらしてやろうか? きっと噂は広まり、お前の痴態は人から人へ――」
「ああもう、わかった! わかったよ! やればいいんだろ、魔法少女のトレーナーを!」
そんなことをされたら、冒険者云々以前に人として終わっちまう……!
俺は半ばヤケクソになって、アイリスから企画書をぶんどる。
すると、彼女はとても嬉しそうに笑った。
「うむ――それでいいのだ」
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