人を飲み込む怪異の「狭間」は、人の触れ得るすぐ傍らにあるのかもしれない

SNSを介して知り合ったある女性から語られる、彼女自身が20年前に体験したというひとつの異様な事件。

沖縄の大学で民俗学を学ぶその「彼女」が、同じ学科の友人二人と共に沖縄地方のさる伝承を調べようと「浅間島」を訪い、体験してしまった事件――という体で語られる物語。

「事実」とのことですが、どこまで事実なのか――読み手に過ぎない私には、本当のところはわかりません。
「事実」という建付けのフィクションなのかもしれないし、あるいはこの物語で語らえる怪異は本当にすべて「事実」なのかもしれない。
読後に残った、あやふやな、まるで薄氷のような薄皮一枚を挟んで怪異と向き合うようなぞわぞわした感覚は、恐らく何かひとつ間違えば自分自身もこうした怪異に絡めとられてしまうかもしれないといううっすらとした恐怖なの、だろうと思います。

短くも見ごたえのあるホラーを読ませていただきました。
おすすめです。

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