「自分じゃない誰かになって冒険する」。その楽しさ、ワクワクを追体験

TRPGのルールブックとともに異世界転生(転移)をした主人公。
そこは剣と魔法の世界ながら、召喚された場所は「平和過ぎて退屈な国」で、主人公に期待されているのは、「平和を乱さない程度に愉快なことを引き起こすこと」だった。
そこで主人公は王子やメイド、兵士長などをあつめてTRPGをすることに!

剣と魔法の世界で、「異世界での冒険」を楽しむTRPGが受け入れられるのか?
という読者の不安をよそに、王子をはじめとする面々はどんどんTRPGにハマっていく。
異世界だからって、みんなが冒険できるわけじゃない。
生まれながらの地位があるからこそ、役割が決まっているからこそ、他の人間になりたいこともある。
そんな異世界だからこそ際立つ、「ごっこ遊び」の普遍的な楽しさ。

読んでいて何より楽しいのが、個性豊かなキャラクターによる、TRPGセッション(プレイ)中のわちゃわちゃ感。
ノリノリでロールプレイしたり、フォローしたり、ハプニングを乗り越えたり。
その様子からは、お互いを高め合いながら、自分たちだけの冒険を紡ぎあげる楽しさと喜びが伝わってくる。

スタンダードなシナリオを遊び、コミカルなシナリオを遊び、意外な登場人物がゲームマスター(進行役)に挑戦、そしてキャラクターを作り上げる「フルスクラッチ」へ。
段階を踏みながらどんどん成長して新たな楽しみに出会っていく彼らの姿は、読んでいてワクワクするもの。

TRPGについて知識がなくても(かくいうわたしも知識皆無)、お話を楽しむうちに自然と「TRPGって楽しい!」と思える作品。
「物語の面白さ」が「TRPGの楽しさ」を伝え、「TRPGの普遍的な面白さ」が「物語の魅力」「愛すべきキャラクターたちの魅力」を引き立てる。
そんな相乗効果により夢中で読んでしまう、とにかく楽しい作品。

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