霊感のある神原は、街でたまたまクラスメートの田中に出会うが、その体は透けており……つまり、田中は幽霊になっていた。
田中は生前、クラスの中心にいた明るい少年。対する神原は感情表現が苦手。
そのため、神原にとっての田中は遠い存在だった。
神原はとまどいながらも、「未練を断ち切るため、冬休みを楽しみたい!」という田中に付き合うことに。
幽霊になったにもかかわらず、田中は生前のまま底抜けに明るく元気。
クリスマスプレゼントの買い物、除夜の鐘、初詣。
年末年始の恒例行事に付き合ううちに神原は、田中の分け隔てのなさを知り、やがて彼が抱える事情を知っていく。
対照的なふたりの楽しい会話からはじまった物語は、互いの事情を知った後半から一転、胸を締めつけるものとなっていく。
田中が見せる、はじめての笑顔ではない表情。
生きていたら楽しいことばかりじゃない。でも、それでも――。
神原がそれでもかけたことば。
美しい情景描写のもとで描かれるこのシーンは、ぜひ多くの方に読んでいただきたいもの。
物語を閉じたあとも、神原と田中のことをつい考えてしまう。そんな作品だ。