美しい青春と残酷な裏社会が交差する伝奇小説

 伝奇小説です。久々にこのノリと接して、ちょっと興奮しました。ネット小説といえば異世界や現代ファンタジーが主流だからこそ、伝奇で勝負するのは好感度高いですね。

 そもそも伝奇小説というのはですね、鬼の力を宿した血族、超人的に鍛えられた武術家、社会を裏から支配する一族の権力争い、などの要素を使ってドラマを作り上げていくものです。

 この作品も伝奇小説ですから、残酷な宿命を背負うところから物語がはじまります。

 主人公は家族を殺されてしまいます。しかも犯人が誰なのかわからないまま、新しい生活が始まるのです。

 しかし殺された家族のことや犯人のことを調べていくと、自分自身の出生を含めて普通ではない、いやむしろ異常な環境が家族の水面下にあったことに気づいてきます。

 もしこれ以上踏み込めば、主人公は後戻りできなくなるでしょう。それでも家族の敵討ちをしたいので、お世話になった一族のツテを頼って、裏社会の仕事に従事することになります。

 もうこの時点で綺麗な立場ではいられないんですが、それでも主人公は善人であろうとがんばります。

 そのせいでいくつもの困難に巻き込まれていきます。

 裏の仕事をこなしたせいで反社会的な組織に恨まれていますし、そのせいで事件に巻き込まれることだってありました。

 仲間の悲愴的な裏切りだってありましたし、親しい友人の暴走を体当たりで止めることもありました。

 これだけ負のイベントが連続したら、普通の精神であれば闇落ちするところですが、この物語の主人公は心が折れません。

 そう考えたら、この主人公のもっとも強い武器は、どんな逆境に追い込まれても正しくあろうとする鋼の心なのかもしれませんね。

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