バトルだけじゃない、丁寧な人物描写が魅力！

大切な家族を奪われた高校生『魁斗』が、復讐を遂げるために修行して戦うバトルアクション小説――という説明は、今作のほんの一端を表すに過ぎない。

読み始めてすぐに気が付くのは日常描写の丁寧さ。
ラノベでよくある書き方だと、冒頭一行目から主人公が家族を惨殺されてショックを受けている――なんて緊迫シーンから始まって、家族については回想シーンのみなんてこともあるが、この作品では事件が起こるまでの幸せな日常における主人公の心情がきちんと描かれる。
だからこそ、その日常が奪われたとき、主人公と共に読者もショックを受けるのだ。

魁斗は「裏世界」の人間たちと対峙していくことになるのだが、この裏世界についても緻密な設定が練られているので、じっくり読もう。

こう書くとシリアスばかりな作品と思われがちだが、そんなことはない。登場人物同士の軽妙な掛け合いもあるし、ちょっとした日常の風景――朝の占い番組で挙がるラッキーカラー1つとっても、笑わせられたりする。

そして裏世界とのバトルを繰り広げつつも、現実の高校生活や美少女との恋愛模様もじっくりと描かれる。
単に惚れられて持ち上げられる展開ではなく、微妙にすれ違うデートとか、女の子の態度に悩んだりとか、ちゃんと青春の一コマが描かれるのだ。

バトルだけじゃなく、細やかな心理描写や丁寧な人物描写をじっくり楽しみたい方におすすめです！