読むときは 部屋を明るくして 用を足してから読んでね
- ★★★ Excellent!!!
先ず三話、読ませていただきました。
長くは成りますがご了承ください。
感想から述べさせていただくと、転生物の中で最も汚く、最も苛烈な攻防戦、である。
以下は私の感じた話ですので面倒であれば読み飛ばしてください。
正直、ツイッターの方で募集させていただいた時、貴方のリプが丁度目に入るタイミングだった。仕事中の休憩時間、己の後学のために犠牲として読ませていただける小説を募らせていただいた。この応募が来た。目を疑った。二度見たし、仕事が終わってから感想にとりかかろうと心に決めていたが、フライングしてこれだけちょっと読んだ。そして即行に閉じた。やばいのが来た。私の腕でこの作品の感想を執り纏められるだろうか。リプ欄の中でトップを争う力の入れ様、美麗な男女の間に挟まる作品テーマ。
感想を書かせていただくのが遅れたのは、リプランの一番最後から順に読んでいったがためではあるけれど、ついぞこの作品にたどり着いた途端、一瞬、ほんの一瞬だが躊躇った。
我は今から、深淵を覗く。深淵を覗かば、深淵もまたこちらを覗いている。ドイツの哲学者フリードニヒ・ニーチェの遺したあの言葉は、異常者を観測するには、己もまた異常者とならざるを得んという意味である。
通便を耐え忍ぶとき、糞便もまた解放を耐え忍んでいるのだ。私は先ず読む前にトイレを済ませた。我慢はいくない。
以下、一話ごとの感想とさせてもらう。
一話、便意独尊!
何を言っている。便意一つこれ尊ぶとはいかなるものか。勢いだけで納得しそうになったが納得してたまるか。厳粛に評価してるんだぞこっちは。
そもより、上述にするべきだったがカクヨム様のホーム画面にあった、
愛する人を護るため、強烈な便意と戦う少年。どうしてこうなった!?――月城 友麻
これに関しては私が訊きたい。どうしてこうなった。見ただけで下腹が痛うなった。なんで???
特筆すべきは主人公の名前がベンである。揺るぎねえ。調べてみればドイツの名前ではよくある方らしい。西欧じゃ珍しくない名前であると。だがしかし、読み手であるは日本人。しかもタイトルのおかげでだいぶん意識が違う方へ向けられている。之では話が入ってこなさそうである。
募集して送っていただいた小説に対してはこういったかなり長い感想を送らせていただいている。書き手の考えていることだったり、内容にどのような思いを込めているかなどをよく咀嚼して反芻を繰り返し、出来るだけ丁寧なもので送っていただいたことに対しての感謝をするためである。
咀嚼しても飲み込めないときたら私の矜持が許さない。許さないがどうしても飲み込めないものがあるとは思わなかった。くそったれ。
――メンバーも険しい表情で魔人を睨む。――私も険しい表情でpcを睨んでいた。
戦闘よりもベン君がかわいそうで気になりすぎて息が詰まりそうだった。読んでで腹が痛くなるものなんてこの世に幾数あるってんだ。
――ベンは便意を必死に我慢しながら部屋の隅で~~――お前は何と戦っているんだ。
どうして誰も見てないところでお前だけ別の案件で苦しんでいる。仲間を頼れよ仲間だろ。
――一方戦闘はやばい状態に陥っていた。――ベンを映せ頼むから。
――ベンをおとりにしてしまえばいいのだ――ベンはおとりにするな。もうタンクだから。
――下痢止めもろとも吹き飛んで――下痢止めはもういい。降りてきてる物を静めるにはもう役に立たない。
――生暖かい液体が尻の周りを――あっあっあっあっ
――「便意独尊!」わけのわからないことを叫びながら――私は最初から訳が分からない。
……私は募集して送っていただいた作品を読んできて、心臓を刺すようなものであったり、精神を蝕む描写であったり、心が温かくなる話しであったりなど、そういった作品の雰囲気を愉しませていただいている。
今のところ唯一この作品は下腹の痛みのみを感じさせる稀有な作品らしい。
認めたくない。認めたくはないが。
実にこの作品が好きである。
2話、神殺し
ふぅ、危なかったなどというつぶやきにリアルで「まにあってねえよ」と口に出してしまった。前回の一部で私は決壊した肛門から流れ出た、溶岩のごとき熱さの濁流が彼の股下を焼いたのを確認している。
あるいは彼のセーフゾーンが広いのかもしれない。広すぎない?
小鳥のさえずりも聞こえるだろうさ。呑気に鼻歌の一つでも歌いたくなるいい気分になるだろう。脳内じゃゲオルグ・フリードリヒ・ヘンデルの「メサイア」が流れているのではないだろうか。コーラスをもって、神の賛美を高らかに唱えて今を乾杯と。
腹を刺す暴力で済んでよかったと思うのは私だけだろう。一度決壊寸前まで追い込まれたときがあったが、その時は体内に人間大のムカデが数匹出現し、直腸を並ぶ足で傷つけて臓物を引き裂いて食ってるんじゃないかというくらいの痛みを受けた時がある。多分ベン君は鋼鉄製の臓物なのだろう。メンタルも鋼鉄だが
。
異世界転生、というのは、まあウェブ小説を読み漁ると10作中7,8作は該当する、というくらい人気なジャンルである。この作品も例にもれず、そのジャンルのようだが、いやさどうにも、毛色が違う。
大方は女神、あるいは神様という上位的存在と仲良くなるか、気に入られるかのどれかでスキルを受け、万全な体制で世界に突入するものである。つまるところ、転生してすぐ様でも魔物といわれる世界特有の仮想敵ともやり合える主人公が大半である。
彼程、この上位的存在にいじめられている主人公を見たことがない。
この世界のスキルというのが偶発的に生まれたのだとするならば致し方がないが、どうして便意を我慢したら最強火力になってしまうのだろう。例えばhpが削られた状態だとか、掠っただけでも死ぬ危険な状態になるだとか、そういった死のリスクを冒して攻撃力を高めるのはRPG的に受け入れられるが、彼は火力を出すためにまずうんこを我慢しなければならないのである。健康に悪。
ベン君は最強の能力を持った自分に震えつつも(恐怖で震えているのかもしれない)しかし、女神の思い通りには絶対ならんぞ!と決意し、この糞スキルを使用しないとケツ意したのだ。
えらい。応援している。
3話、追放
追放するな、心無いんか。話勧めてきづいたがこのベン君は13歳ときた。いやその年で枷を背負い過ぎてへん?私であれば自死すら検討する。
勿論年も年である。少年の身となれば雇ってくれるところを探すのも一苦労であるし、何とか食ってきた扶持を探すに労力がいる。この作品じゃなければそこら辺のワイバーンでも狩って一攫千金だろう。だが彼の大腸は空っぽだった。なにも狩れない。
ベン君の苦悩は続く。ソロでゴブリン退治を行いに来たという。
ソロ狩りというのはゲーム内でのみ成立するものだというのは想像がつく。現実世界で亜人を狩れと言われても、たとい意の武器を手に手にしても容易じゃない。あくまでコンピュータ内の演算だからこそ成しえることの出来る大業だと思われる。
さてこの時かれは下剤を睨めつけて、頼るか頼らぬか迷っていた。葛藤の場所がおかしい。
ついには女神をクソ女神と呼びだしているに至る。いや殺意を冠するは察して余りあるけれども。
結局彼は使用せず、人間のままで戦うことを決したようだ。糞便の我慢によって生まれ出る力など、悪魔から授かった異様なる力と何が違う。人は人だからこそ美しい。自己陶酔に甘んじ、汚れたるを受け入れるなど人道を損なう大事なり。我が勇士をとくと見よ。便意をもって滅しからしめんとするは邪悪なり。我が心、潔白なる光を帯びた曇りなき人間なり。
窮地に際して女神が現れた。ホス狂いみたいなコールを囃しながらベンに下剤を使うように捲し立てる。
ああなるほど、と。この女は悪魔のようである。
統括したい。正直、かなり楽しく拝読させてもらった。ほかの方々の作品もかなり良い出来だったが、如何せんシリアルな場面なりなんなりが続き、こうまで笑わせてくれるのは結構助かった。
実際、ノリと言いなんといい、シリアスになり切らぬギャグ感のままいろいろと突っ込んでいってくれる作品は好きである。能力は最初本気で引いたが、この作品唯一の点であるからかなりポイントが高い。
なにより周りに振り回され気味のベン君が可愛かった。そんじょそこらの物語と違う点といえば、終始ベン君は周りに流されまくって踏んだり蹴ったりを受け続けたり、最悪の能力のせいで苦悩させられたりという、強すぎず弱すぎずがいい塩梅で施されている点だろう。
さて、感想は転生物の中で最も汚く、最も苛烈な攻防戦、である。
ちょっと私もふざけて評価させていただいた。なんというか、心を患った時にこそ読むべきあほさ加減があると見えた。然りとて文章も破綻が見えず、焦燥やら恥辱やらを伝える書き手のうまさが現れていて、大変良作の片鱗が見える。
だがしかし、警戒したまえよ。便意の我慢は大変健康に悪く、続けると便臭が体から流れ出るという。貯め過ぎたために手術にまで持っていかれたという話まであるのだ。尿意だろうが便意だろうが、我慢は禁物。死んだ時はぜひともこの女神には捕まらぬよう、胃の手説く必要があるだろう。
実に、実に面白く読ませていただきました。
今後の健闘をお祈り申し上げます。