第6話 制服でつぶやき
図書館へ行ってきたら玄関先の掲示コーナーに一枚のポスターが貼ってあった。
『来年度より〇〇高校の制服が替わります!〜制服コレクション○月○日ファッションショー開催〜』
最近多くなったジェンダーに配慮した選択できる制服。だったかな?
性別に関係なくズボンやスカート、ネクタイやリボン。開襟シャツやポロシャツ等を自由に選ぶことができるヤツ。
学校の理念としては凄く良いと思うのだけれど、掛け声だけになっていないだろうか?
何故って?
どれだけ学校が声高に叫んだって、周りの理解がなかったら成立しないから。
理解じゃないな、固定観念か……。
本人や親御さんは、それなりに考えているだろうから取捨選択に問題はないと思う。
問題は……。
ポスターを眺めながら、数年前を思い出した。自分の子供が制服を買うことになった時のことだ。
ちょうど彼の進学先の学校も制服の自由選択を採用していた。
制服の採寸は学校が日時指定で来校して行うか、制服の販売店へ直接採寸に行くかの選択制だったので、自宅から比較的近くにある販売店へ行くことに決めた。
当日、採寸は順調に進んだ。
そう順調・・にだ。
「えっと、ウエストのサイズがこれですとズボンは……」
「……」
「開襟シャツを選択すると……、こちらネクタイ置いておきますね」
「……」
いや、待て。
制服って自分で選択して良かったよな?確かに自分の子供は男だ。男の子だよ。
幼少の頃から女の子に憧れたり「スカートが穿きたい」とか言わなかった子だったよ。
し・か・し。だ……
この状況で「わたしズボンが良いです」とか「リボンに変更してください」とか言える子は、よほど強い子だよ。
あれだけ、さも当たり前です。みたいに話を進められたら……。
ことあるごとに
「本当にズボンでいいの?」
「リボンの方が良かったら変えれば良いんだからね」
と、子供に念押ししてみたら、店員に変な顔で見られた。
いやいや、貴方の方こそ目の前の子の何を知っているの?なに見た目だけで決めてかかっているの!この学校の制服、自分で選択できるって知っているよね?!
なに決め付けているの!!
確かに、親の自分でも子供の本心はわからないだろう。勝手に決め付けている事もあるかもしれない。
自分の周りには比較的LGBT(そうジャンル分けするのは本当は嫌いなのだけれど)の知り合いが居るので、ジェンダーへの偏見とかない方だと思う。自分の初恋相手は同性だったし。二次元にも三次元にも恋をしたことあるし……。
あ、話が逸れた……。
と・に・か・く
学校の崇高な理念も、こういうところから教育し直さなければ絵に描いた餅になってしまう。
もしかしたら学校側も、世間の流れに乗っておけば良いかな~程度の考えかもしれない。
何にせよ、もっと身近な処から考えていかないと、折角の流れが駄目になってしまうかもしれない。
着たくないものを毎日着ろって、かなり苦痛で心のダメージは大きい。
自分が絶対やりたくないという事を続けていかなければならない、と考えたらどれだけ大変な負担になるか、気付ける筈なのだが……。
そんなことで心が病んでしまうなど勿体なさすぎる。
少しでも心の健康が脅かされる事のないように……。
私服登校にかかる私服代を考えたら意外と経済的に助かる制服。だからこそ、範囲内で少しでも自由になるように。少しでも心が自由になって欲しいと、ポスターに描かれた制服のイラストを眺めながら。
ふと、つぶやく。
たかが制服。されど制服。
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