第3話 夜につぶやき

 暗闇ってちょっと好きかも。

 なんて言っていると、かなりヤバい奴に思われしまいそうだけれど……。


 何も無い一色の世界って、裏を返せばどんな世界にでもなれるって事だから。

 想像が、どんどん広がる。


 子供時代は正直いうと友だちって少なかったと思う。別に困っていた訳でもなかったし、気のおけない友人が数人いればそれで十分だった。

 ま、いじめられていた時期もあったから、人間不信に陥っていたしね。

 本音で話せない友なんか、No Thanks!

強がっていたよね、思い返せば。でも当時は思い付きさえもしなかった。


  そんな自分の遊び場は妄想の世界。

 今考えると、かなりアブナい奴だ……。


 好きだったよ。

 特に夜。

 誰にも邪魔されることなく、ベッドに入った途端に想像の世界が広がりはじめる!!

 真っ黒な世界が一瞬にして色鮮やかになっていった。

 主人公は別に自分ではないけれど、色々な時代、様々な世界。たまに異世界なんかあったりして。

 色んな世代の人物達が、闇の中から浮かび上がっては感情をぶつけ合いながら語り、駆け巡ってゆく。

 映画を観ているようで、自分がその世界に迷い込んだみたいに……。


 実際、迷い込んでいたのかもしれない。

 それ程までリアルで世界が出来上がっていて、自分が主人公と同化したり、観客やエキストラの一人だったり。

 その中で、相手に想いを馳せたり、同化した感情に振り回されたり、色々な感情を追体験した。


 って書くと、相当イッちゃってる奴にしか見えないな……。

 

 現実で実体験を積んでしまった今では、全くの想像なしになってしまった。

 しかも、あの時の世界をほぼ忘れてしまったけれど……。

 

 しまったよね。

 少しでも書き留めておけば、いま話のネタに困らなかっただろうに!

 当時はそんなこと、思い付きもしなかったよ。

 勿体無い……。


 今まで、嫌な思いも苦しい思いも、惨めな思いも散々してきたけれど、闇夜の世界では嬉しいこと、楽しいこと愛しいこと、恋愛だって散々予行練習ができた。(まあ、それはどうでも良いことだけれど)


 あの時の自分が居たから今の自分が居るんだって、今なら素直に思える真夜中の暗闇に浮かぶスマホ画面。

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