第2話 愛犬でつぶやき
我が家には姫がいる。
気まぐれでワガママ、自分の意見は必ず通す!けれど甘えて言い寄られては誰もがNOと言えなくなってしまうという、最強の姫様。
といってもシニアの域に入ったワンコだけれど……。
姫(名前じゃないのよ)が我が家に来たのは、言わずもがなペットショップ経由なのだけれど、そんなこと書くと昨今の風潮というか世間の意識が変わったからなのか「ペットショップではなく保護犬の譲渡会へ!」って言われそう。
確かに、友人なんかはシェルターに赴いて迎え入れた子達を何匹も飼っている。
でもさ、姫を迎えるまで何度もショップに通った。その間に何匹もの子達が『新しい家族ができました』ってプレートが掛かり、いなくなった。
その中で姫だけが、ずっと残っていた。ずっとゲージの中に居た。
「大人しい子ですよ」
店員はそう言って声を掛けてくる。
彼女を見ていると、大人しい性格だなんて思えなかった。なんかやさぐれて、人生諦めているような瞳をしていた。
「愛想振り撒いたって誰も見てくれないよね。相手してくれないよね」
そう言っているようにも見えた。
犬種紹介のプレートを見ると、もうすぐ1歳になるような月齢。
純血種な上、別に病気や障害があるわけでもない。
ただ、人気の毛色では無いだけ……。
今、テレビやネットでペットショップで売れ残った動物がどんな経緯をたどっていくかって報道されている。
ブリーダーに戻されて繁殖犬とされたり、昔は保健所へ引き取られ安楽死、今は引き取り屋に引き取られ、生命維持ギリギリの食事と、動くのがやっとな小さいゲージに閉じ込められ飼い殺し。
目にする度にもしかしたら、あのままだったら姫もこんな環境に置かれてしまっていたのかも……、と考えてしまう。
部屋の片隅でのんびり惰眠を貪る姫。
我が家に来たことが彼女にとって僥倖だったのかは解らない。もしかしてウチ以上に大切にしてもらえる家族との出会いを、自分たちが潰してしまったのかもしれない。
答えは見つからないまま……。
最近足腰が弱くなって、散歩も昔みたいに行きたがらなくなってしまったけれど。大嫌いな病院通いが増えてしまったけれど。
幸せかどうかなんて、本人にしか解らないことだから想像するしかないけれど、少しでも楽しいと、嬉しいと尻尾を振ることができるよう祈っている。
お互い、楽しかったね。幸せだったね。って思えるよう、少しでも永くお付き合いしてほしいよ、姫。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます