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 松の話してくれた竹宮神社の伝承は確かにお互いの恋の叶う恋愛成就の伝承だった。

 竹の姫というお姫さまの恋が叶う伝承だった。

 竹の姫とその名無しの(名前は失われてしまったようだ)想い人は、はなればなれになるとき、再会の約束をこめて、この竹宮の地に桜の木の苗木を植えた。とても小さな子供の木だ。

 その木が大きく成長して、今と同じように満開の桜の花を咲かせるような、大きな枝垂れ桜の木に成長したころ、二人はもう一度(約束の通りに)再会をした。

 そこで竹の姫は自分の想いを「ずっとあなたのことを愛していました」と言って、その想い人に伝えた。

 その想いを、竹の姫の想い人は「私もずっとあなたのことを愛していた」と言って、受け入れてくれた。

 そこで二人は(本当の)両思いとなった。

 二人はそのとき、もう還暦を過ぎた年齢になっていた。 

 二人はこの竹宮神社で婚姻の儀式をして、夫婦となった。(竹宮神社は竹の姫が生まれる前から、その名前でこの地にあった。どうやら竹の姫の竹の由来はこの竹宮の地からとって、両親が名付けたようだった)

 二人はとても幸せな夫婦としてこの地方で有名になった。

 それ以来、この竹宮神社は恋愛成就の力のある神社として、全国的に有名な神社となったのだった。

「おしまい」とにっこりと笑って松は言った。

 そんな短い松のお話を福は興奮しながら松の顔を見て、宝は興味もなさそうな顔をしてお茶を飲みながら、(一口で和菓子を口に頬張ったりして)雀は少し恥ずかしそうな顔をしながら、そして竹はその顔をまたさっきみたいに真っ赤に染めて、自分の横に座っている雀の顔を見ながら、聞き終えた。

「それで感想は?」

 とにやにやとしながら松は言った。

 その言葉に四人の中でただ一人だけ、宝だけが「別にないよ。あえて言えば、まあいいお話だった。竹宮のもったいぶった言い回しはどうかとは思うけどな」と松を見てそう言った。

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