12
好きな人がいるの
二人は雨水公園の中にある自動販売機の横にあるベンチに座った。
雀はそこで缶コーヒーを買った。
その雀の行動を見てから、竹は自動販売機でオレンジジュースを買った。
時刻は午後三時くらいだった。
二人はそのまま、少しの間、さっきまでと同じように無言のままだった。笹野くんからなにか私に言ってくれるかな? と竹は思っていたのだけど、雀は黙ったままだった。
なので竹は思い切って(あるいはもう我慢しきれなくなって)自分から雀に話をすることにした。
「いいお話だったね」と竹は言った。
「うん。いいお話だった。本当に」と竹を見て、雀は言った。
「竹宮神社に恋愛成就の伝承があるなんて、私全然知らなかった。松ちゃんはそのせいでお休みの日になると神社にいつも恋人たちがいっぱいいて、嫌になる、まあ、神社の儲けにはなるからいいんだけどね、とか言っていたけど、そう言いながらもあんまり嫌そうな顔はしていなかったね」と竹は言った。
「竹宮さんらしいね」と笑いながら雀は言った。
今にして思えば、確かに今日の竹宮神社には恋人同士と思える人たちがいた。(私からそう見えたように、あの人たちからは私たちも恋人同士に見えていたのかな? とそんなことを竹は思った)
そこで二人はまた無言になった。
竹はもう一度待ったのだけど、やっぱり雀からは、竹になにも話をしてはくれなかった。
(笹野くんの意気地なしと竹は思った)
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