13
「私、竹の姫の名前のない名無しの想い人の名前。わかっちゃった」
と空を見ながら竹は言った。
「たぶん、……雀、かな? あるいは笹の君とか、そういう名前かもしれないけど、……当たっていると思う」
と雀を見て竹は言った。
するといつの間にか雀も竹のことをじっと見つめていた。
雀と目と目があって、竹は思わずどきっとしてその頬を赤く染めた。
「どうしてそう思うの?」
と雀は言った。
竹は、夢の中で竹の姫になった私が、その名前であなたのことを呼んでいたから、と言おうとしたのだけど、少しだけ考えたあとでそのことは言わないことにした。(不思議な夢のことは笹野くんには内緒にすることにしたのだ)
その代わり、竹はじっと(逃げないで)雀の目を見続けていた。
「僕も、豊田さんのその考えは当たっていると思う。竹の姫の相手の想い人の名前は、……雀だと思う」と(顔を真っ赤にして)雀は言った。
その雀の言葉を聞いて、「よかった」と竹は言った。
「今度はちゃんと当たってた。また勘違いだったらどうしようかと思ってた」とほっと息をついて真っ赤な顔をしながら竹は言った。
「また?」と雀は言った。
「ううん。なんでもない。気にしないで、笹野くん」と雀の手をそっと触って、竹は言った。(一瞬、逃げるような動きを笹野くんの冷たい手はしたけど、竹はその手を逃さなかった)
「笹野くん。あなたのことが好きです」と竹は言った。
その竹の言葉に雀は「僕も豊田さんのことがずっと前から好きでした」と言って、恥ずかしそうにしながら(竹の大好きな無邪気な笹野くんの顔で)笑った。
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