一周回って新鮮さすら感じる、ダンジョン攻略異世界ファンタジー作品

稀代の天才女魔術師『アスフォデルス』は、思わぬ失敗が連続した結果大爆発を起こしてしまい、住む場所も美しい容姿も魔法使いとしての力も失ってしまう。その矢先に偶然出逢った三人の冒険者達と共に、失った全てを取り戻すため『不凋花の迷宮』を目指す――。

『現実ではない異世界』『冒険者』『迷宮(ダンジョン)』という要素を取り扱っている作品ですが、昨今主流のゲーム的なライトファンタジーではなく、むしろ古き良き原義的な『ファンタジー作品』という印象でした。
重厚な世界観を感じられる魔法の細かいルールや、冒険者として生きるための知恵やダンジョンの攻略法、契約に関する彼此など、物語の設定が緻密に緻密に構築されており、非常に読み応えがありました。
しかし重苦しくて読みにくい作風かと聞かれればそんなことはなく、自信家でナルシストだったけど身体が縮んで苦労するアスフォデルスを筆頭に、個性的なキャラクター達によるユーモアや軽快さを感じられる掛け合いも魅力的で、実に読みやすかったです。
主要な登場人物達は『魔法使い』や『剣士』『盗賊』などといった風に分かりやすくカテゴライズできますが、それぞれの過去には重いものを抱えているようで、表面的な『キャラクター』ではない、その世界に住まう『人物』としての深みや厚さもあったのが良かったです。
作中の世界、設定、人物、戦闘の描き方がどれも秀逸で、それらは巧みな文章力によって綴られているのですが、自分の貧弱な語彙では的確に言い表せないくらい、『詩』的とも感じられほどに素晴らしい表現力や文章でした。

ただ物語的な部分では文句ナシですが、『Web小説』という観点で見ると、1ページごとの文章量が多いために、長文に感じて内容がスッと頭に入ってこない読者もいるかもしれません。
場面と場面の合間で分割できそうな『切れ目』はいくつかあったので、もう少し『Web小説としての読みやすさ』を追及していれば、更に良かったかなと感じました。

とはいえ文章の長い短いは個人の好みによりますし、作中の世界へと読み手を惹き込む力は物凄いので、長文だろうと次の展開が気になってどんどん読み進めることができました。
高い実力を持つ、正統派の異世界ファンタジー小説だと思います。今後の展開にも期待が持てる良作でした。

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