より深く“異世界ファンタジー”を楽しみたい方にオススメしたい作品です!

 高名な魔術師・アスフォデルスが全てを失い、そして、失ったものを取り戻そうとする物語。
 過去の経験から、特に容姿にこだわりを見せる彼女。偶然出会った冒険者と共に、自身にゆかりのあるダンジョン攻略を目指す…。



 三人称で描かれる物語は硬派、というよりはある種文学作品に近い、丁寧な文体で描かれます。情景についてはもちろん、異世界ならではの単語、背景についてもきちんと語られる。魔法やダンジョンなどについて知っていることが前提の作品が多い中、成り立ちや仕組みを含めてきちんと語ってくれるため、読者である私の知識に依存することなく安心して読み進める事が出来ます。
 しかも、地の文だけでなくキャラクター同士の会話などにも説明が分散されている。そのおかげで、くどいと言った印象は受けず、順調にこの物語の世界観を脳内で築き上げられるため、グッと異世界に入り込むことが出来ました。

 そうして丁寧なイメージが出来ているため、そこで会話しているキャラクターたちの個性も引き立って、生き生きと感じられます。
 例として語るべきはやはり、主人公でしょうか。高飛車で自信家なイメージなのかと思えば、暗い過去からくる地の性格も垣間見えて、そのギャップが魅力的で憎めない。世間一般で勝手に作り上げられたミステリアスな雰囲気と、彼女本来の人となりの差もまた、絶妙です。

 1人の人間を様々な視点から描写し、生かす。主人公含め安易なキャラ付けだけで済ませず、話して動いて、戦って…。その1つ1つに個性を魅せてくれ、惹きつけられる。まさしく本作最大の魅力と言えるでしょう。



 ダンジョンを攻略した先。主人公は失った物を取り戻せるのでしょうか? もちろん、その過程で得た“仲間”。彼らとの関わり合いの中、自らのコンプレックスとどのように折り合いをつけるのか。

 脳内で丁寧に作り上げられる重厚な世界観で、躍動するキャラクターたち。彼らの行先に待つものとは? 魔術、ダンジョン、冒険者。“異世界”全てをより深く味わうことのできる、オススメ作品です!

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