あなたは向き合えますか?

怖い映画を観た感想などで「トラウマだわー!」と言う人はたくさんいますよね。でも本作で扱われている「傷」は本当に強烈なものです。

主人公の幸子は頑張り屋で、思いやりがあって、とにかく良いところをたくさん、たくさんもっている女の子。だけど、心に色々なものを抱えていて、自分のことを無価値な存在だと思い込んでいる。そんな彼女の良いところに気づき、真剣に向き合ってくれる存在が現れ、彼女と仲間たちは共に成長していく。

日常のシーンは賑やかで優しくて、読んでいてニコニコしてきます。特にチャットのシーンが好きです。
でも「傷」に関わるシーンになると雰囲気は一変。人物達の激情がストレートに伝わってきて、殴られ引きずり倒されたかのような痛みと衝撃を感じます。過激で、直視することが憚られ、怖じ気付いて逃げ出したくなるほどのものです。
読者でさえそんなにも痛みを感じるのだから、作中の人物達はもっともっと辛いと思います。でもみんな自他の「傷」と向き合い、そして、自分に向き合ってくれる周りに応えようとしていて、すごく強いなぁと思います。(「自他の闇から逃げたり、差し伸べられた手を取れなかったりするのは弱い、悪い」という意味ではありません)
痛みを感じる読者がいる一方で、同じような「傷」を抱えている読者にとっては、人物達の心の叫びは代弁になり得るのではないでしょうか。なりふり構わず、そういった方々の味方になってくれる。そんな小説だと思います。

物語はどのようなアンサーに向かうのか。さっちゃん達はどうなっていくのか。これからも見守らせていただきます!
(秋の特別編D.C.までを読んでのレビューです)

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