第5話 陛下様のこと

 がっしりと、陛下様に手を捕まれたまま、民衆を後にした。

 背後に雨巫女コールを浴びながら。


 まだまだ止まない、歓声と熱気。

 アイドルのコンサートって、こんななのかなぁ。

 癖になるかも知れない。


「リン。

 この期に及んでなお

 雨を降らせるか。

 そなたの底はどれ程か。

 ハッハッハッ

 ハッハッハッ」

 陛下様は上機嫌で、客間まで送ってくれた。


 陛下様の手腕と云うか、鋭利で瞬時な判断 と云うか、裏ワザ? やり口? 舌先三寸?いやいやいや、民衆を捕えて放さない、なにか を目の当たりにした。

 陛下様ぁぁ

 あなたこそ、底が見えませんよぅぅぅ。


「国王陛下様、

 わたしは、これからどうなるのでしょうか。

 雨が降ったあかつきには、安全に帰してくれるとおっしゃいました。

 元へは、いつ帰してくれますか。」


 わたしは、直球で聞いた。

 なぜなら、陛下様にはそうすべきだと思ったからだ。


「リンよ。

 茶と菓子を用意させた。

 まあ、ゆるりせよ。」


 軽く肩透かしされ、陛下様は大きい椅子にどかりと座りこんだ。

 そしてわたしを目の前の椅子に座る様、手招きした。


 綺麗なメイド達がつぎつぎ、お茶やらお菓子やら果物やらを持って来ると、ロイドさんがニコニコしてやって来た。


「陛下、リン様

 まだまだ民の興奮は、収まりません。」


「そうであろう。

 余もあれほど心沸き立ったのは、いつぞやか。

 しかるにロイドよ。

 酔ってばかりもいられぬ。

 これからの計画を、リンに説明いたせ。

 」


「はい、陛下。

 リン様、どうぞ 食べながらお聞き下さい。

 陛下は、この三日の間に様々な事をなさいました。

 リン様を城に連れ帰り、即座にリン様の功績を、自らの声で広く民衆に知らしめました。

 それと平行し、今 各地八方に調査団を派遣しています。

 その上で、今日の一切を計画したのです。

 いつ止むのか、誰にも分からない。そんな状態から、この大成功は、流石にございます。

 そして明後日には、陛下の下に、八方から派遣した調査団が、状況の報告を手に駆け付けるでしょう。

 全ての報告を以て、リン様は、安全に元の世界への帰還と成ります。」


「リン。

 もう少し、人力してくれるか。

 ああ、褒美は何がよいか、考えておくのだぞ。

 ハッハッハッハッ」


「国王陛下様。

 ありがとうございます。わたしも、お役に立ててすごく嬉しかったです。」


 どうりで、全然 顔を見せなかった訳だ。

 やっぱり、すごい手腕だわぁ。舌先三寸なんて言って、ごめんなさいです。

 心の中でわたしは、反省しきりだった。


 あぁ、もう少しで帰るのかぁ。うすら寂しい気もする…。


 んんんんん?

 これ、夢の中だったよねぇぇぇ…

 忘れるとこだった。

 に しても、長くねぇ?

 いったい夢の中で、何回 寝ておきたぁ?

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