第11話 もうひとつのロイドさんのこと
「リン様。
パンケーキをお持ちしました。」
「ワァオ
待ってましたとも
パンケーキ。
おっと ロイドさんも 」
「私は、
「またそんな 人聞きの悪い。実は、相談が有るんです。」
「おや、それでは リン様。
食べながらどうぞ。」
「わたし 城の中庭に出てはいけないでしょうか。
色々と試してみたいんです。
わたしには机の上で文献を読み解くより、実際に試した方が 合っているんではないかと思って。
農作物に影響が無いように、慎重にしますから。」
「リン様。
賛成です。
先ずは、陛下に相談して下さい。
陛下はリン様を一番に考えておいでです。
リン様を最善へ導いてくれることでしょう。」
「ロイドさんと陛下様の出会いは、どんなだったんですか?」
「あぁ それ気になってましたよね。
陛下は、どうしようもない私を見つけてくれたのです。
方向も分からず暴走していた私を、救っていただきました。
私には幼い時から
両親がもて余す程に。
私は、全能感から気にくわないとすぐ
ポルターガイスト現象を起こし、家中めちゃくちゃにしたり、破壊をちらつかせ 両親を意のままにしようとしたのです。それが周りの皆に向かうまで そう時間は かかりませんでした。
両親は他人を傷つける前に、自分達で何とかせねばと思ったのでしょう。
その日は両親に連れられて、森の奥深くに入って行ったのです。奥に奥に。
私は、途中で両親の異変を察知し、怒りから森の木々をなぎ倒しました。それでも気が収まらない私は、火を放つ寸前でした。
その時、 少年の陛下が私の前に立ちはだかったのです。
そなたは、余と共に。
と仰いました。今でも、はっきりと憶えています。
私は、その子供らしからぬ揺るぎ無い眼差しと、生まれながらの高貴なオーラに圧倒されていたのです。
私の内の一切の怒りが消え失せていました。
その少年は、私の手を取ると、大股で
「あぁ。わかる。
わたしも、ラルゴンに行った時、そんな感じだったもの。」
「リン様には、お分かりでしょう。
あの、有無を言わさぬ感じ。陛下はこうも、仰いました。
そなたの力は、そなた一人の もの ではない。
ロズワルドの民 全ての もの ぞ。
これより、意味の無い使い方を禁ずる。
その日から、私は両親と離れ、陛下の下で共に、教育を受ける事に成ったのです。」
「そんな凄絶な過去が有ったなんて、今のロイドさんからは、想像も出来ないよ。もう、どんだけ びっくりさせてくれんの。
につけても、陛下様は少年時代もあのまんまなんだなぁ。
やっぱ、凄い人なんだぁー。」
「はい。やっぱ 凄い方です。」
「でも、変な人だなぁって思う時もあるんだよね。
ラルゴンに行った時、国王陛下様ったら、わたしを誰にも、紹介してくれないんだよ。辺境伯様に挨拶すらさせてもらえなかったんだから。結局、ラルゴンの城であったのは、メイサさんと云うメイドさんだけ。
そんな事あり?なの?
すごく失礼な事してない?わたし。」
「フッフッフッ
リン様。
それは、惜しいことをしましたね。
辺境伯様は、
「誰が、眉目秀麗 質実剛健だと。」
「でたぁぁ」
「これ、リン。
かりにも国王を捕まえて、でたぁ とは 何事ぞ。
またしても、さぼっておるのだな。」
「国王陛下様は、どうして毎度、音も無く現れるのです。
もう心臓に悪いですよ。」
「リンは余に、咳払いをしながら歩けと申すか。」
「そんことより、どうしてラルゴンの辺境伯様に会わせてくれなかったんですか。この世界の超イケメンを見てみたかったです。」
「リンよ。
ちょっと、何を申しているか 解りかねる。」
「あぁぁぁ
やられたぁぁぁ」
陛下様は、ニヤリとどや顔をした。
目の前のしょうもない陛下様と凄い手腕で民衆を救う陛下様と、そのどちらも わたしは知っているのだ。
でも 悪くない。いや、こう云う人が 正真正銘のひとたらし と云うのだろう。
全ての民衆を取り込み、なお 飽き足らず 今 異世界のわたしまでも取り込もうとしているのだから。
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