第2話 雨巫女降臨
「あめみこ様 あめみこ様
雨巫女様 目を覚ましてくださいませ。」
声のする方にゆっくり顔を傾けると、わたしを覗く見知らぬ顔がぼんやりと近づいてきた。
「きゃっ」声にならない声をあげ飛び起きると、見たこともない容姿の男性?が
わたしは、その美しく
「陛下を御呼びするのだ。雨巫女様が降臨致しました。」
急にあたりがバタバタしだした。
今になって慌てて周りを見渡して見ると、わたしは、祭壇らしき怪しげなところに寝かされていたらしい。
どうゆうこと?あぁ 泣き過ぎて、変な夢見てるんだぁ。おばあちゃん、ごめんね。こんな時まで、お馬鹿で…
「おお 雨巫女が降臨したか。でかしたぞ。ロイド でかしたぞ。」
2メートル程もあろう大男が大股で近づいて来る。
その恐怖に固まっていると、否応なしに手を取られ、その甲に口づけされた。
わたしは、完全に固まった。固まってしまった。
「よく来てくれた。雨巫女。本当によく来てくれた。感謝する。」
先ほどの美しく
んん?そうなるとさっきから、雨巫女と呼ばれていたのは、わたしの事だろうか?
あめみこぅ?いやいや、いや。
「あっあめみこではありません。雨女とは、言われてましたけど…。」
そうだ、わたしの大切な日はいつも決まって雨だった。
入学式も遠足も運動会、友達とのお出かけの日、初めてのデートの時などは、雷まで鳴った。
日常のひとりの買い物でさえ、雨が降る事が多かった。
小学六年の時だ。
「凛ちゃんといっしょにいると、雨 ふるよ。」
ゆきちゅんが言った。
それから、雨女 凛ちゃんの名はみんなの知るところとなってしまった。
中学に入ってからは、行事の時は何となく理由をつけて休むように成っていた。
「そなた、雨巫女ではないと申したか?ロイド 説明せよ。」
素晴らしい体躯と相まって陛下様、超怖いんですけど。
そうだよ。ロイドさん、一番説明してほしいのは、このわたしだよ。
ロイドさんは、ゆっくり立ち上がるときっぱりと答えた。
「このお方は、私が召喚した雨巫女です。私達の国を救ってくれる救世主なのです。」
見たこともない美しく
私は、夢の中でも飛びっきりな凄い夢をみているなぁと感嘆した。
教会の様な一室にはいつの間にか大勢の人が押し寄せていて、ロイドさんのその予言に一斉に歓喜の声が上がった。
どうやら、雨を降らせる為にわたしは、ここに召喚されたようだ。
全てを悟った。
そしてわたしは、声高らかに
「さあ、今 直ぐにでも雨を降らせましょう。」
ちょっと芝居がけて言ってみた。だってこれは飛びっきりの夢なんだから。
案の定、再び歓喜の声が沸き上がり、雨巫女コールが止むことはなかった。
陛下様とロイドさんに連れられ、城に案内された。
召喚された所と城は地下で繋げられていて、中世ヨーロッパの風情を漂わせている。荘厳でひとつひとつが本物の光を放ち私を圧倒した。
女の子ならば一度はこんな所でお姫様として、
ロイドさんの美しさに気を取られていたが、陛下様もかなりのイケメンだ。
しかも陛下と云うことは、この城で一番偉い人だと云う事だ。が、まだ若い。たぶん二十代。肌がピピチしてる。下手すると女のわたしより肌が綺麗かも知れない。
はたと思い、自分の身なりを整えようとして、喪服姿の自分に気がついた。腰までくる長い黒髪も頭の上でお団子にしている。
あぁ おばあちゃんの…夢なのに、こんなとこは、妙にリアルなんだな、遺骨に突っ伏して泣いてたまんまだ。
「雨巫女様
そして、私は陛下の相談役を任されております。
ロイドとお呼びください。」
おっとっとこれ、わたしも挨拶する雰囲気だよね…
「国王陛下様 ご機嫌麗しく、御会いできて光栄にございます。
リンと申します。」
土下座かな?とりあえず
「雨巫女はリンと申すか。
そなたはそなたの世界の仕来たりで構わないのだ。
突然の召喚、さぞかし驚いていように、先ほどの民衆への対応、まこと 天晴れであった。
今まで、数多くの者を召喚してきたが、そなたほど、自分の責務を理解した者はいない。
期待しておるぞ。責務を全うした
安心するのだ。」
陛下様ったら、さっきはデカイ体躯に威嚇されたけど、よく見ると、なんだか優しそう。
なんだろこの感じ?全体的に色が薄い。髪色も瞳の色も薄い?これ何色って云うのかな?こんな色見たこともないよ。
まぁ夢だかんね。そうなるでしょ。
「国王陛下様。
すぐに、ちゃっちゃと雨降らせちゃいますから、街を案内して下さい。」
「ハッハッハッ
ハッハッハッ
リンは頼もしいなぁ」
ああぁ 笑った陛下様って可愛いぃぃ。
「陛下、雨巫女様、今日はもう暮れて終います。
今日の所は、雨巫女様を持て成し、明日に備えて戴いては、いかがでしょうか。」
おぉ、ロイドさん グッジョブ。お腹すいたぁ。
城の最上級客間に通され、そこに運びこまれた食事をひとりで食べた。
気を遣わず、好きなようにとの、ロイドさんの計らいだろう。どこまでも気のきく人だ。
食事はとても上品で美味だ。
ただ、肉・魚的なものがひとつも無い。全てが野菜や果物で調理されている。
おそらくこの国の人は皆、生粋のベジタリアンなのだろう。
こう云う食生活が陛下様のような色素の薄い成りを作るのだろうか。ロイドさんのような美しく
否、遺伝だよね、ふつう。一通り食べ終えると、メイド達がやって来た。
真っ白の襟とカフスが、やけに大きくデザインされている。綺麗な子達だ。よく似合っている。
綺麗なメイド達に促され、お風呂場に向かう。
こちらの世界にもお風呂の習慣が有ってよかったぁ。手足伸ばしたいし、髪も洗いたい。
ひとりで入る事をメイド達に告げ、タオルと着替えを用意してもらった。
お風呂場の扉を開けると、そこはテルマエ・ロマエだった。
素晴らしい彫刻と太い大理石の柱、天井は高く、とにかく広い。女神像の抱えている壺からは、お湯がふんだんに流れ出て、広い湯船を満たしている。
わたしは、この贅を極めたお風呂を充分堪能し、メイドに髪まで乾かしてもらってベッドに就いた。
おっと、忘れてはいけない。これは夢なのだ。
夢の中で眠りについたら、はたして夢は見るんだろうか?夢の中で見る夢。ちょっと興味深い。
暫く、くるくると
このまま眠りにつき朝を向かえたら、この夢も終わってしまうのかな。
やっぱり雨を降らせとけば良かったなぁ。
いままで、こんなに求められたことなかったもの。わたしの実力を見せたかったなぁ。
遠くで、そんなことを思い、そしてわたしは意識を手放した。
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