雨を介して

露草

第1話 雨はきらい

 やっぱり 今日も雨だ。

 想い出となる意味のある日はいつも決まって雨なのだ。今日だけは降ってほしくなかった。晴れてほしかったのに…。


 ただ一人の肉親のおばあちゃんが天に召された。

 わたしが小さい時、交通事故で亡くなった両親の代わりに、一人でわたしを育ててくれた、大好きなおばあちゃん。

 もっとおばあちゃんの体調に気を付けてあげていたらよかった。わたしは自分の就職活動にかまけて、おばあちゃんが度々咳き込んでいるのを気にもとめていなかったのだ。


 雨は、あらゆる思いと一緒にわたしの内に降り注ぎ、後悔で溺れさせていく。

 雨はまた、最愛のおばあちゃんの死の悲しみを、この後悔を、その雨粒のひとつひとつに閉じ込め、これから何度でも、わたしに降り注ぐことだろう。自業自得だ。


 降りしきる雨の中、極々わずかの知り合いで弔いをし、事務的な処理をすませて自宅に帰って来た。

 ドアを開けると、そこかしこにおばあちゃんの匂いが立ち込めていた。

 わたしは、ドアを静かに閉め泣いた。声を立てて泣いた。


 雨に濡れないよう大切に抱えてきたおばあちゃんの遺骨に突っ伏して、泣いて泣いて泣いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る