第5話 勇気
ーーーー翌朝。
薄っすらと目を開けながら眠りから目覚める透。
そこには、はだけたドレスのあられもない美女の姿があった。
「うぅん。うん?・・・・・うわぁぁぁぁ!」
ヘッドから落ちる透。
ちょっと待て!これどういう状況?一回冷静になって考えよう。
・・・・あぁぁぁ考えても分からねぇ!
ボサボサの髪の毛を掻きむしる透。
「ふぁぁぁ。おはよう」
「なんだお前は?」
怯えながら美女に問う透。
「覚えてないの?昨日説明したじゃん!
貴方を幸せに導くために異世界からやって来た女神様だって」
「女神様!」
「ほらぁ」
指を立てる女神。
ーーーー回想。
「ねっ。思い出したでしょ」
「確かに昨日そんな事があったような、痛っ」
うずくまって頭を抑える透。
「おそらく一時的なパニックでちょっとした記憶障害が起きたみたいね。でもすぐ思い出せるから安心して。」
「あぁ、もう大丈夫だ思い出したよ。」
「それより服はちゃんと着たらどうだ?」
「うん?きゃあぁぁぁぁあ」
今、気付いたのかよ。
慌てて服装を直す女神。
「そういえばお前の名前聞いてなかったな、なんて言うんだ?」
「わたしの名前はエリシア。エリーでいいわよ」
「そうか、じゃあエリー俺は今から用事があるからそこで待ってろ」
「私も着いて行くわよ。私達のルールでは数mの間に対象者から離れたらいけないのよ」
「分かった。じゃあある程度離れてくれ」
玄関で靴を履く透。
あんな美女と一緒にいる所を誰かに見られたら目立ってしょうがねぇ。そんな所を見られたら変な奴らに絡まれてボコボコされるのがせきのやまだ。それに万が一、知り合いに見られでもしたら。
「ねぇ。ねぇってば」
顔を近づけるエリー。
「うわっ。だから近づくなって言ってるだろう」
街の雑踏の中を歩く透。
で、今から何処に行くの?
「うわっ!」
なんだいきなり頭の中に声が。
そう私達女神は対象者には、直接意識に語りかける事が出来るの。
語りかけるってお前、何処に居るんだ?
ここだよ。
辺りを見渡した後に、上空を見上げる透。
お前!そんな所にいたら目立つだろう!ていうかお前空飛べるのか?
当たり前じゃん女神なんだから。
そうだったそうでしたね、あんたは女神だった。
大丈夫だよ。私の姿は対象者以外には見えないから。あなたには見えるでしょ。
で、今から何処に行くの?
就活だよ。仕事をしないと生きて行けないからな。
「なんでだ?なんでどこも雇ってくれないんだ!」
公園のベンチで頭を抱えてうずくまる透。
まあこんな事もあるよ。
お前さ、女神だったらなんかアドバイスぐらいしてくれたらどうなんだ?
無理だよ。だって私、人間の仕事とか会社とかわからないもん。
腕を組んで顔をプイっとするエリー。
なんか働くのもダルくなって来たな、貯蓄もそこそこあるし、暫くはそれで暮らして行くか。
それもいいかもね。働きたくもないのに無理に働く必要はないんじゃない。
「おい!お前ぶつかっておいて詫びも無しか?あぁ?」
「今のはどう見てもあんたがぶつかって来たんじゃないですか?」
若者と輩に絡まれているのを見つける透。
透!今だよ!あの人を助けたら少しはマシな人間になるかもよ。
冗談言うな!あんなのに巻き込まれたら一発でボコられてまうやろが!
こういうところからでも始めた方がいいんじゃない?失う物なんてどうせないんでしょ?
ベンチで足をガタガタさせる透。
ああもう分かったよ!
見えない殺意と異世界悪女の囁き 機絵隊ぞう @15525252
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