第2話 根源
ー遡る事数ヶ月前ー
冷たい風が空き缶を転がしながら閑散とした商店街の横を通り過ぎる。
そこには生気の抜けた通行人やホームレスなどが拾った本や、服などを路上で販売している。
今にも崩れそうなヒビだらけのビルの間の路地を冴えない顔つきの髪が首まで伸びスーツ姿にロングコートを着てとぼどぼ歩く青年。
俺は冬野透。両親は幼い頃に、父親が行方不明になり、母親が女手一つで育ててくれた。今は古ぼけたアパートで一人暮らしをしている。
数年前までしがないサラリーマンだった俺は会社の仲が良かったと思っていた会社の同僚にミスを擦り付けられ理不尽にも会社をクビになってしまった。
コンコンと上司に怒られる透。それを遠くからニヤニヤと横目で見ている明の同僚。
どうやら仲が良いと思っていたのは自分だけだったようだ。俺は、自分でも、性格は暗いし、口数も少ない、人相もそんなに良くない。
だが仕事は真面目に取り組んでいたつもりだ。押し付けられた仕事も何一つ文句も言わずやっていたにも関わらず、存在が幽霊みたいと不気味がられ、会社の上司に同僚、先輩や後輩にも白い目で見られていた。
まあでも俺はそんな奴らにも嫌気がさしていたし、不思議とすんなりと受け入れる事ができた。
「もう生きててもいい事ないし死のうかな」
虚ろな目で空を見上げる透。
「プルルルル」
ポケットの携帯電話が鳴り出し電話に出る透。
「もしもし」
電話の向こうから中年女性ぐらいの声聞こえてくる。
「もしもし透君か?」
「もしもし。ああ叔母さん?久しぶりどうした?」
少し明るく話す透。
「あんたのお母さんが亡くなったって」
携帯電話を落とす透。茫然としている透。
「どうやら車を運転していて、煽った煽られた言うて、なんか輩と揉めたとか……」
落とした携帯電話から微かに聞こえてくる声。
自然と涙を流す透。
後ろからニヤニヤしながら近づいてくるタンクトップの筋肉質の3人の男。
「こんな所で何してんだ?兄ちゃんよ」
一人の大柄の男が指をボキボキ鳴らしながら近づいてくる。
「俺は今むしゃくしゃしてるんだ。痛い目にあいたくなかったら有り金全部よこしな」
茫然と立ち尽くしている透。
「おい!聞いてるのか?」
大柄の男が肩を掴み、透の顔を覗き込む。
「・・・・・・」
俯いて体を小刻みに震わしながらポタポタと涙を流す透。
「なんだこいつ泣いてやがる、気持ちわり」
「おい!そんな奴放っといてもう行こうぜ。
あっちにめっちゃ美人なねーちゃんを見つ
けたんだよ」
二人目の小柄の男が大通りの方を指さしている。
「ふんっ」
透を睨みつけるお柄の男。
大通りの方に去って行く男達。
「それにしても、さっきのババアいい気味やったな。俺らに因縁つけてくるのがわりぃんだよ」
ピクッと体が反応する透。
「ちょっと待て。そのババアって車で煽られ
たって言う?」
男達を涙目で見つめながら問いかける透。
「そうや!あのクソババアが因縁つけて来
やがったから、ちょっと殴ってやったら後
ろから走って来た車に引かれてやんの。ハ
ハハハハハハハ」
その瞬間、俺の色んな感情が壊れた。
その時、目の前が一瞬闇に包まれた。気づいた時には、血まみれの男達が転がっている。
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