見えない殺意と異世界悪女の囁き

機絵隊ぞう

第1話 諸悪

「またか。これで何人目だ?」


「もう何人目かも忘れちゃいましたよ。目撃者がいないとかありえないですよね。いくら路地裏とはいえ誰も見てないなんて。」


「ああ。それにこの死体みて見ろよ。いくらなんでもやりすぎだろこれは。」


 まったく、本当に人間の仕業か?まったく原型留めてねーじゃねーか。


 死体を観察するようにまじまじと観察する中年の男。


「そういえばタケルさん。」


「なんだ?」


「違う地域でも大量にこういる死体が次々に見つかっているみたいですよ。」


「それだけじゃなくて盗難や物が破壊されてたり、もう大パニックですよ。」


「しかも、目撃者もいないし、この街どうなってるんですか?」


そう怯えながらビクビクした顔でタケルの腕を掴む青年。


「なにを怯えてやがる!男だろ!」


「ノブお前。他に目撃者がいないか街の人に聞いてこい。」


「俺一人ですか?嫌ですよ。」


「いいから行って来い!」


「分かりました。」


半泣き状態で走り去るノブの後ろ姿。


 それにしても、誰も見てないってのがどういう意味か全然わからねーな。見えない化け物でも存在してるってわけでもあるまいし。


 考え事をしながら雑踏の中をとぼとぼ歩くタケル。


「おっと悪い。」

 

「いえ、こちらこそすいません。」


肩同士がぶつかるタケルと青年。


ペコリと頭を下げる青年。


「いいよ全然気をつけな。」


「あれ?どっかでタバコ落としたか?」


タバコを落とす青年の後ろ姿。


「はぁ!そうやってボケーって歩いてるから人にぶつかるんですよ。」


「そんなだから、うっかり物を落としたり、忘れ物したりするんですよ。私が助言しなければ貴方は今頃・・・」


青年に喋りかけている女性の後ろ姿。


「あの女性さっき隣にいたっけ?」


 少し振り返って青年と女性を見つめるタケル。


「まっいっか。」


「タケルさーん。」


遠くから駆け寄ってくるノブ。


「なんか分かったか?」


「目撃情報はないんですけど、2名の被害者にだけ恋人がいまして、この恋人に話を聞いた所、何日か前に不気味な若い男と肩がぶつかったと二人共言っていました。」


 メモ帳を開いて読みながら説明するノブ。


「それなら俺もさっき若い男とぶつかったぞ。」


「それならそいつ怪しくないですか?直ちに調べましょう。」


「ちょっと待て!」


 走り去ろうとするノブの襟を引っ張るたける。


「犯人はあんだけの事をして、姿を見られず去って行っているんだ。俺には見た感じあの男があんな凄惨な殺人を犯してるようには見えなかった。」


俯いて考え込むタケル。


「しょうがないあの男に協力を頼んでみるか。正直不本意ではあるが。」


「えーー。もしかして、あいつに頼むんですか?それだけは辞めといた方がいいと思いますよ。」


 気分が悪い顔をするノブ。


「仕方ないだろ。あいつの能力なら何か解るかもしれない。」


「確かにあの能力ならかなり答えに近づけるかもしれませんね。」


「とりあえず、一旦組織に俺は戻る。お前は引き続き調査を続けてくれ。何か分かり次第俺に知らせてくれ。」


「分かりました。」


互いに別々に分かれるタケルとノブ。


「なんかヤバい予感がする。俺にはこの大量殺人には凄まじい憎悪を感じる。」


足早に走り去るタケル。














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