第3話 絶望

「きゃー!誰か!」


 女性の悲鳴が閑散としている商店街に響き渡る。その悲鳴に驚き騒ぎ出す通行人達。


「だ、誰か助けてーーーー!」


 腰を抜かして、ガタガタ恐怖に震えながら震えた声で助けを呼ぶ女性。


 「なんだ?どうしたんだ?」


ぞろぞろと女性の元へ集まってくる。街の通行人達。


「うわっ!これはひでーや!皆こいつがやったのか?」


 通行人達が騒ぎ出す。その視線の先には、血まみれに染まった透。


「違うんだ!俺じゃない、俺は何もやってな    い!気が付いたらこの人達がいつの間にか死んでたんだ!」


 通行人達に必死にに訴えかける透。


「うわーーーーー!」


 一目散に透から逃げ惑う通行人達。その場で立ち尽くす透。


 それからというもの、俺はたまに記憶が欠けている時がある。その時に自分が何をしてるか分からない。その時俺は、人を殺めてないか不安に苛まれる。


 殺風景でシンプルなマンションの一室のベッドに重い腰を落として頭を抱えている透。


「俺は、一体どうなっちまったんだ」


「・・・・・それはお前が望んだ事だろ?」


「???」


 キョロキョロ しながら周りを見渡す透。


「誰だ?何処に居る?」


 慌てながら全部の部屋を調べる透。激しい息遣いで汗だくになりながら、ありとあらゆる所を探す透。


「無駄だ!何処探してもいねーよ、バーカ」


 頭の中に謎の声がしゃべりかけてくる。


「俺はずっとお前の中にいたんだよ」


「俺は、お前の中の影の部分とでも言っておこうか。お前は今まで、理不尽な事にずっと笑いながら耐えてきただろ?学生時代のイジメ、それを見てみぬふりする教師」


 透は学生時代のイジメを思い出す。


「やめろ」


「高校を卒業して社会人になれば会社の上司からはパワハラ、同僚や後輩からは馬鹿にされ、唯一仲良かった同僚からも裏切られる、挙げ句果てにはミスを擦り付けられクビになる始末」


「やめてくれ」


頭を抱えてうずくまる透。


「心の支えであった親でさえ殺される」


「黙れーーーー!」


うずくまりながら悲痛に叫ぶ透。


「心の支えが無くなってお前の心と感情が壊れかけた時、お前が無意識に自分の現実から逃げるために心に閉じこもった瞬間、俺が目覚めたのさ!」


「俺をどうするつもりだ?」


 ベットに座り直し問いかける。


「どうもしねーよ。お前の精神状態次第だからな」


「心配しなくても俺が出ている時は、お前の意識は眠ってる状態だから俺が何をしてるかは分からないし、お前には俺が見えんがな」


「まぁ、手始めに三人ぐらい殺ってやったがな。ハハハハ」


「あれは、お前だったのか?」


頭の中で謎の声が軽快な口調で語っている。


「心配しなくても周りの奴は俺が出ている時、見えてないからよ、俺はもう寝るぜ」


「ちょっと待て!それはどういう」


 立ち上がり焦って問いかける。


「くそっ!俺はどうしたらいいんだ?」


───いきなり激しい音と同時に白い光の球体が現れ漆黒のドレスを身に纏った白銀の長い髪の美女が現れた。


「あれ?ここで合ってるよね?」













 



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