第3話 春③

・・・A・・・



キュ、キュ、トントン、ドーン・・・。


体育館に響くシューズの擦れる音


ドリブルの音


シュートした時の音



いろんな音が響き渡る。



小学校の時、野球をやっていた俺は


中学ではバスケ部に入った。


バスケがかっこいいと思ったからだ。


背もぐんぐん伸び


実際俺は、バスケ部に入ってから


随分モテるようになったと思う。


だけど・・・・。



俺がジュートを決めた瞬間


「まーさーゆーき!」


と俺を呼ぶ声が聞こえた。


ニシ!


体育館からグランドにつなる扉は今日は開いていて


そこからニシが手を振っているのが見えた。


「マサユキ


笑顔のニシが俺に聞こえるように声を張る。


「まじ!?やったね!!」


俺は嬉しくて


転がっているボールを拾ってもう一度シュートをする


みごとにゴールに入った。



「俺もC組だったよ。」


ニシの後ろから大きな声がとんだ・・・潤!


俺はドリブルしながら扉に近づいた。


「おーちゃんもC組だったよ。」


ニシが嬉しそうに言った。


「おーちゃんと一緒のクラスなんて小学校以来だ!」


俺も嬉しくてつい声が大きくなる。


「なんだか、楽しくなりそうだね。」


ニシが言うと、


「お前らは幼馴染だもんな。俺も仲間に混ぜてくれよ。」


って潤がちらっと俺を見ながら言った。そして


「カズ、早く練習行こ。」


と、今度はニシの方を向いて行った。


「じゃあね。」


ニシがにっこり笑って潤と一緒に走って行った。



潤と隣り合って走って行くニシの後ろ姿を見て


俺は何で野球部に入らなかったかな~って今更ながら思う。


中学に入学した時


あの時バスケがとてもかっこよく見えたんだ。


まさか


中学になると


こんなに部活同士の仲間とつるむことが多くなるなんて


知らなかったから・・・。


あのまま野球続けていたら


今、ニシの隣で走ってるのは俺だったかな?


なんて思う。



「おーい、マサユキ!早く戻れよ!」


俊介の声がする。


「おう、わるいわるい」


俺はボールをかかえたまま練習に戻った。


「何話してたの?」


「クラス発表で、俺がC組だって教えに来てくれたんだ。」


「そっか、今日発表だった!俺は何組か言ってた?」


「いや~何も言ってなかったよ。」


「練習終わったら見に行かなきゃ。」


「そうだね。」


外は日差しが柔らかくてあたたかそうだった。


その分


体育館の中が暗く見えた。


あとで、俊介と玄関に、見に行こう。


俺の名前とニシの名前が


同じクラスに書いてあるってことを確かめよう。


俺はボールをゴールに向かって投げた。

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