第7話 春⑦

・・・O・・・



久しぶりのマサユキの家。


コンビニで買ったカップラーメンやスナックやペットボトルと


マサユキのお母さんが差し入れてくれた餃子。


目の前の


マサユキとニシは 始終楽しそうで 笑ってばかりいる。


俺もいつになく沢山話をしていると思う。


楽しい。


だけど


時々楽しそうな二人をみていて


ちょっぴり悲しい気持ちになるのはなぜなんだろう。



「・・・・なんでしょ?おーちゃん。」


「え、なに?」


「今年もバドミントン部の助っ人するんでしょ?」


「ああ、そだね。もし頼まれたら。」



ニシが俺に話しかける。


ああ、俺が楽しいと感じるのは


ニシが俺に話しかけてくれるからなんだ。


ニシと話をすると楽しい・・・。



「おーちゃんのバドミントンかっこいいよね。いっそのこと入部すればいいのに。」


「いや・・・俺、絵描くのが好きだから。美術部のままで


たまに呼ばれるのがいいんだよ。」


「おーちゃん、絵もうまいもんね!」


ニシに褒められると素直に嬉しい。



「俺のバスケ姿はかっこいい?」


マサユキがニシに聞く。


「もちろん、かっこいいよ!バスケやってるとモテるしね。」


「そーなんだよね!」


「モテたくてバスケ部に入ったんでしょ。」


「んなこと無いよ!純粋にバスケがしたかったからだよ!」


目の前でまた二人がじゃれ始める。



二人は仲良しなんだ。



三人で話してるのに時々俺だけおいてけぼりな気がするのは


俺の被害妄想かな・・・。


~そんなんじゃ、友達がいなくなる~


ショウ君の言葉が頭をよぎった。



「・・・おーちゃんはどんな女の子が好みなの?」


ニシに聞かれて我に返る。


いつの間にか


女子の話にかわっていた。


「・・・俺は・・・。」


答えを考えようとした時


「じゃーん!!」


マサユキが本棚から一冊の本を取り出した。


いわゆるエロ本・・・!


「わーマサユキこんなの持ってんの!みして!ほらおーちゃん!」


ニシと一緒に本を囲む。


「すげー。やばい・・・。」


「だろ?ネットだと変なサイトに飛んだりすると大変だから、


やっぱりこういうのがいいんだよね。なんの心配もなく見れる。」



本を見ながら


今ニシの腕と俺の腕が触れていることに


俺は


ドキドキして体が熱くなる。


ニシの顔が近い。


息づかいが聞こえる。ニシの息。


ドキドキしてるのは


エロ本を見ているからなんだ・・・。


きっと・・・。


ニシの裸もきっとこんな風にセクシーなんだろう・・・。


このまま


ニシを襲って抱いて吐き出せたら


どんなに気持ちがいいだろうか・・・・。



え・・・ニシを・・・?



「マサユキ、いっつもこんなの見てんの?やばいよ」


「興味あるだろ?」


「大ありだよ!!ね、おーちゃん!」


「・・・お、おう・・・。」



「おーちゃん、やばいよ!!」


マサキが俺を見て言う。


俺、きっとめちゃくちゃエロい顔してるんだ・・・。


「マサユキだってやばいだろ!!ニシだって・・・!」



ああ・・・ほんとにヤバい


俺の中で裸のニシがグルグルしてきた・・・。



「頭、冷やしてくる?」


俺はもう我慢の限界でそう提案した。


「ちょっと、散歩行ってこようか?」


「そうしよう。」


「どこ行く?」


マサユキがエロ本をササっと閉じて本棚に戻した。


二人とももう限界だったようだ。


食べ散らかしたものを片付けて


夜の散歩に出かけることにした。


マサユキのお母さんが


夜遊びはダメだ!と注意したので


俺たちは帰り支度をしてから外に出た。


マサユキは俺たちを見送ってくると言って一緒に出掛けた。



楽しい時間だった・・・。


同時に


少し切ない気持ちになった。


何が切ないのかはよくわからない。


楽しさの後に不意に切なさが襲ってくるのは常なんだろう。



そして、


さっき


なぜ裸のニシが頭の中に浮かんだのか?



俺のイライラや切なさの原因は


きっとニシなんだ。



今、


はっきりと


そう自覚できた。

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