第5話 春⑤

・・・A・・・



「ふー」


ニシがため息をつきながらやってきた。


「なんか・・・・怒られた・・・。」


しょんぼりするニシ。



俺とニシとおーちゃんが同じクラスになるのは


小学校1~2年の時以来。


俺は


あの時3人で遊でいた頃をよく思い出すんだ。


何の悩みもなく


ただただ遊んでいればいいだけだった子供時代が


懐かしい。


あの時を思い出すと


なんだかあったかい幸せな気分になるんだ。


それで


再会を記念して


3人で集まらないかニシに持ち掛けてみた。


ニシは潤と仲が良くて


いつも一緒にいるけど


たまには潤抜きでもいいだろ・・・って。



ニシは二つ返事でオーケーだったけど


それをわざわざ潤に報告して潤の許可をもらったんだ。



なんだそれ!


まるで恋人同士みたいじゃん!


俺がそういうとニシは笑いながら


「そうそう、俺たちは恋人だから、別の人と遊ぶ時は報告しないとなんだ。」って茶目っ気たっぷりに言った。


だから俺ものっかって


「なかなかの束縛じゃん!」って言ったら


「そーなんだよ!」ってケタケタ笑った。



まったく・・・


本当とも嘘ともとれる言い方しやがって・・・。


俺、からかわれてんのかな・・・。


「なんか潤をのけ者にするみたいな感じになっちゃうからこういうのは先に言っておいたほうがいいんだよ。人間関係難しいじゃん。」


それは潤に気を使ってるのか


それとも


俺たちに気を使ってるのか


俺にはよくわからなかった。



それで、


おーちゃんの都合を聞こうとしてそばに行ったら


怒られたらしい・・・。



おーちゃんは俺たちが思ってるほど


昔の3人組が懐かしいわけじゃないのかもしれない・・・。


ニシだって・・・


いや・・・


ニシは


潤無しで3人で会うことに前向きだった・・・。



しょんぼりしているニシを見て


悪いことしたと思った。


それなら二人で集まろうか・・・・


二人なら結構遊んでたけどね・・・。でもやっぱり3人で会うことに意義があるんじゃない?


やっぱりもう一度おーちゃんに・・・・。


そんなことを考えてたら


おーちゃんが俺たちのところにやってきた。


「えっと・・・ごめん…今・・・俺・・・・。」


ってニシの方を向いてぼそぼそって声を出してあやまった。


ニシの顔がはっと明るくなった。


「いや、ごめん、俺こそ急に声をかけるから、驚いたよね・・・。」


「ああ・・そう・・・そうなんだよ・・・。」


おーちゃんが照れたように笑ったから


ニシもすっかり御機嫌になって


3人で集まる話をすすめた。



「なに?再会って?」


いつの間にかショウ君が来ていた。


ニシがショウ君に


俺たちが小1の頃仲が良かった話をした。


ショウ君とは今まで同じクラスになったことは一回もなかった。


「へー、3人幼なじみなんだ。再会を祝うって面白そうだね。」



それからショウ君はニシをじっと見た。


「君が噂のニシ君。同じクラスになるの初めてだね。」


「あ、そうだね。はじめまして。俺もショウ君のうわさ聞いてるよ?」


「へーどんな?」


「頭がよくて何でもできて頼りになるって。」


「それはありがとう。」


「俺のうわさって何?」


「潤が惚れた男。」


「やっぱりそれか!でもそれは嘘だからね。」



ニシが否定した。



嘘なんだねやっぱり。


俺は嘘だとは思ってたけど


ニシの口からはっきり嘘だと聞いてなんだかホッとした。


「ふ~ん…嘘なんだ・・・。」


ショウ君はなめるようにニシを見た。そして


じゃ・・・って向こうへ行った。




俺たちは


明日の土曜日に俺んちに集合することになった。


ニシが


「マサユキの家に行くのは久しぶりだ。」といった。


「俺も、小2以来だ。」とおーちゃんが言った。


ニノとは野球クラブのつながりもあって何度もあってるけど


そういえばおーちゃんとは小学校の時以来ほとんど遊んでない。・・・と気が付いた。


ニシは


時々おーちゃんと遊んでいたのかな?


3人で会うのに嬉しそうなニシを見て


もしかしてニシとおーちゃんは何度も会って遊んでいたのかもしれない・・・と少し不安になった。


不安・・・なぜ?



今、自分の気持ちに少し驚いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る