第3話 私の本が出版されている。
六月十五日。私のデビュー作がついに出版されました。
今日はその前後のことを書いていきたいと思います。
発売日数日前、宅配便で見本が届きました。
一応見本が届く前からどんな表紙や帯になるのか等はわかっていましたが、実物を手にするとまた印象も違い……。感極まりました。
本に印刷されている文章は、元々は私が2013年から使っているパソコン(古っ……)でちまちま入力したもの。
いえ、すみません。ちまちまって感じでもないです。私は子供の頃にピアノを習っていたのですが、その影響もあってかタイピングは比較的早い方なんです。「キーボード叩いてるとピアノを弾いているみたいで楽しいなあははははは!!!」と思いながら結構ダダダダダダって入力してることが多いです(奇人)。まあ考え込んじゃって全然次のキーを叩けない時も多々ありますけども。
話が脱線してしまいました。そうやって自分がWordで入力したものが、賞に応募して、改稿もして、校正もして、こうやってちゃんと本らしい本になっているということが嬉しくて、パラパラめくって見ていたら涙があふれ出てきました。
特に感動したのはあとがきです。私は結構あとがきを読むのが好きで、本屋さんでも「どの本を買おうかな~」と迷ったときにはまずあとがきから見たりもしていたんです。だから自分のあとがきだ、と思った瞬間が、一番グッときました。もしよければ是非、英国喫茶アンティークカップスのあとがきだけでも本屋さんでお読みください。
そして迎えた発売日。私は自分の住むところから近い中で一番の都会である立川へと繰り出しました。
立川駅周辺には大きめの本屋さんがいくつもあります。なので立川駅周辺の本屋さんを巡ってみれば、きっと本屋さんに自分の本が置かれている状態を目撃できる! と思ったのです。
でも私はとてつもない方向音痴なのです。だから最初の本屋さんに辿りつくまで、スマホのナビを見ながらうろうろと十五分程度は歩きまわってしまいました。
その日は雨で、私は数年前にフライングタイガーで購入した虹色の傘を差しながら「高島屋って一体どこにあるんだろう」とさまよい続けました。
そしてようやく高島屋を発見した私はまっすぐに六階のジュンク堂へとエレベーターで昇りました。
ちなみになぜ一件目がジュンク堂だったかというと、モノレールの立川北駅で降りた際にジュンク堂の看板があったのが目に入ったからです。
そして富士見L文庫の本が置いてある場所はどこなんじゃろう、とまた歩き回りました。どういうわけかそういう時にかぎって遠回りしてしまっていて、ほぼ最後に辿り着いた場所が富士見L文庫の新刊がおいてある売り場でした。「今月の新刊」という感じで、私の本を複数冊置いてくださっていました。
「あっ、ほんとにあった……」
私はゆっくりと本を手に取り、パラパラとめくりました。
本当にあった。
それからしばらくその光景を眺め、いつまでもいても仕方がないかと思い、名残惜しい気持ちはありつつも売り場を去ることにしました。
「頑張ってね」
心の中で本にエールを送り、誰にも見えないように小さく手をふりました。「頑張ってね」は「売れますように」でもあり「誰かの心に届きますように」でもあります。
それから立川駅付近の数件の大きな本屋さんをめぐり、自分の本に「頑張ってね」と心の中からエールを送る作業(奇行)を数回繰り返してから家に帰りました。
こんな風にして私は自分の本が出版されるという、まるで嘘みたいなことが現実になっていくまでの時間を過ごしました。
でも「自分の本」なんていうのも少し違う気がします。色々なプロの方の力を集結して、本にしていただきました。
そうした経験ができたことに、感謝の気持ちしかありません。
……またそういう経験ができるように頑張りたいです!
それでは、このエッセイは今回で終わりにしようと思います。
また小説や他のエッセイなどでお会いできますように。
ちなみに最近「こじょはんにしましょう」というお話をカクヨムで連載し始めたので、ついでにそちらも読んでいってもらえたら嬉しいです!
ではでは~。
最後までおつきあいいただき、ありがとうございました!
新人賞受賞。そして書籍出版にいたる過程、その心境。 猫田パナ @nekotapana
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