新人賞受賞。そして書籍出版にいたる過程、その心境。
猫田パナ
第1話 ラノベの賞に応募したきっかけ~受賞まで
こんにちは、こんばんは。もしかしたら、はじめまして。
猫田パナです。
私は昨年、第4回富士見ノベル大賞で入選となり、今年の6月15日発売の「英国喫茶 アンティークカップス 心がつながる紅茶専門店」という本でデビュー予定のものです。
私は約十年前からライトノベルの賞に応募しては落選し続けてきました。自分でも「こんな日が本当に来るなんて」という思いですが、こうして夢叶うこととなりましたので、せっかくですから賞に応募するようになったきっかけ、新人賞受賞、そして初出版にいたるまでをここに書き記しておこうと思います。
最初は一話完結のつもりでしたが長くなりそうですし、まだ実際に書籍が出版されるまで二か月近くもかかるので、連載の形式にしてみようかと思います。
書籍出版後の気持ちとかも書いてもいいかもしれない。そのあたりまでやってみようかな。
では、よろしくお願い致します。
さて、私がライトノベルの賞に応募するようになったのは、社会人になって数年経ってからのことでした。
その頃の私は会社帰りに発泡酒とポテトチップスを買うのが日課でした。家に帰るとパソコンを開き、フィギュアスケートの浅田真央選手の動画を繰り返し見ながら発泡酒を飲み、ポテトチップスを食べ、涙を流していました。
演技中の浅田真央選手の凛とした美しさ、少女のような肢体には、自分が失ってしまった全てがあるように感じられたのです。
なんて美しくて尊いんだ。自然とボロボロ涙があふれる。病気でしょうか? いいえ、デトックスです。
そして私は浅田真央選手の動画だけではなく、美少女が出てくるアニメを見ることも好きになっていきました。
きっかけはカラオケとニコニコ動画でした。ニコニコ動画のランキングに入っている動画はアニメ関連のものがたくさんあったし、アニメソングはカラオケで歌うとストレス発散になりました。そしてその当時の私は、ニコニコ動画こそが日本の最先端のカルチャーだと感じていましたので、アニメはかっこいいなあと思っていました。なので自然と、好みのアニメを探しては見るようになり……私が特に好きになったのが、美少女が出てくるアニメでした。
そしていつしか、自分好みの美少女が出てくるラノベを書いて新人賞に応募したい! と考えるようになったのです。
そもそも私は子供の頃から、なにか面白いことをできる人になりたいなあと思っていました。高校生・大学生の頃にはロックミュージシャンに憧れていて、オリジナルのバンドをしたいと思っていました。
しかし私の大学時代は、さほどギターも上達しないまま、オリジナルのバンドを一度も組むことさえもないまま終了しました。私には勇気もなく、人と積極的に関わっていくような社交性も欠けていました。一応その頃の意気込みとしては「心の底から自分自身が精神的な意味でロックになろう」としておりましたので、その結果として徐々に厭世的になり、孤高、もとい孤独に過ごすようになってしまった感じでした。
やりたいことをやってみて、それでだめだったならまだいいですが……。
私はやりたいことに対し、何をどう頑張ればいいのかもわからないまま、勇気を出して「私はこれがやりたい!」と言うことさえもできないまま、陰鬱な青春時代を終えてしまいました。
だからラノベの新人賞に応募しはじめてからは、もう「やりたいことに向けて頑張ることができている!」という事だけでも、とても嬉しいという気持ちでした。
でも私が今まで応募してきたお話はどれも、後から思うと「どうしてそれを……書いた?」と言いたくなるものばかりでした。
蝉恐怖症の高校生の話、ふくよかな女の子たちでアイドルを目指す話、透明人間になれる男の子と透視能力を持つ女の子がお互いに恋をする話、20歳になるとみんな死んでしまう世界の話、何度でも生き返れる世界で100度目の人生を送っていたら99度目の人生の時のストーカーのおばあさんに殺されそうになる話、etc……。
(ちなみに題材も問題があったかもしれないけれど、多分プロットにも問題があって色々な要素を詰め込み過ぎていたり、緩急の付け方などのバランスが悪かったんじゃないかと思います)
そんな私はある日、イギリスのアンティークカップに急にどハマりしました。
わあ、なんて素晴らしい世界なんだ……。ティーカップの世界を知った私は、ぜひこれを小説にしなければと思いました。
ティーカップと紅茶が出てくるのなら、大人の女性が主人公のお話しにして、舞台は私が「こんなお店があったらいいのに」と夢見るようなお店……。そして私が「こんなことがあってほしい!」と思う展開で……。
そうして「英国喫茶 アンティークカップス」を書き上げた私は、第四回富士見ノベル大賞に応募しました。
プロットを作った時点から、私には一つの予感がありました。
「このお話は、今まで書いた中で一番受賞の可能性があるまともな小説な気がする」
まあでも、それまでに書いた小説も応募する時には毎回「これこそが最高の作品であり、受賞する可能性大!」とか思っていました……。つまり予感に意味はないかもです。
それでも一応、長編を書き上げるたびに自分の書いたものを客観視する能力が多少はアップしつつあったので「もしかしてこれなら」という気持ちはありました。
しかし長編小説を書き始めてからここに辿り着くまでに、なんと十年もかかってしまいました。
途中あまり書かなくなった時期や、出産や育児で書けなかった期間もありましたが……。
もっと早い段階で、出版社からどんな小説が求められているのかを考えて書くべきだったと思います。
そうは言ってもそれがうまくできないのも含めて私、ということなのかもしれませんが……!
そしてこれまで私は新人賞に応募するたび、選考に通っては天にも昇る思いになり、結果落選してはうちひしがれてきました。
選考の途中結果が発表される日には緊張で指先まで冷たくなり、落選しても落ち込まない、落選しても落ち込まない、と自分に言い聞かせ、意を決してからでないと結果を見られませんでした。
なので「英国喫茶 アンティークカップスはなんとなくいける気がする!」と思っていたものの、一方で「いやでもよく考えたら落ちるかもしれない!」と思っておき、心の保険をかけておきました。
そして、途中の選考を通り……もしかしたらそろそろ受賞関連の電話がくるかもしれないと考えていたある日、知らない番号から電話がかかってきたのです。
――宅配業者かもしれない。
知らない番号を見つめながら私はそう思ってみました。私、よくネットで買い物をするからな〜。何か荷物の送付に関する連絡かもしれないよ。
でも本当は、こう思いました。
――富士見L編集部からかもしれない。
もしもそうだった場合、間違いなく私は泣いてしまうな、と思いました。
心を整えて電話に出ないと、嗚咽オンリーで何の返事もできない、奇妙な人間になってしまうなと予感しました。
それで、娘と夫のいるリビングを離れ、独りで奥の小部屋へ行くことにしました。
そして奥の小部屋へと続く廊下を歩きがてら、意を決して通話ボタンを押しました。
「はい、○○(本名)です」
――私、株式会社KADOKAWAの……。
その時編集さんがどういう風におっしゃっていたかは覚えていませんが、とにかく「カドカワ」という単語が聞こえただけで、目から涙が溢れてきました。その時点でまだ受賞したかどうかわからないのに「カドカワ」から電話がもらえたんだ、と思っただけで今までのすべてが報われたかのような気持ちになりました。
なんとか落ち着いて話さなければと、心臓を落ち着けるように胸元を軽く叩きながら通話を続けました。編集さんの話し方から「とてもちゃんとした人だ」という感じがひしひしと伝わってきて、さすが、カドカワともなると、すごく、カドカワなんだ。日本の頂点。と思いました。
そしてその後、私は第四回富士見ノベル大賞に入選したことがわかりました。
……続きは第二話で!
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