応援コメント

すべてのエピソードへの応援コメント

  • 関川様、企画に執筆に、お疲れさまでした。
    企画に参加された皆様、お疲れさまでした。
    私は、まあ、大幅に遅れて参加していましたが、なんとかゴールすることができました。これも、みなさまの力作があったからこそだと思います。この場をかりて、企画主の関川様、そして、皆様にお礼申し上げます。楽しかったです。

  • 関川さん、あらためまして、素敵な企画を立てていただき、ありがとうございました!
    そして参加された皆さま、一緒に走っていただいて、ありがとうございました! 個性的で腕のたしかな皆さんと並行して物語をつくるのは、得がたく、たのしい経験でした。
    ”Hell’s Kitchen関川”、、こんな地獄ならずっと浸っていたいですね。
    楽しい時間を、ありがとうございました!

  • 関川支配人様
     腕の立つシェフが、それぞれの個性を生かして生み出した数々の料理。堪能できてとても幸せでした。
     これだけ素敵な作品が出来上がったのも、凄腕支配人がいたからこそですね。
     本当にありがとうございました♪

  • 【Hell's Kitchen関川】の支配人&シェフの皆様

    お題と食材をどう料理してくれようか、と毎週の課題に戦慄しながらも嬉々として取り組ませていただきました。ペースは正直キツくとも、ランナーズハイのような高揚感がありましたし。それは決して自転車操業のようなものではなく、永久機関にでもなったかのようでした。

    今回は意識的にストーリー性のあるものを練習しようというのが個人的に掲げた課題でした。でもコレに関しては書いたと言うよりは書かされたようなものです。全てはお題のお導きのままに。

    ご自身のカラス天狗の連載と併せ、短いスパンでの練度抜群のコースメニュー提示、本当にお疲れ様でした。料理なり展開なり表現なり、注目したことについて、惜しみなくコメントを下さる方が非常に多くて、励みになる以上に、創作上のヒントや学びもを得られました。つまりこの企画には、素晴らしい書き手・読み手が集まってくる引力のようなものがあるのでしょう。

    まあ作る方はともかくとして、これだけのボリュームだと、味わう方はもう少しゆっくり堪能したかったな、というのが正直なところです。

    ともあれ本当にお疲れさまでした。そしてごちそうさまでした!

  • まるでコース料理を堪能した後のように幸せな気持ちです。素晴らしい食材を用意頂き、わたしたちも自由に料理することを楽しませて頂きました。
    関川さんに最大の感謝をお送りしたいと思います。ありがとうございます!
    料理書くのも食べるのもますます好きになりました。ご飯って楽しいですよね。
    素敵な機会を設けてくださり、ありがとうございます🙇‍♀️


  • 編集済

    偉大なる関川支配人、そしてその元に腕まくりして馳せ参じた料理自慢のシェフの皆さま、お疲れ様でした。味わい深い料理の数々、とくと堪能させていただきました。
    皆様と共有できた濃密で楽しい時間は、私の宝物です。
    また、お題の流れに身を任せて物語を作っていく過程で学ぶこともたくさんありました。特に、決まった話数の中での、緩急や展開のバランス感覚を意識できたのは収穫でした。最終話が膨らみすぎましたから、そこはちょっと心残り。今後の課題と致します。次はもっと上手く書ける! たぶん♪

    心に染みるあとがきに、怒涛の2ヶ月半が蘇ります。確かに地獄めいてましたね(笑)
    でも、こんなに素敵な地獄なら何度でも飛び込みたいと思います。
    ありがとうございました!!

  • スポットライトを浴びる、ジェントルマン関川シェフの御姿が見えます…
    ここまでついてこれてよかったですー!。゚(゚´ω`゚)゚。

    創作は地獄でも、生み出されたメニューの数々は極上の味わいであったと私も信じてます!
    関川さん、シェフの皆様、大変お疲れ様でした!
    🍛🥟🍤🐖🍜🍰

  • Hell's Kitchen関川の家畜シェフより

    コース料理のようなお題の数々、道筋がしっかりと示されていたので自由に混沌とした闇鍋のようなストーリー展開をしても問題なく調理できました。
    すべてはオーナーシェフ関川様のおかげです。
    もちろん、共に戦ったシェフのみなさまの料理の多彩さには楽しませていただくと同時に刺激を受けました。
    今回も参加できたことに感謝ばかりです。

    ご馳走様でした!

  • 関川 二尋様

     お疲れ様でした!
     毎回考え抜かれたお題を出題してくださり、感謝しております。
     お題に秘められた思いを読み取って、なおかつ自分の物語に馴染ませる。
     それは難しくもとても楽しい時間でした。
     ご自身のカラス天狗との同時進行は、想像以上に大変だったと思います。
     関川さんだからお出来になることだと思います。
     そして、お名前も心良く貸してくださりありがとうございました。
     フタヒロ天使が営業する【Hell's Kitchen関川】のバラエティ豊かなメニューは、大変美味しゅうございました。
     参加された皆様の確かな腕前に、舌鼓を打ちながらいただくことができました。
     ありがとうございました。そして温かな応援もありがとうございました。

  • まあ、なんて素晴らしい後口上なのでしょうか!
    この最後の語りで席主関川さんの素晴らしさがわかります。
    ヤンチャをしても寛大な心で受け止められ、コトが起こっても冷静なる対処で大岡裁きをされるお人柄が出ていると思いました。
    関川さんのお題に沿うように考えるのは決して難しくは無く、飯テロを兼ねているので、関川さんの方がお題の文章を書かれるのは大変だったのではと思いました。
    このような企画は関川さんしか成し得ないモノだと、改めて今思った次第です。
    私は、関川さんのお題に寄り掛り、ただそこから妄想を膨らませるだけで良かったのですから。
    皆様のお話が関川さんのお題で展開される様は、まるでオーケストラの指揮者がタクトを振られるのに似ているなと思いました。
    まさしく大指揮者関川さんに、感謝を捧げると共に、拍手をお送りしたいと思います。
    お疲れさまでした、そして、ありがとうございました!!パチパチパチパチ(#^.^#)

  • 関川さん、それに書き手の皆様、本当にお疲れさまでした。

    「Hell's Kitchen関川」……なるほど、味わい深いネーミングでした。
    私自身は最初からある程度、話としてパターン化しやすく設定も料理と絡めやすくしておりましたが、他の方々の「ファンタジー」「恋愛もの」「一話完結の時代小説」などの挑戦的な作品を見て「え? このジャンルを料理に絡めて話を進めるの?」と驚かされるばかりでした。

    参加して勉強になりとても良い刺激になったと思います。
    ありがとうございました。

  • 支配人関川様
    及び
    料理人の皆様へ

    「地獄」の課題を「地獄」な思いで振り絞って出してくださった関川支配人。
    「地獄」の課題をやすやすと料理してみせてくださった料理人の方々。
    勉強になりました!

    軽い気持ちで参加したものの、だんだんと「こ、ここは?もしや、噂に聞く料理の鉄人のスタジオでは?」と焦り、他の料理人の作品に感動し、コメントに励まされて最後までたどり着きました。
    ひとえに皆様のおかげです。

    しんどくなかったといえば嘘になりますが、濃密で有意義で楽しく心踊る時間でした。

    本当にありがとうございました!

    久しぶりの何もない金曜日。
    このなんとつまらないことか。
    すっかり馴らされている自分に驚いています。

    このイベントを通じて、今まで交流のなかった先輩方ともお知り合いになれました。
    こんなことがなければ、読ませてもらうだけで応援コメントを書くなど恐れ多くて出来なかったと思います。

    素晴らしい機会をくださった関川様に改めてお礼申します。

    ご馳走さまでした!

  • Hell's Kitchen関川に支配された社畜Chef's。

    腕によりをかけた料理の数々に、愛宕も見習いたい料理方法を多く眺めることができました。どこかでレシピを活かせるよう研鑽いたします☆

    どれも美味しゅうございました (*´ω`*)

  • 関川さん本当にお疲れ様でした!

    素晴らしい企画、お題も心温まり、妄想が膨らむ構成で、すごいことだなと思って参加させていただき、また途中からは読み専で参加させていただき、本当にいい経験ができました!

    皆さんの力作、最終回は思わず涙なものばかりで、出会えたことに心から感謝しています。

    素晴らしい機会をいただけたこと、心より感謝申し上げます。

    本当にありがとうございました!

  • ♪一帆です。

    やっとこさ第十膳の回答を書きあげました。

    企画を立てていただいた関川様、参加したみなさま、本当にありがとうございました
    とても勉強になりました。あと、エピローグを書く予定ですが、もう少しかかりそうです。ここ数日でなんとかしたいと思っていますが、どうなることやら。


    *****

    第十膳は天蓬視点です。最後、主人公変えてみました(笑)


    桂皮シナモンのスーッとした独特の香り。
    奇麗に盛り付けられた皿。
    目の前に置かれたデザートを前に俺は戸惑っていた。

    ―― クリームや、花や、果物が奇麗に飾られているが、どうみても餃子の皮を使っているよな? ということは餃子料理?? いや、しかし、焦がした砂糖の甘い匂いと桂皮シナモンの香りがする。

    俺は、首をかしげるしかない。

    「これは?」
    「こっちの半月型のが甘蕉バナナ餃子。で、こっちの俵型のが林檎の揚げ餃子。そこに、桂皮シナモンと砂糖をふりかけてあるわ」


    *********

    続きは、「妖術士見習いは愛を学びたい」で。https://kakuyomu.jp/works/16816927862494687766


  • 編集済

    皆さま、こんにちは!
    ラストは何とか周回遅れを回避できましたー笑
    飯テロとても楽しかったです🐛
    このような機会を下さった関川さん&皆さまに御礼を! 本当にありがとうございます!

           🐛 🐛 🐛

    「この吉野葛が美味しいんだよね」

    僕は箸できららと光る葛切りを一本持ち上げた。
    樹液のように輝く黒蜜を纏い、絹のようになだらかに垂れている。
    原材料は奈良県産の本葛と鹿児島産の黒糖だけというシンプルなもの、材料のポテンシャルを最大限に引き出した究極の甘味といっていい……

    続きはこちら
    『飯テロ開始します! 〜傷ついた訳あり彼女に一膳の飯を〜』

  • 🐹黒須友香です。
    どう結ぼうかあれこれ考えて、遅くなりましたがようやく完結まで漕ぎ着けました。
    とても楽しく実り多い時間を過ごせたことを、関川さんはじめ皆様に感謝いたします。
    ありがとうございました♡

    ラストメニュー①・②・あとがきの三話投稿です。
    ハムと達月に、お別れの時が迫っています。
    ぜひ、最後まで見届けてくださいね🐹
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862423037971

  • 💎玖珂李奈

    とうとう最後。寂しいです〜。
    関川さん、参加されているみなさま、本当にありがとうございました!

    全文はこちら
    『午前0時の食卓』
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862450734712

    二話、お題にないエピソード『想いは巡り、重なり合う』が続いた後、最終お話となっています。

    主人公:烈(れつ)
    ごはんを食べる少女:紅子(べにこ)
    主人公の元カノ:美奈(みな)
    主人公の幼馴染:桔梗(ききょう)

    💎一部抜粋💎
     アーモンドクリームの入った小ぶりのタルト台を取り出す。元気な色に焼け、甘く香ばしい香りを漂わせて、これだけでも美味しそうだ。
     そこにカスタードクリームと生クリームを合わせた、ディプロマットクリームを絞り出す。バニラビーンズをまるごと使ったクリームは、幸せの香りを振りまきながら、アーモンドクリームの上にふんわりとろりと広がっていく。

  • やっと投稿できました!
    前後編とエピローグ、計3話です。やっぱり長くなっちゃった…

     🍻

    「どうぞ、召し上がれ」
    「ほあぁぁぁ〜……」

     デザートの皿を見たテンは、瞳をキラキラさせて声にならない歓声を上げた。皿の上には、油揚げのガレットと油揚げのひとくちミルフィーユが美しく盛られている。

    「あぶらげなのに、甘いにおいがするぅ。なんで? なんでぇ?」

     ふふふ。サプライズは大成功!

    「アイスが溶けちゃうから、ガレットから食べようか」

     四角く開いた油揚げの内側にバターを塗り、フライパンへ。輪切りにしたバナナを並べて四つ角を内側に折りこみ、油揚げをパリッと焼き上げる。中央にバニラアイスを載せ、砕いたナッツを散らしてキャラメルソースをたっぷりかければ出来上がり。もちろんキャラメルソースも手作りだ。

    「ん〜〜〜、あまくて冷たくって、カリッとふわっとで、美味し〜〜〜い!」

     ナイフとフォークを握ったまま、グーにした両手でほっぺたを押さえた瞬間。ふわふわのライトブラウンの髪から狐の耳がピョコンと飛び出した。
     最近では耳も尻尾も滅多に出さなくなっていたのに、珍しい。それだけ驚いたのだろう。

     瞬く間にガレットを平らげ、ミルフィーユを指差す。

    「これ、なあに?」
    「油揚げミルフィーユ。ひとくちサイズにしてあるから、いっぺんに…」

     説明しているそばから、大きな口でパクッ。

    「ん〜〜〜、こえもおいひぃ〜〜〜」

     今度はハーフパンツの裾から尻尾がボムッ! ピコピコ揺れるふわふわの尻尾が、言葉よりも雄弁に美味しさを物語っている。早起きして作った甲斐があるというものだ。
     一口大に切った油揚げをトースターでカリカリに焼いて粉砂糖をまぶし、カスタードクリームとスライスしたイチゴを挟んで層にしていく。仕上げにイチゴと生クリームを飾れば完成だ。

    「ミルフィーユは冷蔵庫にまだ入ってるから、取っておいで」
    「やったぁ! おかわりー!」

     椅子から飛び降りてお皿を大事に抱え、テンは尻尾を振りながら小走りにキッチンへ。おいおい、そんなに急いだら転ぶぞ。

     油揚げ自体は味が強くないから、油抜きさえしっかりすればデザートにも使えるのだ。テンが来てからというもの、油揚げレシピのレパートリーが急激に増えた。将来は油揚げ料理専門店でも開くかな……


     🍻

    全文はこちらからお願いいたします。
    「第十膳『とっておきのデザートをキミに』
    https://kakuyomu.jp/works/16816452220246177194/episodes/16817139555862152192

    ついに、終わってしまいました。寂しい……
    皆様の作品を読みにいきたいところですが、残念ながら力尽きました。もうヘロヘロですw
    なので、ヨムヨムは明日以降にさせていただきます〜
    ペコリ。

  • 第九膳『再会のメニュー』への応援コメント

    ♪一帆です。

    かなり遅くなりましたが、投稿しました。今更感、満載で申し訳ないです。


    *****
    天蓬さんが作ってくれたのは、呉の国の名物、丸い形の蒸し餃子。
    話には聞いていたけれど、可愛らしい薔薇の花のような餃子の形に、思わず顔がほころぶ。

     ―― 天蓬さんって器用だなぁ。

     蒸籠からふわわっと白い湯気がたって、薬草と羊の肉の混ざった何とも言えない匂いが鼻をくすぐる。

    *****

    続きは、「妖術士見習いは愛を学びたい」https://kakuyomu.jp/works/16816927862494687766


  • 編集済

     🎐風鈴
     遂に最終回。やはり長めになっちゃいましたw
     関口ヒトヒロ26歳は、事故前に同棲していた沢口エリカ26歳の記憶を取り戻そうとデザートで奮戦するのだが・・・・。

     ◇
    「どうだ、わっしょい!このデザートスムージーは!」
    「うん、美味しい!」
    「だろ?で、想い出したか?」
    「こ、これって?」
    「うんうん!」
    「これは、もしかして?」
    「うんうん!」
    「バナナミルクよね?すぐ出来て幸福ホルモンのトリプトファンが出来るって誰かが言ってた?」
    「誰かわかるか?」
    「わかんない」
    「うん、まあ、最後まで飲んでみろよ!」

     さあ、例の罠にかかれ!

    「ごっくんごくごくごっくんこ!えっ、なにこれ!」
     涙を流してるぜ!
     よし!ついに、オレとの想い出が蘇ったか!
     オレは、直ぐに用意していたお水を差しだす。

     このデザートスムージーであるバナナミルクには、隠し味が仕込んである。
     先ずは前日に冷凍した皮を剥いたバナナとミルク適量をミキサーで混ぜ混ぜ。
     次に隠し味としてコショウをほんの少々と七味唐辛子を少しだけ、ホントに少しだけ入れてゆっくりと攪拌する。
     コショウは問題ないのだが、この七味唐辛子、ちょっとダマになる。ミルクに比してバナナを多めに入れているのと、振りかける時にちょっとだけって感じにして大きく振り掛けないので部分的に多目にかたまって出てしまうのだ(容器の問題?)。なのでそれがねっとりしたバナナにくっついてダマとなり、底の方へ沈むことが多い。
     つまりはこの突然襲った辛さってのは、絶対に記憶に残ってるハズ!

    「うんぐうんぐうんぐ、ぷはーー!!なにこれ?イタズラ?うん、もう、ホントに子供の頃から可愛い私にイタズラするんだから!もう、止めてよね、大人なんだし!」

    「あのさあ、最後の辛いヤツ、なんか思い出さない?」
    「バカね、唐辛子か何かでしょ?それがナニ?」

     くぅーーー、奥の手だったのに!
     これもダメなのかーー!!
     人間は舌の記憶は忘れないって言うんだけどな。
     昨夜からオレは記憶喪失について調べたのだ。
     解離性健忘症。
     事故などがトラウマとなって、その原因と関係した事などを忘れてしまうのだ。
     奥の手は失敗したが、まだ奥の手の奥の手を用意してるんだよ、オレは!

     オレ達は、事故から帰って来たオレの愛車で想い出のカフェへ行った。
     そこで想い出のケーキを注文する。
    『サンセットビーチ』というケーキ。
     イチゴのショートケーキの上に生クリームが山盛りにかけてあるだけだが、人気のケーキだ。

    「どうだ?ちょっとは何かを思い出した?」
    「そうね、確かにこのケーキ、懐かしいような味かも?」
     オレには、苦い味だったがな。
     っていうのは、このケーキの但し書きに、『夕陽が海に沈む時、人は哀しくも懐かしい大自然を想う。そして、人はイヤな事をリセットして静かに眠りにつく。』なんて書いてあり、それが詩的でステキだねと話し合ったから。
     その夜、ベッドの上にお互い寄り添って寝た。
     いよいよだと思った時、エリカは静かに寝息を立てて寝てしまった。

    「で、その懐かしいって?」
    「わたし、想い出したことがあるわ」
    「うんうん」
    「ベッドに横になっていて、直ぐに夢を見たの」
    「うんうん、それで?」
    「わたし、人魚になって、海の中を泳いでいたのね。綺麗なサンゴが踊ってたり、お魚達が歌っていたり。そこへイケメンの一郎君がやって来てお姫様の私と踊るの。それにヤキモチを妬いたイケメンの次郎君が私に求婚して。でも、私は一郎君が好きって言って、大きな玉手箱を持って帰って行く一郎君の後を追うの。陸には上がれない私は、一郎君が他の女性と結婚するのを見て涙を流して泡となって天国へ行くのでした。おしまい」

     なんか、いろいろとごっちゃになってるような話だな。

    「えっと、その一郎君って誰に似てた?」
    「えっと、後藤君の友達?」
    「ちっ!まあ良いよ。だったら、オレは登場してなかったのか?」
    「あっ、そう言えば、ヒロちゃんに似てたのが居たよ」
    「おっ、それ大事だから!そいつはナニをしてた?」
    「えっと、一郎君を乗せてきたカメに似てた!」
    「うん?カメ?」
     なんだよ、それ?
     うん?でも待てよ。これは意味深発言だぞ!カメでもかめへん(構わない)かも!
     オレは寛大な心の持ち主だからな!

    「じゃあさあ、エリカは寝てたんだろ?だったら、隣りとか、誰か居たのを覚えてないか?」
    「うんと、えっとね、次郎君だっけ?三郎君だったかな?」
    「だから誰それ?」
    「一郎君のお友達のお友達?」
     はあ、まあ、エリカは彼氏がやたらと居たから、そこはオレも寛大な心で!
    「くっ、だったらオレは?」
    「だから、デバガメ?」
     ぶちっ!!
     オレの脳の一部の血管が切れた音がした。

     コイツはバカだ!
     たぶん、デバガメ(痴漢、覗き魔、変態などなど)の意味も分からずに言ったのだろう。
     だが、オレの寛大な心は砕け散った!
     オレは、もうエリカを諦めた。
     コイツの可愛さで男の遍歴とか、全て考えない事にしていたが、もう限界だ。
     エリカ、お前って、所詮オレの事をそんな風にしか思ってなかったって事だよな!
     記憶喪失とか、もうどうでもいいや!
     お前の相手はオレでなくても良いってことだよな。
     バカらしいぜ!
     オレ、夢を見てたんだな。
     長い夢を。

     こうしてそのカフェを出て、エリカを実家へと送ったのだった。

     おしまい

     ☆エピローグ
     実家へ送る車内で、オレは絶唱していた。
     もちろん、ヒトヒロさんば、だ!
     隣りのエリカなど、もう眼中に無いから遠慮なくオレは熱唱した。
     どうせ、エリカなんか耳にいつもイヤホンをしてるし。
     車内には重低音のリズムが響く。
    「エリカ、着いたぜ!・・うん?寝てるのか?」
     エリカが突然歌い出した。
    「オーレ―、オーレ―、ヒロちゃんサンバ!オーレ―、オーレ―、だだだ、だいすきーヒロちゃん!」
     そう言って、鼻をすするとオレに抱きついて来た。
     オレの寛大な心が再びエリカのムネの膨らみの感触の元に再構築された。
     そして、オレとエリカは熱いキスを交わした。
     よく見ると、エリカはイヤホンを左耳にはしていなかった。
     そして、この時のキスの味は、ちょっぴり塩味だった。
     料理も人生も、つまるところ塩味が決め手になるのかもしれないと、その時思った。

     THE END

     ◇
     すいません、長かったですw
     これでも端折りましたが、もっとハチャメチャ度を出したかったですw
     そして、私には、なかなか短編の間合いというモノがまだ分かっていないようです。
     反省はともかく、関川さんには長きにわたりありがとうございました!
     また、皆様には有難いご感想を頂き、チャレンジした甲斐がありました。
     この経験を糧に、お料理関係のお話も少しは書けたらなと思いました。
     皆々様には感謝しかありません!ホントにありがとうございました!!

  • こんにちは。久里琳📞です。
    とうとう最終話。素晴らしい企画を運営してくださった関川さん、いっしょに走ってくださった皆さま、ありがとうございました! そして、おつかれさまでした!
    皆さんの最終回、ゆっくり読ませていただこうと思います。

    📞 📞
    これが最後なんだって、そんなわけないだろうとだれかに異議を申したてたくなったけど、いったいだれに言えばいいんだろ。
    なによりぼく自身の胸のなかに、予感があるのがいけない。

    もう帰っちゃいけないと、彼は言った。この前ここでごはんをつくったときのことだ。しょうじき味はひどいものだったけど、それでもぼくとしたら相当おもいきったことだった。

    けがして寝ていたとき、いつ死ぬかも知れないなっておもったら、彼のことを思い出したんだ。こんなに美味しい、いろんなごはんがあるんだって教えてくれた。人のぬくもりがうれしいんだって教えてくれた。
    なのにぼくはなんにも彼に返してないって気づいたつぎのしゅんかん、ぼくは彼の前に立っていた。
    ・・・・・・

    📞つづきはコチラ📞
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862534372546


  • 編集済

    いよいよ最終回。ここまで辿り着いてほっとしています。最後、皆様の作品をゆっくり読んで回りたいなと思います。🍏蒼翠琥珀です。

    🍏🍏🍏
     カウンター席に腰を落ち着けた薬師如来の向こう側で、六科は黙々と作業を続けている。特に言葉を交わすでもない。
     並んで腰掛ける普賢菩薩は、一体何が出来上がるのかと、ずらりと並んだグラスを不思議そうに見つめている。
     六科はご機嫌だ。
     グラスごとに賽の目にした色とりどりの寒天ゼリーを詰め込み、それぞれの色に合わせたシロップを少しばかり。受け皿にはレースカットの薄い紙コースターを乗せ、カチャカチャと柄の長いスプーンを添えている。

       (中略)


     今日は特別な日。そういう日にはデザートがぴったりだ。
     亀石の旅の充実を祈願して、あらためてお祝いをしようというのだ。たまたま店に居合わせたフルクたちやわたしも、ついでに混ぜてもらうことになった。

     六科はまず、二つのグラスにクラッシュアイスを追加し、サイダーを注いだ。
     それぞれストロベリーレッドとエメラルドグリーンがすうっと引き上げられる。その上にバニラアイス。フレッシュミントを添えて、アイスの頭にはホイップクリームをひと絞り。その上にさくらんぼを乗せた。
     赤は翠嵐の前に、緑は翡翠の前に。互いの瞳の色でもあるその色を見て、二人は同時にほうっと吐息を漏らした。

     次に薬師如来と普賢菩薩の前には、それぞれミントソーダとレモネード。頭に乗せるものは、みな同じらしい。
     爽やかな淡いグリーンとほとんどクリアなそれらを、二人は合掌して受け取った。

     咖喱菩薩にはオレンジの寒天にジンジャーシロップのサイダー割りを、チェスナには鮮やかな濃いピンク色の青じそソーダを。二人共感嘆の声を上げたが、咖喱菩薩は慌てて合掌を付け足した。

     フルクと私の分は、ちょっと趣向を変えて炭酸ではないものらしい。それぞれ少し色味の違う、ブラウンがかったクラッシュアイスが追加される。
     フルクの元へはアイスコーヒーが注がれた方を届けられた。わたしの前にはアイスティーだ。
    「玉木さん、いつも居てくれてありがとうな」
     と六科が声を掛けたところで、その場に居た面々は、ようやくわたしの存在に気づいたらしい。まあ、いつものことだ。静かすぎるからだろう。
     わたしはもう一つのボックス席の中で、有り難くグラスと六科に頭を下げ、心の中で礼を述べた。

     最後は桜シロップと花弁の塩漬けをつかった桜ソーダ。
     もちろんバニラアイスが盛られ、さくらんぼも乗せられる。最も統一感のある作品かもしれない。
     そこで、そうか、と合点がいった。
     このデザートは全て、桜井鉄兎のために仕組まれたものだったのだ。桜の塩漬けも、さくらんぼも、きっと夏を待ちわびる味がすることだろう。
    🍏🍏🍏

    一応、ハッピーエンドのつもりです。
    https://kakuyomu.jp/works/16816410413893461604/episodes/16817139555274758569


  • 編集済

    🌸悠木柚です。短期間にたくさんの作品を拝読でき、幾つもの感性と知識に触れることができました。この場にて、お礼を申し上げます。デザートはそれを踏まえてリンゴにしました。この詩を皆さまへ、もしくはあなたに向けて。


    あなたから
    りんごをひとつ貰ったの
    がまんできずに食した後で
    とっさにうしろを振り返る

    うきよ離れしその歌舞伎
    さらさら流れる黒い髪
    よぎりのようなその瞳

    うなじに迫る艶めきし牙を
    なすすべもなく受け入れる

    らせつと知ってなおも愛おし


    fin

  • 🍁空草 うつを です。
    遂に最終回、振り返れば感慨深いものがあります……。
    ここまで企画を運営してくださった関川様、拙作を読んでくださった皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました!

    最後のお題の一部分を載せます。

    🍁🍁🍁

    「そろそろ時間だな」

     貴重品だけを手に取って、家を出た。

     飛行機の離発着の轟音が響く、国際空港。俺は、国際線の出口の前でそわそわと待っていた。周りには、英語で名前のような文字が書かれた看板や子供連れの客が俺と同じように出口に視線を注いでいる。

     今か今かと待ち侘びていれば、大荷物を抱えた人達が堰を切ったようにゾロゾロと流れ込んできた。
     迎えに来た家族と抱き合うサラリーマンといれば、颯爽と去っていく人もいる。英字の書かれた看板に走り寄ってきて覚えたての日本語で挨拶をする学生に、長時間のフライトで疲れ切った顔をする人もいた。

     その中に、待ち焦がれていた人の姿があった。

    ……つづく。

    🍁🍁🍁

    続きは連載中の『嗚呼、愛しの絶滅種!』にて公開しております。

  • 🐤小烏つむぎです。
    十話まで、ありがとうございました。
    とても勉強になりました。そして、とても楽しかったです。
    来週から気が抜けてしまいそうです。
    皆さんの作品をワクワク読ませていただきました。
    最後のお話しも楽しみにしています。

    さて、時代劇で進めてきましたが、最後は現代です。
    お楽しみいただけたなら嬉しいです。


    今回のチラ見せ。

    **************

    こんにちは。
    さようなら。
    私たちはどちらを選ぶのだろう?あれからずっと考えていた。



     うちは代々料理屋をしている。

    祖母ばあさんが体を悪くして店に立てなくなったとき接客を引き継いでくれたのは、子育てが一段落した妻の久子だった。久子は元々店の常連で、ここの餃子を毎日食べたいから嫁に来たのよと、よく笑って客に話している。それを聞いた初めての客はたいていその餃子を注文してくれる。接客上手な妻なのだ。

    私たちには息子が一人いる。春には高校を卒業するのだが、ずいぶんと進路に悩んでいたようだった。

    それが先日、料理屋を継ぐと言った

    ************

    https://kakuyomu.jp/works/16816927862577875744/episodes/16817139555510404081

    よろしくお願いします。


  • 編集済

    「良いのかな? 悪いねえ。こんなサービスしてもらっちゃって」
     その年配の客は嬉しそうに顔をほころばせた。
    「構いませんよ。それに他に客もいませんし、あなたが最後のお客様になりそうです。ただ本日は開店した記念の特別な日なので、わたしも一緒に食べながら話でもさせてもらって良いですかね」
     構わないよ、と彼は飄々とした風情で肩をすくめてみせる。
     
     あの大黒様と過ごした日々から数年が過ぎていた。わたしはその後、親戚に頭を下げて金を借り集めてどうにか自分の店を立ち上げたのだった。もちろん最初は良い顔をされなかったのだが、わたしが丹精込めて作った料理を食してもらうことで「これなら繁盛するだろう」と納得してもらうことができた。

     店と言っても十人も客が入ればいっぱいになる小さな洋食店だ。しかし、わたしなりに美味しさを追求した料理が口コミで広がり、客足も順調に伸びていた。経営も軌道に乗っており、借金もいずれは全て返済できそうな状況である。

     週末などの混雑時はもう一人雇っているバイトの大学生がいるのだが、今日は平日なのでわたし一人で切り盛りしていた。

     目の前のカウンターに座っているこのくたびれた雰囲気の中年男性は、秋ごろにだけふらりと現れる変わった常連客である。しかし、どういうわけかいつも「わたしが本当に客に味わってほしいと思っている、その時の力を込めたメニュー」を注文してくる。そしてあれやこれやと批評しながらも、最後は全部平らげる変わった客なので印象に残っていた。

     もうラストオーダーを過ぎた今の時間帯では客も来ないだろうし、今日はこの風変わりな常連と一緒にサービスとして作ったデザートを食べながら話をするのも悪くはないだろうと考えたのだ。

     私たちの前に置かれているのはココアパウダーで覆われた二つの層に別れたスポンジケーキ。かすかに匂うのは甘いコーヒーシロップの香り。そう、ティラミスである。

    「それじゃあ遠慮なくいただくよ」
     彼はそう言いながらフォークで小さく切って、ティラミスを口に入れる。わたしも「どうぞ」と言いながら同じように食べる。
     口の中でココアとチーズクリームの味がふんわりと混ざった。それに遅れてコーヒーシロップを染み込ませた下の層のスポンジケーキが口の中でとろけて舌を喜ばせてくれる。
     目の前の男性も「たまらない」という表情で目を細めていた。
    「素晴らしいね。チーズのコクのある甘味とコーヒーシロップの甘みが合わさって、幸福感が頭を突き抜けそうだ」
    「そう言ってくれると嬉しいです」
     ティラミスというのは本場イタリアでは「私を元気づけて」「ハイにして」という意味があるそうだが、その名に違わない味になったと思う。試作品のつもりで作ったがこれならばメニューに採用しても良いだろう。

    「いやあ、大した腕だよ。……きっと作っている人の気持ちがこもっているんだね」
    「あはは……」
     満更でもない気持ちでわたしは頷き返す。
    「ところで、あれは何だい? 洋食がメインの店で内装も洋風なのに珍しいね」
     その男性はキッチンの奥の壁を指さした。そこにあるのは小さな神棚だ。
    「飾ってある像からして、大黒様を祀っているのかい?」
     社の隣に置かれた木像を見やって、彼は続けざまに問いかける。

    「ああ。実はですね。……わたしは昔、本物の大黒様に会ったことがあるんです」
     冗談と受け取ったのか、わたしの突拍子もない話を彼は驚きもせずに「ふうん」と受け入れる。
    「それはさぞ、貴重なありがたい経験だったろうね」
    「いいや、とんでもない」
     わたしはしかめ面で首を振ってみせる。
    「なんせ、行き場所を無くして困っていたところを御馳走したのに、ただ飯ばかり食べてご利益をろくにくれやしなかったんですよ。おまけに鈍感で気まぐれで、人がさりげなく願いを伝えようとしても知らんぷりでしたからね」
     悪態をつくわたしに「ほほう……」と中年男性はあいまいに笑った。

    「でも、私の作った料理をなんだかんだで美味しいって言っていつも満足そうに食べてくれました。そのおかげで自信を持つことができて、もう一度店を開く決心がついたのですよ。まあそれが結果的にご利益になったと言えなくもないですが」
     その言葉にその中年男性は「そうですか」と応える。

     ふと、わたしは「おや」と口調が変わったことに違和感を覚えた。そして同時になぜか電灯が切れて部屋がうす暗くなる。
     また室内なのにどこからか生暖かい風が吹き始めたではないか。
     唐突に漂う不気味な雰囲気に何が起きているのかとわたしが戸惑いを隠せずにいると、あの男性客がうつむきながら「ヒヒヒ」と声をもらしながら立ちあがった。
    「ところで……その大黒様っていうのはこんな顔じゃあありませんでしたかぁ?」
     そこには、あの初めて会ったときの清廉な狩衣を纏って打ち出の小槌を持った大黒様の姿があった。
    「ああ、はいはい。そんな二枚目気取りのふてぶてしい顔でした」
    「……驚かないんですね」
     なぜわざわざ、そんな怪談風の演出をするのか。
     わたしは呆れながら切れた電灯のスイッチを入れる。明るさが戻ったところで彼に向きなおって答える。
    「ときおり変に味にうるさい割に、最後まで食べてくれる偏屈な客がいるなーと思っていたので、もしかしたらと思っていました」
    「なるほど。つまり私の神々しさは姿を変えても隠し切れなかったというわけですね」
    「人の話、聞いて?」

     まったく。あれから店を出してもなかなか姿を現さないので、こちらはいつ約束を守るのだろうとやきもきしていたのに。そんなわたしの気持ちを知ってか知らずか、彼は笑顔で語り始める。
    「まあ、本当はもう少し頻繁にお邪魔したいのですが、神の身としては神社をあまり離れるわけにもいかなかったのです。……でもこの時期は神同士の集まりが出雲であるので、出かけた帰りに寄り道するつもりで客として来ていたのですよ」
     ああ、神無月には日本中の神様が集まって会議をするのだったか。それで毎年この時期だけ現れたわけだ。

     とその時、目の前で彼のお腹がまたも「ぐぅ」となった。わたしは出会った時のことを思い出して苦笑いする。
    「夜の定食とデザートだけでは足りませんでしたか。どうしましょう? ……まだ何か、めしあがりますか?」
     折角、本当の姿になった彼と再会できたのだ。また料理を囲んでいろいろ話がしたかった。
    「おや、良いんですか? 既にラストオーダーの時間を過ぎているようですが」
     そういいながらも彼は嬉しそうに身を乗り出している。

    「構いませんよ。……なんならお茶漬けでも、カレーでも何でも作ります。なにせ、お客様は『神様』ですから」
     わたしの冗句に彼は一瞬「きょとん」とした後で、クスクスと笑ってみせたのだった。

    おしまい。

    ❄️ ❄️ ❄️

    ❄️雪世明良です。
     最後までお付き合いいただきありがとうございました。

     前半のお題編の主人公のモノローグは「薄々『風変わりな客』の正体に気が付いていた『わたし』が最後に別れたときのことを思い出していて心の中で呟いていたもの」と想像で補完していただけると幸いです。

     主人公「わたし」は最初、男性のつもりで書いていましたが、読んでくださった方の反応を見ていて「女性でも成立するかな」と思いどちらでも解釈できるようにまとめたつもりです。

     もし楽しんでいただけた方がいましたら嬉しく思います。それでは。

  • 💐涼月💐です

     いよいよラストですね!
     関川さん、楽しい企画をありがとうございました。
     皆さん、素敵な作品をありがとうございました。
     今回はなんとか間に合いましたので、早めにあげさせていただきます。
     一緒に駆け抜けることができて感謝です。お疲れ様でした。

     💐 💐 💐

     俺がとっておきのデザートに選んだのは、艶やかな焼き色とクリーム色のコントラストが絶妙なベイクドチーズケーキ。

     砕いたクラッカーと溶かしバターを混ぜてケーキ型の底に敷き詰める。
     クリームチーズとサワークリーム、卵や砂糖を混ぜ合わせて上へ流し入れてオーブンへ。焼きあがったら冷蔵庫で冷やしておくとコクが増す。

     続きはこちら  3話構成になっております。お時間のある時に。
        ↓
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862602812315/episodes/16817139555480380737

  • 🍷出っぱなし

    ついに最終回ですね。
    関川さん、最後までお題と企画運営お疲れ様でした。

    🍷🍷🍷


     わたしたちの前にはバームクーヘンが置かれている。
     実にシンプルな見た目だから、最後のデザートとしてはインパクトにかけるかもしれない。
     タマは首を捻って不思議そうに見つめている。

    「ここでバームクーヘンなんて、相変わらずロマンチスト、ね?」
    「さすが鈴月、気が付いてくれたようだね? そう、バームクーヘンには『幸せが続きますように』という意味があるんだ。わたしたち家族はもちろん、これから再構築される世界にも、ね」

     わたしが説明をすると、タマはまるで宝物を見つめるように目を輝かせた。
     鈴月と目を合わせ、お互いに目を細める。

    「へん! 何が幸せに、だ、くだらないよ! この世は一部のクソ野郎共が牛耳っている、畜生共はこき使われて搾取されるだけなんだ! ささやかな幸せで良いって? そんなもん自分の気持ちに嘘ついてごまかしているだけだ! 何をしても報われない、こんなクソッタレな世界で幸せになれるもんか!」

     出刃が家族団欒に乱入してきて吠え立てる。
     ここはムー大陸の核の中だ。
     タマと同じく同化している出刃ならこの空間に侵入することは可能だ。
     わたしは冷静だったが、この尊い時間を邪魔されて怒り心頭の者がいた。

    「ウニャー!」
    「アベシ?!」

    ・・・・

     日本国首都某所、高層ビル群が森の樹々のようにそびえ立つコンクリートジャングルだ。
     そこからやや郊外のベッドタウン、そこにわたしはいた。

     『お食事処 タマの鈴』の暖簾をかけ、表の看板を準備中から営業中にひっくり返す。
     住宅兼の店内に戻るとすぐにドアの引かれる音に振り返った。

    「ただいま! ごめん、パパ! 部活で遅くなっちゃった!」
    「ああ、おかえり、《《タマミ》》。急がなくていいからゆっくり着替えてきなさい」
    「はーい!」

     一人娘のタマミは、セーラー服のスカートをはためかせながら、住居部分の階段をドタドタと駆け上がる。
     高校生になったが、まだまだ子供っぽさが抜けきれていないところに思わず笑ってしまう。

     再び、引き戸の引かれる音が聞こえてきた。
     今度こそ、お客さんだろう。

    🍷🍷🍷

    続きはこちらです

    飯テロリスト関川様、猫耳を拾う
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862486888667/episodes/16817139555653662386

  • ☆☆☆愛宕☆☆☆

     目の前に焼き上がったカステラパンケーキが出てきた。
     男同士のデザートタイムに、皿などは使わない。パンケーキを焼くのに使っていたスキレットを、そのまま厚みのあるカッティングボードに乗せるだけで十分だ。とは言っても、俺の体は子供のまんまだけどね。

     おほー!
     自慢気に「三十分かけてじっくりと焼いたんだ」と言う関川くんには返事をせず、俺はパンケーキをマジマジと眺めた。スキレットからはみ出るふっくらとした姿は、実に華やかで美しい。上に乗ったバターもスライスチーズみたいで、ペロッと剥がしてそこだけ先に食べたくなる。

    「生クリームやシロップは別の器で用意したから、好きなだけ取っていいからね」

     さすがは関川くん。
     できたてのパンケーキは、まず何もつけないで味わうのが作法だ。俺はナイフを入れて一口サイズにカットしてみた。うーむ、何という柔らかさだ。これは、口に入れた瞬間に溶けてなくなってしまうタイプだぞ。

    「おぉ! とろけるっ!」
    「だろう! 焼く前、焼いてる時、焼いた後、どれもタイミングを外したら失敗作となるスペシャルパンケーキなんだ。粉にも拘りをもってるんだよね」
    「パンケーキミックスではないのか?」
    「ミックスには違いないけど、リリコイの粉末も入ってる特別なやつさ」
    「なっ! リ、リリコイ……」

     リリコイと洒落た言い方をしているが、パッションフルーツのことだ。俺の大好物でもあるパッションフルーツ……だから甘さの中に、ほんのりと酸味が漂っているのだな。いいじゃないか、いいじゃないか。

     生クリームとメープルシロップを足し、キンキンに冷えたブルーベリーを数粒散らして、第二回戦へと突入だ。

    「スキレットの熱で、シロップがジュージュー鳴いている」
    「ずいぶんと渋い表現をするね。前から思っていたけど、君は子供を姿をしていても大人の雰囲気を持っているな」
    「そのことなのだが……」

     俺は、自分の体に起きていた不思議な現象を正直に話した。
     気が付いたら子供の体になっていたこと。関川くんの料理に「美味い」と叫んだ日の夜には、一度大人の体に戻ったこと。もしかしたら、今日もこうして話している影響で、大人の体に戻るかもしれないということ。どれも関川くんは、真剣な表情で「ふむふむ」と聞いてくれた。

    「と、いうわけだ。なので、食べてる途中で元に戻ってしまっても驚かないでくれ」
    「実際に目の当りにしたら驚くかもしれないけど、まぁ面白そうだね。あと、美味いと言ってくれて嬉しかったよ。ありがとう」

     関川くんは、ナイフとフォークを置いて深々と礼を述べた。いやいや、礼を言うのは俺の方だ。何もお返ししてあげてないのに……今日は皿でも洗って……ん? あれれ?

    「本当だ……急に大人になった……」
    「おいおい、マジかよ。勘弁してくれよなぁ。できれば子供のままでお別れしたかったのに。関川くん、ほんと申し訳ない!」
    「あははっ! 構わないよ。面白いものを見せてくれて僕も嬉しい。どういう仕組みなのかわからないけど、さっきまでジャージ姿だったのに、今はスーツ着てるんだね」
    「そうなんだよ。それに着ていたもののサイズだって変化してるはずなのだが、下着までピッタリなんだ」
    「ふーん。でもまぁ、そんなこともあるんだろうね。貴重な瞬間を見ることができて、僕はラッキーだ」
    「ふっ、前向きだな。関川くん」
    「それが美味い料理を作るコツなのさ」

     俺たちは世界の『過去』を語り合い、『今』を語り合い、『未来』を語り合った。そして、生きてゆくに欠かせない『飯』についても語り合った。気が付けば、ふわふわのパンケーキも平らげていた。

    「今日も美味かったよ。ごちそうさま」
    「こちらこそ、楽しい時間をありがとう。また来てくれるかい?」
    「こんなムサイ親父の姿でも良ければ……」
    「わからないよ。また子供の姿になってるかもしれない」
    「かもしれないなぁ……」

     爽やかな優しい風が俺たちの間を抜けて行った。さぁ、ここらでお暇(いとま)しよう。俺は「じゃあ」と軽く手を挙げて、関川くんに背を向けた。振り向かなくてもきっと彼は、あの角を曲がるまで見送ってくれていることだろう。



     さぁて、明日は浅草だ。何を食べようかなぁ――。



     ハーフ&ハーフ企画掌編/『子独のグルメ』
     お立ち寄りいただき、誠にありがとうございました☆

  • 第九膳『再会のメニュー』への応援コメント

    🎐風鈴
    今回、最長の長さで申し訳ございません。
    会話だけでもお読みくださいませ、ぺこりん。
    ツレ→エリカということで、お願いします。

     ◇
     料理が目の前にどーんと置かれる前に、オレは、キャベツのぶつ切りを齧っていた。
     何も付けずに、よく噛んでからビールで流し込む。
     キャベツをただそのまんま食べる。意外と甘いんだ。
     オレはエリカとお金を貯めるために食費を切り詰めていた。
     エリカと同棲することになったのも、二人で住んだ方が家賃の節約になるからっていうのもあった。
     エリカはお金を持ってはいたが、すぐに使ってしまう。
     そんな女なのだ。
     お金については何不自由なく過ごしてきた女だ。
     だが、そんな事をしていたらオレなんかと一緒になった場合にはあっという間に金欠になってしまう。
     オレ達は話し合って、先ずはキャベツから始めたのだ。
     何も付けずに食べること、それは彼女からしたらとんでもない事だったようだが、でもかえって新鮮なようだった。
     だから、キャベツはできるだけ生でも良さげに食べられる新鮮なモノにしている。

     そして、このキャベツのぶつ切りが出てきたときに、すでにエリカが作る料理は何なのかがわかった。

    「いただきます!」
     エリカは、オレを探るように見つめる。
    「美味しいよ!ソースとの相性が抜群だね」
    「うふふ、良かった」

     この料理は、オレが今と同じ様に、キャベツのぶつ切りを出してからこしらえたモノ。
     同棲した時に、最初に作った料理だ。
     先ずはキャベツで節約の心を知ってもらい、次に料理の極意を知ってもらう。
     その極意とは、如何に安く美味しく食べるのかを追及することにあり、だ!

     安物の豚バラ肉も、とんかつ風に為せば成る。
     肉は薄くてもそれを重ねるとミルフィーユ仕立てになるのはその一例だ。

     そして今回は、豚バラ肉のピカタ。
     豚バラに塩コショウして薄力粉を振りかけ、溶き卵にくぐらせてから焼く。
     豚バラは薄いので、早く焼ける。
     溶き卵に粉チーズとかを混ぜるのは正式なポークピカタだが、粉チーズとか使わない。ついでに余った溶き卵で普通に卵焼きも作れる。
     この料理、シンプルにして早く、かつ美味い!
     キャベツの千切りを添えて、ハイどうぞ、だ!

     ソースは、オーロラソースと、とんかつソースを用意してある。
     オレはオーロラソースが大好きなのだ。

    「じゃあさあ、オレ、お返しにちょっとだけアレンジするよ。食べてみて」

     オレは食パンを2枚取り出して、それをオーブントースターで軽く焼くと一方にはオーロラソースを、片方には粒マスタードを全体に塗る。
     オーロラソースの方にピカタを2,3枚乗せ、その上にキャベツの千切りを多目に乗せて、粒マスタードのパンを上からぎゅっと押さえる。それを二つに切って出来上がり。

    「美味しい!これも、もっと早く教えてよね!」
     ――――えっ?教えてとか初めてじゃなかったの?
    「えっと、ピカタは私の得意料理、なのになんでヒロちゃんが教えたとか?わたし……」
    「えっ、なに?オレが教えたに決まってるじゃん。一緒に作ったの、覚えてないわけ?」
    「なんかエラそう!ヒロちゃん、ピカタ作ったの、私だからね。ヒロちゃん、反省!」
     ――――一緒に作った?ウソでしょ?ヒロちゃんは良く冗談言うからね、昔から。騙されたりしないからね!


    「反省!」
     えっ、オレ、なんも悪くないから!・・ってことを口走るとこれが永遠に続くからな。
     オレは、顔の前で両手を合わせ目を閉じた。

    「……ナニしてるの?」
     ――――あれっ?何で反省とか言ったのかしら?

    「はあ?いつもの反省だろ?」
    「バカじゃないの?」
    「はあ?エリカが反省って言ったからだろ?おちょくってんのか?」
     反省は、同棲時代の習慣だ。
     そこ、ボケるとこか?
    「ひど~い、こんな可愛い子に酷い事言って、男としてどうなのかな?」

     オレは、黙って反省のポーズをした。
     もう、反論は止めだ。
     しかし、コイツ、ボケが上手くなったな。
     病室でも、後藤の手前、久しぶりに会ったとかいうフリしてたし。

     ――――あれっ?これって、何度も見たことがあるような?わたし、ヒロちゃんと何かがあったような気がするんだけど、このピカタがとくにモヤモヤの原因だったから。だからヒロちゃんに作ったのに、美味しいしかわかんないよ。

    「ちょっといいか、エリカ?後藤とか言う元カレ、アイツと付き合ってるんだろ?また好きになったのか?」
    「後藤君?ああ、もう別れたわ」
    「えっ?いつ?」
    「退院して最初のデートで。でもヒロちゃん、何でまたとか言うの?」
    「だって、アイツだろ、オレの前に付き合ってたヤツ。日焼けして黒かったし、背も高かったから」
     後ろ姿を見た事はあるのだ。
     それはあの頃片想いだったオレには、忘れられない後姿だったから。

    「オレの前?何を言ってるの?彼とは前から付き合ってて、ヒロちゃんとは久しぶりに病院にお見舞いに来てくれただけでしょ?何か証拠はあるの?」

     はあ?
     ボケ過ぎだよ!

    「もうボケとか良いから。証拠は…無いかな?」
     くっそー、この前、ここに置いてあったエリカの荷物、全部エリカの実家の方へ送り返さないといけなかったから、何にもねーや。
     あのハゲ親父がエラく怒ってたからな。

    「ダメだよ〜、ウソついたら!私達、約束したよね、って、えっ?」
    「あー、そうだったな、二人一緒に住むんだから隠し事は無しだって」

    「・・・・ばか!」(エリカ)
    「かば!」
     あっ、反射的に出たよ。懐かしいな、このやり取り!
    「ネコにカバン?」(エリカ)
    「豚に珍獣!」
    「犬も歩けば?」(エリカ)
    「オシッコする」

    「ううう・・・」
     なぜ泣き出した?
    「ど、どうしたんだ?」
    「バカバカ!わからないのよ!私、ヒロちゃんと何をしてたの?」
    「えっ?ボケ・・てはいないよな。どういうこと?」
    「だから、私、ヒロちゃんと何があったの?」
    「記憶が無いのか?」
    「うん。なぜか、ヒロちゃんの事だけ、良くわかんなくて。靄がモヤモヤってかかってる感じなの」
    「そうなのか?!だったら、良く聞けよ!オレたち、同棲してたんだよ!親も認めたカップルだったからな!」
     そうだよ、あの親父だけは渋々……ってことは、あの親父、記憶が無いのを知ってて荷物を取り上げて隠したな!

    「バカ!」
    「カバ?えっ?」
     エリカは泣いて出て行こうとする。
     ピカタサンドをエコバッグに入れて。

    「あっ!それ!」
    「ナニよ!」

    「エコバッグだよ!証拠だ!それは俺たち二人が一緒にお揃いのを買った証拠。ほら、これ!オレのは赤で、エリカは青だろ?あの時、エリカは赤が良いけど私だと思って赤の方を使ってって、オレに言ったよな?」
    「わかんない!ごめん、わかんないよ。私、今はヒロちゃんとそんな関係になりたいとか、考えられないの!」
    「くっ!だったら、一度チャンスをくれないか?明日は、君と大人になってからさっきのように君の家の前で出会えた運命の日だ。だから、明日、オレに付き合ってくれ!」

     つづく
     ◇
    すいません、ごめんなさい。遅くなり長くなり申し訳ありません。
    次回で最後ですが、デザートを何にするのか、全然わかりません。
    でも、ハッピーエンドを目指したいです。メザシもタイも出ませんけど……はあ、いえダジャレも最近出てないですねw(#^.^#)

  • 第九膳『再会のメニュー』への応援コメント

    💎玖珂李奈

    遅くなりました。すみません。
    全文はこちら
    『午前0時の食卓』
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862450734712

    天ぷら回をスキップしましたので、「第八膳」としています。
    この後、二話ほどお題にないエピソードが続いた後、最終お題となる予定です。

    主人公:烈(れつ)
    ごはんを食べる少女:紅子(べにこ)
    主人公の元カノ:美奈(みな)
    主人公の幼馴染:桔梗(ききょう)

    💎一部抜粋💎
     あたりに香ばしい香りが漂う。焼けたものからひっくり返していくと、ヘラでお好み焼きをぎゅうぎゅうと押し付けている人がいた。
     すかさず誰かが「押し付けないの!」と注意する。まあ、よくある光景だ。
     
     焼きあがったお好み焼きにソースをたっぷり塗る。鉄板に垂れたソースがじゅわじゅわと弾け、ソースの焦げた匂いに「旨そう!」の声が上がる。

  • ♪一帆です。

    いやー。相変わらず周回遅れ。なんでこんなになったのか、原因は、わかってる。
    でも、最後まで完走したい。みなさんと一緒にゴールはできないかもしれないけど。

    ラーメンの回の回答をアップしました。お暇なときに立ち寄ってくださいませ。


    *****
    ラーメンたべたい、うまいのたべたい
    熱いのたべたい……

    昔覚えた歌を心の中で歌いながら屋台を見て歩く。一番多いのは、やっぱり虹えび炒め。次が、えびシュウマイ。それからえび焼きそば。

    ―― やっぱり、ラーメンってないのかなぁ……。

    ないとなるとますます食べたくなるのがラーメン。

    *****
    続きは、『妖術士見習いは愛を学びたい』
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862494687766



  • 編集済

    第九膳『再会のメニュー』への応援コメント

    🐹黒須友香です。
    豚キャベツ回投稿しました!
    長くなっちゃって、また二話に分けました。豚キャベツメニューも二品です。ご賞味いただけましたら幸いです。

    🐹(↓抜粋)

    「キャベツに、豚肉、味噌……あと色々……なんやこれ、どこが土産や」

    「達月くんのために用意した物なんです。普通にスーパーで買ってきてもよかったんですけど、僕、こんなに運べないでしょ?」

    🐹↓続きはこちら!
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862423037971

  • 第九膳『再会のメニュー』への応援コメント

    こんにちは。久里琳📞です。
    大詰めになってきましたね。皆さんのお話が、どう締めくくられるのか楽しみです。

     📞 📞
    この男の子、ふたたびここに来ることができたとは、なによりぢゃ。わずかなあいだに、ふたりの絆は思うた以上に深くなっておったということかの。それだけこの男の料理に力があったともいえる。

    かずかずの振る舞いの礼を料理で返そうとは、おさなき身で殊勝な心がまえであるな。材料の用意は吾がたすけてやったのぢゃが、さような瑣末なことはどうでもよい。
    料理というても肉と野菜を切って焼いただけの、味もつけないかんたんな料理ではあるが、この子が火をつかうことに、どれだけ覚悟がいることか。……こやつまさか、気づいておらぬわけはなかろうな。

    まったく、こやつの鈍さときたら、未だあらたまる気配がまるで見えぬ。ため息もつきたくなろうというものよ。

    📞つづきはコチラ📞
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862534372546

  • 第九膳『再会のメニュー』への応援コメント

    こっちに載っけるのが遅くなっちゃいました。
    前回のエピソードの真相です。

    🍏🍏🍏
    「あの日は俺が昼飯を作るつもりだったんだ。いつも亀石が全部荷物を背負ってくれてたけれど、たまには俺がやるって」
     キャベツを千切りにし、刻んだ紅生姜と混ぜながら、鉄兎は語り始めた。
    「俺が慣れない荷物を背負ってたもんだからさ、いつもより、亀石と遭遇するのが遅かった。標高も高いところだ。道行きが険しくなったあたりだし、休憩できるような場所もあまりない。まあ、そういうこともあるよなって、二人共ぐうぐう腹を鳴らしながら歩いてたんだ」
     キャベツと紅生姜が、薄切りの豚バラ肉にくるくると巻き取られてゆく。
    「それで、もう限界だ、ここにしようぜって、ちょっと狭いけど此処で昼飯を作ることにした。で、さっそく荷物を下ろそうとしたらさ、上からぱらぱらって、何か降ってきて」
     同じような豚肉のキャベツと生姜ロールが次々に出来上がり、大きく立派な朴葉に並べられてゆく。
    「かざした腕に小石がいくつか当たって、その向こうに見えたんだ」
     石を組んで炉を作る手際も含め、中々のものだ。思わず、口をはさむ。
    「随分手慣れてますね」
    「え? ああ、あいつがやってるのを、いつも側で見てたからな」
     鉄兎は少し恥ずかしげに、でもどこか誇らしげに答えた。
    「すみません。話の腰を折ってしまって」
    「いや、構わない。あいつの……供養、に、付き合ってもらうんだから」
     まだいくらか落石が残る周囲を見渡し、僅かに言い淀みながら、枯れ落ちた杉の葉に点火する。小枝を集めた炉に放り込み、さらにいくらか枝を追加した。
     少しずつ、火が大きくなって、寄せ置いた平たい台のような石を温め始めた。
     その上に、朴葉を乗せ、豚肉ロールに味噌ダレをかける。
    「これさ、あの日、作ろうと思ってたメニューなんだ」
    「いい香りですね」
     うん、と鉄兎は頷く。じうじうと音を立て、豚肉の色が変わり始めた。
    「本当なら食材を切ったり、肉を巻いたり、下ごしらえをしたものを持ってきた方が効率が良いんだけどさ。あいつみたいに、山でゆっくり過ごしてみようかなって。今日、くらいは……」
    「良いですね。日も長くなりましたし」
     不意にわたしの目から涙が流れる。どうして流れたのか自分でもよく分からない。
     ただ、鉄兎はロールを転がす作業に集中していて、こちらの様子には気づいていないようだった。さり気なく拭って、焼き上がるのをじっと待つ。
    「よし、そろそろいいな」
    🍏🍏🍏


    あらゆる伏線を回収しまくる後半戦に入ってから一話が長めですが、全文はこちらに。
    https://kakuyomu.jp/works/16816410413893461604/episodes/16817139555271093324

  • 第九膳『再会のメニュー』への応援コメント

    🍻やっと更新できました!
    次で終わりだと思うと、なんだかセンチメンタルな気分になってしまいます。もう淋しい……


    🍻

     カラフルな野菜に彩られたオレンジ色のスープの中に、美しく包まれたキャベツ。テンはやっぱり筋がいい。仕事が丁寧だし、他人に料理を振る舞うことの本質をわかっている。

     そっとナイフを入れると、抵抗なく刃が通る。崩れることなく、一口が切り分けられた。断面を見て、思わず笑ってしまう。

     わたしは肉ダネを豚ミンチと玉ねぎで作るのだが、これはなんと薄切りの豚バラをそのまま使っていた。きっと肉をこねる手間を省いて教えたのだ。大雑把なキクさんらしい。

     「美味けりゃいいんだよ。腹に入っちまえばおんなじだろ☆」と言う声が聞こえてきそうだ。

     でも、巻き方は同じだった。肉ダネを芯にして巻くのではなく、タネをキャベツの上に平たく伸ばして重ね巻きにするのだ。こうすると食べる時にバラバラにならない。

     巻き終わりは爪楊枝でなく、折ったスパゲティで留めるのも同じだ。煮えればそのまま食べられる。

     何度も作る中で改良を加えてできた、オリジナルの最終形態。


     一口食べれば……これは、ケチャップか。トマトピューレではなく、コンソメにケチャップの味付け。テンのために子供向けにアレンジした……わけじゃなく、きっとキクさんの家にはトマトピューレなんて無いだろうな。うん、間違いない。でも、これはこれで……


    「すっごく美味しいよ、テン!」


     テンは大人びた仕草で肩をすくめて見せた。そして「お買い物もひとりでできたの」と得意げに言う。

     すごいじゃないか、もうすっかりお兄ちゃんだなと煽てると、「いひひ」と笑った。



    「これ、まだお鍋にあるかな?」

    「あるよ! たくさん作った」

    「じゃあ、テンも一緒に食べよう」

    「うん!」

     🍻

    テンちゃんがセッキーに初めて作ったお料理は、キクさん特製「手抜きロールキャベツ」でした。
    全文はこちらからお願い致します↓
    第九膳回答『再会のメニュー』https://kakuyomu.jp/works/16816452220246177194/episodes/16817139555397799240

  • 第九膳『再会のメニュー』への応援コメント

    💐涼月💐です。

     今回は難産でした……ちゃんと次回に繋がっているか不安ですが(;'∀')
     もう直ぐラストですね。関川さん、最後まで素敵なお題をありがとうございました。

     💐 💐 💐
     
     コンビニを後にして暗い夜道を急ぎ足で歩く。だが、扉の向こうには同じく墨色の部屋が待っていた。
     わかっていたことだけれど、色音はまだ帰ってきていないようだ。

     買ってきたビールを冷蔵庫に仕舞いながら、ふと使っていないクリームチーズが目に入った。これ、早めに使ってしまったほうがいいな。

     自然とエプロンに手が伸びた。

     続きはこちらへ ↓
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862602812315/episodes/16817139555049529064

  • 第九膳『再会のメニュー』への応援コメント

    🐤小烏つむぎです。

    今回もかなり改変しています。
    前半から読んでいただけると嬉しいです。

    以下、後半のチラ見せです。

    **********

     大鳥さんが皆に振る舞った、いや正確には皆で作った料理は、Tomatensoepという阿蘭陀《オランダ》の煮込み料理だった。
    肉を赤茄子《トマト》で煮込んであるので、その赤い色にぎょっとしたものの思いのほか美味である。聞いたことのない野菜もたくさんあったが、うまく肉の臭《にお》い消しになっていて穏やかで懐かしい味だった。添えてある甘藍《キャベツ》も煮ていた時に心配したほど酸っぱくはなく本来の甘みが引き立っていた。

    **********

    https://kakuyomu.jp/works/16816927862577875744/episodes/16817139555375501963

    よろしくお願いします。

  • 第九膳『再会のメニュー』への応援コメント

    🍁空草 うつを です。
    後半部分の抜粋になります。

    🍁🍁🍁

    「私は古生物の研究をしすぎてしまったのかもしれません。古生物は、はるか昔にこの世から姿を消してしまい、本当の姿を知る人はこの世界には誰一人として存在しません。つまり、研究対象の古生物は化石の状態なのです」

    🍁🍁🍁

    全文は連載中の『嗚呼、愛しの絶滅種!』に載せています。


  • 編集済

    第九膳『再会のメニュー』への応援コメント

    🌸悠木柚です。

    📺ピッ!

    私のお腹が久しぶりに、きゅるるるるっと鳴った……
    実に半年ぶりだろうか。こんなにもお腹が壊れたのは。

    「ご、ごめん悠木くん。ちょっと席を外すわね」
    「柚子、どうしたの? 大?」
    「ち、ちがうわっ!」

    違わないけど大好きな悠木くんに、大だとは悟られたくない。大声で否定だけ伝え、休み時間の廊下に飛び出した。

    私立核余無学園は男女共学の都内でも有名な進学校。彼と出会ったのは始業式の前。春雨止まぬ桜並木の影で、捨て犬にミルクをあげていた悠木くん。そんな彼の横顔を見て、私は仄かな恋心を抱き、同時に濡れた体が災いしてお腹をくだした。

    あれからもう半年。

    偶然にも同じクラスになり、偶然にも隣同士の席。そして偶然にも部活も一緒になった。

    豚肉とキャベツ研究部。学園創立以来100年の伝統を誇るこの部は、豚肉とキャベツの存在意義を多角的に研究する崇高な目的を持っている。私たちは放課後、いつも部室で豚肉とキャベツ談議を交わしていた。ただし、いつも大好きな悠木くんに見惚れているので、話のほとんどを覚えていない。

    ――っと、そんな回想は後まわしだ。あまりにも悠長なことをしていたので、ちょっとだけ……ほんのちょっと実が出てしまった。

    「柚子さん、こんにちは」
    「柚子さん、今日も綺麗だね」
    「柚子さん、握手してください」
    「こ、こんにちは……」

    クソっ! トイレまであと少しだと言うのにファンクラブのやつらに囲まれてしまうとは。何を隠そう私は自他共に認める校内一の美少女。核学のゲラニウムとは私のこと。そこ! 微妙だとか言わない。

    当たり障りのない会話を交わし、「ごきげんよう」と彼らのエリアを後にした。本当は人目を憚ることなくガニ股で全力ダッシュしたいのに、根付いた清純なパブリックイメージがそうはさせてくれないのだ。せいぜい小走りが限界。こんなにも自分の境遇を疎ましく思ったことはない。

    きゅるるるるっ きゅるるるるっ きゅるるるるっ

    ようやくトイレに到着し、個室を満喫した。この学園で、この場所だけが本当の私になれるオアシス。排出された私の肉体を構築する誉れにあづかれなかった運のない有機物が、渦を巻いて深淵の暗闇へと吸い込まれて行く。私は徐に、膝にかかっていたパンツを脱ぎ捨て、汚物入れに放り込んだ。学園一の美少女に実付きは相応しくない。ひとしきり息を整えてから、トイレを後にした。

    「ゆ、悠木くん!」
    「柚子、これ……」

    照れながらトイレの前に立っていた悠木くん。手には豚肉とキャベツ。

    「これを……どうしろと……?」
    「貰って欲しいんだ。僕の今の精一杯」
    「悠木くん……」

    貰うわ! そして食べるわ!
    豚肉は生だけど問題なんてない。だってキャベツと一緒だもの。キャベツはキャベジンみたいなもの。一緒に食べればきっと寄生虫も大丈夫。それに大好きな悠木くんからのプレゼントだもん。食べない理由は見当たらない。

    私はてのひらにそっと乗せられた生の豚肉を、そしてキャベツを、微笑みながら口に運ぶ。美味しい、美味しいよ悠木くん。肉と野菜の刺身だよ。太陽と豊かな大地が育んだ緑色の恵みと野性を失い牙を抜かれ堕落して肥え太った家畜の肉が、今、私の中で一体となってるよ。やがてこれが、私を形づくる日々穢れと同じだけ再生を繰り返す細胞と言う名の神秘になるのね。詳細な食レポ的な感想は浮かんでこないけれど、とにかく美味しいよ。

    そして――
    私のお腹が、きゅるるるるっと鳴った。

    今の私はスカート内部の受け皿を失くした哀れな小鳥。少しの間違いも許されない。目の前には大好きな悠木くん。そしてなぜか周囲に集まってきたファンクラブのやつら。トイレから出てすぐまた入るなんて愚行はおかせない。でもポトリと落とすのだけは死んでもイヤ。

    そして私の出した答えは――――

    次回、恋はバミューダトライアングル 第10話
    《君の肝臓を食べたい リアルに》

    📺ピッ!

  • 第九膳『再会のメニュー』への応援コメント

    「さあ。食べてください」

     そう言いながら、青年は皿に盛りつけた料理を食卓の上に置いた。濃紺の作務衣に前掛けをつけたその姿は若い板前のようにも見えるが、その実体は大黒の化身である。

     先日、彼は自分を祀る社が再建されるためにもう会えなくなると別れを告げて、それから顔を見せなくなってしまった。しかし今日彼の方から訪ねてきたということは何か言いたいことがあるということなのだろうか。

     そして目の前に置かれたこの料理。どうやらこれはミートボールとキャベツのスープのようだ。トマトベースの味付けで紅色に染まった肉団子からは香ばしい匂いが漂ってきて食欲をそそる。添えるようにカットされたバゲットも置かれていた。

    「……いただきます」

     わたしはフォークを肉団子に突き刺して、かぶりつく。ジュワリとした肉汁が出てきて噛みしめるとひき肉に練りこまれたみじん切りの玉ねぎが心地よい歯触りを与えてくれる。
    「うん、美味しいです」
     スプーンでキャベツを掬って食べると肉のエキスが溶け込んだスープがしっかり染みていて、これも味わい深い。バゲットをちぎってスープにつけて食べるとガーリックバターとスープの風味が上手く合わさって、お酒にもよく合う味になる。

     わたしと一緒に食を進めながら、彼は嬉しそうに頷いて見せる。
    「そうでしょう、我ながらまさに神業ですね」
     そりゃあ神だからな。
    「一生懸命、作り方を覚えました。……どうですか? 今日は私を偉大なコックという意味で『大コック様』と呼んでも構いませんよ」
     大黒よりも長くなっているうえに格が下がっているが。

     だが、待てよ。このタイミングでわざわざわたしに料理を作りに来たということは、この料理には何か意味があるのだろうか。

     そう、豚は金運や繁栄の象徴。この豚肉を丸めて食することで、金銭的な欲望に呑まれるのではなく、自分のものとして制することで「欲望に振り回されずに自分を見失うな」といいたいのではないか。

     またキャベツの語源は英語のキャベジだが、さらに元をたどるとフランス語のcaboche、「頭でっかち」という意味があったという。つまりキャベツを刻んで煮込み柔らかくすることで、「考え込んでばかりで何もできない頭でっかちになるな」「頭を柔らかくして考えて悩まずに、具体的に目標に向かって行動して見ろ」と伝えようとしているのだろうか。

     わたしは彼に向かって改まった表情で尋ねる。
    「あのう。今日この料理をわざわざ作りに来たのは……?」
    「ああ。この間『天空の城ラピュタ』を観たのですが。主人公が冒頭で肉団子のスープを買っていたので美味しそうだなー、食べてみたいなーと思いまして」
    「特に意味はないんかい!」
     しかも神様がアニメをみるのか。日本の文化になじみ過ぎだろう。
     だが彼はにこやかに笑い返して見せる。
    「それで良いではないですか。楽しいから作る。美味しそうだから作る。あなたもきっとそうだったのでは?」
    「ま、まあ。そうですね」

     確かにわたしは夢に破れて焦るあまりに、初心を見失っていたのかもしれない。

    「神である自分は、人心を救うのが使命です。そのために神通力を持っています。だけれども本当はあなたにも同じ力があるのではないでしょうか」
    「どういうことですか?」
    「この国では食べる行為を『人を良くする事』と書いて『食事』と読んでいるのでしょう? きっと食事には相手を元気にして、楽しくさせる力があるのだと思います」
    「……そうかもしれませんが」
     だけれども、わたしには、わたしの料理にはそんな大きな力があるとは思えない。

    「少なくとも自分はあなたの料理のおかげで救われました。だから……」

     だから、自分の神の力に頼らなくても大丈夫だ。きっとやっていける。たとえ上手くいかなくとももう一度挑戦すればいい。
     彼の表情はそう語っていた。

    「明日、社が完成します。あなたのところを訪れることができるのも今日が最後ですが。今までのお礼にどんなお願いでも叶えるつもりで来ました」

     わたしは彼の顔をまっすぐに見て、今まで迷っていたために言えなかった願いを口にする。

    「それでは。……いつか、いつか必ず! わたしはもう一度自分の店を開きます。立ち上げて見せます。だからその時は『わたしのお店に食べに来てください。会いに来てください』」

     大黒様の化身はわたしがそう答えるのをわかっていたかのように驚きもせず微笑んで「はい。わかりました」と応えると姿を消してしまった。

     その場に残っていたのは餞別のつもりか、一枚の神札だけだ。

     呆気ない別れだったが、悲しむことも寂しがることもしない。それよりも次に会うときに恥ずかしくないように約束を、誓いを守らなくては。

     そう。寂しがることはない。また戻ってくる。神だけにカミングバックするはずだ。いつかきっと。わたしはそう心の中で呟いて台所の片づけを始めた。


    ❄️ ❄️ ❄️

    ❄️雪世明良です。よろしくお願いします。

  • 第九膳『再会のメニュー』への応援コメント

    ☆☆☆愛宕☆☆☆

     今日は俺の方から、関川くんに何か作ってあげようと意気込んでいた。
     大人の体になってしまったから「これでサヨナラ」というのは、ただただ申し訳ない。そう思えるほど、世話になった。そして、色々なものを食べさせてもらった。
     普段は家で料理をしない俺でも、目の前に調理器具があれば、それなりのものを作ることくらいはできる。今日は豚肉が安かった。ならばと、キャベツを買い足して、俺流のロールキャベツを食べてもらうことにした。

     それにしても、再び子供の姿になっているというのは、いったいどういうことなんだ? 大人の姿に戻った状態で関川くんに「こんな事情なのだよ」って語ろうかと思ったのだが、これでは改まって話を切り出すのも難しい。
     まぁいい、子供の姿の方が関川くんとの距離感も取りやすいし、だんまりを決め込むこともできるから都合がいい。今度は俺が作る料理だから、あまりの美味さで自分から声を上げてしまうこともないだろう。

     さて、料理に取り掛かるとするか。
     まずは豚肉を一枚一枚広げ、そこに下味をつける。次にキャベツを豚肉より少し大きめのサイズにカットし、軽く茹でて柔らかくする。あとは二つの食材を重ねて、キャベツが外側になるようクルクルと巻いたら準備完了。パスタを丁度良い長さにカットして、巻いたキャベツが解けないよう留め具の代わりに刺している人もいるが、俺はそんな洒落たことはしない。楊枝で十分だ、楊枝で。
     あとは鍋底に巻いたやつを並べるだけ並べ、水と固形のコンソメを入れてしばらく煮ればできあがりだ。キャベツも豚肉も一緒にローリングされたロールキャベツ、その断面はロールケーキのように渦巻いている。

    「おぉ! キャベツの甘い匂いがたまらないねぇ」

     余計な調味料を極力排除し、素材の旨味や甘味だけで勝負したシンプルなロールキャベツに、さっきまで硬かった関川くんの表情もすっかり解れて腹を鳴らしていた。いいじゃないか、いいじゃないか。好きなだけ食ってくれていいんだよ、関川くん。

    「うん、美味いね。これは、塩と胡椒だけの味付けで十分だ。この豚肉とキャベツの甘さが重なり合っているのも凄くいいよ」

     そうだろう、そうだろう。
     俺は味変に使ってもらおうと、冷蔵庫からケチャップを取り出してテーブルの上に置いた。トマトの酸味をちょい足しするのも、ロールキャベツには欠かせない儀式だ。

    「いやぁ、ケチャップも合うね。なんだか、子供の頃を思い出すなぁ。ちょうど君くらいの歳の頃だったかな、お母さんが作ってくれたロールキャベツの味に似てるなって思ったよ」

     そうだ。ロールキャベツはミルキーと同じだ。
     どこか懐かしい……ママの味。ロールキャベツの甘味には、そんなノスタルジーが混ざっている。

    「キャベツで包むのは豚肉じゃなくて、優しさだね。うん」

     なぁに言っちゃってるんだか……。
     でもまぁ、俺も作った甲斐があったってもんだ。
     美味いものを食べて笑顔になるのは、みんな同じなんだよなぁ――。

  • 第九膳『再会のメニュー』への応援コメント

    🍷出っぱなし

    時間通りの更新お疲れ様です。
    今回は大容量です。

    🍷🍷🍷

     タマと再会できた空想の場面は夢幻の如く消え失せ、わたしはうねりを上げる光の渦の中に漂っていた。
     何も分からないが、何もかもどうでも良くなっていくかのようだ。
     何かと一体となり、緩やかに溶け込んでいく心地よさに身を任せる。

     ここは、ムー大陸の核の中だ。

     なぜ、こんなことになってしまっているのか?
     ムー大陸に突入してからの場面が、スライドショーのように光の中に次々と浮かび上がる。
     わたしはその時の記憶を辿った。

     🍷🍷🍷

    「ヒーハー! どうだ、関川さん? エレクチオン号は最高だろ!」
    「ヒ、ヒィイイイイ!」

     繊細に振動させながら飛び続けるエレクチオン号、その乗り心地は……生きた心地がしなかった。
     音速を超える速度によるGに加え、急旋回、乱高下によって意識がなくなりかけた。
     しかし、尾骨の奥を刺激するような振動による痛みで無理矢理意識を覚醒させられる。
     痛みと恐怖心によって、このまま墜落して死んでしまった方が楽なのではないかと思い始めていた。

    「ヒャッハー! ワラワラ迎撃しに出てくるワイバーン共が邪魔だぜ! だが、エレクチオン号は止められねえ! さあて、突っ込むぜ! フェード・イン!」 
     
     まるで脳内麻薬《アドレナリン》が分泌されているように瞳孔が開いているカノ―さんは雄叫びを上げる。

    ・・・・・・
     再び、光の奔流の中へと意識が戻ってきた。

     気が付くと、わたしはテーブルに座り、赤ワイングラスを傾けていた。
     目の前には大きなホットプレート、すでに焼けるほどの熱気が伝わってくる。
     タマが大きなボウルを抱えるようにエッチラと歩いてきた。
     その中には、刻んだキャベツが乳白色の生地の中に絡っている。

    「ほう? それは『お好み焼き』かな?」

     わたしが感嘆の声を上げると、タマはにっこりと笑顔で頷いた。
     そして、生地を熱したホットプレートに伸ばし入れ、ジュウっと気持ちを弾ませるような心地よい音とともに湯気が立ち上る。
     二つの楕円が夜空に浮かび上がるようだ。
     
     タマは手際よく、揚げ玉、刻み紅生姜、豚バラ肉を上に敷き並べ、下部が焼き上がるタイミングを真剣な眼差しでじっと待ち、ひっくり返す。
     わたしはその様子を静かにグラスを傾けながら微笑む。

     お好み焼きが焼き上がり、それぞれの取皿に分けられたところで、再び蜃気楼のように全てが消えた。


    🍷🍷🍷

    続きはこちらです。

    飯テロリスト関川様、ネコ耳を拾う
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862486888667/episodes/16817139555335704871

  • 🐹黒須友香です。
    ラーメン回、遅くなりましたが投稿しました!
    長くなったので2話に分けました。『孤独を癒すラーメン』①・②です。ラーメンも2回出てきます。
    よろしくご賞味ください♬

    🐹

    突然だが、二日酔いである。

    「しもうた……飲み過ぎたわ……」

     ときおりガンガンと唸る重い頭を抱え、北橋達月は今、のそのそと起き出してきたところだった。

    ↓🐹続きはコチラ!
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862423037971


  • 編集済

    皆さま、こんばんは! 間に合った~💦
    周回遅れになりつつこっそり更新しております!

         🐛 🐛 🐛

     ストレートの生めんと地鶏が濃厚に香るしょうゆベースのスープに加えて大き目に切られた京ネギ、鳥の細切れの胸肉、輪切りのちくわ、そして仕上げの生卵までが顔をそろえるオールスターセットだ。

     一見ラーメンとミスマッチと思えるこれらの具材が懐かしのスープと絶妙なハーモニーを奏で、食するものを天上の世界へと送り込む。

     しかし初期セットでもいいが、やはりここは元料理人としてアレンジすべきだろうと申し訳のようにニンジンの細切りを足す。こういうものはあまり手を加えすぎてもいけない。スープの濃度を殺す可能性があるからだ……


    続きは『飯テロ開始します! 〜傷ついた訳あり彼女に一膳の飯を〜』にて!

  • 💎玖珂李奈

    全文はこちら
    『午前0時の食卓』
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862450734712

    天ぷら回をスキップしましたので、「第七膳」としています。
    設定上、お題のストーリーから外れてしまいました。ごめんなさい。

    主人公:烈(れつ)
    ごはんを食べる少女:紅子(べにこ)
    主人公の元カノ:美奈(みな)

    💎一部抜粋💎

     湯が沸いたので麺を投入する。元気よく沸騰していた湯は、教師が教室に入ってきた直後みたいに静まり返った。だがすぐに麺も一緒になってぼこぼこと騒ぎ出す。
     タレを入れた丼にスープを入れると、コクとキレが一体となった香りが立ち上る。そこに麺を入れると、スープが嬉しそうに麺を抱き込んだ。

     焼豚を並べたら、ぐるりと囲むほどの量になった。バランス的に絶対違うが気にしない。
     そこへ葱と紅子好みの濃い目に味つけしたメンマ。海苔も添えたが、サイズが小さかったせいで、丼の隅で申し訳なさそうに縮こまっているように見えた。
     煮卵は、切った途端に橙色の黄身がとろりと揺れる。最後にそれを乗せて完成だ。

    「わあ、美味しそ……」

  • 遅ればせながら。🍏蒼翠琥珀です。

    🍏🍏🍏
     そして腹の虫が鳴く。すっかり日も暮れ、虫たちが秋の音色を奏でる中で。
     そういえば昼ご飯も食べていなかった。
    「こんな気分の時でも、お腹だけは空くんやなあ」
     ぐぅぅぅりゅりゅぅ
     そうだな、こんな時はラーメンがいいかな。と腹の虫と対話する。
     うん。ラーメン、ラーメン。
     ぐぅぅぅりゅりゅぅ

     天幕を張っただけの簡易の孤城にて、傍らに放り出していたバックパックを引き寄せる。ガサゴソと中身を漁る。陽が落ちた今、ランタンとヘッドライトの明かりだけが頼りだ。

    「そういえば、あのラーメン美味かったなあ」

       *

     暑い日だった。
     下山後、鉄兎にばったり遭遇し、ふざけて沙羅沢池に飛び込んだ。まだまだ日が長い時分で、水浴びしながら存分にはしゃいだ。我ながら馬鹿だと思うけれど、あの何にも考えていない日々は幸せだった。
     その後、銭湯で身を清め、ぷらぷらと歩いているうちに、自然とリヤカー屋台に吸い寄せられた。自分も鉄兎も示し合わせたように狭い空間に顔を突っ込んで簡易の椅子に腰掛ける。そして、それぞれのラーメン鉢を受け取った。
     二人同時に手を合わせた直後から、無心で啜る。
     熱いスープから引き上げられる麺。はねた汁も熱い。でも構わず啜った。何しろ腹の虫が待ちわびている。
     青ネギと白髪ねぎを麺と一緒に。とろんと赤く艶めく半熟の煮玉子を齧る。そしてまた麺を。その度に、紫蘇がふうわりと香るのだ。
     ふと添えられたレンゲの存在に気づく。そこでようやく、あまりに無我夢中であった自分が可笑しくなる。
     どこまでも透き通るスープにレンゲをそうっと沈めると、スープに散りばめられた黄金色の油がくるくると舞い込んでくる。それにつられて、トッピングの小さな小さなあられが、やっぱりくるくると踊るのだ。
     円舞曲《ワルツ》が繰り広げられたスープの真ん中を引き上げて、そうっと口に運ぶ。疲れた身体に塩気が優しく染み渡る。そして紫蘇が香る。
     そうだ。暫く山の中に居て、ようやく下りてきたのだ。陽が傾き、暖簾の隙間から見えた空一杯に、オレンジ色が揺らめいていた。そして黄昏時に差し掛かる。
     麺を啜る合間に挿入される様々なトッピング。夕暮れの輪舞曲《ロンド》。それは長いような短いような一日のフィナーレに相応しい。
     美しく並べられたチャーシューの柔らかさは、今も忘れられない。

       *

     ひとしきりラーメンの回想を終え、取り出した干し肉を噛みちぎった。飲み込むために、時間をかけてその硬い塊を咀嚼する。凝縮された旨味が口の中に広がってゆくものの、あの油が融け出す柔らかさとは縁遠いものだ。
    🍏🍏🍏


    ここだけでお題に対する回答にできそうですが、一応……全文はこちら。
    https://kakuyomu.jp/works/16816410413893461604/episodes/16817139555042178732

    次のお題……どないしよ。

  • ♪一帆です。

    もう次のお題がでているというのに、アップしまーす。
    すみません。回答編がかなり長い。(詰め込みすぎΣ(゚д゚lll)ガーン)
    これからまわります。急げ急げ

    *****
    キン(金炉)さん、ギン(銀炉)さんに手伝ってもらって手早く天麩羅の準備を始める。

     虹えびは殻をむいて背ワタをとり、片栗粉、水、塩を加えてよくもみ洗いをする。汚れを取ってから酒で洗えば、臭みがぐっと減る。それを串にさす。えびには、麝香草《タイム》を加えた天ぷら用粉(小麦粉プラス片栗粉)を用意しておく。奇麗に向けた殻は少しだけよけて、残りを鍋に入れた。


    続きは『妖術士見習いは愛を学びたい』https://kakuyomu.jp/works/16816927862494687766

  • 次のお題もいいですね! どう繋げようか苦心しておりますが、それが楽しかったりするから困っちゃう♡ 終わりが見えてきて寂しくもあります。
    では、今回の回答編です。

     🍻

     カウンター席のみの店内には、ニンニクの匂いが充満している。その奥に香るのは……鶏ガラ出汁だな。
     メニューには混ぜそばや味噌ラーメンなんかもあるけれど、ここは無難に看板メニューでいこう。一番人気、5段階レベルの真ん中「中辛」、トッピングは無し。まずは基本の味を食してみたい。

     運ばれてきたのは、ギョッとするような代物だ。よく見る坦々麺とは全く異なり、そのビジュアルにちょっと引く。
     地獄の夕焼けもかくやという真っ赤なスープに、血まみれみたいに見える溶き卵。咳き込みそうなほどガツンとくるニンニクの香りと唐辛子。

     お腹がギュルルと鳴る音が『いただきます』の代わりだ。
     まずはスープを一口。辛い! と感じたのは一瞬で、塩味の鶏ガラ出汁は奥深く、大量の刻みニンニクの衝撃の後に豚ひき肉のしっかりした旨味とふんわりかき玉の優しい甘味が広がる。このスープ、見た目ほどには辛くない。
     麺を啜ってみれば、モチモチつるつるの中太麺に程よくスープと具材が絡みつき、コク深い味わい。クセになる旨さ。

     3口ほど食べれば、もう汗が吹き出してくる。ニンニクとカプサイシンのパワーが凄まじい。きっとこの刺激を、このパンチ力を、身体が欲していたのだ。
     食べ進むうちに物足りなくなり、テーブルにあるラー油と一味を振りかける。
     傷口に塩を塗り込むように。
     喪失感に疼く心に、更なる刺激を。
     心の痛みを別の痛みで上書きするかの如く。
     いくらニンニク臭くなったって、帰ればどうせ独り。誰にも迷惑はかけない。
     半ばヤケクソでビールとライスを追加注文。丼の底に沈んでいたひき肉やニンニクをライスにごっそり載せてモリモリ掻き込み、ビールで流し込む。
     残ったスープも全て飲み干し、ごちそうさまでした。

     暴力的とも言えるラーメン体験だった。
     いわゆるB級グルメ的な旨さに妙な中毒性があり、いつも行列ができている理由がわかった気がする。

     🍻

    全文はこちらからお願いします。
    第八膳回答『孤独を癒すラーメン』
    https://kakuyomu.jp/works/16816452220246177194/episodes/16817139555187118318
    実在するお店をモデルにしました。店名はちょこっと変えてあります。

  • 🎐風鈴
    ギャグとか無しですので。
    ラーメンも、全く、完全に凝っていませんので。
    作るのに三分かかりませんのでw
    そして、『孤独を癒してないラーメン』にお題を変更しますw


     オレは関口ヒトヒロ26歳。
     オレには幼馴染の彼女、沢口エリカ26歳がいた。
     でも、事故からこっち、あろうことか元カレ後藤と付き合い出して、オレの所へは戻ってこない。彼女の親からも、よくも娘を酷い目にあわせてくれたなと酷く罵られ、絶縁状態だ。しかし、絶対、全ては後藤が自分に都合の良いように誘導したせいなんだ。そうに違いない。意識が戻った時に、あらぬことを彼女にふきかけ信じ込ませたんだ。

     でも、なぜ彼女は、オレの事を変な目で見るんだ?
     一緒に暮らしていたとかをオレが言っても、何で変な目で見る?
     気持ちが悪いってか?
     ストーカーだ?
     エリカ、やはりオレのこと、もう嫌いになったんだな。
     当然、か・・あんな怖い目にあわせてしまったし。

     ああ、そうだよ、やっぱりオレはエリカとなんて釣り合いが取れないや。
     わかってたんだ。
     みんながそう思ってるのは。
     エリカを見る男たちの目は、オレを見るとニタっとするか、怪訝な表情をするんだよ。

     くそっ!
     あの店に行って、美味いラーメンで気分を一新させるか!

     そう思い、道を少し歩くと彼女の実家の前に派手なスポーツカーが停まっており、今まさにエリカが後藤にドアを開けてもらって乗り込む所に出くわした。
     後藤の日焼けした顔がニヤけており、その顔に笑顔で応える着飾ったエリカがいた。

     オレは回れ右をして自分のアパートへ帰った。
     この時も、アパートが彼女の実家に近いことを恨んだ。

     二人で住むために借りたアパート。
     エリカの親父がどうしても近くでないと許さんと言ってきたので、わざわざ一人で住んでいたアパートを出て、ここに越してきたアパート。
     まだ半年しか経っていない。
     ホント、まだ諦めがつけられるくらいの時間だ。
     あんな女だとは知らなかったよ。

     オレは、帰ると直ぐに鍋に水を入れ、袋から乾麺を出し、そこへ投入して、火にかけた。
     お湯を沸かしてからとかはしない。
     その間、丼鉢の中に小袋を破いて、粉スープを入れておく。
     やがて鍋の中の水は沸騰し、麺の上に泡状のお湯がムクムクと盛り上がり、麺を覆いつくす。
     それを少しだけ眺め、火加減を最小にし、10秒待つ。
     火を消し、コンロから降ろした鍋の中身を丼鉢に注ぎ入れる。
     バチバチと湯が弾ける音がする。
     熱伝導性の良いこの鍋特有の音に、ご苦労であったと労う。

     鉢の上と下の部分だけを持ち、テーブルの上へと運ぶ。
     麺以外何も入れない、袋ラーメンのミソ味が出来上がった。

     冷めたお茶をコップに用意し、湯気の立ちあがるラーメンを見つめる。
     オレは猫舌だから、直ぐには食べられないので、少し硬めにした麺がスープを吸って冷めるのを待つ。

     猫舌か?
     あのラーメン店へ最初にエリカと行った時、カウンターに座り、出て来たラーメンを前にして、オレは直ぐに食べようとはしなかった。
     それを見た店主が、早く食えとうるさく言うのだが、それでもオレは食べようとはしなかった。
     するとエリカが言ったのだ。
    「大将?ここって、自由軒って言うんでしょ?だったら、いつ食べるのかはお客さんの自由のハズよ!」
     これには大将が言い返せなくって、お詫びに唐揚げをゲットしたよな。
     それからは、この店とは馴染みになったんだよね。
     でも良くその店に行くようになったのは、そんな理由だけじゃなく、彼女が長い髪の毛を片手でかき上げながら食べる、その横顔を見るのが好きだったんだ。

     おっ!そろそろ食べごろか?
     ふぅーふぅーしながら麺をズルズルッと吸い込む。
     誰もその音を聞いてないので、気を遣わずに啜る。
     エリカが居ると、あまりズルズルさせると、汁が飛び散るでしょって、怒って来たモノだ。
     自分の場合には、気にしないクセにね。

     オレは、麺を全部食べ切ると、今度はスープが残る丼鉢へ、炊飯ジャーからご飯を投入する。
     そこへ冷蔵庫から、昆布の佃煮、小カブの一夜漬け、みじん切りした細ネギ(あらかじめ切ってあるのをタッパに入れてある)を取り出し、同じく丼鉢へ入れて混ぜ込み、味付けノリを千切りながら上にまぶし掛ける。
     たまに、納豆や野沢菜の漬物、たくあん、生卵等も追加することがある。

     これをかき込む。
     時々、冷めたお茶をゴクゴクと飲み、またかき込む。
     ラーメンのスープは捨てるのよってうるさく言う者は誰も居ない。

     そう、誰も居ないんだ。
     オレは、オレ流インスタントラーメンを完食し、使用した鍋や丼鉢を洗った。
     ちゃんとこうして、洗剤を付けたスポンジで全体を洗うのよ。
     エリカの声がした気がした。

     なんだよ、諦めがつくってか・・それっていつなんだよ!
     洗ってたら、涙で丼鉢が滲んで見えた。

     つづく

     ☆
     また続きます。って、これは最後まで続くみたいですねw
     インスタントラーメンは、〇ッポロ一番のミソ味のつもりです。
     6月より値段が高くなりました!
     もう、袋ラーメンが安い時代は終わったかのようです(>_<)
     

  • こんにちは。久里琳📞です。
    ラストスパートですね。皆さんのお話の「転」を楽しみつつ、自分のお話の結末がどう転ぶのか、決めかねている今日この頃。
    迷いながらも、今回の回答編は、こんな感じです。

     📞 📞
    もう五日も寝たきりになっているのは砲弾の破片がぼくのおなかをつらぬいたから。
    ついてないなと仲間たちはいうしぼくもそう思うんだけれど、町のまんなかに落ちた砲弾のすぐそばにいながらまだこうして生きているのは、じつは幸運なんじゃないかとも思う。

    けがを負ったぼくに、仲間たちはやさしい。
    ごはんはあいかわらず乏しいけれど、そんななけなしの食べものをぼくに分けてくれたりなんかして。いつもはいじわるしてくるひとつ上の子なんか、血だらけのぼくを背負って医者のとこまで連れてってくれたぐらいだ。いまこの町で、医者なんていってもたいした治療ができるわけではないけどね。
    おかげでからだは痛んでもむしろ以前より快適だといえなくもないんだ。

    でもやっぱり食べものは足りてないみたいで、ずっとおなかがぎゅるぎゅるいってる。ごはんのことはなるべく考えないようにしなきゃ。考えたっておなかがふくれることはないもんね。
    あの男のひとの家へもしばらく行っていない。寝たきりなんだから行けるわけもないんだけど、じゃあ歩くことができたらあそこへ行けるのかってゆうと、そこは定かじゃない。
    ・・・・・・・

    📞つづきはコチラ📞
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862534372546

  • 💐涼月💐です

     後二問ですね。関川さんお題をいつもありがとうございます!
     今回もよろしくお願いいたします。

     💐 💐

     それは全く突然のことだった。
     
     天使の国から呼び出しがかかったと、いつもと変わらない調子で色音が言った。
    「それって、修行が終わったってことなのかな?」
     問い返す声が自分でも驚くくらい震えていた。

     続きは こちら ↓
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862602812315/episodes/16817139555124410530

  • 🍁空草 うつを です!

    🍁🍁🍁

     結局、外で食べることを選んだ。久しぶりにあの味を食べたいと思ったから。
     だけど、前の職場近くに店を構えていたラーメン店の扉には『閉店』の文字と共に貸店舗の張り紙があった。

     昭和の職人気質で頑固な大将と、帰り際「飴ちゃん食べ!」と両手いっぱいに黒飴を持たせてくれる奥さんが経営していた。
     あともうひとり、弟子みたいな若い男の子がいたはず。金髪で鼻にピアスをつけた、いかにもやんちゃしてそうな風貌の。継がなかったのかな。

     閉店のことを早く知っていたら来ていたのに。ほら、まただ。大事なものは失ってから気づく。
     残念だ。口の中はこの店の味を欲していたのに。この鼻だってラーメンの匂いを思い出して……。

     おや?
     この匂いはまさか。

     警察犬のように鼻をひくつかせ、風と共に漂ってきた匂いを辿る。
     そうしてたどり着いたのは一軒のラーメン屋。しかも、あの店と同じ名前の、二号店。
     その名も『シーラカンス』。

     お弟子さんの店かもしれない。だとしたら、あの味が食べられるかも。
     そんな期待と、間違ってたら落胆するだろうなという不安を胸に、暖簾をくぐった。

    ……つづく。
     後編は連載中の『嗚呼、愛しの絶滅種!』にて。

  • 🌸悠木柚です。おまち! せきかわ特製!

    これまで自分が真実に愛したものは何であったか?
    自分の魂を高みに上げたものが何であったか?
    何が自分の心を満たし喜ばせたか?
    これまでどういうものに自分は夢中になったか?
    これらの問いに答えたとき、自分の本質が明らかになるだろう――

    ニーチェ



    寂れた商店街の一角。時代の波に飲まれ、他の店がシャッターを下ろし続ける中。
    そのラーメン屋は頑なに暖簾を守り続けていた。

    麵処 せきかわ

    昭和を感じさせる店構えに落ちない汚れのついた看板。スライドドアを横に流せばカラカラと素朴な音が出迎えてくれる。

    「いらっしゃい!」

    オヤジさんの声ががらんどうな店内に響き、少し気恥ずかしさを覚えた僕は、会釈もそこそこに入口付近の席へとついた。

    「せきかわ特製醤油ラーメンを」
    「はいよ!」

    醤油ベースの汁に腰のある縮れ細麺を絡めたシンプルな一品。それでいて焦がしネギの香りが食欲をそそり、最後の一滴まで飲みほさずにはいられない魅力がある。彩は海苔二枚、叉焼三切、煮卵ひとつと山盛りのホウレンソウ。お好みで、テーブルに備え付けられた器からモヤシを無料でトッピングすることもできる。

    料理がくるまでの間、何とはなしに店内を見渡す。びっしりと貼られてある手書きのメニュー。油で汚れた厨房のダクト。ピカピカに拭かれているけれど、古傷が隠しきれていないテーブルの数々。そしてそこだけ時代が移行したような薄型テレビ。

    初めて訪れたときはブラウン管のテレビから野球中継が流れていた。折しもセ・リーグの優勝決定戦で、僕と彼女は声を上げて贔屓のチームを応援した記憶がある。それからも楽しい気分に添え物をしたいときは一緒に足を運んだ。何度も、何年も、良家からの縁談がふたりを分かつまで。

    「おまち! せきかわ特製!」

    ほどなく運ばれてきた料理は、注文した物とはまるで違っていた。おしぼりと麦茶、そしてその横に置かれたのは車のキー。

    「オヤジさん、これ……」
    「行ってこいよ。答えは出てるんだろう?」

    途端に血の巡りが早くなり、顔が熱を帯びてきた。いてもたってもいられず、勢いよく席から立ちあがる。キーを握りしめ頷くと、厳つい顔で笑顔を向けられた。我慢するなんて僕らしくない。

    せきかわ特製醤油ラーメンは、独りで食べても満たされないから。

  • 🐤小烏つむぎです。

    今回、なんというか、ちょっと、思わせぶりな展開になってしまいました。
    時代は一気に遡って室町時代です。


    以下、前半のチラ見せです。

    ********

    むかしむかし。

    これはのちに室町と呼ばれる時代のお話し。

     京のはずれ、比叡の山を眺める山裾に臨乗寺という寺がありました。古くは歴代の法王の山荘があったところを半将軍と呼ばれた管領・細川 政元ほそかわまさもとが十一代将軍足利義澄のため寺に改めたものでした。将軍ゆかりの寺になったために寄進も多く、あちこちに多くの荘園を持っておりました。臨乗寺では東班衆と呼ばれる経営専門の僧を派遣して各荘園を管理しておりました。

    また寺のなかには玲蔭軒と呼ばれる足利義澄のための禅室があり、この玲蔭軒の管理を任された者は軒主と呼ばれておりました。歴代軒主は日々を記し、その記録は『玲蔭緑記』と呼ばれています。

    華やかな東山文化の終焉の始まりの頃でありました。

    *************

    https://kakuyomu.jp/works/16816927862577875744/episodes/16817139555020859621

    よろしくお願いします。

  • ☆☆☆愛宕☆☆☆

     だめだ……腹が……減った……。
     よし、店を探そう!

     幸いにもここは商店街。シャッターが閉まっている店も目立つが、ちらほらと飲食店の看板が見える。洋食、和食、インドに中華。それなりに選択肢はあるじゃないか。さて、今日の俺は何を欲しているのか?

     あまりの天ぷらの美味さにうっかりと声を出してしまった日の夜、なんと寝ている間に俺の体は元へ戻っていた。さすがにヤバいと感じて、関川くんが起きる前に家を抜け出してきたものの、今いる場所が分からないので迷いに迷った。
     しかし、夜通し歩き続けた甲斐もあって、なんとか線路沿いの道を見つけることができた。この道を線路に沿って進めば、必ずや駅にぶつかる。駅名でも分かれば、今いる場所のヒントくらいは掴めるだろうと期待していたのだが、夜が明けても線路は延々と続いていた。おかしい……暗さのあまり駅を通り過ぎてしまっただろうか? いやいや、そんなはずはない。駅舎のような建物は、全く見つけられなかった。本当に俺は、この世に存在しているのだろうか? 歩きながら、そんな考えにも及んでいた。

     ダメだダメだ。
     腹が減ってるからマイナス思考になってしまうのだ。ここはガッツリ系の飯で、パワーチャージをするのが一番だろう。よし、中華だ。スタミナたっぷりのメニューで脳を活性化させよう。

    「いらっしゃいませー!」

     客は俺一人。しかし、時間になれば昼飯を食べにくるサラリーマンがどっと押し寄せてきそうなポテンシャルを秘めている。壁に貼られた黄色い短冊も字が綺麗だ。
     店に入る前から、とりあえずラーメンというのは決めてあった。あとは、主役の脇を固めるバイプレイヤーだが……餃子か、チャーハンか。ラーギョーか、ラーチャーか。思い切ってラーチャー餃子でいくか。

    「すいませ……」
    「すいません!」

     あれ? 客は俺一人だけだったはずなのに……どうやらメニューで悩んでいた間に、腹ペコ仲間が入店していたようだ。店主は俺よりも先に、後から入ってきた客の相手をした。

    「担々麺、肉味噌とモヤシはましましで、あとバーボンも」
    「あいよっ! バーボンね。キープしてたの、終わりそうだよ」
    「じゃあ、追加しておいてくれるかい」
    「まいどっ!」

     ば、バーボンだと? ここ、中華の店だよな?
     でも、あの様子だと彼は常連さんだろう。中華屋でバーボンのボトルキープとか、普通はあり得ない。担々麺の頼み方もスマートだった。どんな奴なのか、顔だけでも見て……なっ!?

    「お待たせしました。ご注文は?」
    「え? あ、あぁ。ラーメンと餃子とチャーハンで」
    「飲み物はどうします?」
    「じゃあ、烏龍茶で」

     いかん、弾みでラーチャー餃子にしてしまった。まぁ、食えないこともないか。それにしても、あの客。誰かと思えば関川くんじゃないか。夜通しかけて来るような辺鄙なところに馴染みの店があるなんて、聞いてないぞ。
     こんな偶然はあり得ない。きっと夢だ、夢なんだ! 俺の体が元に戻ったのも夢なんだ。あまりの空腹で、夢と現実がごっちゃになっているだけなんだ。

    「へいっ、お待ち!」
    「おぉっ!」

     ラーメンとチャーハンと餃子が入り混じったこの匂い、どれか一つでも欠けたら成り立たない独特の三重香。これですよ、俺が求めていたラーチャー餃子が、今ここにあった。
     煮干し多めの出汁と喉越しの良い縮れ麺、メンマと煮卵と海苔だけのシンプルなトッピング。そこに一切の手抜きは無く、王道と呼ぶに相応しい仕上がりだ。薄味で整えたチャーハンも上々で、しっかりとラーメンを引き立てる役割に徹している。一口でスッと入る小振りの餃子も良い。

    「酢ゴショウですか? 渋いですね」
    「え? わぁっ! びっくりした!」

     いつに間にか関川くんが俺の席に近づいて、テーブルを覗き込んでいた。手にはバーボンの入ったグラスを持っている。その小指を立ててグラスを傾ける癖、やっぱり関川くんだ。

    「僕の知り合いにも酢ゴショウで餃子を食べる人がいましてね、それにあなたの食べっぷりを眺めていたらつい。あ、すいません。僕は関川と申します。失礼しました」
    「はぁ」

     お互い食事中でもあったので、これ以上の会話は野暮とばかりに、関川くんは自分の席へと戻って行った。それにしても、俺の姿に全く気付いてないだなんて。まぁ、子供と大人の姿じゃ、分かってくれと訴えても無理か。

     俺は残りのラーチャー餃子を完食し、関川くんよりも早く席を立って会計を済ませた。店を出る際、こちらを見ていた彼と目が合った。軽く会釈を交わして出てきたが、このまま「世話になった」と挨拶もせず立ち去るのは、なんとも心苦しかった――。

  • 🍷出っぱなしです。

    次回のお題予告を見て悶絶中です(笑)
    フライングで書いていた今回とどうつなげるか、思いついたのでこのまま続行して回答にします。
    多分、このままのお題でも大丈夫、だと思いたい……

    🍷🍷🍷

     わたしは変態の館の廊下を千鳥足で歩く。
     思わず、クリスタル製の前衛アートのようなよくわからない調度品にぶつかりそうになった。

    「荒れてるな、関川さん?」

     カノーさんが黄金色に輝くエレベーターの前で腕を組んで壁に寄りかかっていた。
     まるで初めからわたしがやって来ることを分かっていたかのようにニヒルに嗤う。

    「カ、カノーさん。わたしは、別に……」
    「クックック。ごまかさなくてもバレバレだぜ? 可愛い娘を別れた嫁に取られちまった哀れなパパの顔してるよ」

     何もかもお見通しのように含み笑いをするカノーさんに、背筋に冷たいものを感じた。
     わたしはゴクリと喉を鳴らし、震える声で問いかける。

    「か、カノーさんは知っていたのですか?」
    「ああ、館内で起こったことは全て把握しているよ。……ま、立ち話も何だ。飯でも食べながら話そうじゃないか」
    「い、いえ、わたしはそんな……」
    「遠慮しなくてもいい。おあつらえ向きの良い店を知っているんだ」

     カノーさんが身体の向きを変えるとエレベーターのドアが開いた。
     そして、恭しく頭を下げ、わたしを誘う。
     わたしは大きく深呼吸をしてエレベーターに乗り込んだ。

     エレベーターは中層階に止まった。
     そこには何の変哲もない木製のドアがあるだけだった。

     カノーさんは無造作にドアを開き、螺旋階段を下っていく。
     別世界に導かれるうさぎの穴のようだ。

     螺旋階段を降りきった先は、観葉植物が充実した室内、明るいリビングのような雰囲気ながら、テーブルや座席が多かった。
     まるで大樹の中にいるような木のぬくもりも感じる。

    「ここは、カフェ?」
    「いえ、ここは食堂、琥珀食堂《アンブル》ですよ」

     オープンカウンターの奥から自然な笑顔が美しい女性が声をかけてきた。
     それからカノーさんに頭を下げる。

    「いつもありがとうございます、カノー様。そして、ようこそ、関川様」
    「え? どうして、わたしを……」
    「クックック。《《琥珀食堂は生きている》》のさ。内に居るものの思考や感覚、心理を|汲み取る力《サイキック》がある。なあ、関川さん、固まってないで席についたらどうだ?」

     カノーさんはすでにカウンター席についていて、わたしを隣に座るように促した。
     女性、露樹《ロキ》と楽しそうに世間話をしている。
     わたしが二人の会話を眺めながら席に着くと、いつの間にかテーブルの上に食事が置かれていた。

    「こ、これは!」
    「まあ、初めてなら驚くよな? 客が注文せずとも、欲しているものが自動的に提供されるのさ。さあ、食べようじゃないか」

     カノーさんは箸を手にワカメを山盛りにしたラーメンを啜りだした。
     一方わたしの手元には『冷やしラーメン』があった。

    🍷🍷🍷

    続きはこちらです。

    飯テロリスト関川様、ネコ耳を拾う
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862486888667/episodes/16817139555131011699


  • 編集済

     国道に出ると街灯には明かりが点り、飲食店や居酒屋の看板も目立つような時刻になっていた。わたしは行きつけのラーメン屋に足を向けながら思いを巡らせる。

     大黒の化身である彼と最後に会話を交わしてからもう二週間は経つだろうか。少し前までは数日に一度は顔を出していたというのに。 

     元々の土地の持ち主が神社を再建したからいずれ来られなくなるとは言っていたが、それでも奉納や上陳だとかの儀式が必要なはずだ。
     神様としてその地に根を下ろすにしても、まだ猶予はあると思うのだが。……あるいは姿を消したのは「わたし自身の心が決まっていないことを見抜いているから」なのだろうか。
     わたしの覚悟が決まるまでは姿を現すつもりはない、ということなのだろうか。

     そう。先日、彼は去り際に「お礼に何でも願いを一つ叶えるので考えておいてください」と言っていた。だがわたしはそれに何と答えるべきなのか未だに判らずにいたのである。

     最初は店を再建して繁盛させて儲けるために彼のご利益目当てに料理を作っていた。だが彼がわたしの料理を味わい、ともに楽しんでいるうちにわたしは料理への情熱がよみがえってくるのを感じていたのだ。

     ここで私は願うべきことは、本当に彼に商売繁盛させてもらうことなのか。
     本当に再建するための金運を授けてもらうことなのか。
     
     悩みながら歩を進めていると、近道のつもりで入った裏通りに見知らぬ看板が立っていた。「旬菜中華」との看板がある。こんな中華料理屋があったのか。他のラーメン屋に行くつもりだったがここでもラーメンくらい食べられそうだ。新しい行きつけを開拓するのも悪くないだろう。料理人を志す身として勉強にもなるだろうし。

     そう思ってわたしは小奇麗な店内に足を踏み入れる。「いらっしゃいませ」と店員がテーブル席に案内をしてくれたのでそのまま座った。中は決して広くはなく、客が数組も入れば埋まってしまうだろう。板張りの床に木製のテーブルと椅子がいくつか壁に沿うように置かれている。
     
     メニューを見ると担々麺が一番上にあったが、その下の方にある塩醬油ラーメンというのが気になった。またカニレタスチャーハンというのもハーフサイズで注文できるようだったのでその二つを注文する。

     わたしが料理を待っている間に客が次々にやってきて、あっという間に満員になる。どうやら近所の人間の間では評判の店だったようだ。
     ……わたしも以前に料理店を出したことがあったけれど、こんな風にお客さんで一杯にしたかったなあ。
     
     そんなことをぼんやり考えていると「先にカニレタスチャーハンのハーフ、お持ちしました」と店員がテーブルの上に皿を置いた。レタスの翠色とカニの赤、卵の黄色がちりばめられたチャーハンをれんげで口に運ぶとパラリとした食感が口の中で広がる。単に油と卵のバランスが良いというだけでなく、味付けが繊細なのがわかる。この店が流行るのもわかろうというものだ。

     感心しているうちに「塩醤油ラーメンです」と店員が追加でどんぶりを置いていった。

     麵は細く、薄くて茶色いスープは透き通っている。さらにロース肉のチャーシューと細葱に水菜、そして細かく刻んだフライドオニオンが中身を彩っている。これは期待できるかな、と口に入れて驚いた。

     それは今まで食べたことのない味わいのラーメンだったのだ。さっぱりとしていてコクがあり、いくら食べても飽きがこない。チャーシューと薬味のバランスも良く、アクセントのフライドオニオンも味を引き立てていた。また優しい塩と醤油の味が細麵に絡んで食べやすい。

     スープは鳥ガラでもないし、豚骨のようなコッテリ系でもない未体験のものだった。そして味付けはチャーハンに負けず劣らず繊細である。しがない地方の街中にある中華料理店とはとうてい思えない。中華街の名店にも引けを取らない味だと断言できた。

     こんな料理を出す店があったなんてと内心で唸りながら、会計をしようとすると店員が「あれ、久しぶりだな」と声をかける。顔を見れば、調理師学校時代の同級生である。

    「驚いたな。すごい偶然だよ」
    「本当だな。……どうだ。料理は美味しかったか?」
    「とても美味しかった。ところであのラーメンは一体、どうやって作ってるのかな?」
    「牛骨を丸一日煮込んだスープさ。もちろんそれだけじゃなく、貝類やキノコの出汁も配合してピーナッツオイルも香味に使っているが。牛骨ラーメンを出す店は少ないし、うちみたいに薬膳料理を意識した味付けをするところなんてさらに少ないから驚いただろう」
    「ああ、確かに。……きみが作ったの?」
    「そうだと言いたいところだが、仕込みと仕上げをやったというだけで肝心な味付けは店長だよ。僕は修行中だ。いつかはこの味を自分のものにしてさらに改良したいとは思っているけれどね。うちの店長は一流の中華料理店で何年も修業を積んだ後で、中華料理の薬膳を勉強してこの味を作り上げたんだ。すごいだろう」

     彼は自分の事のように誇らしく語った。なるほど、豚骨ラーメンやつけ麺などの既存のジャンルで勝負している店とは一線を画しているわけだ。

    「でも、もったいないな」
    「何が?」
    「こんなに美味しいのに、客席が少なくて場所も裏通りだってこと。これだけ美味しくて地元でも人気があるなら、もっと良いところに移って規模を拡大すればさらに儲かるだろうに」
    「うちの店主は自分で作った自分の味を守りたいし、その味を楽しみにしてくれるお客さんがいることが大事なんだろうよ」

     彼の目線の先には壁に貼られていた画用紙があった。そこには近所の子供が描いたらしいシェフの服を着た店長と思しき人物の絵が飾られていて「いつもおいしい料理をありがとう」と字が添えてある。

     わたしは無言で頷いて店を後にした。
     あれも一つの料理人の姿だ。同級生がついていく気になるのもわかる。

     わたしは「評判のお店を出して、名店と評価されるようになって大儲けしてやる。自分を見限った連中を見返してやる」と功名心に焦っていた。しかしこの数か月で大黒様が教えてくれたのはああいうことなんじゃないか。目の前のお客さんを見て料理をすることが大事だということなんじゃないか。

     だけれども、わたしはまだ怖かった。一度すでに失敗して、客商売の大変さは身に染みている。さらにこの旬菜中華の味を知って感動すると同時に、私自身の実力と無意識に比較して憂鬱になってしまったのである。

     大黒様のご利益を求めたのも、ありのままの自分の実力で商売に挑んでもし上手くいかなかったらどうしようと拠り所を求めたからだ。

     ああ、せめてご利益をくれとは言わない。いっそ彼に「店員になってわたしの店を手伝ってくれ」と願うのはどうだろう。

     ルックスはイケメンなのであの店のように美味しいラーメンを出せなくとも「メン食い」の女性客は集まってくれるかもしれない。麺料理だけに。

     いやいや、何を考えているんだ。そんな料理以外のことで客を集めてどうする。ここはあの中華そばから、客にとって「長く、そばに」寄り添うような料理店の在り方を学ぶべきところではないか。

     だがそうだとすると、本当に大黒様に願うべきことは何なのか。暗い夜空を見上げてわたしは首を傾げた。

    ❄️ ❄️ ❄️

    ❄️雪世明良です。よろしくお願いします。

  • 🎐風鈴
    めっちゃ、遅くなりましたw
    今回は、設定的にも”つづく”となります。


    「オーレ―、オーレ―、ヒトヒロさんばー」
    「オーレ―、オーレ―、だだだん、ヒトヒロさんばーー!」
     オレ、関口ヒトヒロ、26歳。
     カースピーカーから流れる軽快なリズムに合わせてリズミカルに歌う。
     車を運転している時の至福の時間だ。

     この車、ツイーターやサブウーファーを特にセパレートしている訳ではなく、ただ純正の標準装備カーオーディオを取り換えただけなのだが、低温が良く響く。
     低温が響くだけで、臨場感あふれたモノになるのだ。

     ふつう、ウーファーと言えば多くの場合は音源に含まれている低音を“増強”して鳴らす場合が多い。対して自分が求めている低音は、音源に入っている低音をそのまま正確に再生させるという事を目指している。オーディオの世界では“原音再生”という言葉があって、音源とは作り手が一番良いと思っている状態で録音をされているのだから、その音源を忠実に再生することを目指すべき、という思想だ。
     それには・・・・・以下略。

     横に居る彼女は、沢口エリカ、26歳。
     幼馴染でモデルの様な整った顔立ちで、モデルの様な体形の美人だ。彼女とは紆余曲折があり、今はオレと同棲中。
     つまりは、オレの彼女だ!
     くーー、彼女とドライブするのは、もう何回目だろうか?
     最初のドライブは、海へのドライブだった。
     夕日が沈む海を見に行った。
     しかし、灰色の冬の海にはサーファーたちが居て、彼等が海へ沈むのを見ることになった。

     その時の彼女の横顔が夕日に照らされて、赤く、それでいて眩しく輝き、それが逆に彼女の背後を暗くさせてもいた。
     オレは、彼女の背後に出来た暗い影が長く伸びているのを不思議な気持ちで見ていたのをよく覚えている。

     と、そんなことはどうでも良いのだ。
     彼女には、オレの歌声が届いているかどうかは知らない。
     なぜなら、彼女はスマホからの音源をコードレスイヤホンで聞いていたから。

     目的地に到着した。
     そこは、とある田舎の小さな漁港。
     魚を水揚げする屋根付きの所に車を乗り入れて、そこでアジ釣りをし、天ぷらにして食べるっていう予定だ。
     ここは、なぜか怒られないのだ。
     もちろん、水揚げをする船が来た時には邪魔をしないようにしなければならないが、朝の9時には、殆どの漁船は既に仕事を終えて、船着き場に停泊しており、関係者もほぼ居ない。
     漁港の朝はめちゃくちゃ早いからね。

     場所を確保したら、漁港のすぐ後ろの山の茂みに入って行く。
     何も、トイレとか、エッチをしに行くわけではなく、山菜を採るのだ。
     こごみ、タラの芽、ノビルが採れた。
     ここは、水道水もあるので、そこで洗ってから水に晒しておく。

     そして、メインのアジのサビキ釣り。
     この漁港ではアジが住み着いており、一年中、子アジが釣れる。
     サビキ釣りとは、錘付きのエサカゴにオキアミを入れて、それを海中に沈ませる時にそのオキアミがカゴから出て行く。そこにアジが群がり、その周囲に配置している釣り針が引っ掛かって釣り上げるという漁法だ。
     幼い子供から大人まで楽しめる釣り方で人気がある。

     で、最初オレの竿にはかからず、彼女の竿にヒットしたので、彼女の釣った魚をオレがはがし、そしてエサを入れてあげた。すると直ぐに彼女は釣り上げ、またオレが魚をはがし・・・・。
     こうして、オレは彼女のサポートをずっとして終了した。
     楽しかった。
     彼女の笑顔を見れるのが楽しかった。

     さて、料理だ。
     もちろん、ここに停めている車横で揚げる。
     先ずは、水を切ってキッチンペーパーで水気をしっかりとった山菜を揚げる。
     ボウルには冷水、マヨネーズを入れてよく混ぜ、次に薄力粉を加えたら菜箸でつつくように混ぜる。粉っぽさが残る程度で止め、後は山菜をくぐらせたら170度の油で揚げる。
     次は、アジ。
     アジと言っても子アジなので、さばき方は、エラ部分を指でつまんで、そのままエラを内臓(ワタ)も一緒に摘まみ上げるように腹の方へ引っ張って取る。
     そして、素揚げあるいは薄力粉を軽くまぶしてから揚げる。

    「私の釣ったアジ、美味しい?」
    「ああ、とっても美味いよ!」
    「私の採った山菜のこごみ、とっても美味しいわね」
    「ああ、このオレの採ったノビルも、甘いね」
    「うん、小さくて可愛い」

     オレ達は、天ぷらを堪能して、後片づけをしてから帰路に就いた。
     その道中のこと。
     オレ達は事故に遭い、オレは軽症だったが、彼女は3日間意識不明になった。

    「エリカ!気がついたんだね、良かった!」
    「ヒロちゃん、わざわざお見舞いに?ありがとう!」
    「何を水くさい事を言ってるの?」
    「うん、でも、久しぶりだし」
    「えっ?ああ、まあ、そうだね、アハハハ」
    「うふふふふ」

    「エリカ、紹介してくれないかな?」
    「ああ、ごめんね、私の幼馴染の関口君。で、この人が」
    「エリカの彼氏の後藤と言います。よろしく!」
     背が高く、イケメン顔で、日サロで焼いた感じの小顔の男だった。

    「えっ?君は、元カレだろ?どういうこと?」
    「君こそ、何を言ってる?エリカはオレの彼女だから」
    「おいおい、冗談だろ、やめてくれよな」
    「ヒロちゃんこそ、冗談やめてよ、うふふふ」
    「エリカ、愛してるよ」(後藤)
    「やだ、恥ずかしい。もちろん、私も」
     後藤は、エリカの髪の毛をそっと撫でると、頬にキスをした。

    「ええっ!!やめろよ!おまえ!」
    「キャッ!怖い!」
    「おい、病室だぞ!静かにしろよな、迷惑だろ!」
    「なぜだ・・なぜだ、エリカ?何があった?」
     怖いモノを見るように、オレを見るエリカ。
     オレは、訳が分からなくなり、ただお見舞いに持ってきた淡いピンクの花束を握りしめて突っ立っていた。

    つづく


    すいませんが、つづきます。

  • 遅くなりました。🍏蒼翠琥珀🍏です。今回は外に食べに行くパターンを展開。

    🍏🍏🍏
     今まさに揚げ上がったばかりの天ぷらを、店主がカウンターの向こう側から手早く皿の上に盛る。そしてすぐにまた簾が下りた。

     天ぷらには旬がある。それはまさしく今だ。

     ひとつ取ってそのまま齧る。すると芳醇な甘みが口の中に広がった。玉ねぎの尖った部分が水とともに抜け、油が糖を抱きかかえている。
     油、そして糖。どうしても美味いと感じてしまうのは、遺伝子に刻み込まれた記憶のせいだ。エネルギー変換効率の高いそれらは、貯蔵という意味でも、代謝という意味でも生き物に都合が良い。
     ゆえに神経節の親玉である脳は騙されている。
     だが解っていても、それに甘んじたい。
     残りの半分は天つゆにつけた。出汁が滲みた衣を前座に、やはり素材それぞれの味わいと食感が面白い。かぼちゃのホックリ感も、レンコンのしゃくっと感も。きのこの旨味は極限まで凝縮されている。

     六科を連れ出すなら、揚げ物に限る。
     中でも、天ぷらと言えばご馳走だ。しかも今味わっているのは、完璧な『揚げたて天ぷら』なのだ。
     それを今日は一緒に食べたいと思った。

     わたしたちは黙々と食べた。
     六科もまた、それぞれを噛み締め、食材の特性を楽しみつつも緻密に分析していることだろう。彼女の場合はわたしとは違って、直観的なものを高めていると言った方が合っているだろうけれど。

     蕎麦をつゆにつけて啜っていると、再び簾が上がって店主が現れた。空になった皿に、揚がったばかりの天ぷらを次々に乗せていく。
     顔までは見えないけれど、その手捌きはまさに職人。今朝方打ったというこの蕎麦も、あの手から生み出されたのだ。そして簾が下りる。

     大根おろしを加えると、褐色味の強かった天つゆが黄金色に転じた。
     さっそく浸けてみる。
     さっきのししとうも良かったが、今度のオクラも最高だ。タケノコにズッキーニ。スライスするように切り込みを入れたナスの天ぷらと、大根おろしのさっぱりとした天つゆは出会うべくして出会った。
     
     天ぷら。しかも『揚げたての天ぷら』。それはどれもが最高においしい。心の底からそう感じることこそ、一番の滋養強壮剤となる。

     まったくもって人生とは不思議なものだ。
     共に食べることを楽しめる日が、再びやってくるなんて思いもしなかった。六科と出会ったあの日から、熾火だった想いははっきりと明るさと熱を取り戻した。
     もっとも昔のような燃え盛る炎ではない。ただし簡単には消えることのない、静かな熱量を持った炎だ。
     改めてわたしは自分の望みを知った。だから今日はちょっと特別。

     と、六科がわたしを見ているのに気付く。
     表情に出さずとも、六科にはわかってしまう。そういった感覚も、本当に久しぶりのことだ。
     「飯を食うために誘ったわけじゃないだろ?」と、そう言いたいのだ。
    🍏🍏🍏


    食に関するシーンはこちらと、終盤に少し。ですが、サブテーマの『別れ』にまつわるシーンのボリュームが大きくなってしまいました。ご容赦を。

    一応リンクを載せておきます。
    https://kakuyomu.jp/works/16816410413893461604/episodes/16817139554815729175

  • 自分の方だけ投稿して、こちらにコメントするの忘れてましたw
    せっきーは今回、下拵え係で、揚げてるのはほぼテンちゃんです☆

     🍻

     ダイニングテーブルの真ん中には、串ホルダー付き多機能卓上フライヤー。スーパーの2階にある家電コーナーで見つけて衝動買いしてしまった。ガスコンロと天ぷら鍋より安全だろう。
     揚げ油は、菜種油と太白胡麻油のハーフ&ハーフで。
     テンの頭には豆絞りのねじり鉢巻。いつものエプロンを巻いてテンの台に登り、気分はすっかり天ぷら屋の大将だ。

    「テン大将、エビをお願いします」
    「はい、エビいっちょう!」

     掛け声も勇ましく、串に刺したエビを2本、教えた通りに衣に潜らせ、そっとフライヤーに挿し入れた。途端に、心地よい油の音が立つ。

    「次はレンコンとアスパラ」
    「はい、レンコンと……アスパラ!」

     これも串に刺してあるので同様に。
     買い物へ行く途中、「櫛」の話をしていて、天ぷらを「串」に刺して揚げることを思いついたのだった。テンは絶対やりたがるだろうと踏んだのだが、案の定、テンはノリノリで天ぷら屋の大将に成り切っている。と言っても、フライヤーに入った串を、隣に座るわたしの網皿に置いてくれるだけなんだけど。
     ふざけて教えた掛け声も気に入ったらしく、なんとも威勢がいい。

    「ヘイ、エビおまち!」
    「おお、美味そうだ。うんうん、上手に揚がってる」

     網の上で油を切ったら、さっくりと軽く揚がった串海老天を大根おろし入りの天つゆへ。同時に口へ運ぶ。

    「ん〜。大将、最高」
    「えへへ。美味しいね」

     ホフホフと顔が綻ぶ。料理を振る舞う喜びを、一緒に食べる幸せを、テンは既に知っているのだ。


    「ヘイ、らっしゃい!」

     玄関のドアから顔を覗かせたキクさんに気づいたのは、テンの方が先だった。

    「おー、テン。いなせな板前さんじゃないか」
    「キクさん、早かったっすね」


     🍻


    「うちらはもう結構食べたんで、好きなの頼んでください」
    「そうかい? じゃあ、キスを頼もうか」
    「はい、キスいっちょう!」
    「テン、それはセッキーがやるよ。ちょっと難しいし」

     キクさんからのオーダー、キスは串から外れやすい。なのでわたしがやろうとしたのだが ───

    「テン、できるよ! タイショーだもん」
    「テンができるのは知ってる。大将だもんな。でも、セッキーも揚げるのやりたいなぁ」

     難しい顔をして考え始めたテンの唇が、だんだん尖り始める。お? ぐずるか?

    「……しょうがないなぁ。あげるの、楽しいもんね。セッキーもやっていいよ」

     渋々、という様子でキスの串を渡してくれた。大将、ありがとうございます。

    「じゃあ、テンはあぶらげのヤツ揚げるか?」
    「うん! なぁに?」
    「食べてのお楽しみ、テン・スペシャルだよ」

     手渡したのは、四角く開いた油揚げに豚バラと大葉、チーズを乗せて巻き、一口大に切ったのを串に刺したもの。

    「テンすぺしゃる、いっちょう!」
     自分の分なのに高らかに宣言し、テンは串をフライヤーに差し入れた。


    「ああ、揚げたての天ぷらは格別だねぇ。あ、次はイカとちくわを磯辺揚げで頼むよ」
    「ヘイ!……いそべあげ、いっちょう!」

     青のり入りの衣を纏わせたイカとちくわをフライヤーへ。テンのヤツ、すっかり板についているな。


     キクさんは揚げたてのキス天を柚子塩で堪能している。うん、天つゆもいいけど柚子塩も美味いよな。
     おあつらえむきに見つけた、柚子・桜・藻・トリュフのフレーバー塩セットを買ってみたのだ。あのスーパーは品揃えが良くて助かる。
     カラッと揚がったテンスペシャルは、下味がついているのでそのままでもよし、ケチャップやソースでもイケる。テンは何で食べるのかと見ていたら、なんと柚子ポン酢をチョイスしたので驚いた。子供のわりに渋いな、テン。

     キクさんが「大将にお任せで」とオーダーしたせいで、テンは片っ端からネタを揚げている。「ヘイ、おまち!」が言いたくて仕方ないのだ。
     だからこちらも、もりもり食べる。ただ、うずら卵の串はテンが独り占めして、私たちには全然くれない。うずら串をもぐもぐしながら、どんどん他の串を揚げる。その度に高らかに、「ヘイ、おまち!」と叫ぶ。

     結構食べたけれど、キクさんは大丈夫だろうか。いくら元気とは言っても前期高齢者だ。

    「そろそろ店じまいにしようか? テン」
    「まだちょっとあるよ?」
    「そうだよ、みんな食っちまおう。こんなに美味いんだからさ」

     ……参りました。わたしはもう、明日の胃もたれが心配です……

     今日は、テンより先にわたしがグロッキー状態みたいだ。


     🍻

    お箸が苦手なテンちゃんのために、串天ぷらにしました。
    続きはこちらでお願いいたします↓
    七膳目回答編『春の訪れと天ぷら』https://kakuyomu.jp/works/16816452220246177194/episodes/16817139554939986693

  • おはようございます、🐹黒須友香です。
    天ぷら回投稿しました!

    🐹

    突然だが、天ぷら屋を開店することにした。

     といってもガチではない。いつものメンバーを前に、自分が料理人となって天ぷらをふるまう夕食会の開催だ。場所はいつもの安アパート。つまり、いつもと変わらない。

    ↓🐹続きはこちら!

    https://kakuyomu.jp/works/16816927862423037971

  • 久里琳📞です。
    あいかわらず近況ノートにはあんまり書いてなくてごめんなさい。でも読んではいます。感想も、感謝しながら読んでいます。

    さて、今回の回答編です。

     📞 📞
    まったくもって、人の世のめぐりあわせは不思議なものよ喃。
    この男、ちかごろすこぶる目がかがやいておる。料理人としての意欲を取り戻したと見えるの。よき出会いが、関わった者みなをよき方向へと導くこともあるのぢゃな。嘉き哉。
    おかげで吾も、まいにちの食事が旨い。

    今宵は天麩羅。その名を聞くだけで顔がゆるんでしまう。いうておくが、旨い飯につられてこの舎《や》に居ついているわけではない。けしてないが、むろん天麩羅はいただく。このくらいの役得はあってもよかろ。
    ・・・・・・・

    📞つづきはコチラ📞
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862534372546

  • 💐涼月💐です。

     今回は春の訪れじゃなくて、夏の訪れにしちゃいました。ごめんなさい!

     💐 💐 💐

     のんびりと歩いたつもりなのに、アッと言う間にスーパーに到着してしまった。 
     楽しい時間というのは、二倍速なのかもしれない。

     まずは入口付近に並べられた野菜から選び始めた。

     続きはこちらへ
       ↓
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862602812315/episodes/16817139554813459915

  • 💎玖珂李奈

    全文はこちら
    『午前0時の食卓』
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862450734712

    周回遅れになってしまいました。ごめんなさい。
    なお、天ぷらは時間の関係上、お休みさせていただきます。

    主人公:烈(れつ)
    ごはんを食べる少女:紅子(べにこ)
    主人公の元カノ:美奈(みな)


    💎一部抜粋💎

     なかなか男前なサイズに形作られたタネを熱したフライパンに置いてもらう。その途端に、じゃあっという音と共に香ばしい香りが辺りに広がった。
     香りに反応したのか、肉の焼ける音に負けないくらいの音量で、紅子のお腹がぐうと鳴る。そこに追い打ちを掛けるようでちょっと申し訳ないが、同時進行でソースを作る。

     スーパーで見つけた「きのこちょこっといろいろセット」の出番だ。一パック全てを小さなフライパンで炒める。
     わさわさとフライパンの上でたむろしていたきのこ達は、火が通るとつるんと柔らかく素直になり、紅子の菜箸の動きに合わせて、きゅるきゅると音を立てて動き回る。そこに醤油やみりんなどを合わせた調味料を入れると、空腹の日本人には拷問でしかない、醤油&みりんの甘じょっぱい香りが鼻腔を責め苛んだ。
     仕上げというかとどめにバターを加えると、紅子の口から「うおう……」という、切ないような苦しいような呻き声が漏れた。

  • こんにちは。
    🍁空草 うつを です!


    🍁🍁🍁

     ちょっと待っててね。
     そう言って一度脱衣所にはけてから、急いで着替えて弥生ちゃんの待つリビングにやって来た。

    「いらっしゃいませ」

     弥生ちゃんはきょとんとした顔をした。隣の席にはいつものように、アノマロカリスのぬいぐるみがちょこんと座っている。

    「ご予約の弥生様とアノマロカリス様、ですね」

     ホテルの新人研修で、徹底して教わったのがお辞儀。誠意を示すように三十度、腰から折り曲げて数秒してからゆっくりと顔を上げる。
     厨房の中にいてもお客様と対峙する可能性はあるからと、お辞儀だけで二時間も練習させられた。そのかいもあって、今でも体に染み付いている。

    「えっと、理一さん?」

     ホテル時代の制服、捨ててなくて良かった。

    「その格好は……」

    つづく。

    🍁🍁🍁

    続きは連載中の『嗚呼、愛しの絶滅種!』にて……

  • 🐤小烏つむぎです。
    今回も前半から加筆しました。
    よろしくお願いいたします。

    今回も幕末が舞台になります。

    *****

    「ヨシ!天ぷらの用意が出来たぜ。」
    オレの声に川で手を洗っていたアイツらが振り返って子どもん時のみたいな笑顔を見せた。

      奮発して胡麻油も椿油もたんと買ってある。
    ネタも三人で選んだし、あとは衣を合わせるだけだ。今日は特別だからな、特別な秘密の衣でアイツらを驚かせてやる。
    河原で一日いちんち限りの天ぷらの屋台だせ。
    オレはうーんと伸びをして、空を眺めた。
    いいねぇ。申し分ない青空だ。


    「語られぬ物語」

    https://kakuyomu.jp/works/16816927862577875744/episodes/16817139554774714800

  • ☆☆☆愛宕☆☆☆

     天ぷらと聞いて、テンションを上げない奴なんていないだろう。
     しかも今日は、その場で揚げたてを御馳走してくれるって言うんだから、材料の買い出しだってなんだって付き合ってやるさ。具材のことを考えてて「ニヤニヤ」してた関川くんは気持ち悪かったけど、そういったものも全て帳消しだ。さて、まずは何から買うんだ? 関川くんよ――。

     天ぷらにしたい材料を揃い集めて、いざキッチンの前に立つ関川くんは、いつもよりも凛々しく見えた。それぞれの具材をどう向き合い、仕上げてくるのか、揚げたてを出してくるところまでのパフォーマンスも楽しみだ。

    「いいかい。天ぷらっていうのは、本当は蒸し料理なんだ。揚げたてが美味しいって言われてるけど、それも正解といえば正解。え? わからない? あはは、そうだよね。揚げてるんだか蒸してるんだか、どういうことだって思うよね。うん、どっちも正解なんだ」

     何を言っているのか全くわからない。
     天ぷらは揚げるものだろう。高温でジュッと揚げるのが天ぷらじゃないのか? しかし、それにしては火の加減が弱いような気がする。開封したばかりの綺麗な油を使ってくれるのは嬉しいけど、そんな火加減じゃあ具材と衣のバランスが悪そうな仕上がりになるんじゃないか?

     関川くん、遂にカッコつけ過ぎて空回りしだしたか……。

     そんな心配を他所に、シュッと衣を軽くつけたアスパラが投入される。アスパラは好きだけど、もうちょっと火を強く……いや、なんだ? 綺麗だ……使い始めの油や鍋の色ではない、音が綺麗だ。ジューじゃなくてシュー、きめ細かな泡が弾ける時の爽やかな音色が、天ぷら鍋の中で踊っている。

    「天ぷらはね、熱と水分で食材の良さを上手に引き出す蒸し物なんだよ。具材ってさ、それぞれ含まれている水分の量が違うだろ? ちゃんとそれを計算して、具材と呼吸するように火加減や取り出すタイミングを変えていくんだ」

     そう言って、ひょいと菜箸でアスパラを引き上げた関川くんは、得意顔のまま「このくらいでいいかな」と余計な油分を払ってから、ゆっくりと角皿へ置いて俺の前に差し出した。

    「さぁ、まずは食べてごらん。きっと気に入ってくれるはずだよ」

     見た目と香りは十分だ。
     しかし、味は? アスパラの固さはどうなのだ? 
     俺は半信半疑で、それを口に入れた。


     ――シャクンッ!


     おおおぉぉぉ!
     なんだこれは! 心地良い歯触りとフワッとした中身の熱量。衣にまで味がついているようだ。今この瞬間、俺の中で天ぷらアスパラガスの概念がガラリと変わった。

    「う、美味い」
    「だろ? 間を置かずに食べてくれて良かったよ」
    「それは、どういう……?」
    「これでも一応、予熱時間を計算してるんだよね。予熱を使って、衣に包まれた具材をジワジワと蒸していくんだ。本当に美味しい天ぷらっていうのは、そういうものだからさ」
    「そういう……もの……」
    「ようやく喋ってくれたね。美味しいものを食べ続けてくれれば、いつかきっと唸ってくれるようなメニューも出てくるんじゃないかって思ってたんだよ。いやぁ、天ぷらだったかぁ。君も随分と舌が肥えてるじゃないか、声だっておじさんぽいし」
    「ぐっ! ぐぬぬ……」

     しまった! あまりの美味さに声が出てしまった。
     でも、それが関川くんの狙いだったとは……完敗だ。いや、勝った負けたは関係ない。「美味い」の一言だけで、彼には十分なのだろう。

     その後は、蓮根、薩摩芋、人参と、野菜ばかりのレパートリーが続き、ラストに大海老のボスが登場。どれも火加減を変えたりして、蒸す時間もさまざま。素材の旨味が絶妙に引き出されている。初めて白飯を「要らない」と感じた天ぷらだ。

    「ごちそうさまでした」

     俺は両手を合わせ、初めて声を出し関川くんを労った。もう、子供の体になったことなんてどうでもいい。美味いものにはちゃんと声を上げて、作り手に感謝することが、真のグルメ道というものだろう――。

  •  舞茸と輪切りにしたレンコン、タラの芽にナスと薄切りにしたカボチャ。
     頭とワタを取った海老、そして一口サイズにした鶏肉。開きにしたキス。
    わたしたちの前には色とりどりの食材が並んでいる。
    「……これを全て、天ぷらに?」
     袴のような太めのズボンを穿いて、リネンのゆったりしたショールを纏った青年は感銘を受けたように声を漏らす。気品のある顔立ちなので、格好も相まって中東の王族を思わせる雰囲気だが彼の正体は大黒様の化身だ。

    「ええ。贅沢でしょう」
     かつて料理店を経営したが失敗したわたしは、再建するために彼のご利益目当てに家に連れ込んでは料理をご馳走するということをこの数週間で何度か繰り返していた。
     結局その成果は得られていないが、しかし彼のために料理を作り続けるうちにわたしは、料理人になる夢を無くしかけていた自信が少しずつ戻ってくるのを感じていた。
     先日は彼が口に出してわたしの料理の腕を認めてくれたのだ。だから今日はご利益目当てという下心を抜きにして料理を作ることにしたのだった。
     もちろんわたしの美味しい料理を口にした大黒様が感激して結果としてその力で金運を授けてくれるようであれば、やぶさかではないが。いやむしろそうなってほしいとは思っているが。

     ともあれ、今日は最高の天ぷらを作ることに集中しよう。
     卵と薄力粉と水を混ぜた衣は準備してある。さらによりサクサクさせるために片栗粉もブレンドしてあるのだ。わたしは鍋に油を入れて、中火で一七〇度くらいまで熱する。

    「待っていてくださいね」
     食卓に座っている彼のためにわたしは天ぷらを順に揚げていく。
     まず第一陣はカボチャとレンコン、それにタラの芽だ。
     衣をつけて三分ほど油の中で火を通す。ジュワジュワと音を立てて、きつね色になったところで油をきって皿にのせる。
    「さあ、どうぞ」
     味付けの方はだし醤油と塩をそれぞれ準備した。
     彼が待ちきれないというように箸を伸ばして、しょうゆだれをつけて口に運ぶ。シャリシャリと揚げたてを頬張る音を立ててから、目を細めて「美味しいです」と呟いた。
    「……それは良かった」
     わたしも塩をつけて食べてみる。サクっとした歯ごたえと野菜の味がたまらない。噛みしめればシンプルな塩味が素材の味わいを引き立てて、白飯が食べたくなる。

     しかし今日は純粋に彼をおもてなすための場である。わたしは立ち上がって第二陣の準備をする。今度はナスと舞茸、海老に衣をつけてそっと鍋に入れる。
     やがて色鮮やかな天ぷらが油の中に浮き上がってくる。油きりの上にのせればカラリとした黄金色の衣に包まれた海の幸、山の幸が食欲をそそる香りを漂わせた。
    「食べましょう」
    「はい」と彼も嬉しそうに頷いて、一緒に食べ始める。ナスは良く油が染みていてサクリとした衣を頬張ると、口の中でやわらかな味わいが広がる。舞茸はパリッとした食感にしょうゆだれとキノコの味わいがマッチしてたまらない。そして天ぷらの代表と言えば海老である。御飯の上にのせて天丼にして食べるのもまた美味しいのだ。

     二人で二皿目を堪能したところで、わたしは最後の調理に取り掛かる。油をもう一度温めて衣をつけたキスと鶏肉をいれる。ほどなくしてキスの天ぷらととり天の出来上がりだ。

     衣に包まれた魚と鶏肉の味わいを続けて楽しんでいると「ところで話さなくてはならないことがあります」と彼が唐突に切り出した。

    「何ですか、急に」
    「わたしが祀られていた社は、実はある個人事業者の私有地にあったものだったのですが」
    「ああ。外資系の企業に土地ごと買われて、つぶされたということでしたね」

     それで居場所を無くして彼はさまよっていたはずだ。
    「その、元の持ち主の方がご神体を作り直して、別の場所に再建してくださったのですよ。だからもう放浪する必要が無くなりそうなのです」
    「えっ。……そうでしたか」
     それではもう会えないということなのか。だが彼にとっては喜ばしいことなのだ。私も友人としてそれを祝うべきなのかもしれない。

     だが、少し気になることがある。
    「でもそもそもあなたのような本物の福の神を祀っていたなら、前の土地の持ち主はさぞ商売繁盛していたんじゃないですか? どうして立ち退くようなことになったんです?」
    「それが……お店が売れすぎたために、目をつけられて乗っ取られてしまったようで。わたしの力も常にいい結果をもたらすとは限らないようです」
     彼は悲しそうに目を伏せた。

     なるほど、大きすぎる資産は良い結果をもたらすとは限らないらしい。
    わたし自身にしても、もし彼が魔法のような力で「えい」と金を出してくれたらありがたいとは思わず使い方をおろそかにして、また店をつぶしてしまったかもしれない。「どうせ神様の力でもらったものだ」「失敗してもまたお金を出してもらえる」などと調子に乗って。
     そこでわたしははっとなる。

    「も、もしや、あなたは不相応な財産が不幸をもたらすと思って、それでわざと今までアピールしてきたわたしの願いを叶えてこなかったのですか?」
    「えっ!? ……ええ、まあそうなんですよ。そのとおり。あなたのためを思って、神なのに心を鬼にしていたんです」
    ……今「えっ!?」って言ったな。

    「前の土地の主の方は地元の名産品を販売していた方でした。しかし『店をもっと売れるようにしてください』とお願いされたので力を使ったら、売れすぎて評判になったために外資企業に目をつけられて『店ごと買収されて』しまいまして」
    「なるほど文字通り『店が売れた』的な」
    「はい。勢い余ったと言いますか。わたしもそれから力を使うときには慎重になったのです」

     本当かー? 本当にそうかー? お前の天然ぶりからして、単に店を売れるようにしてくれという願いを聞き違えたのと違うか?
    「しかしあなたの供えてくださった料理のおかげで神格も戻りました。おかげでこの数週間、生きながらえることができて本当に感謝しています。もう何度もここに来ることはできないかもしれません。……お礼になにか何でも願いを一つ叶えられればと思いますので。考えておいてください」
    「え。でも」
    「それでは、また」
     彼は静かに背を向けて去っていった。

     ずるい。あんなことを言われたら、わたしを儲けさせてくれなんて言いづらいではないか。

     そしてご利益目当てだったはずなのに、彼に会えなくなるとわかるとなんだか寂しくなる自分がいた。大体、彼も不人情だ。神社を建て直してもらったから、もう来られないなんて。

    「……天ぷらよりもテンプル(神社)の方がよかったってことか」

     いやいや、いけない。距離をもって接するべき相手に、使った後の油みたいにベタベタと粘着するのはわたしらしくない。出会いもあれば別れもある。ここは揚げ物のようにカラッとした関係で行くべきだ。
     鍋の油を片付けながらわたしは気持ちを振り払うように首を振ったのだった。

    ❄️ ❄️ ❄️

    ❄️雪世明良です。よろしくお願いします。

  • 🍷出っぱなしです。

    お疲れ様です
    終盤に入りましたね。

    🍷🍷🍷


     たとえ文明が滅びようとも世界は回り、自然は、花々は咲き誇る。

     辛く寒い冬の終わりとともにやって来る春という穏やかな暖かさには心踊る。



     わたしはタマと手をつなぎ、まるで親子のように買い物帰りにのんびりと散歩をしている。



     文明が崩壊したこの世界は、秩序などなく暴力による恐怖で支配されているが、変態の館の城下町であるこの界隈は比較的安全だ。

     それだけカノーさんの威光が大きいのだろう。

     散歩を楽しむ余裕がある。



     今回はわたしの大好きな天ぷらということもあって、ついつい買い込みすぎてしまった。

     二人で食べるには大変な量だ。

     ま、いつも通りカノーさんにお裾分けすればいいか。



     などど思っていると、後ろに手を引っ張られたかのように転びそうになった。

     タマが突然立ち止まって路地裏を覗いている。

    ・・・

     天ぷらという料理はネタに衣をつけて揚げるだけ、実にシンプルだが奥は深い。

     カラッとサクサクとした食感を出すのが簡単ではない。

     しかし、ポイントを押さえればある程度は上手くできる。



     まずは、脱水シートのようなもので、天ぷらの大敵、ネタの水分を取ってやる。

     タマも料理が楽しくなったのか、手伝ってくれている。



     次に衣を作る。

     最初は卵黃と水を混ぜ合わせてから、粉を混ぜ合わせる。

     屋台の店主も興味深そうに眺めている。



     そして、衣にビールを混ぜる。

     ビールに含まれる炭酸ガスが衣の中で発生し、揚げた時に熱を持つことで、中からも火が通るのだ。

     イギリスのフィッシュアンドチップスの作り方だが、大人の味なコクが出る。

     子供用には、あっさりとした炭酸水でも良いだろう。



     揚げる前にネタに打ち粉をしてあげることも忘れてはならない。

     衣が剥がれにくくなる効果があるのだ。



     そうして、エビ、キス、ハルシメジ、アスパラ、菜の花など春の食材を次々と揚げていく。

     道行く人々は油の弾ける心地よい音に足を止める。



     揚げた天ぷらも溜まったことだし、頃合いだな。



    「みんな、今日は無礼講だ! 変態の館からだ! 好きなだけ飲み食いしろ!」

    🍷🍷🍷

    残りはこちらです。

    『飯テロリスト関川様、ネコ耳を拾う』

    https://kakuyomu.jp/works/16816927862486888667/episodes/16817139554828859550


  • 編集済

    皆さま、こんばんはーー!!
    超久しぶりの投稿です(;´Д`)
    やっと周回遅れを取り戻しました💦

         🐛 🐛 🐛

     使用するのは合いびき肉と玉ねぎとブラックオリーブとつなぎの生卵、そして風味付けのローズマリーと塩コショウだ。
     材料をキッチンにそろえて見本を少し見せ、それとなく作業内容を伝える。まず、玉ねぎを刻もう! と…………するとまさかの彼女は皮ごと刻み始めた。ううぉーい!!
     慌てて制止して皮をむくことを伝え、料理本の写真を見せながらみじん切りにしてもらう。
     しかし、なんとたどたどしい作業だ。指を切断しないか気が気でないが、まあそこはあれだ。静かに見守ろう……


    続きは『飯テロ開始します! 〜傷ついた訳あり彼女に一膳の飯を〜』にて。

  • ♪ 一帆です。

    やっとこさ、ハンバーグの回答をアップしました。

    ****

    ―― はい! いただきましたー!!

    天蓬さんの『たまには俺が作るのもいいな。とびきりうまいハンバーグとやらを作ってやる。覚悟しとけよ』宣言! なんかデジャブってるような気もしないでもないけど、よく思い出せない。

    「お肉は羊です。村長さんから分けていただきました」
    「羊か……」
    「水蓮じゃなくて、主だって……」

     金炉さんと銀炉さんが顔を見合わせてこそこそしゃべっている。

    ****

     つづきは、「妖術士見習いは愛を学びたい」で。
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862494687766

  • 🐹黒須友香です。
    ハンバーグ回、投稿しました♬

    ↓🐹(一部抜粋)

    二人が見ている料理の本は、あちこちに油や調味料がはねた跡があったり、湿気でしわが入っていたりと、キッチンで使い込まれたことがありありとわかる、年季の入った本だった。

    「達月くんが大事に使ってきた本なんですよ」

    「うちに今あんの、この一冊だけなんやけどな」

    🐹↓続きはこちら!
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862423037971

  • こんにちは。久里琳📞(ク〇リンと読むのも可)です。
    コメント欄には割りこめていませんが、楽しく読ませていただいています。
    和響さん、非公開にされるのですか? つづきを楽しみにしていたので、残念です。
    神寺さんの今回のお話は、攻めてられましたね。たしかに運営さん的には際どいかもしれませんので、関川さんの苦渋の御決断もやむなし!だと思います。でも個人的には、不快ということはありませんでした。許容範囲内のお話がいずれまた掲載されるのを楽しみにしております。

    さて、今回の回答編です。

    📞 📞 📞
    ハンバーグ。お肉たっぷり、ソースがとろうり。外はこんがり、中は肉汁がはちきれそうで。
    ああ、きっと美味しいんだろうな。すてきですてきなハンバーグ。写真を見ているだけで幸せになれる。

    あんまり夢中で見入ってたせいで、声かけられたとき、反射的にハンバーグのページを見せてしまった。なんだか要求してしまったみたいではずかしいや。

    そしていま、ぼくの前にはハンバーグの素がたくさんならべられている。ハンバーグって、肉ばっかりでできてると思ってたけど、ちがうんだね。
    切ったらぜんぶボウルにつっこんで混ぜ捏ねる。さいしょ手を入れるとむにゅって手ざわりがヘンだったけど、捏ねてるうちに楽しくなってくる。
    ぐったり、ぐっちょり、いろんなものが混ざって粘って、もうなにがなんだかわからないけどいいんだ、だって、とにかく楽しい。
    ・・・・・・・

    📞つづきはコチラ📞
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862534372546

  • 💐涼月💐です。

     もやは更新時刻の予定はあって無きがごとくになっております(;^ω^)
     なんとか更新できました。
     ただ、すみません。皆様のところへのお伺い明日以降になってしまいそうです。
     ゆっくり伺いますので、少しお時間くださいませ。

    💐 💐 💐

     今、色音が泣いているのは、俺の無茶ぶりのせいじゃないぞ。

     犯人は玉ねぎだ。白くて丸くてキューピーと同じくとんがった頭をしているくせに、同族の天使を泣かせるなんてなんて奴だ。

     いや、そんな冗談を言って誤魔化している場合では無い。
     
     泣いている色音を見ているのは、なんとも……俺の方が落ち着かないのだ。

     続きは ↓ です!
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862602812315/episodes/16817139554687859580


  • 編集済

    ようやく書けました〜。🍏蒼翠琥珀です🍏

    今回は新たに、桜井市にある三輪山をご神体とする日本最古の大神(おおみわ)神社の『なで兎』と、明日香村にある飛鳥の石造遺跡の一つ『亀石』から想起したキャラクターが登場します。

    🍏🍏🍏
     今俺たちの前にあるのは、じうじうと音を立てる挽き肉の塊だ。石を組んで造った即席の炉に、亀石が持参した小さな鉄板を乗せて、赤みの肉が次第にその色を閉じ込めていくさまを見つめている。
     拾ってきた松ぼっくりはどれも湿気ていて、なかなか灯らない火に心が折れそうになりながらも、ようやく此処までこぎつけた。
     亀石は登山、俺はトレイルランニング。似て非なる楽しみ方ではあるが、俺たちは山で過ごすことが多い。今日もそうだ。
     拓けた山頂にぽつんと佇む月光桜。その幹にタッチして下ってきた俺は、ゆるゆると登ってくる亀石に遭遇した。
     いつものように、おおよそ五合目あたりで、こうして昼飯を共にする。
     身軽な俺は日帰り、亀石は大きな荷物を担いで山頂ないし好みの場所で一夜を明かす。ご苦労なこった。そして下山後に六科の店で落ち合い、各々の山での時間について駄弁って過ごすのがお決まりだ。

    「あ、しもたぁ」
     項垂れた亀石を見て、俺は「しもたぁ」の原因がわかった。何もせずに待つのも飽き飽きしていたところだ。さっと立ち上がって、周辺で目当てのものを拾ってきた。
    「これで、どうだ?」
    「うわ、めっちゃえぇやん! 絶対いけるわ!」
    🍏🍏🍏

    全貌はこちらで。
    『異都奈良の琥珀食堂』〜俺とオマエのお膳立て〜
    https://kakuyomu.jp/works/16816410413893461604/episodes/16816927863266269377

  • 🐤小烏つむぎです。

    今回も前半から大幅加筆しています。
    よろしかったら前半からお読みください。
      ↓
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862577875744/episodes/16817139554538226111

    ***********

    後半のチラ見せは、こちらになります。


    じいちゃんはかあちゃんが使っている四角な包丁と違って、小さいけれど先のとんがった包丁を出しくれた。これはここでお手伝いするときの僕用の包丁だ。

    土間の横の甕にまな板を渡すと、僕にちょうどいい高さになる。じいちゃんは肉と玉ねぎとキャベツと赤いのを流しに置くと、僕の足元で七輪に火を起こし始めた。

    「ねぇ、じいちゃん。

    洋食屋してたときも七輪でやったの?」

    「いや、あっちの竈でやってたさ。」

  • おはようございます。
    わたくしリクエストのハンバーグ回。関川さま、採用ありがとうございました!
    今回ばかりは(それほど)遅れてはならぬ! と頑張って来ました。
    が、皆様の作品を読むのはやっぱりもう少し遅くなりそうです……


     🍻

     丸々と膨れたハンバーグにナイフを入れると、透明な肉汁がびゅうと噴き出した。湯気を立てる肉の断面を、玉ねぎの粒を撫でながらキラキラと流れ落ちてゆく。

    「ふわぁ〜!」

     肉汁に負けないキラキラした瞳を丸くして、テンが歓声を上げた。その拍子に、また涎がたらーり。 

    「はい、いただきます」
    「いたなきます!」

     割ってやった一口分にフォークを突き刺し、口いっぱいに頬張る。

    「ほむうぅーーーーー!」

     ぎゅっと目を瞑って、ゴクゴクと喉を鳴らしている。あふれる肉汁を飲み込んでいるのだ。そして、もぐもぐ。肉感荒々しいミンチに、シャキシャキとした歯応えの残る甘い玉ねぎ。ほのかに感じるスパイスに、芳しいソースの香り。
     もぐもぐしながら、テンは初めてのナイフを見よう見まねで操り、次の一口分を切り分けている。付け合わせのクレソンやミニトマトには目もくれず、二口め。

    「ンむぅ〜〜〜〜〜ん!」

     テンの至福の呻き声をBGMに、わたしも一口。うん、美味い!!
     繊細に焼き上げた口溶けなめらかなハンバーグもいいけれど、わたしはこのワイルドなハンバーグが断然好みだ。じゃぶじゃぶ迸る肉汁、ガツンとくる肉の迫力と旨味。瑞々しい玉ねぎの食感も最高。
     甘辛いソースもよく出来てる。濃い目の味付けで、ハンバーグ自体の美味さを引き立ててくれる。

     ……なんて堪能している間に、テンは早くも一個食べ終えてチーズハンバーグに取り掛かっている。
     そんなテンを横目に、ポテトサラダをぱくり。よしよし、こっちも完璧だ。熱々の具材と混ぜたおかげで新玉ねぎにもいい感じに火が通り、爽やかな甘味を存分に出してくれる。全体に染み込んだベーコンの脂、瑞々しいきゅうり、寄り添うような甘味のにんじん。そして野菜と牛乳の水気を吸収したぽってりとなめらかなポテトを、マヨネーズがまとめ上げている。

    「すごく美味しいよ。テン、ありがとう」

     心を込めて礼を言うと、テンは嬉しそうに、そして誇らしげに笑った。ポテトサラダからきゅうりをつまみ出し、見せてくる。

    「これ、一緒にぎゅーってしたね」

     …っキューン!


     ああ、駄目だ。これはダメだ。止められない。ぎゅーってなったのはこっちの心臓だよ……

    「セッキー、なんで泣いちゃうの?」
    「テンの作ったお料理が美味しすぎるからだよ。泣いちゃうくらい、美味しいんだ」
    「そっかぁ。テンも泣いちゃうくらい美味しい!」

     そっと涙を拭うと、袖口はテンの涎でまだ湿っていた。

    🍻

    全文はこちらからお願いいたします↓
    第六膳回答『初めてのハンバーグ』
    https://kakuyomu.jp/works/16816452220246177194/episodes/16817139554659720530

    ねむすぎて力尽きました。二度寝します………


  • 編集済

    ♪一帆です。

    やっとこさ、ちらし寿司の回答を書きました。
    うわーん。おいつかなーい。ゲームしている場合ではない。


    ******
     天蓬さんと並んで歩きながら、『ちらし寿司』リサーチを始める。

    「天蓬さんはお肉とお魚、どっちが好き?」
    「ん? なんだ、急に?」
    「ちらし寿司の具材を何にしようかなと思って……」

     天蓬さんが後ろを歩いていた金炉さん達を振り返って、三人で肩をすくめている。

    「もしかして、天蓬さん、食べたことない?」
    「ない。だから楽しみだ」

     自慢げに胸を張って、天蓬さんが答え、金炉さん達がうんうんと頷いている。

    ―― 仕方ない。じゃあ、見栄えが良くて、天蓬さんの好きなものを使って、ちらし寿司にしてしまおう!! 


    ******
     続きは、『妖術士見習いは愛を学びたい』 です。 
      https://kakuyomu.jp/works/16816927862494687766

     よろしくお願いします。


     

  • 🎐風鈴
    飯テロのお時間です!
    再び、吹っ切れた話で申し訳ないのです('◇')ゞ

     お題にある『家』を『部屋』に変更ということで、よろしくです。

     *
     オレは、霧子があたふたと料理するのを眺めながら、妄想を膨らませていた。
     食べ終わった時にプロポーズするんだ!
     その文句を考えながらニヤついていた。

     と、その時だった!
     ガチャリンコ!
    「ヤッホーー!霧子ーー、ゴチになりに来たぜーー!」
    「あっ、来た来た、上がって上がって!」
    「えっと、君は?」
    「ども、彼女とつき合ってる田中です!」
    「ええっっ!!」
    「もうー、冗談が好きなんだから!」
    「あはは、半分本気なんだけど」
     そう言って、田中はオレをジロッと見た。

     と、その時、キッチンから、フライパンに玉ねぎが入ったようでジュワ―という音が聞こえてきた。
     二人して、お腹がグーーと大きく鳴り響いた。
    「二人とも、お仲が良いね!」
     霧子の明るい声が響く。

     と、その時だった!
     ガチャリンコ!
    「チース♬シクヨロ♬ヨロタノ♬甘いマスクの佐藤だよん♬」
     チャラい!
     こいつはチャラい!
    「チース、シュガー♬ハンバーグだよ、シクヨロ♬アセアセ♬」
    「なるほどばしカメラ♬楽しくしナイトプール♬ponponpon♬」
     こいつ、ナニ人だ?
     って、霧子、お前、会話できるのか?

     霧子はボールを二重にして外のボールには冷水を入れてから、中のボールに合い挽き肉を投入し、お塩を振ってからのグッチャか、グッチャかとこね回す。
     ここは塩を入れることで、たんぱく質が分解し粘りが出てまとまりやすくなるのだ。

     と、その時だった!
     ガチャリンコ!
    「こんにちわわ!来てやったぜーーーと!!わおう!!」
    「わお!明石君、わお!!」
     なんだ、この濃いヤツは?!

    「うふふん、みなさん、揃いましたね。みんなこのアパートの人たちです!私が時々この部屋に来るとき、偶然に再会したの。今回、お料理するから、さっき呼んじゃった」
    「再会って?」(オレ)
    「3人とも高校時代のお友達。通学途中のサトウキビ畑で佐藤君が寝てて、それから知り合ったの。明石君と田中君は、佐藤君のお友達だからその関係で、仲良くなったていうか・・」
    「まあ、そんなところだけど、高校時代はいろいろとな!な?!」(田中)
    「#♪よう、よう、男3人♪女1人♪出会って別れて♪また会って♪今度こそ!決めるぜキッス!スッキリと♪#」
    「霧子ちゃんのこと、みんな大好きなんだぜーーーと!ハンバーグ――!!」
     明石はグーにした拳を突き上げた。

     ジュワ―という、またしても良い音が響いて来たと思ったら、良い匂いがして来た。

    「どうも、初めまして、関川です!」
    「♬初めてじゃないからね~~~♬」
    「えっ?」
    「佐藤が駐輪場で寝てた時に、きみ、スキップダンスしてただろ?知ってるよ」
     何を言ってるのかな、田中は?スキップ?
     ステップの間違いじゃね?
     オレ、スキップなんて小学生の時くらいしか、しかもダンス?

    「わおーー、見たい見たい見たい!ヒロちゃんのスキップダンス!」
    「えっ?そうか?」
     つい、言ってしまった!
     霧子の目が輝いてる!

    「ああ、これか?でっあいは~、ろっくせんまんの~~、はとむーぎちゃーー!えきぞちぃぃぃぃーーーく、じゃぴぁ~~~ん!じゃぴぁ~~~ん!ろっくせんまんえん、ろっくせんまんえん!」
     オレは、心を無にして踊った!
     最後はカズダンスでチー―ンだ!!

    「・・・・・・・」
     男3人は無言無表情だった。

     と、その時だった!
    「ぱちぱちぱち、ぱっちんこ!!」
     霧子が口で拍手してくれた。
     両手が今塞がっていたからだ。

     こうしている内に、ハンバーグが出来上がった。
     5人前ある。
     オレ達の前に一つずつ、並べられた。
    「さあ、召し上がれ!うふふふふ、あっ!ちょっと待って!一番最初に食べてくれた人に、わたし、あげちゃうから!」
    「ええっっ!!」
     オレ達の頭の中に、私をあげちゃうというフレーズがコダマしていた!

     パッと見、ハンバーグの大きさ的には、大きく口を開けてのふた口分だ!
    「さあ、まだよまだよまだよ、はいっ!スタート!!」

    「ゔっ!」「ぜーと!」「あい~ん」「ぐはぁ!」
     まず、佐藤と明石がリバースしてギブ。
     オレと田中の一騎打ちになった。
     涙が出て汗だくとなったが、田中の方が少しだけ先にかぶりついて飲み込んだ。
     オレは一瞬躊躇したのがアダとなってしまった。

    「田中君の勝ちーー!!はい、これ!私の分のハンバーグ!」
     それを聞いて、田中は気を失った。
     そして、この場から佐藤と明石に肩を担がれて退場していった。
     残されたのは、オレと霧子とハンバーグ一個。

    「オレが食べるよ、そのハンバーグ!」
    「いいよ、無理しなくても。不味かったんでしょ?」
     霧子はしょんぼりと俯く。

     ダメだ、ダメだ、ダメだ、霧子!
     君には、笑顔が似合うんだ。
     オレのプロポーズの言葉は、君の笑顔を一生見続けたい、だ!
     だから、笑わしてやるよ、これを完食して!

    「バカだな~、一生懸命、作ったんだろ?オレ達が喜ぶ顔が見たかったんだろ?だったら、オレが代表して食べてやるよ!オレ、ハンバーグが大好きだから!」
    「いいよ、いいよ、なんか、身体に悪そうだし」

     これを食べたら死ぬのか、オレ?
     でも、でもでもでも、オレは霧子の悲しむ顔を死んでも見たくねーんだよ!!

    「フタヒロ、逝きまーーす!」

     オレは、目を瞑って、一口目で出来るだけ多くをかぶりついた!
    「むぅぅぐぅぅぅ~~、むしゃむしゃ、ごっくん!おいしーぜーーーと!!」

    「いいよ、無理しなくても」
    「いや、違うって!ホントに美味しいから!」
    「あっ、それだけ、こっちのケチャップにしたの」
    「あっ、それは!そうか、オレ達が最初に食べたケチャップソースは、激辛デスソース!!そうか、そのケチャップもその激辛デスも容器の表面にラベルが無かったからね。ごめんよ、そこまで気がつかなかったよ」
     因みに、ケチャップ3:ウスターソース1:醤油小さじ2:バター5g(前3つをハンバーグを取り除いた後のフライパンに入れ、ひと煮立ちさせてから入れる)という比率でケチャップソースを作る。

     ということで、笑顔で残りのハンバーグを完食したのでした。
     ◇

    「ってことがあったよね~、霧子」
    「そうだったわね、あなた」

     オレは、愛する霧子のハンバーグを食べる度に、この話を思い出すのだった。
     じゃぴぁ~~~ん!

     おしまい

  • 🍁空草 うつを です、こんばんは!
    以下回答になります!

    🍁🍁🍁

     まずは玉ねぎを微塵切りにします。
     包丁を握ってひとつ深呼吸をしてから、玉ねぎを半分に切りました。二等分というわけにはいきませんでしたが、とりあえず大きい方を使いましょう。
     左手で押さえて、縦に切り込みを入れて……手を切らないように慎重に……更に真横に切っていって。

     それから、それから?
     微塵切りってどうすれば木っ端微塵に切れるのでしょう??

    「どうかした?」

     包丁片手に動きを止めた私が心配になったのか、理一さんが様子を見に来てくれました。

    「もっと細かくしたいんです」
    「それなら」

     理一さんに包丁を渡すと、左手で包丁の先を押さえ、そこを支点に動かして玉ねぎを切り始めました。
     綺麗に整えられた、短い、清潔な爪……料理人だったころの癖なのでしょうか。

    「こんな感じで切るんだよ」

     理一さんの爪ばかり見ていて切り方を見逃してしまいました。もう一回お願いします、と言うと嫌がらずに再度切り方を教えてくれました。
     微塵切りをしていると、涙目になってきてしまいました。
     その玉ねぎを耐熱皿に入れてレンジで温めると甘みが増しますし炒めるより時短になる、と理一メモに書いてありますのでそれに従います。

     挽肉の入ったボウルに、粗熱を取った玉ねぎと卵とパン粉と塩胡椒、それとナツメグというスパイスを入れるらしいのです。
     ナツメグが入ることで、玉ねぎの甘さを引き出すだけでなく、お肉の臭みを消してくれるみたいです。

     粘り気が出るまで根気強く混ぜて、手のひらサイズに分け、小判型に整形したものを空気抜きしていきます。ここはテレビで見たことがあります。

     それからちょっと一工夫。別な形に成形してから油をひいたフライパンに投入すると、ジュウ、という音を立てました。

    🍁🍁🍁

     続きと加筆した前半部分は、連載中の『嗚呼、愛しの絶滅種!』にて……。


  • 編集済

     目の前の青年はレシピを見ながら細かく刻んだ玉ねぎとひき肉をこねていた。
     ピタッとしたパンツスーツとワイシャツ、ネクタイの上にスリムな体にフィットしたボタン付きのベストを着こんでいるので英国の執事かニューヨークのビジネスマンのような風情だが、その上にエプロンをつけているのが少しユーモラスではある。

    「……次は牛乳と、塩とパン粉ですか」
     レシピを確認するようにそう呟いている彼は実は大黒様の化身だ。彼のご利益で大金を手に入れて、一度つぶれた店を再建するのが私の目的だったが今のところそれは果たせていない。

     相変わらず何日かわたしの家にいたかと思うと急にいなくなったりもする風来坊のような有様だが、今日は珍しく自分からレシピ本を持ってきてリクエストしてきたので気まぐれで自分で作ることを勧めてみたがどうなるものか。

     と、ここでわたしはあることを思い出す。
    「そういえばあなた、牛肉はダメなんじゃなかったでしたっけ?」
     大黒様はヒンズー教のシヴァ神でもあるので、牛の肉はタブーだったはずだ。しかし彼は涼しい顔で言葉を返す。
    「日本に来て大国主と習合していますからね。もっと物事を柔軟にとらえようかと思いまして。ビーフカレーも悪くはなかったですし、あと二回くらいなら牛肉を食べてみるのも良いかな、と。『仏の顔も三度まで』といいますから」
     お前は仏じゃなくて神だろうが。
     いや仏の一種である不動明王アチャラナータもシヴァ神の異名ではあるが。……それにしても戒律や宗教の垣根がゆるゆるだ。日本の文化にあてられすぎたのかな。

    「付け合わせとソースを作るくらいならわたしも手伝いますよ」
     何もしないで待つのもどうかと考えてわたしは立ち上がる。冷蔵庫の中にブロッコリーとジャガイモがあったので取り出して、ジャガイモの皮をむいて電子レンジに入れる。
     そうこうするうちに、彼は小判型に成形されたハンバーグを焼き始めた。基本的にはレシピ通りに作っていれば美味しく出来上がるはずである。
    「……こんな感じですかね」
    「はい。もう少し焼き色が付いたら、ひっくり返して蓋をして蒸し焼きにします。竹串で少し刺して透明な汁が出るようになったら完成ですから」

     言いながらわたしの方はトマトを角切りにして、粒マスタードと一緒に炒めて砂糖と塩を少し加える。彼は言われたとおりに焦げ目がついたハンバーグを裏返して蒸し焼きにし始めた。
    「もうすぐ焼けそうですけれど」
    「ではイタリアンハンバーグにするのでスライスチーズをのせましょう」
    「なるほど」

     やがて皿の上にはハンバーグとさらに即席のトマトソースを添えられた白いチーズが重ねられ、美しいコントラストが作られる。レンジで温めたブロッコリーとジャガイモも添えて出来上がりだ。
     ナイフを入れるとジュワッと肉汁が染み出してくる。そのまま酸味のあるトマトソースととろけたチーズを絡めて口の中に入れるとたまらない。

     向かいに座っている彼を見れば、やはり味覚に集中して言葉を失っている。わたしたちはそのまましばらく、香ばしい肉のハーモニーに酔いしれながら料理を口に運ぶ作業にいそしんでいた。
     やがて皿の上も残り少なくなって、お腹が膨れてきたところでわたしは本題を切り出すことにする。

    「ところで今日は大事な話があります」
    「大事な……? 何でしょう」
    「あなたと出会って数か月。わたしは会うたびにあなたに食事を作っていますね」
    「そうですね。とても美味しくて感謝していますが」
    「何日か、家で過ごしたこともありましたね」
    「そうですね」
    「そろそろ、この関係性を見直したいと考えていまして」

     そう。わたしは彼の神通力で金運を上げるなりして大金を手に入れるために、この数か月何度かさりげなくアピールしてきたがはぐらかされてタダ飯を食われるばかりだった。今日という今日ははっきり言おうと考えていたのだ。「ギブ&テイク」の関係性でテイクだけされてはたまらない。せめて等分に、話も半分くらいまで進んだところで「ハーフ&ハーフ」くらいにしてほしい。

     だが一方、彼はわたしに神妙な顔で首を振る。

    「そんな、いけません。お気持ちは嬉しいですが、わたしたちは神と人間。これは道ならぬ恋です」
    「誰がおまえに求愛しとるか!」
    「またまたそんなこと言って……。ハンバーグに『合いびき肉』を使ったのも、つまりは『これからもわたしと逢引きしたい』というアピールのつもりだったんでしょう?」

     今まであれこれアピールしてもまるで気づかなかったくせに、何でそんなところには過剰に反応しているんだ。しかも人をそんなベタなダジャレばかりいうような目で見てからに。

    「……誤解です。というかハンバーグの材料は大体にして合いびき肉です」
    「ああ、良かった」

     そこで安堵の表情を見せられるのも何となく不愉快だ。いや別に彼に気があったわけではないが。だが彼も私の感情を読み取ったのか、弁解するように言葉を続ける。

    「あ、いえ。あなたの料理が美味しいのが、もしもわたしに恋慕の情があったことによるものなら。あなたは『わたしが特別な相手だから』普通以上に繊細に気持ちを込めて料理を作っていたことになります。……でもそれは料理人としては良くないことだと思うのです」
    「……どういうことですか?」
    「だってそうでしょう。料理人はどんなお客さんであっても最高の美味しい料理を出せなければプロ失格です。しかしあなたは最初から偶然出会っただけのわたしにとても美味しい料理を作ってみせてくれた。それはあなたの料理の腕が本物だという証拠です」

     そんな褒められ方をするとは思わなかった。不覚にもちょっと嬉しいと思ってしまう。

    「だから、あなたが普通に友人であったことが良かったと思いまして。……これからも精進してください。またご馳走してくれるのを楽しみにしています。まあ牛肉はやはり立場上もうそんなに食べられませんが」
    「え、ちょっと」
    「……それでは、また」
     
     気が付くと彼は姿を消している。またも話をはぐらかされた。それもわたしの料理の腕を評価されたことが原因だなんて、ひき肉の料理なだけに皮肉な結果になってしまった。

     だが待てよ。牛肉はそんなに食べられない、ということなら鶏肉のハンバーグでも用意すればまた間をおかずに家に来るかもしれない。
     よし、それでは明日は「鶏ひき肉」の「取引に行く」としよう。
     拳を握り締めてそう決心するわたしだった。

    ❄️ ❄️ ❄️

    ❄️雪世明良です。よろしくお願いします。

  • ☆☆☆愛宕☆☆☆

     おいおいおいおい。
     どうなってるんだ? まったく。

     この前は「餃子を一緒に作ろう」って言うから付き合ったけど、今度は俺に「ハンバーグを作れ」とか、料理人は関川くんの方だろう。何で俺が作ることになるんだか。しかも、ハンバーグ。
     まぁ、いつも美味いもん食わせてもらってるから、あんまり文句は言えないけど。それに、もともと声を出すつもりもないけど。仕方がない、このレシピを頼りにして作ってみるとするか。

     どれどれ、材料は合挽き肉と玉葱、パン粉、牛乳、卵に塩。そして胡椒か。これでハンバーグができるのだな、ふむふむ。でも、牛乳は苦手だから無視。無くても大丈夫だろう。

     ボウルに材料を全部入れて、ひたすら捏ねる。これでタネができる。本には手で捏ねている写真が出ているが、何かのテレビで見た時は、ヘラのようなものを使って捏ねた方が良いと言っていた。手を使うと体温で肉に変化が起きるらしい。焼きに入るまで、肉はなるべく熱を加えないのがオススメだそうだ。関川くんが「おっ! 手で捏ねないの?」と驚いている。何だかんだで、ちゃんと見るところは見てるじゃないか。

     捏ねる作業が終わったら、適当なサイズに肉を取って、空気を抜きながらタネを楕円形にまとめる。ここは、なかなか思い通りに出来ないぞ。関川くんも見かねて「ここは、こうやると上手くいくよ」とコツを挟みながら手伝ってくれた。

     その後の焼きからソース作りまでは、関川くんにお任せだ。子供はタネを作るところを楽しんでもらえればいいという団欒の文化、俺には無縁だと思っていたけど、やってみるとなかなか面白い。


    「さぁ、焼けたよ。食べよう!」


     俺の捏ねたハンバーグが、凄い変身を遂げていた。
     ふわっとした楕円形のハンバーグに、チーズの布団が掛かっている。さらにその上は、関川くんのオリジナルと自慢していたデミグラスソース。これは……五郎さんが食べた、横浜の『トルーヴィル』の「ハンバーグチーズのせ」に似ている。

     皿の上にあるのはハンバーグだけではない。ちゃんとサラダも乗っている。ドレッシングはサウザンできたか! そうこなくては!
     まずは、俺の捏ねたハンバーグの断面を確認。おほー! なんだこの肉汁は! 叫ぶこともできず、肉汁が溢れ出るのを見ているしかできないのが悔しい。どれ、まずは一口いってみよう……そうそう、これですよこれ、なんと肉々しい。デミグラスも優しいじゃないか。チーズとの相性もバッチリ! これぞ、ど直球の洋食だ。

     肉汁とデミグラスソースを白飯にワンバウンドさせるのも、当然お約束だろう。ほぅら、もう美味い。これはハンバーグが無くなっても、ソースだけで白飯が三杯はいけるぞ。


    「ごちそうさまでした」


     俺は両手を合わせ、無言で関川くんにお礼を述べた。彼は「やっぱ、一緒に作るのは良いもんだね」とご満悦だが、俺に飯を作らせるのは、金輪際お断り申し上げたいものだ――。

  • 🍷出っぱなし

    今回は霧野サマ回ですね。
    どこかに登場しているので興味があったら探してみてください(笑)

    🍷🍷🍷


     タマはネコのワンポイントのついたピンク色フリルエプロン姿だ。
     意を決したのか、チョコチョコとキッチンに歩いていった。
     手に掲げた包丁が、ギラリと鈍く光る。
     玉ネギが目に染みないように、わたしはそっと潜水用のゴーグルとマスクをつけてあげる。

     タマは玉ネギとニンニクをみじん切りにするが、手付きがぎこちなくて見ている方がハラハラしてしまう。
     無事にみじん切りが終わるとレンジで加熱させる。

     わたしが包丁とまな板を洗い、タマはゴーグルとマスクを外す。
     そうしているとレンジがチンと音と立てて止まった。

     玉ネギが冷めるまで待つ間に、豚と牛の合挽き肉とつなぎのパン粉、卵、クレイジーソルト、胡椒、ナツメグ、マヨネーズ少々を、タマはレシピ通りの分量を真剣な眼差しで計ってボールに投入していく。

     玉ネギが冷めたところでボールに投入して混ぜ合わせる。
     小さな手で力いっぱいにこねていく。

    ……

     逢生蒼は怯む隊員たちを鼓舞するように悪態をつき、悠然を歩みを進める。
     が、茂みの奥からムー大陸の軍勢が立ちふさがった。
     豚顔のオークや牛頭のミノタウロスなど人外の者たちである。

    「我らの領域を侵すだけではなく、神をも貶すとは、よほど死にたいと見える」

     逢生蒼は恐れなど微塵も見せず、腰に巻き付けていた鞭を一振りしてしならせ、不敵に嗤う。
     鞭に宿る人格が表に出てきたようだ。

    🍷🍷🍷

    『女帝の鞭』

     霧立ち込める

    🍷🍷🍷

    続きはこちらです。

    『飯テロリスト関川様、ネコ耳を拾う』
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862486888667/episodes/16817139554644469299

  • 💎玖珂李奈

    あああーー!!!
    コメント欄にコメントしていませんでしたー!
    ごめんなさいいー!

    『午前0時の食卓』
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862450734712

    主人公:烈(れつ)
    ごはんを食べる少女:紅子(べにこ)
    主人公の元カノ:美奈(みな)


    🍣一部抜粋🍣

     酢飯や具材が完成したので、盛り付けに入る。

     詳しい話は後で聞くことにするが、どうもこれから来るであろうおめでたいことを前もって祝うつもりらしい。それならばとセルクル(底のないケーキ型)を取り出した。

    「詳しいことは後でがっつり聞くけどさ、お祝いだ、というなら、ちょっと特別なちらし寿司にしようか」

     きょとんとした表情の紅子に微笑みかける。

     お祝いといえばケーキだ。セルクルを置いて中に酢飯を薄く敷き、その上に海苔や椎茸、人参などを敷く。さらに残りの酢飯を乗せ、崩れないように整える。

     たっぷりの錦糸卵をまんべんなくかけ、花型の酢蓮を置く。さらに薄切りのマグロやサーモンをくるりと巻いて花に見立てる。最後にきぬさやを散らすと、テーブルの上に一足早い春が舞い降りた。

  • 第四膳『餃子と共同作業』への応援コメント

    こっそり、こんばんは! と、周回遅れになりながら連載続けております(*´Д`)
    皆さまのレシピ、実際につくってみたりしながら楽しませていただいております。
    飯テロ楽しいですね!


           🐛 🐛 🐛


    「餡はさ、作っておいたから二人で包んでいくんだ。分かる? 包む、だよ」

     パオパオといいながらジェスチャーしてみせる。彼女はそれを理解したらしく、皮を一枚手に取った。

     オーソドックスだが餃子の餡には牛豚の合いびき肉を使っている。塩もみした白菜と手抜きするために生姜とニンニクのチューブをふんだんに。細かく刻んだニラを入れて、湯戻しした春雨を入れて食感をよくしている。
     餡は限界までたっぷりとが合言葉。見本を手際よく作るとそれを彼女が真似始めた。慣れない手つきでひだの数まで合わせようとしているがそこまでこだわらなくていい。ひだが一つ二つ減ったところで餃子は餃子だ……


    続きは『飯テロ開始します! 〜傷ついた訳あり彼女に一膳の飯を〜』にて。


  • 編集済

    🐹黒須友香です。
    ちらし寿司回アップしました!

    🐹

    突然だが、難問である。

    「ちらし寿司……」

     金髪ヤンキー青年・北橋達月の顔は笑っているが、言葉はそこで止まったままだ。

    ↓🐹続きはこちら!
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862423037971

  • 🍁空草 うつを です!
     遅くなってしまいましたがちらし寿司回になります(^^)

    🍁🍁🍁

     ちらし寿司は古くは鎌倉時代に起源を持つらしい。八百年以上前から日本人の食卓にあったと思うと感慨深く感じる。
     ま、五億年前の生き物に思いを馳せる弥生ちゃんには敵わないけど。

     今回作るのは、バラちらし寿司。
     この間餃子作りを手伝ったことで味をしめたのだろう。弥生ちゃんも苺のエプロンをして手伝おうと張り切っている。

    「弥生ちゃんは、卵を割ってくれるかな」
    「お任せください!」

     卵の殻を入れないよう、おっかなびっくり割っていく。ぎこちない手つきの弥生ちゃんを横目に、俺は買ってきた材料を切っていく。
     刺身用のマグロとサーモンにエビ、更にアボカドときゅうりも全て一センチ角に切る。同じ大きさに切り揃えるのがポイントだ。揃えた方が見た目も綺麗に仕上がる。
     弥生ちゃんが全部の卵をボウルに入れ終わったところで、次の指示を出した。

    「そしたら、その卵に砂糖と塩を入れて混ぜて……卵焼き用のフライパンに半分だけ入れてね」
    「混ぜて、半分だけ……あ」

     弥生ちゃんは不器用なのだろう。半分だけと言いつつ、フライパンに八割ほどの卵液が入ってしまった。弥生ちゃんは涙目になっている。

    「大丈夫、大丈夫。俺に任せて」

     半熟になるまで待ち、いつもより少し分厚くなった生地を意地でも綺麗に折り畳もうと躍起になった。少しでも良いところ見せたいだろ、元料理人の名にかけて。
     残りの卵液を流し入れて巻き込めば、なんとかまとまってくれた。

    「理一さんさすがです!」

     パチパチと拍手してくれると気分が良い。
     その卵焼きも一センチ角に切る間、弥生ちゃんには酢飯を準備してもらうことにした。

     今度は失敗しないように、と意気揚々と炊飯器から熱々のご飯を大きなボウルに入れていく。そこに適量の酢を入れていくのだが、酢の匂いが一気にツンと鼻に抜けて行ったのだろう。ケホケホと咳き込んでいた。

    「大丈夫?」
    「へっ、平気ですっ」

     混ぜながら、うちわで一生懸命パタパタ仰いでいる。そこに白胡麻を振りかけて一緒に混ぜ合わせれば、酢の香りが食欲をそそる酢飯の出来上がり。

    「あとは酢飯の上に具材をのせれば、バラちらし寿司は完成だよ」

     赤いマグロにサーモンの色、ほんのりピンク色のエビ、黄緑色のアボカドと緑のキュウリ、そこに黄色の卵が混じれば彩り鮮やかなバラ散らしが姿を表す。

    「まさかミロクンミンギアとクックソニアの子孫がこうして美味しい料理に変貌するなんて……」

    ……続く
    🍁🍁🍁

    続きは連載中の『嗚呼、愛しの絶滅種!』にて……。

  • 🍻遅くなりましたが、参加します!
    しかも、食べてない。飯テロなのに、食べてない。ちょっとつまみ食いしただけ……いいのか?! 飯テロの概念が今、試されている。


    🍻
    「よし。テン、あおげ!」
    「うん!」

     物入れから引っ張り出してきた団扇で、テンはパタパタと酢飯を扇ぎ始めた。
     寿司桶なんて気の利いたものは無いので、フライパンで代用。酢と砂糖を少なめ、塩をちょっぴり多めに。酢飯を素早く切り混ぜる。
     あんまり風が当たっていないけれど、椅子に登り団扇を両手で持って懸命に仰ぐテンが可愛らしいので許す。

     テンからは他のリクエストが無かったので、手巻き寿司用の海鮮盛り合わせ的なものを買ってみた。その他にも、諸々。

    「扇ぐのやめ!」
    「やめー!」
    「酢飯、完成!」
    「かんせい!」

     昨夜の餃子作りが楽しかったらしく、テンは率先してお手伝いしたがった。エプロン姿がなかなか様になっている。

    「テン、これ覚えてるか?」

     ガラスのタッパーの中を覗き込み、テンはハッと息を呑んだ。

    「お茶漬けのやつだ! 甘くてしょっぱくて美味しいやつ!」
    「そう。よく覚えてたなぁ」
    「テン、これ好きー」

     椎茸の甘辛煮を、薄く削ぎ切りに。油抜きした油揚げと、ラーメン具材セットのメンマも細く切って、小さなボウルに投入。

    「これをよーく混ぜてくれる? ゆっくりでいいからね」
    「うん! できる!」

     箸が苦手なテンのために、フォークを手渡す。テンはただならぬ集中力を発揮して、具材をゆっくり丁寧に混ぜ始めた。やっぱり舌先がちょろっとはみ出ている。

     その間にわたしは、小さめのフライパンで胡麻を炒り、ほんのり甘い薄焼き卵を作成。水溶き片栗粉を少量入れると破れにくい。フライパンにお湯を沸かす間に、レンコンを花形に細工して……
     お湯に塩と絹さやを放り込む。色よく茹で上がったら引き上げ、お湯に酢を加えて薄切りにしたレンコンをさっと煮て、甘酢だしに漬けておく。

    「テン、ご苦労。上出来だぞ」
    「ジョーでき!」
    「次は、酢飯を半分、このお皿によそってみよう。平らに、まーるく入れるんだよ」
    「はいっ!」

     食器棚の奥から引っ張り出した藍色青海波の八角皿に、テンが慎重に酢飯をよそう。昨夜の餃子といい、こういう作業は得意だろうから任せてしまおう。わたしは野菜と魚の準備だ。野菜を洗い、大葉を刻み、ラーメン具材セットのチャーシューをほぐし、海苔を炙る。刺身類も一口大に切り分ける。

    「セッキー、できた!」
    「よし、では海苔を手でちぎってかけてくれ。こんなふうに」

     皿の上で海苔をビリビリに破くと、テンは待ちきれないみたいに手を伸ばした。
     うんうん。子供はこういうの好きだよな。そうだ、その調子。ちぎれちぎれ!

     皿の酢飯が真っ黒に覆われたら、刻んだ大葉を散らす。その上に、刺身を彩りよく並べていく。イカにマグロ、鯛、蒸し海老、タコ、ホタテ、サーモン、厚焼き卵。イクラは多めに買っておいた。スーパーで一瞬見惚れたのを、わたしは見逃さなかったのだ。

     薄くスライスしたきゅうりで器を作り、イクラを少し載せた。

    「ほら、テン。イクラだよ。あーん」
    「あ゛〜 ん」

     目をまん丸にしてモグモグした後、顔がとろけた。

    「ふぅ〜ん、おいし〜い! きれいでピカピカで、プチってして美味しいねえ」

     同じものをいくつか作って盛り付け、カイワレを散らしたら、海鮮ちらしの出来上がり。藍色の皿に、色とりどりの刺身が映える。海の宝石箱や〜!

     あと半分の酢飯には、テンが混ぜてくれた材料とチャーシュー、炒りごまをさっと混ぜ込む。余ったメンマは、後で酒のツマミにしよう。
     粉引きの花形皿によそい、ふわふわの錦糸卵で覆う。桜でんぶ、絹さや、紅しょうが、そしてこちらにもイクラきゅうりで彩りよく。最後に花レンコンを飾って出来上がり。温かな白の上に、華やかな春の色彩。
     おそらく、志乃ちゃんが好きだという「お雛様のちらし寿司」はこっちのタイプだろう。
     でも、どうせなら両方食べさせてやりたかった。海鮮も美味いもんな。お祝いの料理だから、皿もそれらしいのを使ってみた。

    「きれいねぇ。お花畑みたいだねぇ」

     テンは並んだ皿をうっとりと見つめ、何度も唾を飲み込んでいる。
     お腹がグーと鳴る音が『いただきます』の代わり………だけれども、ここでメールの着信音。きっとコマさんだ。『詳細は後でメールする』と言っていたから。

     「テンには見せるな」というタイトルを見て、わたしはスマホを閉じた。

     内容を確認するのは、楽しく食事を終えてからの方が良さそうだ。

    🍻
    全文はこちらからお願いします↓
    第五膳回答『おでかけとちらし寿司」
    https://kakuyomu.jp/works/16816452220246177194/episodes/16817139554466598526
    ではこれより、皆様の作品にお邪魔いたしま〜す!

  • こんにちは。
    皆さまに勿体ないほどのコメントをいただいて、ありがとうございます。
    私も、個別の作品を立てられているところへは伺ってちょこっと感想を書いているのですが、コメント欄のみの方の作品には感想をまだお伝えできていません。ノートの方に皆さん書かれているのがコメント力高すぎて、そこへ割りこむには勇気が、、、いずれきっと書きますので、しばらく猶予をくださいませ。。

    さて、今回の回答編です。(さわりだけ)

    📞 📞 📞
    うっすら予感はあった。この舎に長居することになるぢゃろうと。
    けして、三度の飯につられたわけではないぞ。吾をいやしき妖と、かろんじ見くびるのであればおおきな間違いぢゃ。人間なんぞに解せよというのは端から無理かも知れぬがの。

    それにつけても、朝から手を抜かずきちんと旨い料理を献じてくるとは感心よ。すまし汁のたてる湯気にも清きこころばえが匂いたつようぢゃ。
    晩にはなにが食えるぢゃろうかとつい想像をふくらませてしもうたとて、いたしかたあるまい?
    しかしまさか、何がよいかと問われるとは思わなんだぞ。
    さらには一緒に買い出しへ行こうなんぞと。
    ・・・・・・・

    📞つづきはコチラ📞
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862534372546

  • 第四膳『餃子と共同作業』への応援コメント

    ♪一帆です。

    周回遅れですが、やっと、餃子の回答をあげました。(すみません)

    *****
    「じゃ、私は生地を作るから、天蓬テンポウさんは私の隣に来て、餡を作ってくれる? 餡は鳥と玉葱で作ろうと思うんだけど、大丈夫?」

     保冷箱から鳥肉と玉葱を取り出しながら、天蓬さんに声をかける。

     ―― 椎茸もいれたいところだけど、天蓬さんが茸はNGだからやめておこう。

    続きは「妖術士見習いは愛を学びたい」で。
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862494687766



    追伸:
    お題も木っ端みじんに切り刻んでしまいました。みなさんからのコメントの返信も滞っています。ほんと、いろいろごめんなさい。 周回遅れを取り戻したい。わーん( ノД`)シクシク…

  • 💐涼月💐です

     更新遅くなってしまいましたが、なんとか投稿できました。
     よろしくお願いいたします。

    💐 💐 💐

    「はい! 行きましょう!」
     高速で準備万端整えた色音。もう玄関で靴を履き出している。
     いや、ちょっと待て。俺の方がまだ準備できていないぞ。

     ふと、空身で立っている色音を見て思った。

     年頃の女の子だったら、可愛い鞄の一つや二つ持ちたいだろうな。

     続きは ↓ です。
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862602812315/episodes/16816927863332226895

  • 🎐風鈴

    なんとか書きました。
    ダジャレは無いです、念のため。
    ジャンルは、もちろん、ラブコメです!


    「えっと、どうかな、この服?」
    「うん?良い感じじゃないかな?」
    「あっ!これこれこれ!こんなの着てみたかったの!」
     再び試着室へ。
     僕達は二人でショッピングに来ていた。

    「もういいか~い?」
    「まっだだよ~!」
     暫くして。
    「もういいっか~い?」
    「うん、もう一回着直すから、待ってて」
     暫くして。
    「ジャジャジャジャーン!!呼ばれないでも飛び出て来たよ~!!」
    「おっ!おう!」
    「ちょっと、ムネが締め付けられてキツかったんで、時間かかっちゃったね」
    「お、おう!ぴったりだよ」
    「ヤダ――!ムネ、見たでしょ?ねえ、今、ムネ見たでしょ?」
    「ちげーよ!いや、その、何を着ても似合うなってね。皆まで言わせるなよ!」
    「ヤダ――!大好きだって、大きな声で言わないで――!」

     こういう事を繰り返しながら、二人はショッピングを楽しんだ。
     おわり

     といきたかったのだが、二人には目的があった。
     夜ご飯の買い出しという崇高な目的が!

    「ちらし寿司の具だけど、好きなのをカゴに入れてくれ」
    「えっ、本マグロとか高いでしょ?それから、ヒレステーキも高いよね?大丈夫なの?」
    「だ、大丈夫だ!って!」

     ウソである!
     同棲するからと、昨日から彼女が服を買ったり、雑貨を買ったり、日用品を買ったり、電化製品を買ったりして、既に彼のカード払いの金額は、ひと月分の給料を越えていたのである。

    「でも、ヒレステーキとかは、ねーだろ!ちらし寿司だからな!」
    「うん、そうね、だったら本マグロも止めとくよ」
     彼女は、しおらしく、ごめんなさいって顔をした。

     ウソである!
     彼女は、ワザと止めとくとか言ったのである。
     もちろん、『本マグロが好きなんだろ、いいよ、カゴに入れな!』という彼の言葉を期待して言ったのだ。

    「そ、そうか?」

     彼女は、それでも本マグロを手に取り、ずっと見続けていた。

    「そこのねえちゃん!可哀想にな~、おい、あんちゃん、買ってやりなよ!彼女さん、目に涙を浮かべてんで~~!」
     ウソである!
     このおじさん、ちょっと言ってみたかっただけである。

    「大きなお世話だぜ、おっさん!クソッ!」
    「うん?なんか言ったか、あんちゃん?」
     ――――あぶねー、心の声が漏れてたぜ!

    「特売200グラム1500円か?・・・・」
    「ほんまか?高いな!でも本マグロって、こんなスーパーで売ってるのか?」
    「うん?なんか言ったか、あんちゃん?」
     ――――うっ、また心の声が!

    「あれっ?これは、ビントロじゃねーのか?」
    「えっ、わかるんですか?」
    「ああ、こう見えてもオレは、寿司職人だからな!」
    「へーー!スゴイ人なんですね~、おじさん!で、ビントロってな~に?」

    「ビンチョウマグロのトロだ。まあ、そのくらいはサシと色を見たらわかるんだよ」

     ウソである!
     よーく見ると、『(大間でなくホンマの)マグロ』と、マグロの前に小さなカッコで書いてあるので本マグロだとは書いてない。
     というよりも、金額的に本マグロはビントロの6倍以上だ。なので、本マグロではないと簡単に推測出来た筈だ。

     そうして、そのおじさんと仲良くなり、そのおじさんにちらし寿司を作ってもらった。
     おじさんのちらし寿司には、焼海苔、錦糸卵、酢蓮根、マグロ(ビンチョウ)、真鯛、サーモン、イクラ、スナップエンドウ、煎りゴマ、シイタケ、山椒の葉という豪華なモノだった。

    「とっても美味しかったです、お・じ・さ・ん!」
    「ホントに、最高でした!ごちそうさまです!」
    「じゃあ、またね、お・じ・さ・ん!」

    「ちょっと待ってくれ、今、お勘定代を計算してっからよー!」
    「ええっ!ご馳走してくれたんじゃないんですか?!」
     彼の顔が険しくなり、彼女は俯いた。

    「あはははは!バカだなぁ~~!タダに決まってるだろう!これからは、ウチを贔屓にしてくれればいいんだよ!あはははは!」
     ウソである!
    「えへへへへ、ありがとう、お・じ・さ・ん!」
    「また来るから!次来るときは、友達をたくさん誘ってくるから、待っててください!」
     ウソである!
    「ああ、期待しないで待ってるからよ~」
     ウソである!
    「おっちゃん、愛してる~~!」
     ウソである!
    「おっちゃん、人生で最高に美味しかったよ!!じゃあね~~」
     ホントである!

    おしまい!


    ラブコメって、こんな感じですよね!(#^.^#)

  • 🐤小烏つむぎです🐤

    今回のモデルは、江戸末期「四大道場」に数えられた伊庭家「錬武館」の兄妹です。
    今回も前半に加筆していますので、前半からお読みいただけると嬉しいです。

    🐤後半チラ見せ

     兄様《あにさま》との外出も久方ぶりです。
    今日のお召し物は紺地に薄青の立涌柄の単《ひとえ》に袴姿。月代も青々と剃りあげて涼しげなお姿です。いつもはサッサと大股で歩かれるのに、今日は私《わたくし》に合わせて歩幅も小さくゆっくりと歩いてくださっています。
    そういえば兄様が元服なさる前から、連れだって歩くことはもうなかったと思い出しました。それが今日は、兄様の後ろをついて歩けるのです。すっかり逞しくなられた後ろ姿に、あぁ男の方だと改めて思いました。


    🐤前半RLがこちらです。

    https://kakuyomu.jp/my/works/16816927862577875744/episodes/16816927863275251988


  • 編集済

    「ほほう。ここでいつも買い物をしているんですか」
    「はい、まあ。ここが場所も値段も手ごろなので」

     隣を歩く青年は何故か感心したように呟いた。わたしたちは近隣にある大型スーパーマーケットにきたところだ。
     この一見すると上品な雰囲気の若者は実は大黒様の化身である。数か月前にあるきっかけで彼と出会ったわたしはなんとかそのご利益を得ようと居ついてもらうように食事をご馳走してはさりげなく願いを叶えてもらおうと企んでいたもののその目論見は今のところ失敗している。

     ただし最近は私から声をかけてもいないのについてきたり、家の前で待っていて上がり込んで一日、二日滞在しては去っていくという、さながら「お腹がすいたときだけ餌をもらいにくる野良猫」のような有様だ。
     今日の彼は渋めの黒の着流しを纏っていた。さらに腰には紺色の帯を締めて、足には足袋と雪駄を履いている。和風の気分ということなのだろうか。ちらし寿司なんて和食のメニューを注文してきたのもそういえば初めてだ。

     彼のリクエストに合わせて食材を買いに来たものの、わたしは作り慣れない苦手なメニューに少々悩んでいた。

    「どうかしました?」
     福の神の化身である青年はカートに買い物かごを乗せながら眉をしかめているわたしを不審そうに見る。

    「いや、その。……実はちらし寿司って苦手なんですよ。子供の頃にひな祭りで親に作ってもらったんですが。あの『酢飯』を松茸御飯やタケノコご飯と同じ感覚で食べるのが慣れなくて。美味しく食べられなかったんです」

     結局残してしまい、母親に嫌な顔をされた思い出だ。海老やレンコン、まめといった具材も子供の時分は美味しく思えなかったというのもある。大人になった今では普通に食べられるが進んで食べようと思うほど好きではないのだった。

    「そういうことなら、自分でも食べたいと思うように目先を変えてみたらどうでしょう。」
    「変えると言っても、具材を変えたら『ちらし寿司』ではなくなってしまうんじゃ……」

     いや、待てよ。既に存在するものに新しい要素を加えるのは新しいメニューを作るときの基本ではないか。

     そもそも「ちらし寿司」とは何か?

     元々は中世以前にお祝いの時に食べられていた「なれずし」が江戸時代に匂いが少ない「ばら寿司」に変わり、それが見た目が華やかな「ちらし寿司」になったはずだ。

     それでは海老にレンコン、まめといった具材は必須なのか?

     確か「海老」は背中が丸くなるまで生きる、レンコンは「先を見通す」、まめは「健康でまめに働ける」という縁起を担いだものだ。
     つまり、めでたくて何かを御飯の上に散らしていれば「ちらし寿司」と言ってもいいのではないだろうか。私は考え込みながらも参考になる意見が聞きたくて彼に尋ねる。

    「何か好きな食べ物はありますか?」
    「え? 急に言われても。……おや、あれは何ですか」

     彼の目線の先には黒くてつやつやした丸い果実が積まれていた。


     家に戻ってきたわたしはキッチンに立って調理を始める。彼はいつものように食卓の席に座って待っていた。

    「それじゃあ、初めて作るのでどんなものが出来上がっても文句は言わないでくださいね」
    「ただで食べさせてもらって文句は言いませんとも」

     カレーの時に牛肉に文句言っていたじゃねえか。そもそも既にただ食いのつもりなのか。
     心の中で呟きながらもわたしは料理に取り掛かる。


     
     まず卵を白身と黄身にわけて二色の炒り卵を作る。

     そして豚肉の薄切りを玉ねぎ少量とソテーして調味料で味付けし、食べやすいようにある程度細かく包丁で切る。さらにアボカドの皮をむいてこちらは小さく角切りにする。
     
     そして昆布だしを少量入れた御飯に刻んだ豚肉を混ぜて、アボカドと卵を上から散らせば出来上がりである。

     豚はたくさん子供を産む生き物ということで西洋では子孫繁栄の象徴だ。
     二色の卵は「錦」、高級な織物にちなんでおめでたいものとされている。
     アボカドは本人の希望だから取り入れたものだが、水分と土地の栄養分を大量に消費して生育し、しかも栄養価も高いということで大地の実りの象徴として縁起物扱いしてもいいのではないだろうか。

    「できました。どうぞ」
    「これは……、洋風ちらし寿司ですね。それでは早速」
     彼はふむ、と頷いてから箸で色鮮やかなアレンジちらし寿司をつまんで口に入れた。わたしも食卓に着いて黄色と白の炒り卵と豚肉が混ぜられたご飯を口に運ぶ。

     豚肉はオリーブオイルで炒め、赤ワインや日本酒、トマトピューレにコンソメで味付けしてある。その調味料が豚肉のうまみと絡み合ってお米をさらに食べたくさせる。

     味付けは若干濃いめにしたが、砂糖で味付けしたそぼろ状の卵焼きがふんわりと口の中で広がるので辛すぎるということはない。またアクセントとして加えたアボカドは口の中で爽やかにとろけて食べていて飽きない。

     料理としての完成度で見ると改善の余地はあるが、家庭料理としては及第点だろう。目の前の青年もかすかに笑みを浮かべて口を開く。

    「エスニックで和食なのに洋風らしさもあって面白い味です」
    「それはどうも」
    「それに豚肉もどこかフルーティーな酸味があって生臭くない」
     すしなのに「酢」を使わないのはどうかな、と思ってバルサミコ酢を隠し味に少々入れたのだが気が付いたのだろうか。大したものだ。

     ほぼ食べ終わったところでわたしは「こほん」と咳払いをしてさりげない様子を装って話しかける。

    「縁起物として豚肉を使ってみました。豚という生き物が多産なのもありますが、豚自体が西洋では金運の象徴なんですよ。貯金箱のデザインにも使われているでしょう」
    「ああ、確かに」
    「『金運』、そう。『金運』の象徴なんです。『金運』」とわたしは念を押すように重ねてから、さらに続ける。
    「二色の卵はおめでたい錦とかけてみました。めでたい時には錦の旗を揚げるものですから。そう。錦の旗を『揚げて』。『揚げて』お祝いするものなんです。『あげて』ね」
    「……そ、そうですか」
    「アボカドはそれ自体は謂れはないですが中央アメリカ原産の食べ物で、現在でもメキシコ産のものが輸入されているそうです。実に『長大な』距離を渡って日本にきているわけですね。『長大な』。『長大な』。実に『ちょうだいな』」

     わたしはまだ彼のご利益にあやかることを諦めてはいなかった。そこで今度こそ彼に金運を上げてもらうべく無意識下に呼びかけて頼みやすい空気を作ることにしたのだ。

    『金運』『あげて』『ちょうだいな』
     このフレーズをサブリミナル効果のごとく繰り返し聞かせて刷り込めば、いかに鈍感な福の神と言えど「金運を上げて儲けさせてあげようかな」という気持ちになってくるのではないか。だが、わたしの内心とは裏腹に彼は興味が薄そうだった。

     しょうがない。もう一度、豚の話からこの話題を繰り返すか。わたしがそう考えたとき「ところで」と彼が急に話を切り出してきた。
    「……何ですか」
    「前に店を再起させるための資本金を貯めていると聞きましたが、どれくらい貯まっているんです?」
    「えっ」
     自分から話しかけようとしたときに逆に話題を振られてわたしは戸惑う。
    「……そ、そうですね。地方都市の駅前あたりで土地を借りて店を経営するにしても建物の工事と一年間の人件費、光熱水量と食材などの費用を概算して八百万は必要ですが」
     だが今のわたしの収入では月に十万貯めるのでも精いっぱいだ。
    「今の時点では二百万しか貯金できていないので、……あと五年はかかりますね」

     急に現実を突きつけられて暗澹たる気持ちになる。五年かけて料理人として再起できたとして、それから店が軌道に乗るのにどれくらいかかるだろう。一流の店と呼ばれるようになってわたしを見捨てて行った従業員や馬鹿にした商売仇たちを見返してやりたいとも思っていたがそれは叶うのだろうか。

    「元気を出してください。あなたの料理の味は私が保証しますから」
    「はあ。どうも」
    「今日は珍しいものが食べられて満足です。また、遊びに来ますよ」
    「え、……ちょっと。待って」

     はっとしたわたしは呼び止めようとしたが、気が付くと彼はまたも姿を消している。

     わたしは内心で臍を噛む。金運を上げてもらう話をするつもりだったのに、つい気を散らされて忘れてしまった。あれ? いや待てよ?

    「……そもそも向こうからお店の資本金の話を振ってきてくれたんだから、そこで素直にお願いすればよかったじゃないか」

     後悔しても、時すでにおすし。心の中で呟きながら目の前に残ったちらし寿司を見て私は肩を落とした。

    ❄️ ❄️ ❄️

    ❄️雪世明良です。よろしくお願いします。

  • ☆☆☆愛宕☆☆☆

     そんなわけで、俺は関川くんと一緒に『角上魚類』へ来ている。
     都内でも人気のお魚専門店、もはや魚市場と言っても過言ではない。新潟の寺泊を本拠とし、そこから鮮度抜群な魚が日々送られてくるこの店は、平日も休日も関係無く、多くのお客さんが新鮮な魚を求めてやってくる。そんな活気ある店内に、俺の魚群探知機にもスイッチが入った。

    「ほら、見てみなよ。サザエが大きいなぁ」
    「こっちはカニかぁ。まだ、泡吹いてる」
    「この豆アジ、一盛りでこの値段!? 安いなぁ」

     まずお目にかかったのは、捌く前の魚介類が並ぶエリアだった。壁際では魚が一匹丸ごとの状態で売られていて、頼めば奥に控える板さんが三枚におろしてくれる。今日はメバルと太刀魚がオススメのようだ。
     関川くんは、元料理人の雰囲気など微塵も無く、ズラリと並ぶ魚介類を前にあれやこれやと悩んでいた。俺が「ちらし寿司」と、食べたいものを紙に書いてしまったからだろうか。具材をどうするか、大いに悩んでいる様子だった。

     ちらし寿司っていうのは、その時に食べたい魚をメインに、ちゃちゃっと散らせばいいんだよ。悩む必要なんかはない、関川くんの作る料理は抜群なんだから、考えるまでもなく感じたままに作ってくれればいいのだが……今回ばかりは、そうもいかない雰囲気だぞ。


     いかん、魚ばかり見ていたら……腹が……減ってきた。


     よし、ここは俺が決めるとしよう。
     魚一匹まるごとコーナーで悩む関川くんを置いて、俺は寿司や刺身が並ぶエリアへと急いだ。俺の行動に気付いた関川くんが「あ、はぐれちゃダメだよ」と背中越しに叫んでいる。構うものか、俺の食いたいちらし寿司は、そこには無いんだよ。

     マグロ、ハマチ、アジ、イカ、どれも綺麗に処理されて美味そうじゃないか。それぞれを買ってぶつ切りにして、好きなだけ寿司桶に放り込むのも悪くない。ウニやイクラも魅力的だけど、ここは単品コーナーをスルー。寿司となって販売されているところが本命だ。

    「勝手に走り回っちゃ迷子になっちゃうよ。ん? これ?」

     俺は無言で頷いて、手にした丼状のパックを関川くんへ突き出した。それは『角上魚類』オリジナルの、ここでしか買えない「特製ばらちらし」だった。
     マグロ、タイ、ハマチ、イカ、サーモン、数の子、イクラなどなど、旬の素材がご飯を隠すほどに埋め尽くされた、極上のちらし寿司だ。これを食べずして、『角上魚類』は語れない。

    「これでいいのかい? 僕がちゃんとしたものを作ってあげようと思ったのになぁ」

     俺は強い眼差しで頷き、関川くんのやる気を散らした。俺が喋れるなら、彼にはこう言ってあげたい。


     ――こういうので、いいんだよ。


     五郎さんも、きっとこう言うだろう。気取らず飾らず、あるがままの素材で好きなように盛り付けたものが、本当に可愛らしい「ちらし寿司」なのだ――。

  • 🍷出っぱなしです。

    よろしくお願いします。

    🍷🍷🍷

    「ウニャー!」



     タマは、物思いにふけっていたわたしを見上げて毛を逆立たせる。

     一緒に買い物に行こうと言っておきながら、相手にされていなくて拗ねてしまったようだ。



    「ああ、すまない、タマ。お詫びにジュースも買おう」

    「ニャン!」



     わたしがタマの頭の上にポンと手を置くと、ニャンとも良い笑顔が帰ってきた。



     さて、文明が崩壊したとはいえ、人々は意外と逞しい。

     変態の館内では文明の利器が生きているし、周辺も城下町のようにそれなりに機能している。

     これから買い物に向かうのは、近所のスーパー、というよりも闇市のような露店だ。



     理想通りではなかったが、それなりに食材を揃えることができた。

     背伸びしたいタマは甘酒、わたしはお手軽白ワインも手に入れた。



     館に戻り、早速調理開始だ。

     タマは興味津々に目を輝かせて、わたしの料理を見ている。



     買い物に行く前に炊いておいた米をボウルに入れ、すし酢を加えたら、しゃもじで切るようにかき混ぜる。

     

     次に、漬けマグロを仕込む。



     柵取りされた赤身の直方体を熱湯にサッと通す。

     表面の色が変わったらすぐに取り出し、氷水にブチ込む。

     この作業を霜降りといい、素材の臭みをとって、旨みを逃がさないようにするための下ごしらえのことだ。



     キッチンペーパーで水気を切ったら、刺し身サイズにそぎ切りにし、しょうゆと白ワインをブレンドしたタレの中に漬け込む。

     本来は酒だが、ワインの方が酸味が強いのでスッキリした味わいになると思う。

    🍷🍷🍷


    続きはこちらです。

    『飯テロリスト関川様、ネコ耳を拾う』

    https://kakuyomu.jp/works/16816927862486888667/episodes/16816927863275513761

  • こんばんは。
    お気づきかもしれませんが、そして些細なことですが、毎度視点が変わります。
    さて、今回は『誰』の視点でしょうね。


    🍏🍏🍏
     朝起きて『おはよう』のあいさつをするのは、いつものことだ。どんな風にあいさつしているか?
     それは想像に任せる。

     朝ごはんを作ってもらうのも「今日の晩御飯はなに?」なんて聞くのも、もはや日課と言えるけれど、「なにが食べたい?」と聞かれたのは初めてだ。
     迷いはしなかった。

    『ちらし寿司』

     「なかなか渋いリクエストだね」とフルクは怯んでいるようだったが、寿司よりはハードルが低いだろ。いや、むしろ高いか? どの程度本格的に作るかにもよる。そもそもこの山に囲まれた土地では、新鮮な海鮮魚介は手に入らない。
     まあ、どうせアイツのことだ。限られた食材で、なんとかして作るのだろう。

    ……

    🍏🍏🍏

    ふう。続きはこちらで。

    https://kakuyomu.jp/works/16816410413893461604/episodes/16816927862961124736


  • 編集済

    🌸悠木柚です。


    朝起きてキスをするのが習慣だった。朝食の席で『今日の夕飯はなに?』なんて聞かれたり、『なにが食べたい?』なんてことを聞き返しながら。二人の食卓にはいつも笑顔が溢れていた。

    『ちらし寿司かな』

    これは彼女の好物であり、僕の得意料理でもある。そしてこのリクエストが出たときは『一緒に出かけよう!』の合図。映画館や百貨店、何なら白昼堂々ラブホテルでも良い。彼女と一緒なら場所に関係なく楽しめる。

    それはそうと。また、この季節が巡ってきたのか――

    「よし、今日はちらし寿司にしよう!」

    家から歩いて五分の商店街。寂れた映画館に入り、ローマの休日を二人でじっくり鑑賞する。その後は、魚介類が安くて有名なスーパーマーケットに直行。入口に積み重ねてある買い物カゴを取って海鮮売り場へ進む。作るのは僕だが材料を選ぶのはいつも彼女の役割だった。小エビ、アサリ、イカ、ハマチ、サーモン、イクラ。砂糖と塩、そして米酢は家にある。

    ハマチとサーモンは醤油と日本酒、みりんで漬けておく。硬めに炊きあがった御飯を寿司桶に移し、うちわで扇ぎながら手早く調味料を馴染ませるのが美味しい酢飯になる秘訣。そこにアサリを混ぜて香りをつけ、酢飯が冷めてきたら他の具材を散らすようにまぶす。もちろん、後乗せできるよう具材の予備も忘れない。

    『山の幸は山の幸で。海の幸は海の幸でまとめるのが良いと思わない?』

    僕的にはシイタケや錦糸卵も入れたかったけど、彼女の意見を優先してしまう。だって『海の味がして美味しい!』と、すごく良い笑顔をするんだもん。

    スーパーの袋いっぱいに購入した具材を持って家に到着。ダイニングテーブルに荷物を置き、ジーパンの後ろポケットから取り出した写真をその隣に添える。できるまでの間、わざと僕の邪魔をするように戯れてくる彼女が愛おしかった。無意識に頬を伝った涙の雫が、微笑みの上に落ちる。

    『もう一度、貴方のちらし寿司を食べたかったなぁ……』

    病院のベッドで彼女が弱々しく呟いた言葉。毎年この時期になると思い出すのは、僕の心が弱いせいだろうか。



    fin