応援コメント

第九膳『再会のメニュー』」への応援コメント

  • ♪一帆です。

    かなり遅くなりましたが、投稿しました。今更感、満載で申し訳ないです。


    *****
    天蓬さんが作ってくれたのは、呉の国の名物、丸い形の蒸し餃子。
    話には聞いていたけれど、可愛らしい薔薇の花のような餃子の形に、思わず顔がほころぶ。

     ―― 天蓬さんって器用だなぁ。

     蒸籠からふわわっと白い湯気がたって、薬草と羊の肉の混ざった何とも言えない匂いが鼻をくすぐる。

    *****

    続きは、「妖術士見習いは愛を学びたい」https://kakuyomu.jp/works/16816927862494687766

  • 🎐風鈴
    今回、最長の長さで申し訳ございません。
    会話だけでもお読みくださいませ、ぺこりん。
    ツレ→エリカということで、お願いします。

     ◇
     料理が目の前にどーんと置かれる前に、オレは、キャベツのぶつ切りを齧っていた。
     何も付けずに、よく噛んでからビールで流し込む。
     キャベツをただそのまんま食べる。意外と甘いんだ。
     オレはエリカとお金を貯めるために食費を切り詰めていた。
     エリカと同棲することになったのも、二人で住んだ方が家賃の節約になるからっていうのもあった。
     エリカはお金を持ってはいたが、すぐに使ってしまう。
     そんな女なのだ。
     お金については何不自由なく過ごしてきた女だ。
     だが、そんな事をしていたらオレなんかと一緒になった場合にはあっという間に金欠になってしまう。
     オレ達は話し合って、先ずはキャベツから始めたのだ。
     何も付けずに食べること、それは彼女からしたらとんでもない事だったようだが、でもかえって新鮮なようだった。
     だから、キャベツはできるだけ生でも良さげに食べられる新鮮なモノにしている。

     そして、このキャベツのぶつ切りが出てきたときに、すでにエリカが作る料理は何なのかがわかった。

    「いただきます!」
     エリカは、オレを探るように見つめる。
    「美味しいよ!ソースとの相性が抜群だね」
    「うふふ、良かった」

     この料理は、オレが今と同じ様に、キャベツのぶつ切りを出してからこしらえたモノ。
     同棲した時に、最初に作った料理だ。
     先ずはキャベツで節約の心を知ってもらい、次に料理の極意を知ってもらう。
     その極意とは、如何に安く美味しく食べるのかを追及することにあり、だ!

     安物の豚バラ肉も、とんかつ風に為せば成る。
     肉は薄くてもそれを重ねるとミルフィーユ仕立てになるのはその一例だ。

     そして今回は、豚バラ肉のピカタ。
     豚バラに塩コショウして薄力粉を振りかけ、溶き卵にくぐらせてから焼く。
     豚バラは薄いので、早く焼ける。
     溶き卵に粉チーズとかを混ぜるのは正式なポークピカタだが、粉チーズとか使わない。ついでに余った溶き卵で普通に卵焼きも作れる。
     この料理、シンプルにして早く、かつ美味い!
     キャベツの千切りを添えて、ハイどうぞ、だ!

     ソースは、オーロラソースと、とんかつソースを用意してある。
     オレはオーロラソースが大好きなのだ。

    「じゃあさあ、オレ、お返しにちょっとだけアレンジするよ。食べてみて」

     オレは食パンを2枚取り出して、それをオーブントースターで軽く焼くと一方にはオーロラソースを、片方には粒マスタードを全体に塗る。
     オーロラソースの方にピカタを2,3枚乗せ、その上にキャベツの千切りを多目に乗せて、粒マスタードのパンを上からぎゅっと押さえる。それを二つに切って出来上がり。

    「美味しい!これも、もっと早く教えてよね!」
     ――――えっ?教えてとか初めてじゃなかったの?
    「えっと、ピカタは私の得意料理、なのになんでヒロちゃんが教えたとか?わたし……」
    「えっ、なに?オレが教えたに決まってるじゃん。一緒に作ったの、覚えてないわけ?」
    「なんかエラそう!ヒロちゃん、ピカタ作ったの、私だからね。ヒロちゃん、反省!」
     ――――一緒に作った?ウソでしょ?ヒロちゃんは良く冗談言うからね、昔から。騙されたりしないからね!


    「反省!」
     えっ、オレ、なんも悪くないから!・・ってことを口走るとこれが永遠に続くからな。
     オレは、顔の前で両手を合わせ目を閉じた。

    「……ナニしてるの?」
     ――――あれっ?何で反省とか言ったのかしら?

    「はあ?いつもの反省だろ?」
    「バカじゃないの?」
    「はあ?エリカが反省って言ったからだろ?おちょくってんのか?」
     反省は、同棲時代の習慣だ。
     そこ、ボケるとこか?
    「ひど~い、こんな可愛い子に酷い事言って、男としてどうなのかな?」

     オレは、黙って反省のポーズをした。
     もう、反論は止めだ。
     しかし、コイツ、ボケが上手くなったな。
     病室でも、後藤の手前、久しぶりに会ったとかいうフリしてたし。

     ――――あれっ?これって、何度も見たことがあるような?わたし、ヒロちゃんと何かがあったような気がするんだけど、このピカタがとくにモヤモヤの原因だったから。だからヒロちゃんに作ったのに、美味しいしかわかんないよ。

    「ちょっといいか、エリカ?後藤とか言う元カレ、アイツと付き合ってるんだろ?また好きになったのか?」
    「後藤君?ああ、もう別れたわ」
    「えっ?いつ?」
    「退院して最初のデートで。でもヒロちゃん、何でまたとか言うの?」
    「だって、アイツだろ、オレの前に付き合ってたヤツ。日焼けして黒かったし、背も高かったから」
     後ろ姿を見た事はあるのだ。
     それはあの頃片想いだったオレには、忘れられない後姿だったから。

    「オレの前?何を言ってるの?彼とは前から付き合ってて、ヒロちゃんとは久しぶりに病院にお見舞いに来てくれただけでしょ?何か証拠はあるの?」

     はあ?
     ボケ過ぎだよ!

    「もうボケとか良いから。証拠は…無いかな?」
     くっそー、この前、ここに置いてあったエリカの荷物、全部エリカの実家の方へ送り返さないといけなかったから、何にもねーや。
     あのハゲ親父がエラく怒ってたからな。

    「ダメだよ〜、ウソついたら!私達、約束したよね、って、えっ?」
    「あー、そうだったな、二人一緒に住むんだから隠し事は無しだって」

    「・・・・ばか!」(エリカ)
    「かば!」
     あっ、反射的に出たよ。懐かしいな、このやり取り!
    「ネコにカバン?」(エリカ)
    「豚に珍獣!」
    「犬も歩けば?」(エリカ)
    「オシッコする」

    「ううう・・・」
     なぜ泣き出した?
    「ど、どうしたんだ?」
    「バカバカ!わからないのよ!私、ヒロちゃんと何をしてたの?」
    「えっ?ボケ・・てはいないよな。どういうこと?」
    「だから、私、ヒロちゃんと何があったの?」
    「記憶が無いのか?」
    「うん。なぜか、ヒロちゃんの事だけ、良くわかんなくて。靄がモヤモヤってかかってる感じなの」
    「そうなのか?!だったら、良く聞けよ!オレたち、同棲してたんだよ!親も認めたカップルだったからな!」
     そうだよ、あの親父だけは渋々……ってことは、あの親父、記憶が無いのを知ってて荷物を取り上げて隠したな!

    「バカ!」
    「カバ?えっ?」
     エリカは泣いて出て行こうとする。
     ピカタサンドをエコバッグに入れて。

    「あっ!それ!」
    「ナニよ!」

    「エコバッグだよ!証拠だ!それは俺たち二人が一緒にお揃いのを買った証拠。ほら、これ!オレのは赤で、エリカは青だろ?あの時、エリカは赤が良いけど私だと思って赤の方を使ってって、オレに言ったよな?」
    「わかんない!ごめん、わかんないよ。私、今はヒロちゃんとそんな関係になりたいとか、考えられないの!」
    「くっ!だったら、一度チャンスをくれないか?明日は、君と大人になってからさっきのように君の家の前で出会えた運命の日だ。だから、明日、オレに付き合ってくれ!」

     つづく
     ◇
    すいません、ごめんなさい。遅くなり長くなり申し訳ありません。
    次回で最後ですが、デザートを何にするのか、全然わかりません。
    でも、ハッピーエンドを目指したいです。メザシもタイも出ませんけど……はあ、いえダジャレも最近出てないですねw(#^.^#)

  • 💎玖珂李奈

    遅くなりました。すみません。
    全文はこちら
    『午前0時の食卓』
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862450734712

    天ぷら回をスキップしましたので、「第八膳」としています。
    この後、二話ほどお題にないエピソードが続いた後、最終お題となる予定です。

    主人公:烈(れつ)
    ごはんを食べる少女:紅子(べにこ)
    主人公の元カノ:美奈(みな)
    主人公の幼馴染:桔梗(ききょう)

    💎一部抜粋💎
     あたりに香ばしい香りが漂う。焼けたものからひっくり返していくと、ヘラでお好み焼きをぎゅうぎゅうと押し付けている人がいた。
     すかさず誰かが「押し付けないの!」と注意する。まあ、よくある光景だ。
     
     焼きあがったお好み焼きにソースをたっぷり塗る。鉄板に垂れたソースがじゅわじゅわと弾け、ソースの焦げた匂いに「旨そう!」の声が上がる。


  • 編集済

    🐹黒須友香です。
    豚キャベツ回投稿しました!
    長くなっちゃって、また二話に分けました。豚キャベツメニューも二品です。ご賞味いただけましたら幸いです。

    🐹(↓抜粋)

    「キャベツに、豚肉、味噌……あと色々……なんやこれ、どこが土産や」

    「達月くんのために用意した物なんです。普通にスーパーで買ってきてもよかったんですけど、僕、こんなに運べないでしょ?」

    🐹↓続きはこちら!
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862423037971

  • こんにちは。久里琳📞です。
    大詰めになってきましたね。皆さんのお話が、どう締めくくられるのか楽しみです。

     📞 📞
    この男の子、ふたたびここに来ることができたとは、なによりぢゃ。わずかなあいだに、ふたりの絆は思うた以上に深くなっておったということかの。それだけこの男の料理に力があったともいえる。

    かずかずの振る舞いの礼を料理で返そうとは、おさなき身で殊勝な心がまえであるな。材料の用意は吾がたすけてやったのぢゃが、さような瑣末なことはどうでもよい。
    料理というても肉と野菜を切って焼いただけの、味もつけないかんたんな料理ではあるが、この子が火をつかうことに、どれだけ覚悟がいることか。……こやつまさか、気づいておらぬわけはなかろうな。

    まったく、こやつの鈍さときたら、未だあらたまる気配がまるで見えぬ。ため息もつきたくなろうというものよ。

    📞つづきはコチラ📞
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862534372546

  • こっちに載っけるのが遅くなっちゃいました。
    前回のエピソードの真相です。

    🍏🍏🍏
    「あの日は俺が昼飯を作るつもりだったんだ。いつも亀石が全部荷物を背負ってくれてたけれど、たまには俺がやるって」
     キャベツを千切りにし、刻んだ紅生姜と混ぜながら、鉄兎は語り始めた。
    「俺が慣れない荷物を背負ってたもんだからさ、いつもより、亀石と遭遇するのが遅かった。標高も高いところだ。道行きが険しくなったあたりだし、休憩できるような場所もあまりない。まあ、そういうこともあるよなって、二人共ぐうぐう腹を鳴らしながら歩いてたんだ」
     キャベツと紅生姜が、薄切りの豚バラ肉にくるくると巻き取られてゆく。
    「それで、もう限界だ、ここにしようぜって、ちょっと狭いけど此処で昼飯を作ることにした。で、さっそく荷物を下ろそうとしたらさ、上からぱらぱらって、何か降ってきて」
     同じような豚肉のキャベツと生姜ロールが次々に出来上がり、大きく立派な朴葉に並べられてゆく。
    「かざした腕に小石がいくつか当たって、その向こうに見えたんだ」
     石を組んで炉を作る手際も含め、中々のものだ。思わず、口をはさむ。
    「随分手慣れてますね」
    「え? ああ、あいつがやってるのを、いつも側で見てたからな」
     鉄兎は少し恥ずかしげに、でもどこか誇らしげに答えた。
    「すみません。話の腰を折ってしまって」
    「いや、構わない。あいつの……供養、に、付き合ってもらうんだから」
     まだいくらか落石が残る周囲を見渡し、僅かに言い淀みながら、枯れ落ちた杉の葉に点火する。小枝を集めた炉に放り込み、さらにいくらか枝を追加した。
     少しずつ、火が大きくなって、寄せ置いた平たい台のような石を温め始めた。
     その上に、朴葉を乗せ、豚肉ロールに味噌ダレをかける。
    「これさ、あの日、作ろうと思ってたメニューなんだ」
    「いい香りですね」
     うん、と鉄兎は頷く。じうじうと音を立て、豚肉の色が変わり始めた。
    「本当なら食材を切ったり、肉を巻いたり、下ごしらえをしたものを持ってきた方が効率が良いんだけどさ。あいつみたいに、山でゆっくり過ごしてみようかなって。今日、くらいは……」
    「良いですね。日も長くなりましたし」
     不意にわたしの目から涙が流れる。どうして流れたのか自分でもよく分からない。
     ただ、鉄兎はロールを転がす作業に集中していて、こちらの様子には気づいていないようだった。さり気なく拭って、焼き上がるのをじっと待つ。
    「よし、そろそろいいな」
    🍏🍏🍏


    あらゆる伏線を回収しまくる後半戦に入ってから一話が長めですが、全文はこちらに。
    https://kakuyomu.jp/works/16816410413893461604/episodes/16817139555271093324

  • 🍻やっと更新できました!
    次で終わりだと思うと、なんだかセンチメンタルな気分になってしまいます。もう淋しい……


    🍻

     カラフルな野菜に彩られたオレンジ色のスープの中に、美しく包まれたキャベツ。テンはやっぱり筋がいい。仕事が丁寧だし、他人に料理を振る舞うことの本質をわかっている。

     そっとナイフを入れると、抵抗なく刃が通る。崩れることなく、一口が切り分けられた。断面を見て、思わず笑ってしまう。

     わたしは肉ダネを豚ミンチと玉ねぎで作るのだが、これはなんと薄切りの豚バラをそのまま使っていた。きっと肉をこねる手間を省いて教えたのだ。大雑把なキクさんらしい。

     「美味けりゃいいんだよ。腹に入っちまえばおんなじだろ☆」と言う声が聞こえてきそうだ。

     でも、巻き方は同じだった。肉ダネを芯にして巻くのではなく、タネをキャベツの上に平たく伸ばして重ね巻きにするのだ。こうすると食べる時にバラバラにならない。

     巻き終わりは爪楊枝でなく、折ったスパゲティで留めるのも同じだ。煮えればそのまま食べられる。

     何度も作る中で改良を加えてできた、オリジナルの最終形態。


     一口食べれば……これは、ケチャップか。トマトピューレではなく、コンソメにケチャップの味付け。テンのために子供向けにアレンジした……わけじゃなく、きっとキクさんの家にはトマトピューレなんて無いだろうな。うん、間違いない。でも、これはこれで……


    「すっごく美味しいよ、テン!」


     テンは大人びた仕草で肩をすくめて見せた。そして「お買い物もひとりでできたの」と得意げに言う。

     すごいじゃないか、もうすっかりお兄ちゃんだなと煽てると、「いひひ」と笑った。



    「これ、まだお鍋にあるかな?」

    「あるよ! たくさん作った」

    「じゃあ、テンも一緒に食べよう」

    「うん!」

     🍻

    テンちゃんがセッキーに初めて作ったお料理は、キクさん特製「手抜きロールキャベツ」でした。
    全文はこちらからお願い致します↓
    第九膳回答『再会のメニュー』https://kakuyomu.jp/works/16816452220246177194/episodes/16817139555397799240

  • 春川晴人🌞です。よろしくお願いします。

    🌞 🌞 🌞

    いつになく無口なアスカを遠目で見ながら、ゴンのために茹でてもらったキャベツを食べさせる。

    ゴンは最初、クンクンにおいを嗅いでいたけれど、やがてシャキシャキといい音を立てて食べ始めた。犬ってキャベツ食べるんだな。変なことに感動してしまう。

    アスカが戻って来てくれた。でも、なんだか様子がおかしくて。その理由を聞き出すことはできない。

    「はい、かんせーい!!」

    机に並べられたのは、まさかの皿うどん。うちの冷凍庫把握してるな。

    「冷めないうちにめしあがれー」
    「いただきます」

    もしかしたら。そんな予感が胸をよぎって、涙が出てくる。

    「どう?」
    「泣くほどうまい!!」

    お願いだから。それだけは言わないで。

    つづく


  • 💐涼月💐です。

     今回は難産でした……ちゃんと次回に繋がっているか不安ですが(;'∀')
     もう直ぐラストですね。関川さん、最後まで素敵なお題をありがとうございました。

     💐 💐 💐
     
     コンビニを後にして暗い夜道を急ぎ足で歩く。だが、扉の向こうには同じく墨色の部屋が待っていた。
     わかっていたことだけれど、色音はまだ帰ってきていないようだ。

     買ってきたビールを冷蔵庫に仕舞いながら、ふと使っていないクリームチーズが目に入った。これ、早めに使ってしまったほうがいいな。

     自然とエプロンに手が伸びた。

     続きはこちらへ ↓
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862602812315/episodes/16817139555049529064

  • 🐤小烏つむぎです。

    今回もかなり改変しています。
    前半から読んでいただけると嬉しいです。

    以下、後半のチラ見せです。

    **********

     大鳥さんが皆に振る舞った、いや正確には皆で作った料理は、Tomatensoepという阿蘭陀《オランダ》の煮込み料理だった。
    肉を赤茄子《トマト》で煮込んであるので、その赤い色にぎょっとしたものの思いのほか美味である。聞いたことのない野菜もたくさんあったが、うまく肉の臭《にお》い消しになっていて穏やかで懐かしい味だった。添えてある甘藍《キャベツ》も煮ていた時に心配したほど酸っぱくはなく本来の甘みが引き立っていた。

    **********

    https://kakuyomu.jp/works/16816927862577875744/episodes/16817139555375501963

    よろしくお願いします。

  • 🍁空草 うつを です。
    後半部分の抜粋になります。

    🍁🍁🍁

    「私は古生物の研究をしすぎてしまったのかもしれません。古生物は、はるか昔にこの世から姿を消してしまい、本当の姿を知る人はこの世界には誰一人として存在しません。つまり、研究対象の古生物は化石の状態なのです」

    🍁🍁🍁

    全文は連載中の『嗚呼、愛しの絶滅種!』に載せています。


  • 編集済

    🌸悠木柚です。

    📺ピッ!

    私のお腹が久しぶりに、きゅるるるるっと鳴った……
    実に半年ぶりだろうか。こんなにもお腹が壊れたのは。

    「ご、ごめん悠木くん。ちょっと席を外すわね」
    「柚子、どうしたの? 大?」
    「ち、ちがうわっ!」

    違わないけど大好きな悠木くんに、大だとは悟られたくない。大声で否定だけ伝え、休み時間の廊下に飛び出した。

    私立核余無学園は男女共学の都内でも有名な進学校。彼と出会ったのは始業式の前。春雨止まぬ桜並木の影で、捨て犬にミルクをあげていた悠木くん。そんな彼の横顔を見て、私は仄かな恋心を抱き、同時に濡れた体が災いしてお腹をくだした。

    あれからもう半年。

    偶然にも同じクラスになり、偶然にも隣同士の席。そして偶然にも部活も一緒になった。

    豚肉とキャベツ研究部。学園創立以来100年の伝統を誇るこの部は、豚肉とキャベツの存在意義を多角的に研究する崇高な目的を持っている。私たちは放課後、いつも部室で豚肉とキャベツ談議を交わしていた。ただし、いつも大好きな悠木くんに見惚れているので、話のほとんどを覚えていない。

    ――っと、そんな回想は後まわしだ。あまりにも悠長なことをしていたので、ちょっとだけ……ほんのちょっと実が出てしまった。

    「柚子さん、こんにちは」
    「柚子さん、今日も綺麗だね」
    「柚子さん、握手してください」
    「こ、こんにちは……」

    クソっ! トイレまであと少しだと言うのにファンクラブのやつらに囲まれてしまうとは。何を隠そう私は自他共に認める校内一の美少女。核学のゲラニウムとは私のこと。そこ! 微妙だとか言わない。

    当たり障りのない会話を交わし、「ごきげんよう」と彼らのエリアを後にした。本当は人目を憚ることなくガニ股で全力ダッシュしたいのに、根付いた清純なパブリックイメージがそうはさせてくれないのだ。せいぜい小走りが限界。こんなにも自分の境遇を疎ましく思ったことはない。

    きゅるるるるっ きゅるるるるっ きゅるるるるっ

    ようやくトイレに到着し、個室を満喫した。この学園で、この場所だけが本当の私になれるオアシス。排出された私の肉体を構築する誉れにあづかれなかった運のない有機物が、渦を巻いて深淵の暗闇へと吸い込まれて行く。私は徐に、膝にかかっていたパンツを脱ぎ捨て、汚物入れに放り込んだ。学園一の美少女に実付きは相応しくない。ひとしきり息を整えてから、トイレを後にした。

    「ゆ、悠木くん!」
    「柚子、これ……」

    照れながらトイレの前に立っていた悠木くん。手には豚肉とキャベツ。

    「これを……どうしろと……?」
    「貰って欲しいんだ。僕の今の精一杯」
    「悠木くん……」

    貰うわ! そして食べるわ!
    豚肉は生だけど問題なんてない。だってキャベツと一緒だもの。キャベツはキャベジンみたいなもの。一緒に食べればきっと寄生虫も大丈夫。それに大好きな悠木くんからのプレゼントだもん。食べない理由は見当たらない。

    私はてのひらにそっと乗せられた生の豚肉を、そしてキャベツを、微笑みながら口に運ぶ。美味しい、美味しいよ悠木くん。肉と野菜の刺身だよ。太陽と豊かな大地が育んだ緑色の恵みと野性を失い牙を抜かれ堕落して肥え太った家畜の肉が、今、私の中で一体となってるよ。やがてこれが、私を形づくる日々穢れと同じだけ再生を繰り返す細胞と言う名の神秘になるのね。詳細な食レポ的な感想は浮かんでこないけれど、とにかく美味しいよ。

    そして――
    私のお腹が、きゅるるるるっと鳴った。

    今の私はスカート内部の受け皿を失くした哀れな小鳥。少しの間違いも許されない。目の前には大好きな悠木くん。そしてなぜか周囲に集まってきたファンクラブのやつら。トイレから出てすぐまた入るなんて愚行はおかせない。でもポトリと落とすのだけは死んでもイヤ。

    そして私の出した答えは――――

    次回、恋はバミューダトライアングル 第10話
    《君の肝臓を食べたい リアルに》

    📺ピッ!

  • 「さあ。食べてください」

     そう言いながら、青年は皿に盛りつけた料理を食卓の上に置いた。濃紺の作務衣に前掛けをつけたその姿は若い板前のようにも見えるが、その実体は大黒の化身である。

     先日、彼は自分を祀る社が再建されるためにもう会えなくなると別れを告げて、それから顔を見せなくなってしまった。しかし今日彼の方から訪ねてきたということは何か言いたいことがあるということなのだろうか。

     そして目の前に置かれたこの料理。どうやらこれはミートボールとキャベツのスープのようだ。トマトベースの味付けで紅色に染まった肉団子からは香ばしい匂いが漂ってきて食欲をそそる。添えるようにカットされたバゲットも置かれていた。

    「……いただきます」

     わたしはフォークを肉団子に突き刺して、かぶりつく。ジュワリとした肉汁が出てきて噛みしめるとひき肉に練りこまれたみじん切りの玉ねぎが心地よい歯触りを与えてくれる。
    「うん、美味しいです」
     スプーンでキャベツを掬って食べると肉のエキスが溶け込んだスープがしっかり染みていて、これも味わい深い。バゲットをちぎってスープにつけて食べるとガーリックバターとスープの風味が上手く合わさって、お酒にもよく合う味になる。

     わたしと一緒に食を進めながら、彼は嬉しそうに頷いて見せる。
    「そうでしょう、我ながらまさに神業ですね」
     そりゃあ神だからな。
    「一生懸命、作り方を覚えました。……どうですか? 今日は私を偉大なコックという意味で『大コック様』と呼んでも構いませんよ」
     大黒よりも長くなっているうえに格が下がっているが。

     だが、待てよ。このタイミングでわざわざわたしに料理を作りに来たということは、この料理には何か意味があるのだろうか。

     そう、豚は金運や繁栄の象徴。この豚肉を丸めて食することで、金銭的な欲望に呑まれるのではなく、自分のものとして制することで「欲望に振り回されずに自分を見失うな」といいたいのではないか。

     またキャベツの語源は英語のキャベジだが、さらに元をたどるとフランス語のcaboche、「頭でっかち」という意味があったという。つまりキャベツを刻んで煮込み柔らかくすることで、「考え込んでばかりで何もできない頭でっかちになるな」「頭を柔らかくして考えて悩まずに、具体的に目標に向かって行動して見ろ」と伝えようとしているのだろうか。

     わたしは彼に向かって改まった表情で尋ねる。
    「あのう。今日この料理をわざわざ作りに来たのは……?」
    「ああ。この間『天空の城ラピュタ』を観たのですが。主人公が冒頭で肉団子のスープを買っていたので美味しそうだなー、食べてみたいなーと思いまして」
    「特に意味はないんかい!」
     しかも神様がアニメをみるのか。日本の文化になじみ過ぎだろう。
     だが彼はにこやかに笑い返して見せる。
    「それで良いではないですか。楽しいから作る。美味しそうだから作る。あなたもきっとそうだったのでは?」
    「ま、まあ。そうですね」

     確かにわたしは夢に破れて焦るあまりに、初心を見失っていたのかもしれない。

    「神である自分は、人心を救うのが使命です。そのために神通力を持っています。だけれども本当はあなたにも同じ力があるのではないでしょうか」
    「どういうことですか?」
    「この国では食べる行為を『人を良くする事』と書いて『食事』と読んでいるのでしょう? きっと食事には相手を元気にして、楽しくさせる力があるのだと思います」
    「……そうかもしれませんが」
     だけれども、わたしには、わたしの料理にはそんな大きな力があるとは思えない。

    「少なくとも自分はあなたの料理のおかげで救われました。だから……」

     だから、自分の神の力に頼らなくても大丈夫だ。きっとやっていける。たとえ上手くいかなくとももう一度挑戦すればいい。
     彼の表情はそう語っていた。

    「明日、社が完成します。あなたのところを訪れることができるのも今日が最後ですが。今までのお礼にどんなお願いでも叶えるつもりで来ました」

     わたしは彼の顔をまっすぐに見て、今まで迷っていたために言えなかった願いを口にする。

    「それでは。……いつか、いつか必ず! わたしはもう一度自分の店を開きます。立ち上げて見せます。だからその時は『わたしのお店に食べに来てください。会いに来てください』」

     大黒様の化身はわたしがそう答えるのをわかっていたかのように驚きもせず微笑んで「はい。わかりました」と応えると姿を消してしまった。

     その場に残っていたのは餞別のつもりか、一枚の神札だけだ。

     呆気ない別れだったが、悲しむことも寂しがることもしない。それよりも次に会うときに恥ずかしくないように約束を、誓いを守らなくては。

     そう。寂しがることはない。また戻ってくる。神だけにカミングバックするはずだ。いつかきっと。わたしはそう心の中で呟いて台所の片づけを始めた。


    ❄️ ❄️ ❄️

    ❄️雪世明良です。よろしくお願いします。

  • ☆☆☆愛宕☆☆☆

     今日は俺の方から、関川くんに何か作ってあげようと意気込んでいた。
     大人の体になってしまったから「これでサヨナラ」というのは、ただただ申し訳ない。そう思えるほど、世話になった。そして、色々なものを食べさせてもらった。
     普段は家で料理をしない俺でも、目の前に調理器具があれば、それなりのものを作ることくらいはできる。今日は豚肉が安かった。ならばと、キャベツを買い足して、俺流のロールキャベツを食べてもらうことにした。

     それにしても、再び子供の姿になっているというのは、いったいどういうことなんだ? 大人の姿に戻った状態で関川くんに「こんな事情なのだよ」って語ろうかと思ったのだが、これでは改まって話を切り出すのも難しい。
     まぁいい、子供の姿の方が関川くんとの距離感も取りやすいし、だんまりを決め込むこともできるから都合がいい。今度は俺が作る料理だから、あまりの美味さで自分から声を上げてしまうこともないだろう。

     さて、料理に取り掛かるとするか。
     まずは豚肉を一枚一枚広げ、そこに下味をつける。次にキャベツを豚肉より少し大きめのサイズにカットし、軽く茹でて柔らかくする。あとは二つの食材を重ねて、キャベツが外側になるようクルクルと巻いたら準備完了。パスタを丁度良い長さにカットして、巻いたキャベツが解けないよう留め具の代わりに刺している人もいるが、俺はそんな洒落たことはしない。楊枝で十分だ、楊枝で。
     あとは鍋底に巻いたやつを並べるだけ並べ、水と固形のコンソメを入れてしばらく煮ればできあがりだ。キャベツも豚肉も一緒にローリングされたロールキャベツ、その断面はロールケーキのように渦巻いている。

    「おぉ! キャベツの甘い匂いがたまらないねぇ」

     余計な調味料を極力排除し、素材の旨味や甘味だけで勝負したシンプルなロールキャベツに、さっきまで硬かった関川くんの表情もすっかり解れて腹を鳴らしていた。いいじゃないか、いいじゃないか。好きなだけ食ってくれていいんだよ、関川くん。

    「うん、美味いね。これは、塩と胡椒だけの味付けで十分だ。この豚肉とキャベツの甘さが重なり合っているのも凄くいいよ」

     そうだろう、そうだろう。
     俺は味変に使ってもらおうと、冷蔵庫からケチャップを取り出してテーブルの上に置いた。トマトの酸味をちょい足しするのも、ロールキャベツには欠かせない儀式だ。

    「いやぁ、ケチャップも合うね。なんだか、子供の頃を思い出すなぁ。ちょうど君くらいの歳の頃だったかな、お母さんが作ってくれたロールキャベツの味に似てるなって思ったよ」

     そうだ。ロールキャベツはミルキーと同じだ。
     どこか懐かしい……ママの味。ロールキャベツの甘味には、そんなノスタルジーが混ざっている。

    「キャベツで包むのは豚肉じゃなくて、優しさだね。うん」

     なぁに言っちゃってるんだか……。
     でもまぁ、俺も作った甲斐があったってもんだ。
     美味いものを食べて笑顔になるのは、みんな同じなんだよなぁ――。

  • 🍷出っぱなし

    時間通りの更新お疲れ様です。
    今回は大容量です。

    🍷🍷🍷

     タマと再会できた空想の場面は夢幻の如く消え失せ、わたしはうねりを上げる光の渦の中に漂っていた。
     何も分からないが、何もかもどうでも良くなっていくかのようだ。
     何かと一体となり、緩やかに溶け込んでいく心地よさに身を任せる。

     ここは、ムー大陸の核の中だ。

     なぜ、こんなことになってしまっているのか?
     ムー大陸に突入してからの場面が、スライドショーのように光の中に次々と浮かび上がる。
     わたしはその時の記憶を辿った。

     🍷🍷🍷

    「ヒーハー! どうだ、関川さん? エレクチオン号は最高だろ!」
    「ヒ、ヒィイイイイ!」

     繊細に振動させながら飛び続けるエレクチオン号、その乗り心地は……生きた心地がしなかった。
     音速を超える速度によるGに加え、急旋回、乱高下によって意識がなくなりかけた。
     しかし、尾骨の奥を刺激するような振動による痛みで無理矢理意識を覚醒させられる。
     痛みと恐怖心によって、このまま墜落して死んでしまった方が楽なのではないかと思い始めていた。

    「ヒャッハー! ワラワラ迎撃しに出てくるワイバーン共が邪魔だぜ! だが、エレクチオン号は止められねえ! さあて、突っ込むぜ! フェード・イン!」 
     
     まるで脳内麻薬《アドレナリン》が分泌されているように瞳孔が開いているカノ―さんは雄叫びを上げる。

    ・・・・・・
     再び、光の奔流の中へと意識が戻ってきた。

     気が付くと、わたしはテーブルに座り、赤ワイングラスを傾けていた。
     目の前には大きなホットプレート、すでに焼けるほどの熱気が伝わってくる。
     タマが大きなボウルを抱えるようにエッチラと歩いてきた。
     その中には、刻んだキャベツが乳白色の生地の中に絡っている。

    「ほう? それは『お好み焼き』かな?」

     わたしが感嘆の声を上げると、タマはにっこりと笑顔で頷いた。
     そして、生地を熱したホットプレートに伸ばし入れ、ジュウっと気持ちを弾ませるような心地よい音とともに湯気が立ち上る。
     二つの楕円が夜空に浮かび上がるようだ。
     
     タマは手際よく、揚げ玉、刻み紅生姜、豚バラ肉を上に敷き並べ、下部が焼き上がるタイミングを真剣な眼差しでじっと待ち、ひっくり返す。
     わたしはその様子を静かにグラスを傾けながら微笑む。

     お好み焼きが焼き上がり、それぞれの取皿に分けられたところで、再び蜃気楼のように全てが消えた。


    🍷🍷🍷

    続きはこちらです。

    飯テロリスト関川様、ネコ耳を拾う
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862486888667/episodes/16817139555335704871