🐹黒須友香です。
ラーメン回、遅くなりましたが投稿しました!
長くなったので2話に分けました。『孤独を癒すラーメン』①・②です。ラーメンも2回出てきます。
よろしくご賞味ください♬
🐹
突然だが、二日酔いである。
「しもうた……飲み過ぎたわ……」
ときおりガンガンと唸る重い頭を抱え、北橋達月は今、のそのそと起き出してきたところだった。
↓🐹続きはコチラ!
https://kakuyomu.jp/works/16816927862423037971
編集済
皆さま、こんばんは! 間に合った~💦
周回遅れになりつつこっそり更新しております!
🐛 🐛 🐛
ストレートの生めんと地鶏が濃厚に香るしょうゆベースのスープに加えて大き目に切られた京ネギ、鳥の細切れの胸肉、輪切りのちくわ、そして仕上げの生卵までが顔をそろえるオールスターセットだ。
一見ラーメンとミスマッチと思えるこれらの具材が懐かしのスープと絶妙なハーモニーを奏で、食するものを天上の世界へと送り込む。
しかし初期セットでもいいが、やはりここは元料理人としてアレンジすべきだろうと申し訳のようにニンジンの細切りを足す。こういうものはあまり手を加えすぎてもいけない。スープの濃度を殺す可能性があるからだ……
続きは『飯テロ開始します! 〜傷ついた訳あり彼女に一膳の飯を〜』にて!
💎玖珂李奈
全文はこちら
『午前0時の食卓』
https://kakuyomu.jp/works/16816927862450734712
天ぷら回をスキップしましたので、「第七膳」としています。
設定上、お題のストーリーから外れてしまいました。ごめんなさい。
主人公:烈(れつ)
ごはんを食べる少女:紅子(べにこ)
主人公の元カノ:美奈(みな)
💎一部抜粋💎
湯が沸いたので麺を投入する。元気よく沸騰していた湯は、教師が教室に入ってきた直後みたいに静まり返った。だがすぐに麺も一緒になってぼこぼこと騒ぎ出す。
タレを入れた丼にスープを入れると、コクとキレが一体となった香りが立ち上る。そこに麺を入れると、スープが嬉しそうに麺を抱き込んだ。
焼豚を並べたら、ぐるりと囲むほどの量になった。バランス的に絶対違うが気にしない。
そこへ葱と紅子好みの濃い目に味つけしたメンマ。海苔も添えたが、サイズが小さかったせいで、丼の隅で申し訳なさそうに縮こまっているように見えた。
煮卵は、切った途端に橙色の黄身がとろりと揺れる。最後にそれを乗せて完成だ。
「わあ、美味しそ……」
遅ればせながら。🍏蒼翠琥珀です。
🍏🍏🍏
そして腹の虫が鳴く。すっかり日も暮れ、虫たちが秋の音色を奏でる中で。
そういえば昼ご飯も食べていなかった。
「こんな気分の時でも、お腹だけは空くんやなあ」
ぐぅぅぅりゅりゅぅ
そうだな、こんな時はラーメンがいいかな。と腹の虫と対話する。
うん。ラーメン、ラーメン。
ぐぅぅぅりゅりゅぅ
天幕を張っただけの簡易の孤城にて、傍らに放り出していたバックパックを引き寄せる。ガサゴソと中身を漁る。陽が落ちた今、ランタンとヘッドライトの明かりだけが頼りだ。
「そういえば、あのラーメン美味かったなあ」
*
暑い日だった。
下山後、鉄兎にばったり遭遇し、ふざけて沙羅沢池に飛び込んだ。まだまだ日が長い時分で、水浴びしながら存分にはしゃいだ。我ながら馬鹿だと思うけれど、あの何にも考えていない日々は幸せだった。
その後、銭湯で身を清め、ぷらぷらと歩いているうちに、自然とリヤカー屋台に吸い寄せられた。自分も鉄兎も示し合わせたように狭い空間に顔を突っ込んで簡易の椅子に腰掛ける。そして、それぞれのラーメン鉢を受け取った。
二人同時に手を合わせた直後から、無心で啜る。
熱いスープから引き上げられる麺。はねた汁も熱い。でも構わず啜った。何しろ腹の虫が待ちわびている。
青ネギと白髪ねぎを麺と一緒に。とろんと赤く艶めく半熟の煮玉子を齧る。そしてまた麺を。その度に、紫蘇がふうわりと香るのだ。
ふと添えられたレンゲの存在に気づく。そこでようやく、あまりに無我夢中であった自分が可笑しくなる。
どこまでも透き通るスープにレンゲをそうっと沈めると、スープに散りばめられた黄金色の油がくるくると舞い込んでくる。それにつられて、トッピングの小さな小さなあられが、やっぱりくるくると踊るのだ。
円舞曲《ワルツ》が繰り広げられたスープの真ん中を引き上げて、そうっと口に運ぶ。疲れた身体に塩気が優しく染み渡る。そして紫蘇が香る。
そうだ。暫く山の中に居て、ようやく下りてきたのだ。陽が傾き、暖簾の隙間から見えた空一杯に、オレンジ色が揺らめいていた。そして黄昏時に差し掛かる。
麺を啜る合間に挿入される様々なトッピング。夕暮れの輪舞曲《ロンド》。それは長いような短いような一日のフィナーレに相応しい。
美しく並べられたチャーシューの柔らかさは、今も忘れられない。
*
ひとしきりラーメンの回想を終え、取り出した干し肉を噛みちぎった。飲み込むために、時間をかけてその硬い塊を咀嚼する。凝縮された旨味が口の中に広がってゆくものの、あの油が融け出す柔らかさとは縁遠いものだ。
🍏🍏🍏
ここだけでお題に対する回答にできそうですが、一応……全文はこちら。
https://kakuyomu.jp/works/16816410413893461604/episodes/16817139555042178732
次のお題……どないしよ。
次のお題もいいですね! どう繋げようか苦心しておりますが、それが楽しかったりするから困っちゃう♡ 終わりが見えてきて寂しくもあります。
では、今回の回答編です。
🍻
カウンター席のみの店内には、ニンニクの匂いが充満している。その奥に香るのは……鶏ガラ出汁だな。
メニューには混ぜそばや味噌ラーメンなんかもあるけれど、ここは無難に看板メニューでいこう。一番人気、5段階レベルの真ん中「中辛」、トッピングは無し。まずは基本の味を食してみたい。
運ばれてきたのは、ギョッとするような代物だ。よく見る坦々麺とは全く異なり、そのビジュアルにちょっと引く。
地獄の夕焼けもかくやという真っ赤なスープに、血まみれみたいに見える溶き卵。咳き込みそうなほどガツンとくるニンニクの香りと唐辛子。
お腹がギュルルと鳴る音が『いただきます』の代わりだ。
まずはスープを一口。辛い! と感じたのは一瞬で、塩味の鶏ガラ出汁は奥深く、大量の刻みニンニクの衝撃の後に豚ひき肉のしっかりした旨味とふんわりかき玉の優しい甘味が広がる。このスープ、見た目ほどには辛くない。
麺を啜ってみれば、モチモチつるつるの中太麺に程よくスープと具材が絡みつき、コク深い味わい。クセになる旨さ。
3口ほど食べれば、もう汗が吹き出してくる。ニンニクとカプサイシンのパワーが凄まじい。きっとこの刺激を、このパンチ力を、身体が欲していたのだ。
食べ進むうちに物足りなくなり、テーブルにあるラー油と一味を振りかける。
傷口に塩を塗り込むように。
喪失感に疼く心に、更なる刺激を。
心の痛みを別の痛みで上書きするかの如く。
いくらニンニク臭くなったって、帰ればどうせ独り。誰にも迷惑はかけない。
半ばヤケクソでビールとライスを追加注文。丼の底に沈んでいたひき肉やニンニクをライスにごっそり載せてモリモリ掻き込み、ビールで流し込む。
残ったスープも全て飲み干し、ごちそうさまでした。
暴力的とも言えるラーメン体験だった。
いわゆるB級グルメ的な旨さに妙な中毒性があり、いつも行列ができている理由がわかった気がする。
🍻
全文はこちらからお願いします。
第八膳回答『孤独を癒すラーメン』
https://kakuyomu.jp/works/16816452220246177194/episodes/16817139555187118318
実在するお店をモデルにしました。店名はちょこっと変えてあります。
🎐風鈴
ギャグとか無しですので。
ラーメンも、全く、完全に凝っていませんので。
作るのに三分かかりませんのでw
そして、『孤独を癒してないラーメン』にお題を変更しますw
☆
オレは関口ヒトヒロ26歳。
オレには幼馴染の彼女、沢口エリカ26歳がいた。
でも、事故からこっち、あろうことか元カレ後藤と付き合い出して、オレの所へは戻ってこない。彼女の親からも、よくも娘を酷い目にあわせてくれたなと酷く罵られ、絶縁状態だ。しかし、絶対、全ては後藤が自分に都合の良いように誘導したせいなんだ。そうに違いない。意識が戻った時に、あらぬことを彼女にふきかけ信じ込ませたんだ。
でも、なぜ彼女は、オレの事を変な目で見るんだ?
一緒に暮らしていたとかをオレが言っても、何で変な目で見る?
気持ちが悪いってか?
ストーカーだ?
エリカ、やはりオレのこと、もう嫌いになったんだな。
当然、か・・あんな怖い目にあわせてしまったし。
ああ、そうだよ、やっぱりオレはエリカとなんて釣り合いが取れないや。
わかってたんだ。
みんながそう思ってるのは。
エリカを見る男たちの目は、オレを見るとニタっとするか、怪訝な表情をするんだよ。
くそっ!
あの店に行って、美味いラーメンで気分を一新させるか!
そう思い、道を少し歩くと彼女の実家の前に派手なスポーツカーが停まっており、今まさにエリカが後藤にドアを開けてもらって乗り込む所に出くわした。
後藤の日焼けした顔がニヤけており、その顔に笑顔で応える着飾ったエリカがいた。
オレは回れ右をして自分のアパートへ帰った。
この時も、アパートが彼女の実家に近いことを恨んだ。
二人で住むために借りたアパート。
エリカの親父がどうしても近くでないと許さんと言ってきたので、わざわざ一人で住んでいたアパートを出て、ここに越してきたアパート。
まだ半年しか経っていない。
ホント、まだ諦めがつけられるくらいの時間だ。
あんな女だとは知らなかったよ。
オレは、帰ると直ぐに鍋に水を入れ、袋から乾麺を出し、そこへ投入して、火にかけた。
お湯を沸かしてからとかはしない。
その間、丼鉢の中に小袋を破いて、粉スープを入れておく。
やがて鍋の中の水は沸騰し、麺の上に泡状のお湯がムクムクと盛り上がり、麺を覆いつくす。
それを少しだけ眺め、火加減を最小にし、10秒待つ。
火を消し、コンロから降ろした鍋の中身を丼鉢に注ぎ入れる。
バチバチと湯が弾ける音がする。
熱伝導性の良いこの鍋特有の音に、ご苦労であったと労う。
鉢の上と下の部分だけを持ち、テーブルの上へと運ぶ。
麺以外何も入れない、袋ラーメンのミソ味が出来上がった。
冷めたお茶をコップに用意し、湯気の立ちあがるラーメンを見つめる。
オレは猫舌だから、直ぐには食べられないので、少し硬めにした麺がスープを吸って冷めるのを待つ。
猫舌か?
あのラーメン店へ最初にエリカと行った時、カウンターに座り、出て来たラーメンを前にして、オレは直ぐに食べようとはしなかった。
それを見た店主が、早く食えとうるさく言うのだが、それでもオレは食べようとはしなかった。
するとエリカが言ったのだ。
「大将?ここって、自由軒って言うんでしょ?だったら、いつ食べるのかはお客さんの自由のハズよ!」
これには大将が言い返せなくって、お詫びに唐揚げをゲットしたよな。
それからは、この店とは馴染みになったんだよね。
でも良くその店に行くようになったのは、そんな理由だけじゃなく、彼女が長い髪の毛を片手でかき上げながら食べる、その横顔を見るのが好きだったんだ。
おっ!そろそろ食べごろか?
ふぅーふぅーしながら麺をズルズルッと吸い込む。
誰もその音を聞いてないので、気を遣わずに啜る。
エリカが居ると、あまりズルズルさせると、汁が飛び散るでしょって、怒って来たモノだ。
自分の場合には、気にしないクセにね。
オレは、麺を全部食べ切ると、今度はスープが残る丼鉢へ、炊飯ジャーからご飯を投入する。
そこへ冷蔵庫から、昆布の佃煮、小カブの一夜漬け、みじん切りした細ネギ(あらかじめ切ってあるのをタッパに入れてある)を取り出し、同じく丼鉢へ入れて混ぜ込み、味付けノリを千切りながら上にまぶし掛ける。
たまに、納豆や野沢菜の漬物、たくあん、生卵等も追加することがある。
これをかき込む。
時々、冷めたお茶をゴクゴクと飲み、またかき込む。
ラーメンのスープは捨てるのよってうるさく言う者は誰も居ない。
そう、誰も居ないんだ。
オレは、オレ流インスタントラーメンを完食し、使用した鍋や丼鉢を洗った。
ちゃんとこうして、洗剤を付けたスポンジで全体を洗うのよ。
エリカの声がした気がした。
なんだよ、諦めがつくってか・・それっていつなんだよ!
洗ってたら、涙で丼鉢が滲んで見えた。
つづく
☆
また続きます。って、これは最後まで続くみたいですねw
インスタントラーメンは、〇ッポロ一番のミソ味のつもりです。
6月より値段が高くなりました!
もう、袋ラーメンが安い時代は終わったかのようです(>_<)
こんにちは。久里琳📞です。
ラストスパートですね。皆さんのお話の「転」を楽しみつつ、自分のお話の結末がどう転ぶのか、決めかねている今日この頃。
迷いながらも、今回の回答編は、こんな感じです。
📞 📞
もう五日も寝たきりになっているのは砲弾の破片がぼくのおなかをつらぬいたから。
ついてないなと仲間たちはいうしぼくもそう思うんだけれど、町のまんなかに落ちた砲弾のすぐそばにいながらまだこうして生きているのは、じつは幸運なんじゃないかとも思う。
けがを負ったぼくに、仲間たちはやさしい。
ごはんはあいかわらず乏しいけれど、そんななけなしの食べものをぼくに分けてくれたりなんかして。いつもはいじわるしてくるひとつ上の子なんか、血だらけのぼくを背負って医者のとこまで連れてってくれたぐらいだ。いまこの町で、医者なんていってもたいした治療ができるわけではないけどね。
おかげでからだは痛んでもむしろ以前より快適だといえなくもないんだ。
でもやっぱり食べものは足りてないみたいで、ずっとおなかがぎゅるぎゅるいってる。ごはんのことはなるべく考えないようにしなきゃ。考えたっておなかがふくれることはないもんね。
あの男のひとの家へもしばらく行っていない。寝たきりなんだから行けるわけもないんだけど、じゃあ歩くことができたらあそこへ行けるのかってゆうと、そこは定かじゃない。
・・・・・・・
📞つづきはコチラ📞
https://kakuyomu.jp/works/16816927862534372546
💐涼月💐です
後二問ですね。関川さんお題をいつもありがとうございます!
今回もよろしくお願いいたします。
💐 💐
それは全く突然のことだった。
天使の国から呼び出しがかかったと、いつもと変わらない調子で色音が言った。
「それって、修行が終わったってことなのかな?」
問い返す声が自分でも驚くくらい震えていた。
続きは こちら ↓
https://kakuyomu.jp/works/16816927862602812315/episodes/16817139555124410530
🍁空草 うつを です!
🍁🍁🍁
結局、外で食べることを選んだ。久しぶりにあの味を食べたいと思ったから。
だけど、前の職場近くに店を構えていたラーメン店の扉には『閉店』の文字と共に貸店舗の張り紙があった。
昭和の職人気質で頑固な大将と、帰り際「飴ちゃん食べ!」と両手いっぱいに黒飴を持たせてくれる奥さんが経営していた。
あともうひとり、弟子みたいな若い男の子がいたはず。金髪で鼻にピアスをつけた、いかにもやんちゃしてそうな風貌の。継がなかったのかな。
閉店のことを早く知っていたら来ていたのに。ほら、まただ。大事なものは失ってから気づく。
残念だ。口の中はこの店の味を欲していたのに。この鼻だってラーメンの匂いを思い出して……。
おや?
この匂いはまさか。
警察犬のように鼻をひくつかせ、風と共に漂ってきた匂いを辿る。
そうしてたどり着いたのは一軒のラーメン屋。しかも、あの店と同じ名前の、二号店。
その名も『シーラカンス』。
お弟子さんの店かもしれない。だとしたら、あの味が食べられるかも。
そんな期待と、間違ってたら落胆するだろうなという不安を胸に、暖簾をくぐった。
……つづく。
後編は連載中の『嗚呼、愛しの絶滅種!』にて。
🌸悠木柚です。おまち! せきかわ特製!
これまで自分が真実に愛したものは何であったか?
自分の魂を高みに上げたものが何であったか?
何が自分の心を満たし喜ばせたか?
これまでどういうものに自分は夢中になったか?
これらの問いに答えたとき、自分の本質が明らかになるだろう――
ニーチェ
◆
寂れた商店街の一角。時代の波に飲まれ、他の店がシャッターを下ろし続ける中。
そのラーメン屋は頑なに暖簾を守り続けていた。
麵処 せきかわ
昭和を感じさせる店構えに落ちない汚れのついた看板。スライドドアを横に流せばカラカラと素朴な音が出迎えてくれる。
「いらっしゃい!」
オヤジさんの声ががらんどうな店内に響き、少し気恥ずかしさを覚えた僕は、会釈もそこそこに入口付近の席へとついた。
「せきかわ特製醤油ラーメンを」
「はいよ!」
醤油ベースの汁に腰のある縮れ細麺を絡めたシンプルな一品。それでいて焦がしネギの香りが食欲をそそり、最後の一滴まで飲みほさずにはいられない魅力がある。彩は海苔二枚、叉焼三切、煮卵ひとつと山盛りのホウレンソウ。お好みで、テーブルに備え付けられた器からモヤシを無料でトッピングすることもできる。
料理がくるまでの間、何とはなしに店内を見渡す。びっしりと貼られてある手書きのメニュー。油で汚れた厨房のダクト。ピカピカに拭かれているけれど、古傷が隠しきれていないテーブルの数々。そしてそこだけ時代が移行したような薄型テレビ。
初めて訪れたときはブラウン管のテレビから野球中継が流れていた。折しもセ・リーグの優勝決定戦で、僕と彼女は声を上げて贔屓のチームを応援した記憶がある。それからも楽しい気分に添え物をしたいときは一緒に足を運んだ。何度も、何年も、良家からの縁談がふたりを分かつまで。
「おまち! せきかわ特製!」
ほどなく運ばれてきた料理は、注文した物とはまるで違っていた。おしぼりと麦茶、そしてその横に置かれたのは車のキー。
「オヤジさん、これ……」
「行ってこいよ。答えは出てるんだろう?」
途端に血の巡りが早くなり、顔が熱を帯びてきた。いてもたってもいられず、勢いよく席から立ちあがる。キーを握りしめ頷くと、厳つい顔で笑顔を向けられた。我慢するなんて僕らしくない。
せきかわ特製醤油ラーメンは、独りで食べても満たされないから。
🐤小烏つむぎです。
今回、なんというか、ちょっと、思わせぶりな展開になってしまいました。
時代は一気に遡って室町時代です。
以下、前半のチラ見せです。
********
むかしむかし。
これはのちに室町と呼ばれる時代のお話し。
京のはずれ、比叡の山を眺める山裾に臨乗寺という寺がありました。古くは歴代の法王の山荘があったところを半将軍と呼ばれた管領・細川 政元ほそかわまさもとが十一代将軍足利義澄のため寺に改めたものでした。将軍ゆかりの寺になったために寄進も多く、あちこちに多くの荘園を持っておりました。臨乗寺では東班衆と呼ばれる経営専門の僧を派遣して各荘園を管理しておりました。
また寺のなかには玲蔭軒と呼ばれる足利義澄のための禅室があり、この玲蔭軒の管理を任された者は軒主と呼ばれておりました。歴代軒主は日々を記し、その記録は『玲蔭緑記』と呼ばれています。
華やかな東山文化の終焉の始まりの頃でありました。
*************
https://kakuyomu.jp/works/16816927862577875744/episodes/16817139555020859621
よろしくお願いします。
☆☆☆愛宕☆☆☆
だめだ……腹が……減った……。
よし、店を探そう!
幸いにもここは商店街。シャッターが閉まっている店も目立つが、ちらほらと飲食店の看板が見える。洋食、和食、インドに中華。それなりに選択肢はあるじゃないか。さて、今日の俺は何を欲しているのか?
あまりの天ぷらの美味さにうっかりと声を出してしまった日の夜、なんと寝ている間に俺の体は元へ戻っていた。さすがにヤバいと感じて、関川くんが起きる前に家を抜け出してきたものの、今いる場所が分からないので迷いに迷った。
しかし、夜通し歩き続けた甲斐もあって、なんとか線路沿いの道を見つけることができた。この道を線路に沿って進めば、必ずや駅にぶつかる。駅名でも分かれば、今いる場所のヒントくらいは掴めるだろうと期待していたのだが、夜が明けても線路は延々と続いていた。おかしい……暗さのあまり駅を通り過ぎてしまっただろうか? いやいや、そんなはずはない。駅舎のような建物は、全く見つけられなかった。本当に俺は、この世に存在しているのだろうか? 歩きながら、そんな考えにも及んでいた。
ダメだダメだ。
腹が減ってるからマイナス思考になってしまうのだ。ここはガッツリ系の飯で、パワーチャージをするのが一番だろう。よし、中華だ。スタミナたっぷりのメニューで脳を活性化させよう。
「いらっしゃいませー!」
客は俺一人。しかし、時間になれば昼飯を食べにくるサラリーマンがどっと押し寄せてきそうなポテンシャルを秘めている。壁に貼られた黄色い短冊も字が綺麗だ。
店に入る前から、とりあえずラーメンというのは決めてあった。あとは、主役の脇を固めるバイプレイヤーだが……餃子か、チャーハンか。ラーギョーか、ラーチャーか。思い切ってラーチャー餃子でいくか。
「すいませ……」
「すいません!」
あれ? 客は俺一人だけだったはずなのに……どうやらメニューで悩んでいた間に、腹ペコ仲間が入店していたようだ。店主は俺よりも先に、後から入ってきた客の相手をした。
「担々麺、肉味噌とモヤシはましましで、あとバーボンも」
「あいよっ! バーボンね。キープしてたの、終わりそうだよ」
「じゃあ、追加しておいてくれるかい」
「まいどっ!」
ば、バーボンだと? ここ、中華の店だよな?
でも、あの様子だと彼は常連さんだろう。中華屋でバーボンのボトルキープとか、普通はあり得ない。担々麺の頼み方もスマートだった。どんな奴なのか、顔だけでも見て……なっ!?
「お待たせしました。ご注文は?」
「え? あ、あぁ。ラーメンと餃子とチャーハンで」
「飲み物はどうします?」
「じゃあ、烏龍茶で」
いかん、弾みでラーチャー餃子にしてしまった。まぁ、食えないこともないか。それにしても、あの客。誰かと思えば関川くんじゃないか。夜通しかけて来るような辺鄙なところに馴染みの店があるなんて、聞いてないぞ。
こんな偶然はあり得ない。きっと夢だ、夢なんだ! 俺の体が元に戻ったのも夢なんだ。あまりの空腹で、夢と現実がごっちゃになっているだけなんだ。
「へいっ、お待ち!」
「おぉっ!」
ラーメンとチャーハンと餃子が入り混じったこの匂い、どれか一つでも欠けたら成り立たない独特の三重香。これですよ、俺が求めていたラーチャー餃子が、今ここにあった。
煮干し多めの出汁と喉越しの良い縮れ麺、メンマと煮卵と海苔だけのシンプルなトッピング。そこに一切の手抜きは無く、王道と呼ぶに相応しい仕上がりだ。薄味で整えたチャーハンも上々で、しっかりとラーメンを引き立てる役割に徹している。一口でスッと入る小振りの餃子も良い。
「酢ゴショウですか? 渋いですね」
「え? わぁっ! びっくりした!」
いつに間にか関川くんが俺の席に近づいて、テーブルを覗き込んでいた。手にはバーボンの入ったグラスを持っている。その小指を立ててグラスを傾ける癖、やっぱり関川くんだ。
「僕の知り合いにも酢ゴショウで餃子を食べる人がいましてね、それにあなたの食べっぷりを眺めていたらつい。あ、すいません。僕は関川と申します。失礼しました」
「はぁ」
お互い食事中でもあったので、これ以上の会話は野暮とばかりに、関川くんは自分の席へと戻って行った。それにしても、俺の姿に全く気付いてないだなんて。まぁ、子供と大人の姿じゃ、分かってくれと訴えても無理か。
俺は残りのラーチャー餃子を完食し、関川くんよりも早く席を立って会計を済ませた。店を出る際、こちらを見ていた彼と目が合った。軽く会釈を交わして出てきたが、このまま「世話になった」と挨拶もせず立ち去るのは、なんとも心苦しかった――。
🍷出っぱなしです。
次回のお題予告を見て悶絶中です(笑)
フライングで書いていた今回とどうつなげるか、思いついたのでこのまま続行して回答にします。
多分、このままのお題でも大丈夫、だと思いたい……
🍷🍷🍷
わたしは変態の館の廊下を千鳥足で歩く。
思わず、クリスタル製の前衛アートのようなよくわからない調度品にぶつかりそうになった。
「荒れてるな、関川さん?」
カノーさんが黄金色に輝くエレベーターの前で腕を組んで壁に寄りかかっていた。
まるで初めからわたしがやって来ることを分かっていたかのようにニヒルに嗤う。
「カ、カノーさん。わたしは、別に……」
「クックック。ごまかさなくてもバレバレだぜ? 可愛い娘を別れた嫁に取られちまった哀れなパパの顔してるよ」
何もかもお見通しのように含み笑いをするカノーさんに、背筋に冷たいものを感じた。
わたしはゴクリと喉を鳴らし、震える声で問いかける。
「か、カノーさんは知っていたのですか?」
「ああ、館内で起こったことは全て把握しているよ。……ま、立ち話も何だ。飯でも食べながら話そうじゃないか」
「い、いえ、わたしはそんな……」
「遠慮しなくてもいい。おあつらえ向きの良い店を知っているんだ」
カノーさんが身体の向きを変えるとエレベーターのドアが開いた。
そして、恭しく頭を下げ、わたしを誘う。
わたしは大きく深呼吸をしてエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターは中層階に止まった。
そこには何の変哲もない木製のドアがあるだけだった。
カノーさんは無造作にドアを開き、螺旋階段を下っていく。
別世界に導かれるうさぎの穴のようだ。
螺旋階段を降りきった先は、観葉植物が充実した室内、明るいリビングのような雰囲気ながら、テーブルや座席が多かった。
まるで大樹の中にいるような木のぬくもりも感じる。
「ここは、カフェ?」
「いえ、ここは食堂、琥珀食堂《アンブル》ですよ」
オープンカウンターの奥から自然な笑顔が美しい女性が声をかけてきた。
それからカノーさんに頭を下げる。
「いつもありがとうございます、カノー様。そして、ようこそ、関川様」
「え? どうして、わたしを……」
「クックック。《《琥珀食堂は生きている》》のさ。内に居るものの思考や感覚、心理を|汲み取る力《サイキック》がある。なあ、関川さん、固まってないで席についたらどうだ?」
カノーさんはすでにカウンター席についていて、わたしを隣に座るように促した。
女性、露樹《ロキ》と楽しそうに世間話をしている。
わたしが二人の会話を眺めながら席に着くと、いつの間にかテーブルの上に食事が置かれていた。
「こ、これは!」
「まあ、初めてなら驚くよな? 客が注文せずとも、欲しているものが自動的に提供されるのさ。さあ、食べようじゃないか」
カノーさんは箸を手にワカメを山盛りにしたラーメンを啜りだした。
一方わたしの手元には『冷やしラーメン』があった。
🍷🍷🍷
続きはこちらです。
飯テロリスト関川様、ネコ耳を拾う
https://kakuyomu.jp/works/16816927862486888667/episodes/16817139555131011699
編集済
国道に出ると街灯には明かりが点り、飲食店や居酒屋の看板も目立つような時刻になっていた。わたしは行きつけのラーメン屋に足を向けながら思いを巡らせる。
大黒の化身である彼と最後に会話を交わしてからもう二週間は経つだろうか。少し前までは数日に一度は顔を出していたというのに。
元々の土地の持ち主が神社を再建したからいずれ来られなくなるとは言っていたが、それでも奉納や上陳だとかの儀式が必要なはずだ。
神様としてその地に根を下ろすにしても、まだ猶予はあると思うのだが。……あるいは姿を消したのは「わたし自身の心が決まっていないことを見抜いているから」なのだろうか。
わたしの覚悟が決まるまでは姿を現すつもりはない、ということなのだろうか。
そう。先日、彼は去り際に「お礼に何でも願いを一つ叶えるので考えておいてください」と言っていた。だがわたしはそれに何と答えるべきなのか未だに判らずにいたのである。
最初は店を再建して繁盛させて儲けるために彼のご利益目当てに料理を作っていた。だが彼がわたしの料理を味わい、ともに楽しんでいるうちにわたしは料理への情熱がよみがえってくるのを感じていたのだ。
ここで私は願うべきことは、本当に彼に商売繁盛させてもらうことなのか。
本当に再建するための金運を授けてもらうことなのか。
悩みながら歩を進めていると、近道のつもりで入った裏通りに見知らぬ看板が立っていた。「旬菜中華」との看板がある。こんな中華料理屋があったのか。他のラーメン屋に行くつもりだったがここでもラーメンくらい食べられそうだ。新しい行きつけを開拓するのも悪くないだろう。料理人を志す身として勉強にもなるだろうし。
そう思ってわたしは小奇麗な店内に足を踏み入れる。「いらっしゃいませ」と店員がテーブル席に案内をしてくれたのでそのまま座った。中は決して広くはなく、客が数組も入れば埋まってしまうだろう。板張りの床に木製のテーブルと椅子がいくつか壁に沿うように置かれている。
メニューを見ると担々麺が一番上にあったが、その下の方にある塩醬油ラーメンというのが気になった。またカニレタスチャーハンというのもハーフサイズで注文できるようだったのでその二つを注文する。
わたしが料理を待っている間に客が次々にやってきて、あっという間に満員になる。どうやら近所の人間の間では評判の店だったようだ。
……わたしも以前に料理店を出したことがあったけれど、こんな風にお客さんで一杯にしたかったなあ。
そんなことをぼんやり考えていると「先にカニレタスチャーハンのハーフ、お持ちしました」と店員がテーブルの上に皿を置いた。レタスの翠色とカニの赤、卵の黄色がちりばめられたチャーハンをれんげで口に運ぶとパラリとした食感が口の中で広がる。単に油と卵のバランスが良いというだけでなく、味付けが繊細なのがわかる。この店が流行るのもわかろうというものだ。
感心しているうちに「塩醤油ラーメンです」と店員が追加でどんぶりを置いていった。
麵は細く、薄くて茶色いスープは透き通っている。さらにロース肉のチャーシューと細葱に水菜、そして細かく刻んだフライドオニオンが中身を彩っている。これは期待できるかな、と口に入れて驚いた。
それは今まで食べたことのない味わいのラーメンだったのだ。さっぱりとしていてコクがあり、いくら食べても飽きがこない。チャーシューと薬味のバランスも良く、アクセントのフライドオニオンも味を引き立てていた。また優しい塩と醤油の味が細麵に絡んで食べやすい。
スープは鳥ガラでもないし、豚骨のようなコッテリ系でもない未体験のものだった。そして味付けはチャーハンに負けず劣らず繊細である。しがない地方の街中にある中華料理店とはとうてい思えない。中華街の名店にも引けを取らない味だと断言できた。
こんな料理を出す店があったなんてと内心で唸りながら、会計をしようとすると店員が「あれ、久しぶりだな」と声をかける。顔を見れば、調理師学校時代の同級生である。
「驚いたな。すごい偶然だよ」
「本当だな。……どうだ。料理は美味しかったか?」
「とても美味しかった。ところであのラーメンは一体、どうやって作ってるのかな?」
「牛骨を丸一日煮込んだスープさ。もちろんそれだけじゃなく、貝類やキノコの出汁も配合してピーナッツオイルも香味に使っているが。牛骨ラーメンを出す店は少ないし、うちみたいに薬膳料理を意識した味付けをするところなんてさらに少ないから驚いただろう」
「ああ、確かに。……きみが作ったの?」
「そうだと言いたいところだが、仕込みと仕上げをやったというだけで肝心な味付けは店長だよ。僕は修行中だ。いつかはこの味を自分のものにしてさらに改良したいとは思っているけれどね。うちの店長は一流の中華料理店で何年も修業を積んだ後で、中華料理の薬膳を勉強してこの味を作り上げたんだ。すごいだろう」
彼は自分の事のように誇らしく語った。なるほど、豚骨ラーメンやつけ麺などの既存のジャンルで勝負している店とは一線を画しているわけだ。
「でも、もったいないな」
「何が?」
「こんなに美味しいのに、客席が少なくて場所も裏通りだってこと。これだけ美味しくて地元でも人気があるなら、もっと良いところに移って規模を拡大すればさらに儲かるだろうに」
「うちの店主は自分で作った自分の味を守りたいし、その味を楽しみにしてくれるお客さんがいることが大事なんだろうよ」
彼の目線の先には壁に貼られていた画用紙があった。そこには近所の子供が描いたらしいシェフの服を着た店長と思しき人物の絵が飾られていて「いつもおいしい料理をありがとう」と字が添えてある。
わたしは無言で頷いて店を後にした。
あれも一つの料理人の姿だ。同級生がついていく気になるのもわかる。
わたしは「評判のお店を出して、名店と評価されるようになって大儲けしてやる。自分を見限った連中を見返してやる」と功名心に焦っていた。しかしこの数か月で大黒様が教えてくれたのはああいうことなんじゃないか。目の前のお客さんを見て料理をすることが大事だということなんじゃないか。
だけれども、わたしはまだ怖かった。一度すでに失敗して、客商売の大変さは身に染みている。さらにこの旬菜中華の味を知って感動すると同時に、私自身の実力と無意識に比較して憂鬱になってしまったのである。
大黒様のご利益を求めたのも、ありのままの自分の実力で商売に挑んでもし上手くいかなかったらどうしようと拠り所を求めたからだ。
ああ、せめてご利益をくれとは言わない。いっそ彼に「店員になってわたしの店を手伝ってくれ」と願うのはどうだろう。
ルックスはイケメンなのであの店のように美味しいラーメンを出せなくとも「メン食い」の女性客は集まってくれるかもしれない。麺料理だけに。
いやいや、何を考えているんだ。そんな料理以外のことで客を集めてどうする。ここはあの中華そばから、客にとって「長く、そばに」寄り添うような料理店の在り方を学ぶべきところではないか。
だがそうだとすると、本当に大黒様に願うべきことは何なのか。暗い夜空を見上げてわたしは首を傾げた。
❄️ ❄️ ❄️
❄️雪世明良です。よろしくお願いします。
♪一帆です。
いやー。相変わらず周回遅れ。なんでこんなになったのか、原因は、わかってる。
でも、最後まで完走したい。みなさんと一緒にゴールはできないかもしれないけど。
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ラーメンたべたい、うまいのたべたい
熱いのたべたい……
昔覚えた歌を心の中で歌いながら屋台を見て歩く。一番多いのは、やっぱり虹えび炒め。次が、えびシュウマイ。それからえび焼きそば。
―― やっぱり、ラーメンってないのかなぁ……。
ないとなるとますます食べたくなるのがラーメン。
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続きは、『妖術士見習いは愛を学びたい』
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