応援コメント

第七膳『春の訪れと天ぷら』」への応援コメント

  • ♪一帆です。

    もう次のお題がでているというのに、アップしまーす。
    すみません。回答編がかなり長い。(詰め込みすぎΣ(゚д゚lll)ガーン)
    これからまわります。急げ急げ

    *****
    キン(金炉)さん、ギン(銀炉)さんに手伝ってもらって手早く天麩羅の準備を始める。

     虹えびは殻をむいて背ワタをとり、片栗粉、水、塩を加えてよくもみ洗いをする。汚れを取ってから酒で洗えば、臭みがぐっと減る。それを串にさす。えびには、麝香草《タイム》を加えた天ぷら用粉(小麦粉プラス片栗粉)を用意しておく。奇麗に向けた殻は少しだけよけて、残りを鍋に入れた。


    続きは『妖術士見習いは愛を学びたい』https://kakuyomu.jp/works/16816927862494687766

  • 🎐風鈴
    めっちゃ、遅くなりましたw
    今回は、設定的にも”つづく”となります。


    「オーレ―、オーレ―、ヒトヒロさんばー」
    「オーレ―、オーレ―、だだだん、ヒトヒロさんばーー!」
     オレ、関口ヒトヒロ、26歳。
     カースピーカーから流れる軽快なリズムに合わせてリズミカルに歌う。
     車を運転している時の至福の時間だ。

     この車、ツイーターやサブウーファーを特にセパレートしている訳ではなく、ただ純正の標準装備カーオーディオを取り換えただけなのだが、低温が良く響く。
     低温が響くだけで、臨場感あふれたモノになるのだ。

     ふつう、ウーファーと言えば多くの場合は音源に含まれている低音を“増強”して鳴らす場合が多い。対して自分が求めている低音は、音源に入っている低音をそのまま正確に再生させるという事を目指している。オーディオの世界では“原音再生”という言葉があって、音源とは作り手が一番良いと思っている状態で録音をされているのだから、その音源を忠実に再生することを目指すべき、という思想だ。
     それには・・・・・以下略。

     横に居る彼女は、沢口エリカ、26歳。
     幼馴染でモデルの様な整った顔立ちで、モデルの様な体形の美人だ。彼女とは紆余曲折があり、今はオレと同棲中。
     つまりは、オレの彼女だ!
     くーー、彼女とドライブするのは、もう何回目だろうか?
     最初のドライブは、海へのドライブだった。
     夕日が沈む海を見に行った。
     しかし、灰色の冬の海にはサーファーたちが居て、彼等が海へ沈むのを見ることになった。

     その時の彼女の横顔が夕日に照らされて、赤く、それでいて眩しく輝き、それが逆に彼女の背後を暗くさせてもいた。
     オレは、彼女の背後に出来た暗い影が長く伸びているのを不思議な気持ちで見ていたのをよく覚えている。

     と、そんなことはどうでも良いのだ。
     彼女には、オレの歌声が届いているかどうかは知らない。
     なぜなら、彼女はスマホからの音源をコードレスイヤホンで聞いていたから。

     目的地に到着した。
     そこは、とある田舎の小さな漁港。
     魚を水揚げする屋根付きの所に車を乗り入れて、そこでアジ釣りをし、天ぷらにして食べるっていう予定だ。
     ここは、なぜか怒られないのだ。
     もちろん、水揚げをする船が来た時には邪魔をしないようにしなければならないが、朝の9時には、殆どの漁船は既に仕事を終えて、船着き場に停泊しており、関係者もほぼ居ない。
     漁港の朝はめちゃくちゃ早いからね。

     場所を確保したら、漁港のすぐ後ろの山の茂みに入って行く。
     何も、トイレとか、エッチをしに行くわけではなく、山菜を採るのだ。
     こごみ、タラの芽、ノビルが採れた。
     ここは、水道水もあるので、そこで洗ってから水に晒しておく。

     そして、メインのアジのサビキ釣り。
     この漁港ではアジが住み着いており、一年中、子アジが釣れる。
     サビキ釣りとは、錘付きのエサカゴにオキアミを入れて、それを海中に沈ませる時にそのオキアミがカゴから出て行く。そこにアジが群がり、その周囲に配置している釣り針が引っ掛かって釣り上げるという漁法だ。
     幼い子供から大人まで楽しめる釣り方で人気がある。

     で、最初オレの竿にはかからず、彼女の竿にヒットしたので、彼女の釣った魚をオレがはがし、そしてエサを入れてあげた。すると直ぐに彼女は釣り上げ、またオレが魚をはがし・・・・。
     こうして、オレは彼女のサポートをずっとして終了した。
     楽しかった。
     彼女の笑顔を見れるのが楽しかった。

     さて、料理だ。
     もちろん、ここに停めている車横で揚げる。
     先ずは、水を切ってキッチンペーパーで水気をしっかりとった山菜を揚げる。
     ボウルには冷水、マヨネーズを入れてよく混ぜ、次に薄力粉を加えたら菜箸でつつくように混ぜる。粉っぽさが残る程度で止め、後は山菜をくぐらせたら170度の油で揚げる。
     次は、アジ。
     アジと言っても子アジなので、さばき方は、エラ部分を指でつまんで、そのままエラを内臓(ワタ)も一緒に摘まみ上げるように腹の方へ引っ張って取る。
     そして、素揚げあるいは薄力粉を軽くまぶしてから揚げる。

    「私の釣ったアジ、美味しい?」
    「ああ、とっても美味いよ!」
    「私の採った山菜のこごみ、とっても美味しいわね」
    「ああ、このオレの採ったノビルも、甘いね」
    「うん、小さくて可愛い」

     オレ達は、天ぷらを堪能して、後片づけをしてから帰路に就いた。
     その道中のこと。
     オレ達は事故に遭い、オレは軽症だったが、彼女は3日間意識不明になった。

    「エリカ!気がついたんだね、良かった!」
    「ヒロちゃん、わざわざお見舞いに?ありがとう!」
    「何を水くさい事を言ってるの?」
    「うん、でも、久しぶりだし」
    「えっ?ああ、まあ、そうだね、アハハハ」
    「うふふふふ」

    「エリカ、紹介してくれないかな?」
    「ああ、ごめんね、私の幼馴染の関口君。で、この人が」
    「エリカの彼氏の後藤と言います。よろしく!」
     背が高く、イケメン顔で、日サロで焼いた感じの小顔の男だった。

    「えっ?君は、元カレだろ?どういうこと?」
    「君こそ、何を言ってる?エリカはオレの彼女だから」
    「おいおい、冗談だろ、やめてくれよな」
    「ヒロちゃんこそ、冗談やめてよ、うふふふ」
    「エリカ、愛してるよ」(後藤)
    「やだ、恥ずかしい。もちろん、私も」
     後藤は、エリカの髪の毛をそっと撫でると、頬にキスをした。

    「ええっ!!やめろよ!おまえ!」
    「キャッ!怖い!」
    「おい、病室だぞ!静かにしろよな、迷惑だろ!」
    「なぜだ・・なぜだ、エリカ?何があった?」
     怖いモノを見るように、オレを見るエリカ。
     オレは、訳が分からなくなり、ただお見舞いに持ってきた淡いピンクの花束を握りしめて突っ立っていた。

    つづく


    すいませんが、つづきます。

  • 遅くなりました。🍏蒼翠琥珀🍏です。今回は外に食べに行くパターンを展開。

    🍏🍏🍏
     今まさに揚げ上がったばかりの天ぷらを、店主がカウンターの向こう側から手早く皿の上に盛る。そしてすぐにまた簾が下りた。

     天ぷらには旬がある。それはまさしく今だ。

     ひとつ取ってそのまま齧る。すると芳醇な甘みが口の中に広がった。玉ねぎの尖った部分が水とともに抜け、油が糖を抱きかかえている。
     油、そして糖。どうしても美味いと感じてしまうのは、遺伝子に刻み込まれた記憶のせいだ。エネルギー変換効率の高いそれらは、貯蔵という意味でも、代謝という意味でも生き物に都合が良い。
     ゆえに神経節の親玉である脳は騙されている。
     だが解っていても、それに甘んじたい。
     残りの半分は天つゆにつけた。出汁が滲みた衣を前座に、やはり素材それぞれの味わいと食感が面白い。かぼちゃのホックリ感も、レンコンのしゃくっと感も。きのこの旨味は極限まで凝縮されている。

     六科を連れ出すなら、揚げ物に限る。
     中でも、天ぷらと言えばご馳走だ。しかも今味わっているのは、完璧な『揚げたて天ぷら』なのだ。
     それを今日は一緒に食べたいと思った。

     わたしたちは黙々と食べた。
     六科もまた、それぞれを噛み締め、食材の特性を楽しみつつも緻密に分析していることだろう。彼女の場合はわたしとは違って、直観的なものを高めていると言った方が合っているだろうけれど。

     蕎麦をつゆにつけて啜っていると、再び簾が上がって店主が現れた。空になった皿に、揚がったばかりの天ぷらを次々に乗せていく。
     顔までは見えないけれど、その手捌きはまさに職人。今朝方打ったというこの蕎麦も、あの手から生み出されたのだ。そして簾が下りる。

     大根おろしを加えると、褐色味の強かった天つゆが黄金色に転じた。
     さっそく浸けてみる。
     さっきのししとうも良かったが、今度のオクラも最高だ。タケノコにズッキーニ。スライスするように切り込みを入れたナスの天ぷらと、大根おろしのさっぱりとした天つゆは出会うべくして出会った。
     
     天ぷら。しかも『揚げたての天ぷら』。それはどれもが最高においしい。心の底からそう感じることこそ、一番の滋養強壮剤となる。

     まったくもって人生とは不思議なものだ。
     共に食べることを楽しめる日が、再びやってくるなんて思いもしなかった。六科と出会ったあの日から、熾火だった想いははっきりと明るさと熱を取り戻した。
     もっとも昔のような燃え盛る炎ではない。ただし簡単には消えることのない、静かな熱量を持った炎だ。
     改めてわたしは自分の望みを知った。だから今日はちょっと特別。

     と、六科がわたしを見ているのに気付く。
     表情に出さずとも、六科にはわかってしまう。そういった感覚も、本当に久しぶりのことだ。
     「飯を食うために誘ったわけじゃないだろ?」と、そう言いたいのだ。
    🍏🍏🍏


    食に関するシーンはこちらと、終盤に少し。ですが、サブテーマの『別れ』にまつわるシーンのボリュームが大きくなってしまいました。ご容赦を。

    一応リンクを載せておきます。
    https://kakuyomu.jp/works/16816410413893461604/episodes/16817139554815729175

  • 自分の方だけ投稿して、こちらにコメントするの忘れてましたw
    せっきーは今回、下拵え係で、揚げてるのはほぼテンちゃんです☆

     🍻

     ダイニングテーブルの真ん中には、串ホルダー付き多機能卓上フライヤー。スーパーの2階にある家電コーナーで見つけて衝動買いしてしまった。ガスコンロと天ぷら鍋より安全だろう。
     揚げ油は、菜種油と太白胡麻油のハーフ&ハーフで。
     テンの頭には豆絞りのねじり鉢巻。いつものエプロンを巻いてテンの台に登り、気分はすっかり天ぷら屋の大将だ。

    「テン大将、エビをお願いします」
    「はい、エビいっちょう!」

     掛け声も勇ましく、串に刺したエビを2本、教えた通りに衣に潜らせ、そっとフライヤーに挿し入れた。途端に、心地よい油の音が立つ。

    「次はレンコンとアスパラ」
    「はい、レンコンと……アスパラ!」

     これも串に刺してあるので同様に。
     買い物へ行く途中、「櫛」の話をしていて、天ぷらを「串」に刺して揚げることを思いついたのだった。テンは絶対やりたがるだろうと踏んだのだが、案の定、テンはノリノリで天ぷら屋の大将に成り切っている。と言っても、フライヤーに入った串を、隣に座るわたしの網皿に置いてくれるだけなんだけど。
     ふざけて教えた掛け声も気に入ったらしく、なんとも威勢がいい。

    「ヘイ、エビおまち!」
    「おお、美味そうだ。うんうん、上手に揚がってる」

     網の上で油を切ったら、さっくりと軽く揚がった串海老天を大根おろし入りの天つゆへ。同時に口へ運ぶ。

    「ん〜。大将、最高」
    「えへへ。美味しいね」

     ホフホフと顔が綻ぶ。料理を振る舞う喜びを、一緒に食べる幸せを、テンは既に知っているのだ。


    「ヘイ、らっしゃい!」

     玄関のドアから顔を覗かせたキクさんに気づいたのは、テンの方が先だった。

    「おー、テン。いなせな板前さんじゃないか」
    「キクさん、早かったっすね」


     🍻


    「うちらはもう結構食べたんで、好きなの頼んでください」
    「そうかい? じゃあ、キスを頼もうか」
    「はい、キスいっちょう!」
    「テン、それはセッキーがやるよ。ちょっと難しいし」

     キクさんからのオーダー、キスは串から外れやすい。なのでわたしがやろうとしたのだが ───

    「テン、できるよ! タイショーだもん」
    「テンができるのは知ってる。大将だもんな。でも、セッキーも揚げるのやりたいなぁ」

     難しい顔をして考え始めたテンの唇が、だんだん尖り始める。お? ぐずるか?

    「……しょうがないなぁ。あげるの、楽しいもんね。セッキーもやっていいよ」

     渋々、という様子でキスの串を渡してくれた。大将、ありがとうございます。

    「じゃあ、テンはあぶらげのヤツ揚げるか?」
    「うん! なぁに?」
    「食べてのお楽しみ、テン・スペシャルだよ」

     手渡したのは、四角く開いた油揚げに豚バラと大葉、チーズを乗せて巻き、一口大に切ったのを串に刺したもの。

    「テンすぺしゃる、いっちょう!」
     自分の分なのに高らかに宣言し、テンは串をフライヤーに差し入れた。


    「ああ、揚げたての天ぷらは格別だねぇ。あ、次はイカとちくわを磯辺揚げで頼むよ」
    「ヘイ!……いそべあげ、いっちょう!」

     青のり入りの衣を纏わせたイカとちくわをフライヤーへ。テンのヤツ、すっかり板についているな。


     キクさんは揚げたてのキス天を柚子塩で堪能している。うん、天つゆもいいけど柚子塩も美味いよな。
     おあつらえむきに見つけた、柚子・桜・藻・トリュフのフレーバー塩セットを買ってみたのだ。あのスーパーは品揃えが良くて助かる。
     カラッと揚がったテンスペシャルは、下味がついているのでそのままでもよし、ケチャップやソースでもイケる。テンは何で食べるのかと見ていたら、なんと柚子ポン酢をチョイスしたので驚いた。子供のわりに渋いな、テン。

     キクさんが「大将にお任せで」とオーダーしたせいで、テンは片っ端からネタを揚げている。「ヘイ、おまち!」が言いたくて仕方ないのだ。
     だからこちらも、もりもり食べる。ただ、うずら卵の串はテンが独り占めして、私たちには全然くれない。うずら串をもぐもぐしながら、どんどん他の串を揚げる。その度に高らかに、「ヘイ、おまち!」と叫ぶ。

     結構食べたけれど、キクさんは大丈夫だろうか。いくら元気とは言っても前期高齢者だ。

    「そろそろ店じまいにしようか? テン」
    「まだちょっとあるよ?」
    「そうだよ、みんな食っちまおう。こんなに美味いんだからさ」

     ……参りました。わたしはもう、明日の胃もたれが心配です……

     今日は、テンより先にわたしがグロッキー状態みたいだ。


     🍻

    お箸が苦手なテンちゃんのために、串天ぷらにしました。
    続きはこちらでお願いいたします↓
    七膳目回答編『春の訪れと天ぷら』https://kakuyomu.jp/works/16816452220246177194/episodes/16817139554939986693

  • おはようございます、🐹黒須友香です。
    天ぷら回投稿しました!

    🐹

    突然だが、天ぷら屋を開店することにした。

     といってもガチではない。いつものメンバーを前に、自分が料理人となって天ぷらをふるまう夕食会の開催だ。場所はいつもの安アパート。つまり、いつもと変わらない。

    ↓🐹続きはこちら!

    https://kakuyomu.jp/works/16816927862423037971

  • 久里琳📞です。
    あいかわらず近況ノートにはあんまり書いてなくてごめんなさい。でも読んではいます。感想も、感謝しながら読んでいます。

    さて、今回の回答編です。

     📞 📞
    まったくもって、人の世のめぐりあわせは不思議なものよ喃。
    この男、ちかごろすこぶる目がかがやいておる。料理人としての意欲を取り戻したと見えるの。よき出会いが、関わった者みなをよき方向へと導くこともあるのぢゃな。嘉き哉。
    おかげで吾も、まいにちの食事が旨い。

    今宵は天麩羅。その名を聞くだけで顔がゆるんでしまう。いうておくが、旨い飯につられてこの舎《や》に居ついているわけではない。けしてないが、むろん天麩羅はいただく。このくらいの役得はあってもよかろ。
    ・・・・・・・

    📞つづきはコチラ📞
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862534372546

  • 💐涼月💐です。

     今回は春の訪れじゃなくて、夏の訪れにしちゃいました。ごめんなさい!

     💐 💐 💐

     のんびりと歩いたつもりなのに、アッと言う間にスーパーに到着してしまった。 
     楽しい時間というのは、二倍速なのかもしれない。

     まずは入口付近に並べられた野菜から選び始めた。

     続きはこちらへ
       ↓
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862602812315/episodes/16817139554813459915

  • こんにちは。
    🍁空草 うつを です!


    🍁🍁🍁

     ちょっと待っててね。
     そう言って一度脱衣所にはけてから、急いで着替えて弥生ちゃんの待つリビングにやって来た。

    「いらっしゃいませ」

     弥生ちゃんはきょとんとした顔をした。隣の席にはいつものように、アノマロカリスのぬいぐるみがちょこんと座っている。

    「ご予約の弥生様とアノマロカリス様、ですね」

     ホテルの新人研修で、徹底して教わったのがお辞儀。誠意を示すように三十度、腰から折り曲げて数秒してからゆっくりと顔を上げる。
     厨房の中にいてもお客様と対峙する可能性はあるからと、お辞儀だけで二時間も練習させられた。そのかいもあって、今でも体に染み付いている。

    「えっと、理一さん?」

     ホテル時代の制服、捨ててなくて良かった。

    「その格好は……」

    つづく。

    🍁🍁🍁

    続きは連載中の『嗚呼、愛しの絶滅種!』にて……

  • 🐤小烏つむぎです。
    今回も前半から加筆しました。
    よろしくお願いいたします。

    今回も幕末が舞台になります。

    *****

    「ヨシ!天ぷらの用意が出来たぜ。」
    オレの声に川で手を洗っていたアイツらが振り返って子どもん時のみたいな笑顔を見せた。

      奮発して胡麻油も椿油もたんと買ってある。
    ネタも三人で選んだし、あとは衣を合わせるだけだ。今日は特別だからな、特別な秘密の衣でアイツらを驚かせてやる。
    河原で一日いちんち限りの天ぷらの屋台だせ。
    オレはうーんと伸びをして、空を眺めた。
    いいねぇ。申し分ない青空だ。


    「語られぬ物語」

    https://kakuyomu.jp/works/16816927862577875744/episodes/16817139554774714800

  • ☆☆☆愛宕☆☆☆

     天ぷらと聞いて、テンションを上げない奴なんていないだろう。
     しかも今日は、その場で揚げたてを御馳走してくれるって言うんだから、材料の買い出しだってなんだって付き合ってやるさ。具材のことを考えてて「ニヤニヤ」してた関川くんは気持ち悪かったけど、そういったものも全て帳消しだ。さて、まずは何から買うんだ? 関川くんよ――。

     天ぷらにしたい材料を揃い集めて、いざキッチンの前に立つ関川くんは、いつもよりも凛々しく見えた。それぞれの具材をどう向き合い、仕上げてくるのか、揚げたてを出してくるところまでのパフォーマンスも楽しみだ。

    「いいかい。天ぷらっていうのは、本当は蒸し料理なんだ。揚げたてが美味しいって言われてるけど、それも正解といえば正解。え? わからない? あはは、そうだよね。揚げてるんだか蒸してるんだか、どういうことだって思うよね。うん、どっちも正解なんだ」

     何を言っているのか全くわからない。
     天ぷらは揚げるものだろう。高温でジュッと揚げるのが天ぷらじゃないのか? しかし、それにしては火の加減が弱いような気がする。開封したばかりの綺麗な油を使ってくれるのは嬉しいけど、そんな火加減じゃあ具材と衣のバランスが悪そうな仕上がりになるんじゃないか?

     関川くん、遂にカッコつけ過ぎて空回りしだしたか……。

     そんな心配を他所に、シュッと衣を軽くつけたアスパラが投入される。アスパラは好きだけど、もうちょっと火を強く……いや、なんだ? 綺麗だ……使い始めの油や鍋の色ではない、音が綺麗だ。ジューじゃなくてシュー、きめ細かな泡が弾ける時の爽やかな音色が、天ぷら鍋の中で踊っている。

    「天ぷらはね、熱と水分で食材の良さを上手に引き出す蒸し物なんだよ。具材ってさ、それぞれ含まれている水分の量が違うだろ? ちゃんとそれを計算して、具材と呼吸するように火加減や取り出すタイミングを変えていくんだ」

     そう言って、ひょいと菜箸でアスパラを引き上げた関川くんは、得意顔のまま「このくらいでいいかな」と余計な油分を払ってから、ゆっくりと角皿へ置いて俺の前に差し出した。

    「さぁ、まずは食べてごらん。きっと気に入ってくれるはずだよ」

     見た目と香りは十分だ。
     しかし、味は? アスパラの固さはどうなのだ? 
     俺は半信半疑で、それを口に入れた。


     ――シャクンッ!


     おおおぉぉぉ!
     なんだこれは! 心地良い歯触りとフワッとした中身の熱量。衣にまで味がついているようだ。今この瞬間、俺の中で天ぷらアスパラガスの概念がガラリと変わった。

    「う、美味い」
    「だろ? 間を置かずに食べてくれて良かったよ」
    「それは、どういう……?」
    「これでも一応、予熱時間を計算してるんだよね。予熱を使って、衣に包まれた具材をジワジワと蒸していくんだ。本当に美味しい天ぷらっていうのは、そういうものだからさ」
    「そういう……もの……」
    「ようやく喋ってくれたね。美味しいものを食べ続けてくれれば、いつかきっと唸ってくれるようなメニューも出てくるんじゃないかって思ってたんだよ。いやぁ、天ぷらだったかぁ。君も随分と舌が肥えてるじゃないか、声だっておじさんぽいし」
    「ぐっ! ぐぬぬ……」

     しまった! あまりの美味さに声が出てしまった。
     でも、それが関川くんの狙いだったとは……完敗だ。いや、勝った負けたは関係ない。「美味い」の一言だけで、彼には十分なのだろう。

     その後は、蓮根、薩摩芋、人参と、野菜ばかりのレパートリーが続き、ラストに大海老のボスが登場。どれも火加減を変えたりして、蒸す時間もさまざま。素材の旨味が絶妙に引き出されている。初めて白飯を「要らない」と感じた天ぷらだ。

    「ごちそうさまでした」

     俺は両手を合わせ、初めて声を出し関川くんを労った。もう、子供の体になったことなんてどうでもいい。美味いものにはちゃんと声を上げて、作り手に感謝することが、真のグルメ道というものだろう――。

  •  舞茸と輪切りにしたレンコン、タラの芽にナスと薄切りにしたカボチャ。
     頭とワタを取った海老、そして一口サイズにした鶏肉。開きにしたキス。
    わたしたちの前には色とりどりの食材が並んでいる。
    「……これを全て、天ぷらに?」
     袴のような太めのズボンを穿いて、リネンのゆったりしたショールを纏った青年は感銘を受けたように声を漏らす。気品のある顔立ちなので、格好も相まって中東の王族を思わせる雰囲気だが彼の正体は大黒様の化身だ。

    「ええ。贅沢でしょう」
     かつて料理店を経営したが失敗したわたしは、再建するために彼のご利益目当てに家に連れ込んでは料理をご馳走するということをこの数週間で何度か繰り返していた。
     結局その成果は得られていないが、しかし彼のために料理を作り続けるうちにわたしは、料理人になる夢を無くしかけていた自信が少しずつ戻ってくるのを感じていた。
     先日は彼が口に出してわたしの料理の腕を認めてくれたのだ。だから今日はご利益目当てという下心を抜きにして料理を作ることにしたのだった。
     もちろんわたしの美味しい料理を口にした大黒様が感激して結果としてその力で金運を授けてくれるようであれば、やぶさかではないが。いやむしろそうなってほしいとは思っているが。

     ともあれ、今日は最高の天ぷらを作ることに集中しよう。
     卵と薄力粉と水を混ぜた衣は準備してある。さらによりサクサクさせるために片栗粉もブレンドしてあるのだ。わたしは鍋に油を入れて、中火で一七〇度くらいまで熱する。

    「待っていてくださいね」
     食卓に座っている彼のためにわたしは天ぷらを順に揚げていく。
     まず第一陣はカボチャとレンコン、それにタラの芽だ。
     衣をつけて三分ほど油の中で火を通す。ジュワジュワと音を立てて、きつね色になったところで油をきって皿にのせる。
    「さあ、どうぞ」
     味付けの方はだし醤油と塩をそれぞれ準備した。
     彼が待ちきれないというように箸を伸ばして、しょうゆだれをつけて口に運ぶ。シャリシャリと揚げたてを頬張る音を立ててから、目を細めて「美味しいです」と呟いた。
    「……それは良かった」
     わたしも塩をつけて食べてみる。サクっとした歯ごたえと野菜の味がたまらない。噛みしめればシンプルな塩味が素材の味わいを引き立てて、白飯が食べたくなる。

     しかし今日は純粋に彼をおもてなすための場である。わたしは立ち上がって第二陣の準備をする。今度はナスと舞茸、海老に衣をつけてそっと鍋に入れる。
     やがて色鮮やかな天ぷらが油の中に浮き上がってくる。油きりの上にのせればカラリとした黄金色の衣に包まれた海の幸、山の幸が食欲をそそる香りを漂わせた。
    「食べましょう」
    「はい」と彼も嬉しそうに頷いて、一緒に食べ始める。ナスは良く油が染みていてサクリとした衣を頬張ると、口の中でやわらかな味わいが広がる。舞茸はパリッとした食感にしょうゆだれとキノコの味わいがマッチしてたまらない。そして天ぷらの代表と言えば海老である。御飯の上にのせて天丼にして食べるのもまた美味しいのだ。

     二人で二皿目を堪能したところで、わたしは最後の調理に取り掛かる。油をもう一度温めて衣をつけたキスと鶏肉をいれる。ほどなくしてキスの天ぷらととり天の出来上がりだ。

     衣に包まれた魚と鶏肉の味わいを続けて楽しんでいると「ところで話さなくてはならないことがあります」と彼が唐突に切り出した。

    「何ですか、急に」
    「わたしが祀られていた社は、実はある個人事業者の私有地にあったものだったのですが」
    「ああ。外資系の企業に土地ごと買われて、つぶされたということでしたね」

     それで居場所を無くして彼はさまよっていたはずだ。
    「その、元の持ち主の方がご神体を作り直して、別の場所に再建してくださったのですよ。だからもう放浪する必要が無くなりそうなのです」
    「えっ。……そうでしたか」
     それではもう会えないということなのか。だが彼にとっては喜ばしいことなのだ。私も友人としてそれを祝うべきなのかもしれない。

     だが、少し気になることがある。
    「でもそもそもあなたのような本物の福の神を祀っていたなら、前の土地の持ち主はさぞ商売繁盛していたんじゃないですか? どうして立ち退くようなことになったんです?」
    「それが……お店が売れすぎたために、目をつけられて乗っ取られてしまったようで。わたしの力も常にいい結果をもたらすとは限らないようです」
     彼は悲しそうに目を伏せた。

     なるほど、大きすぎる資産は良い結果をもたらすとは限らないらしい。
    わたし自身にしても、もし彼が魔法のような力で「えい」と金を出してくれたらありがたいとは思わず使い方をおろそかにして、また店をつぶしてしまったかもしれない。「どうせ神様の力でもらったものだ」「失敗してもまたお金を出してもらえる」などと調子に乗って。
     そこでわたしははっとなる。

    「も、もしや、あなたは不相応な財産が不幸をもたらすと思って、それでわざと今までアピールしてきたわたしの願いを叶えてこなかったのですか?」
    「えっ!? ……ええ、まあそうなんですよ。そのとおり。あなたのためを思って、神なのに心を鬼にしていたんです」
    ……今「えっ!?」って言ったな。

    「前の土地の主の方は地元の名産品を販売していた方でした。しかし『店をもっと売れるようにしてください』とお願いされたので力を使ったら、売れすぎて評判になったために外資企業に目をつけられて『店ごと買収されて』しまいまして」
    「なるほど文字通り『店が売れた』的な」
    「はい。勢い余ったと言いますか。わたしもそれから力を使うときには慎重になったのです」

     本当かー? 本当にそうかー? お前の天然ぶりからして、単に店を売れるようにしてくれという願いを聞き違えたのと違うか?
    「しかしあなたの供えてくださった料理のおかげで神格も戻りました。おかげでこの数週間、生きながらえることができて本当に感謝しています。もう何度もここに来ることはできないかもしれません。……お礼になにか何でも願いを一つ叶えられればと思いますので。考えておいてください」
    「え。でも」
    「それでは、また」
     彼は静かに背を向けて去っていった。

     ずるい。あんなことを言われたら、わたしを儲けさせてくれなんて言いづらいではないか。

     そしてご利益目当てだったはずなのに、彼に会えなくなるとわかるとなんだか寂しくなる自分がいた。大体、彼も不人情だ。神社を建て直してもらったから、もう来られないなんて。

    「……天ぷらよりもテンプル(神社)の方がよかったってことか」

     いやいや、いけない。距離をもって接するべき相手に、使った後の油みたいにベタベタと粘着するのはわたしらしくない。出会いもあれば別れもある。ここは揚げ物のようにカラッとした関係で行くべきだ。
     鍋の油を片付けながらわたしは気持ちを振り払うように首を振ったのだった。

    ❄️ ❄️ ❄️

    ❄️雪世明良です。よろしくお願いします。

  • 🍷出っぱなしです。

    お疲れ様です
    終盤に入りましたね。

    🍷🍷🍷


     たとえ文明が滅びようとも世界は回り、自然は、花々は咲き誇る。

     辛く寒い冬の終わりとともにやって来る春という穏やかな暖かさには心踊る。



     わたしはタマと手をつなぎ、まるで親子のように買い物帰りにのんびりと散歩をしている。



     文明が崩壊したこの世界は、秩序などなく暴力による恐怖で支配されているが、変態の館の城下町であるこの界隈は比較的安全だ。

     それだけカノーさんの威光が大きいのだろう。

     散歩を楽しむ余裕がある。



     今回はわたしの大好きな天ぷらということもあって、ついつい買い込みすぎてしまった。

     二人で食べるには大変な量だ。

     ま、いつも通りカノーさんにお裾分けすればいいか。



     などど思っていると、後ろに手を引っ張られたかのように転びそうになった。

     タマが突然立ち止まって路地裏を覗いている。

    ・・・

     天ぷらという料理はネタに衣をつけて揚げるだけ、実にシンプルだが奥は深い。

     カラッとサクサクとした食感を出すのが簡単ではない。

     しかし、ポイントを押さえればある程度は上手くできる。



     まずは、脱水シートのようなもので、天ぷらの大敵、ネタの水分を取ってやる。

     タマも料理が楽しくなったのか、手伝ってくれている。



     次に衣を作る。

     最初は卵黃と水を混ぜ合わせてから、粉を混ぜ合わせる。

     屋台の店主も興味深そうに眺めている。



     そして、衣にビールを混ぜる。

     ビールに含まれる炭酸ガスが衣の中で発生し、揚げた時に熱を持つことで、中からも火が通るのだ。

     イギリスのフィッシュアンドチップスの作り方だが、大人の味なコクが出る。

     子供用には、あっさりとした炭酸水でも良いだろう。



     揚げる前にネタに打ち粉をしてあげることも忘れてはならない。

     衣が剥がれにくくなる効果があるのだ。



     そうして、エビ、キス、ハルシメジ、アスパラ、菜の花など春の食材を次々と揚げていく。

     道行く人々は油の弾ける心地よい音に足を止める。



     揚げた天ぷらも溜まったことだし、頃合いだな。



    「みんな、今日は無礼講だ! 変態の館からだ! 好きなだけ飲み食いしろ!」

    🍷🍷🍷

    残りはこちらです。

    『飯テロリスト関川様、ネコ耳を拾う』

    https://kakuyomu.jp/works/16816927862486888667/episodes/16817139554828859550