応援コメント

第五膳『おでかけとちらし寿司』」への応援コメント


  • 編集済

    ♪一帆です。

    やっとこさ、ちらし寿司の回答を書きました。
    うわーん。おいつかなーい。ゲームしている場合ではない。


    ******
     天蓬さんと並んで歩きながら、『ちらし寿司』リサーチを始める。

    「天蓬さんはお肉とお魚、どっちが好き?」
    「ん? なんだ、急に?」
    「ちらし寿司の具材を何にしようかなと思って……」

     天蓬さんが後ろを歩いていた金炉さん達を振り返って、三人で肩をすくめている。

    「もしかして、天蓬さん、食べたことない?」
    「ない。だから楽しみだ」

     自慢げに胸を張って、天蓬さんが答え、金炉さん達がうんうんと頷いている。

    ―― 仕方ない。じゃあ、見栄えが良くて、天蓬さんの好きなものを使って、ちらし寿司にしてしまおう!! 


    ******
     続きは、『妖術士見習いは愛を学びたい』 です。 
      https://kakuyomu.jp/works/16816927862494687766

     よろしくお願いします。


     

  • 💎玖珂李奈

    あああーー!!!
    コメント欄にコメントしていませんでしたー!
    ごめんなさいいー!

    『午前0時の食卓』
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862450734712

    主人公:烈(れつ)
    ごはんを食べる少女:紅子(べにこ)
    主人公の元カノ:美奈(みな)


    🍣一部抜粋🍣

     酢飯や具材が完成したので、盛り付けに入る。

     詳しい話は後で聞くことにするが、どうもこれから来るであろうおめでたいことを前もって祝うつもりらしい。それならばとセルクル(底のないケーキ型)を取り出した。

    「詳しいことは後でがっつり聞くけどさ、お祝いだ、というなら、ちょっと特別なちらし寿司にしようか」

     きょとんとした表情の紅子に微笑みかける。

     お祝いといえばケーキだ。セルクルを置いて中に酢飯を薄く敷き、その上に海苔や椎茸、人参などを敷く。さらに残りの酢飯を乗せ、崩れないように整える。

     たっぷりの錦糸卵をまんべんなくかけ、花型の酢蓮を置く。さらに薄切りのマグロやサーモンをくるりと巻いて花に見立てる。最後にきぬさやを散らすと、テーブルの上に一足早い春が舞い降りた。


  • 編集済

    🐹黒須友香です。
    ちらし寿司回アップしました!

    🐹

    突然だが、難問である。

    「ちらし寿司……」

     金髪ヤンキー青年・北橋達月の顔は笑っているが、言葉はそこで止まったままだ。

    ↓🐹続きはこちら!
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862423037971

  • 🍁空草 うつを です!
     遅くなってしまいましたがちらし寿司回になります(^^)

    🍁🍁🍁

     ちらし寿司は古くは鎌倉時代に起源を持つらしい。八百年以上前から日本人の食卓にあったと思うと感慨深く感じる。
     ま、五億年前の生き物に思いを馳せる弥生ちゃんには敵わないけど。

     今回作るのは、バラちらし寿司。
     この間餃子作りを手伝ったことで味をしめたのだろう。弥生ちゃんも苺のエプロンをして手伝おうと張り切っている。

    「弥生ちゃんは、卵を割ってくれるかな」
    「お任せください!」

     卵の殻を入れないよう、おっかなびっくり割っていく。ぎこちない手つきの弥生ちゃんを横目に、俺は買ってきた材料を切っていく。
     刺身用のマグロとサーモンにエビ、更にアボカドときゅうりも全て一センチ角に切る。同じ大きさに切り揃えるのがポイントだ。揃えた方が見た目も綺麗に仕上がる。
     弥生ちゃんが全部の卵をボウルに入れ終わったところで、次の指示を出した。

    「そしたら、その卵に砂糖と塩を入れて混ぜて……卵焼き用のフライパンに半分だけ入れてね」
    「混ぜて、半分だけ……あ」

     弥生ちゃんは不器用なのだろう。半分だけと言いつつ、フライパンに八割ほどの卵液が入ってしまった。弥生ちゃんは涙目になっている。

    「大丈夫、大丈夫。俺に任せて」

     半熟になるまで待ち、いつもより少し分厚くなった生地を意地でも綺麗に折り畳もうと躍起になった。少しでも良いところ見せたいだろ、元料理人の名にかけて。
     残りの卵液を流し入れて巻き込めば、なんとかまとまってくれた。

    「理一さんさすがです!」

     パチパチと拍手してくれると気分が良い。
     その卵焼きも一センチ角に切る間、弥生ちゃんには酢飯を準備してもらうことにした。

     今度は失敗しないように、と意気揚々と炊飯器から熱々のご飯を大きなボウルに入れていく。そこに適量の酢を入れていくのだが、酢の匂いが一気にツンと鼻に抜けて行ったのだろう。ケホケホと咳き込んでいた。

    「大丈夫?」
    「へっ、平気ですっ」

     混ぜながら、うちわで一生懸命パタパタ仰いでいる。そこに白胡麻を振りかけて一緒に混ぜ合わせれば、酢の香りが食欲をそそる酢飯の出来上がり。

    「あとは酢飯の上に具材をのせれば、バラちらし寿司は完成だよ」

     赤いマグロにサーモンの色、ほんのりピンク色のエビ、黄緑色のアボカドと緑のキュウリ、そこに黄色の卵が混じれば彩り鮮やかなバラ散らしが姿を表す。

    「まさかミロクンミンギアとクックソニアの子孫がこうして美味しい料理に変貌するなんて……」

    ……続く
    🍁🍁🍁

    続きは連載中の『嗚呼、愛しの絶滅種!』にて……。

  • 🍻遅くなりましたが、参加します!
    しかも、食べてない。飯テロなのに、食べてない。ちょっとつまみ食いしただけ……いいのか?! 飯テロの概念が今、試されている。


    🍻
    「よし。テン、あおげ!」
    「うん!」

     物入れから引っ張り出してきた団扇で、テンはパタパタと酢飯を扇ぎ始めた。
     寿司桶なんて気の利いたものは無いので、フライパンで代用。酢と砂糖を少なめ、塩をちょっぴり多めに。酢飯を素早く切り混ぜる。
     あんまり風が当たっていないけれど、椅子に登り団扇を両手で持って懸命に仰ぐテンが可愛らしいので許す。

     テンからは他のリクエストが無かったので、手巻き寿司用の海鮮盛り合わせ的なものを買ってみた。その他にも、諸々。

    「扇ぐのやめ!」
    「やめー!」
    「酢飯、完成!」
    「かんせい!」

     昨夜の餃子作りが楽しかったらしく、テンは率先してお手伝いしたがった。エプロン姿がなかなか様になっている。

    「テン、これ覚えてるか?」

     ガラスのタッパーの中を覗き込み、テンはハッと息を呑んだ。

    「お茶漬けのやつだ! 甘くてしょっぱくて美味しいやつ!」
    「そう。よく覚えてたなぁ」
    「テン、これ好きー」

     椎茸の甘辛煮を、薄く削ぎ切りに。油抜きした油揚げと、ラーメン具材セットのメンマも細く切って、小さなボウルに投入。

    「これをよーく混ぜてくれる? ゆっくりでいいからね」
    「うん! できる!」

     箸が苦手なテンのために、フォークを手渡す。テンはただならぬ集中力を発揮して、具材をゆっくり丁寧に混ぜ始めた。やっぱり舌先がちょろっとはみ出ている。

     その間にわたしは、小さめのフライパンで胡麻を炒り、ほんのり甘い薄焼き卵を作成。水溶き片栗粉を少量入れると破れにくい。フライパンにお湯を沸かす間に、レンコンを花形に細工して……
     お湯に塩と絹さやを放り込む。色よく茹で上がったら引き上げ、お湯に酢を加えて薄切りにしたレンコンをさっと煮て、甘酢だしに漬けておく。

    「テン、ご苦労。上出来だぞ」
    「ジョーでき!」
    「次は、酢飯を半分、このお皿によそってみよう。平らに、まーるく入れるんだよ」
    「はいっ!」

     食器棚の奥から引っ張り出した藍色青海波の八角皿に、テンが慎重に酢飯をよそう。昨夜の餃子といい、こういう作業は得意だろうから任せてしまおう。わたしは野菜と魚の準備だ。野菜を洗い、大葉を刻み、ラーメン具材セットのチャーシューをほぐし、海苔を炙る。刺身類も一口大に切り分ける。

    「セッキー、できた!」
    「よし、では海苔を手でちぎってかけてくれ。こんなふうに」

     皿の上で海苔をビリビリに破くと、テンは待ちきれないみたいに手を伸ばした。
     うんうん。子供はこういうの好きだよな。そうだ、その調子。ちぎれちぎれ!

     皿の酢飯が真っ黒に覆われたら、刻んだ大葉を散らす。その上に、刺身を彩りよく並べていく。イカにマグロ、鯛、蒸し海老、タコ、ホタテ、サーモン、厚焼き卵。イクラは多めに買っておいた。スーパーで一瞬見惚れたのを、わたしは見逃さなかったのだ。

     薄くスライスしたきゅうりで器を作り、イクラを少し載せた。

    「ほら、テン。イクラだよ。あーん」
    「あ゛〜 ん」

     目をまん丸にしてモグモグした後、顔がとろけた。

    「ふぅ〜ん、おいし〜い! きれいでピカピカで、プチってして美味しいねえ」

     同じものをいくつか作って盛り付け、カイワレを散らしたら、海鮮ちらしの出来上がり。藍色の皿に、色とりどりの刺身が映える。海の宝石箱や〜!

     あと半分の酢飯には、テンが混ぜてくれた材料とチャーシュー、炒りごまをさっと混ぜ込む。余ったメンマは、後で酒のツマミにしよう。
     粉引きの花形皿によそい、ふわふわの錦糸卵で覆う。桜でんぶ、絹さや、紅しょうが、そしてこちらにもイクラきゅうりで彩りよく。最後に花レンコンを飾って出来上がり。温かな白の上に、華やかな春の色彩。
     おそらく、志乃ちゃんが好きだという「お雛様のちらし寿司」はこっちのタイプだろう。
     でも、どうせなら両方食べさせてやりたかった。海鮮も美味いもんな。お祝いの料理だから、皿もそれらしいのを使ってみた。

    「きれいねぇ。お花畑みたいだねぇ」

     テンは並んだ皿をうっとりと見つめ、何度も唾を飲み込んでいる。
     お腹がグーと鳴る音が『いただきます』の代わり………だけれども、ここでメールの着信音。きっとコマさんだ。『詳細は後でメールする』と言っていたから。

     「テンには見せるな」というタイトルを見て、わたしはスマホを閉じた。

     内容を確認するのは、楽しく食事を終えてからの方が良さそうだ。

    🍻
    全文はこちらからお願いします↓
    第五膳回答『おでかけとちらし寿司」
    https://kakuyomu.jp/works/16816452220246177194/episodes/16817139554466598526
    ではこれより、皆様の作品にお邪魔いたしま〜す!

  • こんにちは。
    皆さまに勿体ないほどのコメントをいただいて、ありがとうございます。
    私も、個別の作品を立てられているところへは伺ってちょこっと感想を書いているのですが、コメント欄のみの方の作品には感想をまだお伝えできていません。ノートの方に皆さん書かれているのがコメント力高すぎて、そこへ割りこむには勇気が、、、いずれきっと書きますので、しばらく猶予をくださいませ。。

    さて、今回の回答編です。(さわりだけ)

    📞 📞 📞
    うっすら予感はあった。この舎に長居することになるぢゃろうと。
    けして、三度の飯につられたわけではないぞ。吾をいやしき妖と、かろんじ見くびるのであればおおきな間違いぢゃ。人間なんぞに解せよというのは端から無理かも知れぬがの。

    それにつけても、朝から手を抜かずきちんと旨い料理を献じてくるとは感心よ。すまし汁のたてる湯気にも清きこころばえが匂いたつようぢゃ。
    晩にはなにが食えるぢゃろうかとつい想像をふくらませてしもうたとて、いたしかたあるまい?
    しかしまさか、何がよいかと問われるとは思わなんだぞ。
    さらには一緒に買い出しへ行こうなんぞと。
    ・・・・・・・

    📞つづきはコチラ📞
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862534372546

  • 💐涼月💐です

     更新遅くなってしまいましたが、なんとか投稿できました。
     よろしくお願いいたします。

    💐 💐 💐

    「はい! 行きましょう!」
     高速で準備万端整えた色音。もう玄関で靴を履き出している。
     いや、ちょっと待て。俺の方がまだ準備できていないぞ。

     ふと、空身で立っている色音を見て思った。

     年頃の女の子だったら、可愛い鞄の一つや二つ持ちたいだろうな。

     続きは ↓ です。
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862602812315/episodes/16816927863332226895

  • 🎐風鈴

    なんとか書きました。
    ダジャレは無いです、念のため。
    ジャンルは、もちろん、ラブコメです!


    「えっと、どうかな、この服?」
    「うん?良い感じじゃないかな?」
    「あっ!これこれこれ!こんなの着てみたかったの!」
     再び試着室へ。
     僕達は二人でショッピングに来ていた。

    「もういいか~い?」
    「まっだだよ~!」
     暫くして。
    「もういいっか~い?」
    「うん、もう一回着直すから、待ってて」
     暫くして。
    「ジャジャジャジャーン!!呼ばれないでも飛び出て来たよ~!!」
    「おっ!おう!」
    「ちょっと、ムネが締め付けられてキツかったんで、時間かかっちゃったね」
    「お、おう!ぴったりだよ」
    「ヤダ――!ムネ、見たでしょ?ねえ、今、ムネ見たでしょ?」
    「ちげーよ!いや、その、何を着ても似合うなってね。皆まで言わせるなよ!」
    「ヤダ――!大好きだって、大きな声で言わないで――!」

     こういう事を繰り返しながら、二人はショッピングを楽しんだ。
     おわり

     といきたかったのだが、二人には目的があった。
     夜ご飯の買い出しという崇高な目的が!

    「ちらし寿司の具だけど、好きなのをカゴに入れてくれ」
    「えっ、本マグロとか高いでしょ?それから、ヒレステーキも高いよね?大丈夫なの?」
    「だ、大丈夫だ!って!」

     ウソである!
     同棲するからと、昨日から彼女が服を買ったり、雑貨を買ったり、日用品を買ったり、電化製品を買ったりして、既に彼のカード払いの金額は、ひと月分の給料を越えていたのである。

    「でも、ヒレステーキとかは、ねーだろ!ちらし寿司だからな!」
    「うん、そうね、だったら本マグロも止めとくよ」
     彼女は、しおらしく、ごめんなさいって顔をした。

     ウソである!
     彼女は、ワザと止めとくとか言ったのである。
     もちろん、『本マグロが好きなんだろ、いいよ、カゴに入れな!』という彼の言葉を期待して言ったのだ。

    「そ、そうか?」

     彼女は、それでも本マグロを手に取り、ずっと見続けていた。

    「そこのねえちゃん!可哀想にな~、おい、あんちゃん、買ってやりなよ!彼女さん、目に涙を浮かべてんで~~!」
     ウソである!
     このおじさん、ちょっと言ってみたかっただけである。

    「大きなお世話だぜ、おっさん!クソッ!」
    「うん?なんか言ったか、あんちゃん?」
     ――――あぶねー、心の声が漏れてたぜ!

    「特売200グラム1500円か?・・・・」
    「ほんまか?高いな!でも本マグロって、こんなスーパーで売ってるのか?」
    「うん?なんか言ったか、あんちゃん?」
     ――――うっ、また心の声が!

    「あれっ?これは、ビントロじゃねーのか?」
    「えっ、わかるんですか?」
    「ああ、こう見えてもオレは、寿司職人だからな!」
    「へーー!スゴイ人なんですね~、おじさん!で、ビントロってな~に?」

    「ビンチョウマグロのトロだ。まあ、そのくらいはサシと色を見たらわかるんだよ」

     ウソである!
     よーく見ると、『(大間でなくホンマの)マグロ』と、マグロの前に小さなカッコで書いてあるので本マグロだとは書いてない。
     というよりも、金額的に本マグロはビントロの6倍以上だ。なので、本マグロではないと簡単に推測出来た筈だ。

     そうして、そのおじさんと仲良くなり、そのおじさんにちらし寿司を作ってもらった。
     おじさんのちらし寿司には、焼海苔、錦糸卵、酢蓮根、マグロ(ビンチョウ)、真鯛、サーモン、イクラ、スナップエンドウ、煎りゴマ、シイタケ、山椒の葉という豪華なモノだった。

    「とっても美味しかったです、お・じ・さ・ん!」
    「ホントに、最高でした!ごちそうさまです!」
    「じゃあ、またね、お・じ・さ・ん!」

    「ちょっと待ってくれ、今、お勘定代を計算してっからよー!」
    「ええっ!ご馳走してくれたんじゃないんですか?!」
     彼の顔が険しくなり、彼女は俯いた。

    「あはははは!バカだなぁ~~!タダに決まってるだろう!これからは、ウチを贔屓にしてくれればいいんだよ!あはははは!」
     ウソである!
    「えへへへへ、ありがとう、お・じ・さ・ん!」
    「また来るから!次来るときは、友達をたくさん誘ってくるから、待っててください!」
     ウソである!
    「ああ、期待しないで待ってるからよ~」
     ウソである!
    「おっちゃん、愛してる~~!」
     ウソである!
    「おっちゃん、人生で最高に美味しかったよ!!じゃあね~~」
     ホントである!

    おしまい!


    ラブコメって、こんな感じですよね!(#^.^#)

  • 春川晴人🌞です。よろしくお願いします。

    🌞 🌞 🌞

    知らない番号からスマホに電話がかかってきた。

    「もしもし?」

    とりあえず出た。彼女かもしれないから。ゴンがおれの脇腹に頭を擦り寄せてくる。

    『もっしー? あたし!』

    アスカだっ!!!

    「おまっ、どこ行って!?」
    『今、きみんちの玄関前なんだけど、開けてくれないかな?』

    はっ? もつれた頭で玄関を開けると、大荷物の彼女が笑っていた。

    「この前、賞味期限切れそうだからカニ缶使ったじゃない? そうしたら本物のカニ食べたくなっちゃって。ちょっと採ってきた」
    「は? じゃあ、スマホは?」
    「あれは、支払い用紙が来てたの忘れてて。てへっ」

    よかった。

    「もしかして、心配してくれてたの?」
    「ったりめぇだ。よし、買い出し行くぞ」
    「なになに?」
    「お祝いにちらし寿司作ってやる。そのカニも使ってな」
    「わーおっ! ゴンには悪いけど、お留守番ね」

    そうして商店街をてくてく歩く。もう、あんな思いしたくない。食材を吟味しながら、おれはアスカと手を繋いだ。一瞬のためらいの後、繋ぎ返される強い力にようやく安堵する。

    さてさて。ちらし寿司と言えば新鮮な卵。今日は高いやつ。彼女がいなくなってから、地道に克服したにんじん、ピーマン、レンコン、サヤエンドウ、それからエビな。シンプルだけど、たくさんのカニを使った豪華なちらし寿司が作れるぜぃ。

    帰ってきてまず、彼女がカニをゆでる。その横でおれは味付けしてない錦糸卵を作る。ゴンのドライフードの上に、しっかり火の通った錦糸卵をパラパラとちらし、その上にカニの足を少しだけちらした。

    「よしっ」

    おれのかけ声でゴンの特性晩御飯をがっついている。

    ご飯が炊けるまでの間に、具材の下処理をしながらカニをつまみ食い。

    「なぁ、さっきカニ採ってきたって言ってなかった?」
    「言ったよ。漁船に乗せてもらったもん。お手伝いしたもん」

    食に対する彼女の気持ちを見習わなくては。母親が出て行ったくらいで食べ物を嫌いになるなんて、馬鹿馬鹿しい。うん、今はそう思えるから。

    炊けたご飯を切るようにお酢をまぶす。アスカが隣でうちわを仰ぐ。

    「なぁ、おれたち、結婚しない? ってか、結婚を前提におつきあいしてください」
    「順番が逆だよぉ」

    そう言った彼女は涙目で酢飯を口に運んだ。

    「おっけ。お酢はこのくらいと、あと、結婚を前提におつきあいしてもいいかな?」

    やたっ!!

    そうして、この日食べたちらし寿司の味を、おれたちはいつまでも覚えていることだろう。

    つづく、かな?

  • 🐤小烏つむぎです🐤

    今回のモデルは、江戸末期「四大道場」に数えられた伊庭家「錬武館」の兄妹です。
    今回も前半に加筆していますので、前半からお読みいただけると嬉しいです。

    🐤後半チラ見せ

     兄様《あにさま》との外出も久方ぶりです。
    今日のお召し物は紺地に薄青の立涌柄の単《ひとえ》に袴姿。月代も青々と剃りあげて涼しげなお姿です。いつもはサッサと大股で歩かれるのに、今日は私《わたくし》に合わせて歩幅も小さくゆっくりと歩いてくださっています。
    そういえば兄様が元服なさる前から、連れだって歩くことはもうなかったと思い出しました。それが今日は、兄様の後ろをついて歩けるのです。すっかり逞しくなられた後ろ姿に、あぁ男の方だと改めて思いました。


    🐤前半RLがこちらです。

    https://kakuyomu.jp/my/works/16816927862577875744/episodes/16816927863275251988


  • 編集済

    「ほほう。ここでいつも買い物をしているんですか」
    「はい、まあ。ここが場所も値段も手ごろなので」

     隣を歩く青年は何故か感心したように呟いた。わたしたちは近隣にある大型スーパーマーケットにきたところだ。
     この一見すると上品な雰囲気の若者は実は大黒様の化身である。数か月前にあるきっかけで彼と出会ったわたしはなんとかそのご利益を得ようと居ついてもらうように食事をご馳走してはさりげなく願いを叶えてもらおうと企んでいたもののその目論見は今のところ失敗している。

     ただし最近は私から声をかけてもいないのについてきたり、家の前で待っていて上がり込んで一日、二日滞在しては去っていくという、さながら「お腹がすいたときだけ餌をもらいにくる野良猫」のような有様だ。
     今日の彼は渋めの黒の着流しを纏っていた。さらに腰には紺色の帯を締めて、足には足袋と雪駄を履いている。和風の気分ということなのだろうか。ちらし寿司なんて和食のメニューを注文してきたのもそういえば初めてだ。

     彼のリクエストに合わせて食材を買いに来たものの、わたしは作り慣れない苦手なメニューに少々悩んでいた。

    「どうかしました?」
     福の神の化身である青年はカートに買い物かごを乗せながら眉をしかめているわたしを不審そうに見る。

    「いや、その。……実はちらし寿司って苦手なんですよ。子供の頃にひな祭りで親に作ってもらったんですが。あの『酢飯』を松茸御飯やタケノコご飯と同じ感覚で食べるのが慣れなくて。美味しく食べられなかったんです」

     結局残してしまい、母親に嫌な顔をされた思い出だ。海老やレンコン、まめといった具材も子供の時分は美味しく思えなかったというのもある。大人になった今では普通に食べられるが進んで食べようと思うほど好きではないのだった。

    「そういうことなら、自分でも食べたいと思うように目先を変えてみたらどうでしょう。」
    「変えると言っても、具材を変えたら『ちらし寿司』ではなくなってしまうんじゃ……」

     いや、待てよ。既に存在するものに新しい要素を加えるのは新しいメニューを作るときの基本ではないか。

     そもそも「ちらし寿司」とは何か?

     元々は中世以前にお祝いの時に食べられていた「なれずし」が江戸時代に匂いが少ない「ばら寿司」に変わり、それが見た目が華やかな「ちらし寿司」になったはずだ。

     それでは海老にレンコン、まめといった具材は必須なのか?

     確か「海老」は背中が丸くなるまで生きる、レンコンは「先を見通す」、まめは「健康でまめに働ける」という縁起を担いだものだ。
     つまり、めでたくて何かを御飯の上に散らしていれば「ちらし寿司」と言ってもいいのではないだろうか。私は考え込みながらも参考になる意見が聞きたくて彼に尋ねる。

    「何か好きな食べ物はありますか?」
    「え? 急に言われても。……おや、あれは何ですか」

     彼の目線の先には黒くてつやつやした丸い果実が積まれていた。


     家に戻ってきたわたしはキッチンに立って調理を始める。彼はいつものように食卓の席に座って待っていた。

    「それじゃあ、初めて作るのでどんなものが出来上がっても文句は言わないでくださいね」
    「ただで食べさせてもらって文句は言いませんとも」

     カレーの時に牛肉に文句言っていたじゃねえか。そもそも既にただ食いのつもりなのか。
     心の中で呟きながらもわたしは料理に取り掛かる。


     
     まず卵を白身と黄身にわけて二色の炒り卵を作る。

     そして豚肉の薄切りを玉ねぎ少量とソテーして調味料で味付けし、食べやすいようにある程度細かく包丁で切る。さらにアボカドの皮をむいてこちらは小さく角切りにする。
     
     そして昆布だしを少量入れた御飯に刻んだ豚肉を混ぜて、アボカドと卵を上から散らせば出来上がりである。

     豚はたくさん子供を産む生き物ということで西洋では子孫繁栄の象徴だ。
     二色の卵は「錦」、高級な織物にちなんでおめでたいものとされている。
     アボカドは本人の希望だから取り入れたものだが、水分と土地の栄養分を大量に消費して生育し、しかも栄養価も高いということで大地の実りの象徴として縁起物扱いしてもいいのではないだろうか。

    「できました。どうぞ」
    「これは……、洋風ちらし寿司ですね。それでは早速」
     彼はふむ、と頷いてから箸で色鮮やかなアレンジちらし寿司をつまんで口に入れた。わたしも食卓に着いて黄色と白の炒り卵と豚肉が混ぜられたご飯を口に運ぶ。

     豚肉はオリーブオイルで炒め、赤ワインや日本酒、トマトピューレにコンソメで味付けしてある。その調味料が豚肉のうまみと絡み合ってお米をさらに食べたくさせる。

     味付けは若干濃いめにしたが、砂糖で味付けしたそぼろ状の卵焼きがふんわりと口の中で広がるので辛すぎるということはない。またアクセントとして加えたアボカドは口の中で爽やかにとろけて食べていて飽きない。

     料理としての完成度で見ると改善の余地はあるが、家庭料理としては及第点だろう。目の前の青年もかすかに笑みを浮かべて口を開く。

    「エスニックで和食なのに洋風らしさもあって面白い味です」
    「それはどうも」
    「それに豚肉もどこかフルーティーな酸味があって生臭くない」
     すしなのに「酢」を使わないのはどうかな、と思ってバルサミコ酢を隠し味に少々入れたのだが気が付いたのだろうか。大したものだ。

     ほぼ食べ終わったところでわたしは「こほん」と咳払いをしてさりげない様子を装って話しかける。

    「縁起物として豚肉を使ってみました。豚という生き物が多産なのもありますが、豚自体が西洋では金運の象徴なんですよ。貯金箱のデザインにも使われているでしょう」
    「ああ、確かに」
    「『金運』、そう。『金運』の象徴なんです。『金運』」とわたしは念を押すように重ねてから、さらに続ける。
    「二色の卵はおめでたい錦とかけてみました。めでたい時には錦の旗を揚げるものですから。そう。錦の旗を『揚げて』。『揚げて』お祝いするものなんです。『あげて』ね」
    「……そ、そうですか」
    「アボカドはそれ自体は謂れはないですが中央アメリカ原産の食べ物で、現在でもメキシコ産のものが輸入されているそうです。実に『長大な』距離を渡って日本にきているわけですね。『長大な』。『長大な』。実に『ちょうだいな』」

     わたしはまだ彼のご利益にあやかることを諦めてはいなかった。そこで今度こそ彼に金運を上げてもらうべく無意識下に呼びかけて頼みやすい空気を作ることにしたのだ。

    『金運』『あげて』『ちょうだいな』
     このフレーズをサブリミナル効果のごとく繰り返し聞かせて刷り込めば、いかに鈍感な福の神と言えど「金運を上げて儲けさせてあげようかな」という気持ちになってくるのではないか。だが、わたしの内心とは裏腹に彼は興味が薄そうだった。

     しょうがない。もう一度、豚の話からこの話題を繰り返すか。わたしがそう考えたとき「ところで」と彼が急に話を切り出してきた。
    「……何ですか」
    「前に店を再起させるための資本金を貯めていると聞きましたが、どれくらい貯まっているんです?」
    「えっ」
     自分から話しかけようとしたときに逆に話題を振られてわたしは戸惑う。
    「……そ、そうですね。地方都市の駅前あたりで土地を借りて店を経営するにしても建物の工事と一年間の人件費、光熱水量と食材などの費用を概算して八百万は必要ですが」
     だが今のわたしの収入では月に十万貯めるのでも精いっぱいだ。
    「今の時点では二百万しか貯金できていないので、……あと五年はかかりますね」

     急に現実を突きつけられて暗澹たる気持ちになる。五年かけて料理人として再起できたとして、それから店が軌道に乗るのにどれくらいかかるだろう。一流の店と呼ばれるようになってわたしを見捨てて行った従業員や馬鹿にした商売仇たちを見返してやりたいとも思っていたがそれは叶うのだろうか。

    「元気を出してください。あなたの料理の味は私が保証しますから」
    「はあ。どうも」
    「今日は珍しいものが食べられて満足です。また、遊びに来ますよ」
    「え、……ちょっと。待って」

     はっとしたわたしは呼び止めようとしたが、気が付くと彼はまたも姿を消している。

     わたしは内心で臍を噛む。金運を上げてもらう話をするつもりだったのに、つい気を散らされて忘れてしまった。あれ? いや待てよ?

    「……そもそも向こうからお店の資本金の話を振ってきてくれたんだから、そこで素直にお願いすればよかったじゃないか」

     後悔しても、時すでにおすし。心の中で呟きながら目の前に残ったちらし寿司を見て私は肩を落とした。

    ❄️ ❄️ ❄️

    ❄️雪世明良です。よろしくお願いします。

  • ☆☆☆愛宕☆☆☆

     そんなわけで、俺は関川くんと一緒に『角上魚類』へ来ている。
     都内でも人気のお魚専門店、もはや魚市場と言っても過言ではない。新潟の寺泊を本拠とし、そこから鮮度抜群な魚が日々送られてくるこの店は、平日も休日も関係無く、多くのお客さんが新鮮な魚を求めてやってくる。そんな活気ある店内に、俺の魚群探知機にもスイッチが入った。

    「ほら、見てみなよ。サザエが大きいなぁ」
    「こっちはカニかぁ。まだ、泡吹いてる」
    「この豆アジ、一盛りでこの値段!? 安いなぁ」

     まずお目にかかったのは、捌く前の魚介類が並ぶエリアだった。壁際では魚が一匹丸ごとの状態で売られていて、頼めば奥に控える板さんが三枚におろしてくれる。今日はメバルと太刀魚がオススメのようだ。
     関川くんは、元料理人の雰囲気など微塵も無く、ズラリと並ぶ魚介類を前にあれやこれやと悩んでいた。俺が「ちらし寿司」と、食べたいものを紙に書いてしまったからだろうか。具材をどうするか、大いに悩んでいる様子だった。

     ちらし寿司っていうのは、その時に食べたい魚をメインに、ちゃちゃっと散らせばいいんだよ。悩む必要なんかはない、関川くんの作る料理は抜群なんだから、考えるまでもなく感じたままに作ってくれればいいのだが……今回ばかりは、そうもいかない雰囲気だぞ。


     いかん、魚ばかり見ていたら……腹が……減ってきた。


     よし、ここは俺が決めるとしよう。
     魚一匹まるごとコーナーで悩む関川くんを置いて、俺は寿司や刺身が並ぶエリアへと急いだ。俺の行動に気付いた関川くんが「あ、はぐれちゃダメだよ」と背中越しに叫んでいる。構うものか、俺の食いたいちらし寿司は、そこには無いんだよ。

     マグロ、ハマチ、アジ、イカ、どれも綺麗に処理されて美味そうじゃないか。それぞれを買ってぶつ切りにして、好きなだけ寿司桶に放り込むのも悪くない。ウニやイクラも魅力的だけど、ここは単品コーナーをスルー。寿司となって販売されているところが本命だ。

    「勝手に走り回っちゃ迷子になっちゃうよ。ん? これ?」

     俺は無言で頷いて、手にした丼状のパックを関川くんへ突き出した。それは『角上魚類』オリジナルの、ここでしか買えない「特製ばらちらし」だった。
     マグロ、タイ、ハマチ、イカ、サーモン、数の子、イクラなどなど、旬の素材がご飯を隠すほどに埋め尽くされた、極上のちらし寿司だ。これを食べずして、『角上魚類』は語れない。

    「これでいいのかい? 僕がちゃんとしたものを作ってあげようと思ったのになぁ」

     俺は強い眼差しで頷き、関川くんのやる気を散らした。俺が喋れるなら、彼にはこう言ってあげたい。


     ――こういうので、いいんだよ。


     五郎さんも、きっとこう言うだろう。気取らず飾らず、あるがままの素材で好きなように盛り付けたものが、本当に可愛らしい「ちらし寿司」なのだ――。

  • 🍷出っぱなしです。

    よろしくお願いします。

    🍷🍷🍷

    「ウニャー!」



     タマは、物思いにふけっていたわたしを見上げて毛を逆立たせる。

     一緒に買い物に行こうと言っておきながら、相手にされていなくて拗ねてしまったようだ。



    「ああ、すまない、タマ。お詫びにジュースも買おう」

    「ニャン!」



     わたしがタマの頭の上にポンと手を置くと、ニャンとも良い笑顔が帰ってきた。



     さて、文明が崩壊したとはいえ、人々は意外と逞しい。

     変態の館内では文明の利器が生きているし、周辺も城下町のようにそれなりに機能している。

     これから買い物に向かうのは、近所のスーパー、というよりも闇市のような露店だ。



     理想通りではなかったが、それなりに食材を揃えることができた。

     背伸びしたいタマは甘酒、わたしはお手軽白ワインも手に入れた。



     館に戻り、早速調理開始だ。

     タマは興味津々に目を輝かせて、わたしの料理を見ている。



     買い物に行く前に炊いておいた米をボウルに入れ、すし酢を加えたら、しゃもじで切るようにかき混ぜる。

     

     次に、漬けマグロを仕込む。



     柵取りされた赤身の直方体を熱湯にサッと通す。

     表面の色が変わったらすぐに取り出し、氷水にブチ込む。

     この作業を霜降りといい、素材の臭みをとって、旨みを逃がさないようにするための下ごしらえのことだ。



     キッチンペーパーで水気を切ったら、刺し身サイズにそぎ切りにし、しょうゆと白ワインをブレンドしたタレの中に漬け込む。

     本来は酒だが、ワインの方が酸味が強いのでスッキリした味わいになると思う。

    🍷🍷🍷


    続きはこちらです。

    『飯テロリスト関川様、ネコ耳を拾う』

    https://kakuyomu.jp/works/16816927862486888667/episodes/16816927863275513761

  • こんばんは。
    お気づきかもしれませんが、そして些細なことですが、毎度視点が変わります。
    さて、今回は『誰』の視点でしょうね。


    🍏🍏🍏
     朝起きて『おはよう』のあいさつをするのは、いつものことだ。どんな風にあいさつしているか?
     それは想像に任せる。

     朝ごはんを作ってもらうのも「今日の晩御飯はなに?」なんて聞くのも、もはや日課と言えるけれど、「なにが食べたい?」と聞かれたのは初めてだ。
     迷いはしなかった。

    『ちらし寿司』

     「なかなか渋いリクエストだね」とフルクは怯んでいるようだったが、寿司よりはハードルが低いだろ。いや、むしろ高いか? どの程度本格的に作るかにもよる。そもそもこの山に囲まれた土地では、新鮮な海鮮魚介は手に入らない。
     まあ、どうせアイツのことだ。限られた食材で、なんとかして作るのだろう。

    ……

    🍏🍏🍏

    ふう。続きはこちらで。

    https://kakuyomu.jp/works/16816410413893461604/episodes/16816927862961124736


  • 編集済

    🌸悠木柚です。


    朝起きてキスをするのが習慣だった。朝食の席で『今日の夕飯はなに?』なんて聞かれたり、『なにが食べたい?』なんてことを聞き返しながら。二人の食卓にはいつも笑顔が溢れていた。

    『ちらし寿司かな』

    これは彼女の好物であり、僕の得意料理でもある。そしてこのリクエストが出たときは『一緒に出かけよう!』の合図。映画館や百貨店、何なら白昼堂々ラブホテルでも良い。彼女と一緒なら場所に関係なく楽しめる。

    それはそうと。また、この季節が巡ってきたのか――

    「よし、今日はちらし寿司にしよう!」

    家から歩いて五分の商店街。寂れた映画館に入り、ローマの休日を二人でじっくり鑑賞する。その後は、魚介類が安くて有名なスーパーマーケットに直行。入口に積み重ねてある買い物カゴを取って海鮮売り場へ進む。作るのは僕だが材料を選ぶのはいつも彼女の役割だった。小エビ、アサリ、イカ、ハマチ、サーモン、イクラ。砂糖と塩、そして米酢は家にある。

    ハマチとサーモンは醤油と日本酒、みりんで漬けておく。硬めに炊きあがった御飯を寿司桶に移し、うちわで扇ぎながら手早く調味料を馴染ませるのが美味しい酢飯になる秘訣。そこにアサリを混ぜて香りをつけ、酢飯が冷めてきたら他の具材を散らすようにまぶす。もちろん、後乗せできるよう具材の予備も忘れない。

    『山の幸は山の幸で。海の幸は海の幸でまとめるのが良いと思わない?』

    僕的にはシイタケや錦糸卵も入れたかったけど、彼女の意見を優先してしまう。だって『海の味がして美味しい!』と、すごく良い笑顔をするんだもん。

    スーパーの袋いっぱいに購入した具材を持って家に到着。ダイニングテーブルに荷物を置き、ジーパンの後ろポケットから取り出した写真をその隣に添える。できるまでの間、わざと僕の邪魔をするように戯れてくる彼女が愛おしかった。無意識に頬を伝った涙の雫が、微笑みの上に落ちる。

    『もう一度、貴方のちらし寿司を食べたかったなぁ……』

    病院のベッドで彼女が弱々しく呟いた言葉。毎年この時期になると思い出すのは、僕の心が弱いせいだろうか。



    fin