人に宿る(憑いた)燕の魂視点で魅せる和風ファンタジー

都合により20万文字程度しか読めていませんが、そこまで読んだ感想としては「とても良い作品」でしょう。
少なくともレビューを書いて応援したくなる程度には。

ジャンルは異世界ファンタジーですが、物語の舞台は中世日本のようであり、読むとジャンルとの違和感を感じます。
結果、ありきたりな異世界ファンタジーを好む層とのギャップを生じさせるので、避けられてしまう要因ともなっているのかと。
ピッタリ当て嵌まるジャンルが無いのが原因でしょう。
この辺はカクヨムサイドで考えて欲しいと思います。

人でありながら人ではないものに憑かれ床に伏せる主人公。
瀕死の状態で寺の和尚に拾われた燕。
恩義を感じた燕は床に伏せる主人公を助けたい、そう考えるように。
ある日、梟により選択を迫られます。
燕は考え救いたいと願う主人公に魂を宿すことに。
しかし、その結果は思っていたのとは大きく異なるものでした。

少々突飛な設定ではありますが、丁寧な描写により物語に引き込まれます。
魅力のある登場人物、幾多の苦難を乗り越え京を目指す道中。
出会いあり別れあり、葛藤や嘆きも含め起伏に富んだ内容でしょう。
主人公も同行者も決して無双できるわけではありません。
そんなに世の中甘くはないわけで、その点は上手くバランスを保っていると感じます。
惜しむらくは男性主人公と主人公に同行する男性陣に対して、女性陣の魅力がやや乏しい面もあります。
度々絡む忍びの雨巳と言う存在に、もう少し女性としての魅力を付与すれば、ヒロインとして立ってくるのではと。

文章は一見すると堅苦しく見えますが、実際に読んでみると読み易く、理解が及び易いのも良いです。
難解な語句を使い、さも文学を気取る作品とは雲泥の差があるでしょう。

なかなかの秀作だと思います。

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