切ない──人間の業を感じさせる珠玉の短編

作者が何を描きたいのか、その焦点がハッキリと定まり、またそれが、目論見どおりに機能している稀有な作品です。

センシティブな表現や、社会通念的な危険(一義的な決め付けや誤解を呼びそう)を孕んだ内容であるため、万人に向けて声高に喧伝するのは躊躇われますが……。人間とは、社会とは、そんな単純に白黒付けられる分かり易いものじゃないよな、という成熟した精神をお持ちの方であれば、是非お薦めしたい作品です。

カクヨムはじめ、ネット小説界隈では、こういった狙い澄ました作者の意図が垣間見える作品に出合うことが稀に感じるのですが、本作は本物志向の読み手にも耐え得るものだと保証します。
こういう、しっかり創られた小説がもっと増えて欲しいものです。