アクの強い爽やか不条理青春小説 読後感◎

物書きor読書好きなら、きっと誰もが通ったであろう拗らせた思春期。ほろ苦い青春の1ページに対する思いがけない解釈が示された一篇です。
結局、貴方なりの解釈で良いですよ、と投げ出される部分もあるので、最後まで読み切ったとしても、本作の評価は人に依って分かれると思います。
そういう意味でもアクの強い作品と言えますが、刺さる人には奇跡的な衝撃と角度でぶっ刺さる良作だと思います。
お薦めです。

一番アクが強く、おそらく読者を遠ざける原因になっているのは、主人公たちの台詞や内面で語られる衒学的な物言いで、そこからはネット小説界隈に溢れている如何にもな素人臭を嗅ぎつけてしまうことでしょう。
ただ、彼らが「高校生」だという当たり前の前提で読み進めていくと、彼らが非常に可愛らしく微笑ましく思えてきて、かつ、ああ自分にもこんな内面形成をしていた時代があったよなあと、恥ずかしくも懐かしい気分に浸ることができる本作の最大の魅力にもなっています。
そして、彼らのそんな語りが単なるキャラ付け的修飾ではなく、物語の根幹に関わってくる必要不可欠な描写だったのだと気が付いたとき──そこまでたどり着けた人にとっては、本作は奇跡的にバランスの取れた幻想的な不条理青春小説としてドラスティックな変貌を遂げていることと思います。

取っつき難く、万人受けしないのは間違いありませんが、これだけの完成度で書かれた小説はなかなかないです。きちんと考えて読むに足る小説です。
個人的には、不条理一辺倒ではなく、ちゃんと無理なく解釈できるバランスが優れていると思いました。
是非、お試しください。