言葉を奪われた者

肉体の確かな重みを感じつつも嫌悪し、言葉の持つ呪力を実感するが故に詩人の言葉を憎悪する。
「俺」とは、そも「誰」なのか?

止めどなく広がってゆき、閉じてゆく思索(詩作)のなかで、沈黙を強いられている者の存在。

「薔薇の花」「来ない客」「すみれの花」……引用される詩と層を成す隠喩。
言葉を奪われた者の沈黙が、「俺」を不断に断罪している。

しかし、読者の思索はいつだって出発地点に戻ってこざるを得ないのだ。

「俺」とは、そも「誰」なのか?
「わたし」なのか「あなた」なのか、それとも「世界」なのか?