パスタがつなぐ、多彩なソースが魅力のストーリー。

本作は主人公の百合子がお隣に住む萱代さんにパスタ(と圧がすごい蘊蓄)を振る舞ってもらったところから始まる全六幕のお話です。

パスタをテーマとしていることは全幕共通ですが、ミステリー仕立てのお話あり、偽装結婚のドタバタものあり、料理勝負ありと、様々なアプローチがあって毎回どんな話になるのか期待しながら読み進めることができました。また、どのお話も、主題と使われるパスタソースとがしっかり絡み合っていて、あっさり味の文体なのにしっかり食べ応えがある点も好ましく思いました。

個人的な白眉はやはり料理勝負のある第六幕。勝敗を決定づける要因は定番と言えば定番なのですが、やっぱりああいうのはぐっときますね。第二幕で語られた「イタリア料理なんて存在しない」の真意、第三幕や第五幕で使われた越境の調味料、第四幕で語られた「縁」などともリンクしている点も素晴らしい。いやー美味美味。

気になる点があるとすれば、夜に読むのは危険と言うことくらいですかね。特にパスタ鍋が自宅にある方はご注意ください。つい、茹でたくなってしまいますので!

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