ミステリー的たくらみにあふれた魔王勇者譚


本作は、魔王が勇者に宛てて書き残した手紙という体裁の小説です。

手紙の前半は魔王が勇者との初めての戦いから最後の戦いに至るまでを振り返るというものですが、短い中にミステリー小説のように細かな伏線が張り巡らさせており、その巧みさに唸らされました(個人的なヒットは妙に子供っぽさの残る文体そのものが伏線になっていたことでした)。

勇者はいつ手紙を読むのか。そもそも読むことができたのか。想像の余地が残る結末を好ましく、完成度の高い短編だあると思います。